「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

7点 墨攻

戦国時代の思想家の人生を描いた教科書的歴史漫画かと思ってたら、意外にもかなり脚色の入ったエンターテイメント性の強い内容。典型的な劇画調の「濃い」作風で、残酷なシーンもそれなりに出てくるので読む前にある程度の覚悟はした方が良い。

もともと墨子や墨家の思想は学校の授業で少しかじったのだけのおぼろげな知識しかなかったが、これは無理に思想的な部分を押し付けてこなかったのですんなり読み進めることができた。
描写はかなりリアルで、良くも悪くも「大昔の価値観や戦争の様子はこんな感じだったのか」という雰囲気はよく分かる。現代人の視点から見れば墨家の思想など単純だ、と思うかもしれないが、当時の常識となっていた物事の考え方がしっかり描かれているので、いかに革離が先進的な価値観を持っていたかというのが伝わってくる。
また攻城戦をメインに描いている作品だけあって、アクション的な要素やかけひき、読み合いにもリアリティーがあって良い。

映画が面白かったから、といって軽い気持ちで読んでしまうとちょっと痛い目に遭うかもしれない。
しかし中国史が好きな人や本格的な歴史漫画を求める人を満足させるには不足無い出来。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 00:49:14] [修正:2007-06-27 00:49:14] [このレビューのURL]

8点 レベルE

着眼点や発想の面白さは言うまでもなく、王子を筆頭にキャラクターもそれぞれ最高に魅力的。作者の変人ぶりがフルに発揮されている作品。
かなり非現実的な設定なのにもかかわらず現実とのリンクがものすごく上手くいってる。また構成も良く、シリアスかと思ったらオチはコメディー、というやり方には何度騙されたことか。それでも許せてしまう「発想の斜め上をいく」茶目っ気がこの作品にはある。

とにかくやりたいことが無駄なく納められており、他の長編のだれっぷりを見るともう「短編だけ描いてください」な気分。
たった3冊でこれほどの満足感を与えてくれた漫画は他にない。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2007-06-26 00:02:48] [修正:2007-06-26 00:02:48] [このレビューのURL]

一人のしがないおっさんの生き様をここまでコミカルにできるのはさすがといったところ。なんでこの人はこんなにダメ人間を描くのが上手いんだろう。
冷静に考えてみたらかなり異常なキャラクターと無茶苦茶な展開ばかりなのに、なぜかこの作者の手にかかると違和感がなくなってしまう。突っ込みどころ満載な内容だが、ふと自分に対して言われているような気分にさせられるリアルさがあり、素直に笑えないことも。

ただ終わり方が…。「え、これで終わり?」という感じでかなり呆気なかった。えてして人生なんてそんなもんだ、と言いたかったのかな?
ギャグ漫画として読む分にはかなりおもしろい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-25 23:36:21] [修正:2007-06-25 23:36:21] [このレビューのURL]

8点

バレエという珍しい題材を扱った作品ながら、素晴らしい出来。

ただ単に主人公が天才という訳ではなく、その特異な才能の背景、生い立ちが丁寧に描かれているので説得力がある。
心理描写が上手く、様々な人物の思惑や信念がしっかり表現できている一方で、未知の世界の存在も無理なく描けている。盛り上げるところは最高に盛り上げてくれるし、見せ場への持って行き方も良い。読んでいて鳥肌を立たせられる場面が何度も。
非常に思い切った場面転換や構成の上手さも随所に感じられ、普段全く踊りなどに興味の無い僕にもバレエという世界の奥の深さが伝わってきた。

第二部へのつながりに少し無理があったり、人物像のところどころに破綻があるなど粗も見られるが、それを補って余りある魅力を放っている。第三部に期待。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-25 18:49:22] [修正:2007-06-25 18:49:22] [このレビューのURL]

5点 ONE OUTS

ルールの穴を突いたかけひきや、中盤以降チーム改革に乗り出すところは面白かった。

しかし全体的に展開があまりにもインチキ臭く、セリフや説明が多すぎて読む気にならないし、読んだ後の満足感は薄い。作者が野球好きなのは分かるが試合描写はかなりお粗末で迫力に欠け、プロ野球を舐めてるとしか思えないような場面も目立つ。「試合中にグラウンドで喋ってることが相手ベンチや観客席どころか放送席にまで聞こえるはずないだろ…」と何度も思った。
一番盛り上がるべき終盤の展開がモロにダイジェストなのも疑問。
作者は「あらゆる野球漫画へのアンチテーゼ」として描たそうだが、それは言いすぎ。先人に失礼。

確かにエンターテイメントとしては良作。が、過大評価されすぎな気がする。
ここの高い評価を期待して読んだ分ガッカリ感の方が大きかった。
普段野球に興味がない人は楽しめると思うが、野球経験者やプロ野球好きには粗が見えすぎるのでお奨めできない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-25 18:16:56] [修正:2007-06-25 18:16:56] [このレビューのURL]

荒木飛呂彦先生ならではの奇抜なアイデアの数々。
戦闘描写は抑えられており、何度見ても楽しめるサスペンス色の強いショートドラマに仕上がっている。

ジョジョファンなら誰もが狂喜する人物の再登場があったり、巻末の解説に作者のマンガに対する思いが綴られていたり、とファンとしては大満足。
「そうきたか」と唸らされるような仕掛けが、あるときは思わぬオチとして、あるときは状況そのものとして張り巡らされており、見所が多すぎて飽きが来ない。
常識的に考えればあり得ない状況が、実際に自分の身の周りで起こっていることのようなリアリティーとともに見る者に迫ってくる。

どのエピソードも作者の遊び心に満ちており、荒木流の良いところが凝縮されたような一冊。
「ジョジョが気になるけど長いし…」という人にも最適な作品になるのでは。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-23 20:59:10] [修正:2007-06-23 20:59:10] [このレビューのURL]

重い題材をサクッと描いてしまうのがこの作品の魅力。

真面目で大人な性格のかずいと、無垢で子供な虎弥太。対照的な二人を中心として話は進む。
他人を不幸に陥れている人間をいとも簡単に殺していくかずいだが、そこにあるのは一元的な「善悪」の価値観ではなく、全ての現実を理解した上で自分が罪を引き受ける心だ。
最終的には全ての人物に救いが与えられているところに作者の優しさが感じられる。

作者の画力・構成力の未熟さゆえか、脇役の面々にあまりに薄っぺらな人物が多かったのは少し残念。期待していた次作はもっと残念なことになってしまったが・・・。

深読みせず、淡々と読んでいくと良さが分かってくるはず。
ジャンプ黄金時代末期の隠れた良作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-23 00:51:19] [修正:2007-06-23 00:51:19] [このレビューのURL]

5点 BLEACH

少年漫画の王道と言える路線を突っ走っているがため、良い面と悪い面がくっきりと分かれているように見える。

「オサレ漫画」の烙印が押されている原因の一つに、独自の世界観に対する説明の不十分さが挙げられる。
死神や虚の存在、ソウルソサエティの設定自体は面白いアイデアだが、その世界が存在する必然性の説明や定義が十分になされないまま勢いだけで話が進行していくことが多いため、ふと現実世界とのリンクの曖昧さに気付いたときに一気に醒めてしまう自分がいる。
また再三言われている通り現状酷いインフレーションに突入しており、こうなってしまうと今の路線のままではもう盛り返しは難しいかも…と思ってしまう。

とはいえキャラクターはそれぞれ立っており、戦闘描写もそれなり。エンターテイメントとしては悪くない。
余談だがどこかで「一護とそれを取り巻く人間関係はうしおととらのオマージュだ」という指摘を見たことがあった。なるほど、納得。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-23 00:14:44] [修正:2007-06-23 00:14:44] [このレビューのURL]

9点 神童

今でこそ「のだめ」や「ピアノの森」が一世を風靡してるけど、これを読んだ当時としてはクラシックを扱ったマンガはとても斬新だった。

主人公うたが物語を通して人間としての成長を遂げていく様子にどんどん引き込まれる。
最初は世間の大人や気取ったガキどもをピアノの腕で黙らせていく痛快さに、やがてある重大な事件を契機にまさに「音」を「楽しむ」ことを覚えていく過程に、奥の深い面白さがある。
全ての物事を音楽を介して捉えている描写は新鮮で、雑味がなくある意味ですがすがしい。また必要以上に自己主張をしないサブキャラクターたちにもテーマの一貫性を感じることができ、好感が持てる。

「この音は神様にかえすよっ!」
「全ての響きを合わせて 今 一しずくの音からはじめよう」
等、さり気なく心に残るセリフも多く、全編を通して登場人物や作者がいかに音楽を愛しているかが伝わってくる。絵が微妙だからとスルーしてしまうのはあまりに勿体ない。
渾身の力がこもったラストシーンには痺れた。未読の方は是非。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-22 23:47:54] [修正:2007-06-22 23:47:54] [このレビューのURL]

この作品で土田先生と出会った。

自己を主張することも、他人を疑うことも知らないドンのひたすらにまっすぐな思いには胸を打たれる。
自分の幸せとは自分の好きな他人の幸せ。
そこにあるのは自己犠牲の精神でも博愛の精神でもなく、ただ自分を、そして人間という生き物を信じる心だ。罵られ、嘘をつかれ、裏切られ、どんなに傷つけられても、関わったすべての人たちに人間としての真の誇りを見つけさせていくドンの生き様は本当に不器用だけど、本当にカッコイイ。

生きることはそれ自体が大きな苦痛だ。でも「永遠の場所」は、必死に生き抜くことの中に自分で見つけていくしかない。それは現実の刹那さを突いた心理だけど、同時に人間の暖かさも教えてくれる。
多分僕がドンのように純粋な愛を持つことは一生かかってもできないんだろう。
でも、いつかはそうありたいと願う。

まさに魂を揺るがし、僕の人生観を大きく変えた作品。
おそらく今後も、これほどの影響を与えてくれるマンガに出会うことはないだろう。

『ドン、おはよう! おまえが大好きだ!!』
 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-22 22:16:57] [修正:2007-06-22 22:16:57] [このレビューのURL]