「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

高橋ツトムの死生観、ここに極まれり。他のスカイハイシリーズと違った観点で描かれてはいるが、集大成と言って良い出来。

怨念、宿命、転生…。いかにもホラーものにありがちなキーワードが散りばめられてるけど、そこに「カルマ」という鍵が与えられることによって物語の軸がしっかりと定められ、ただのホラーの域を超えたリアリティーがある。
かなり仏教概念の影響が色濃く出ているが、主人公がもともと宗教に無関心な少女なので、読んでる側も無理なくこの世界に入っていけた。小難しいことは抜きにしても、結末に到るまでのドラマチックな展開は見事。
また震えるような迫力の怨霊描写がすごい。決してホラー的な「怖さ」を感じさせる部類の絵ではないけど、力強くがっちりと絡みつくようなタッチが強く印象に残る。

程よい長さに収まっているので中だるみもなく、内容が濃い。良質中編漫画。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-07-03 23:21:57] [修正:2007-07-03 23:21:57] [このレビューのURL]

何となく興味本位で手にとってみたけど、正直この作風は僕には合わないらしい。
絵柄やキャラクターに魅力を感じられないのをはじめ、唐突にマニアックな近代兵器がわらわら出てくる違和感、重いんだか軽いんだか話の筋がよく分からない展開、すべてが…うーん。
痛々しい描写もかなりあるのになぜか現実感が湧いてこない。余白の多い絵が必ずしも悪いという訳ではないけど、絵からあまり力感が伝わってこないのがどうにも。
残念ながら作者のコメントにもほとんど共感できるものはなかった。

序盤こそ他のマンガにない独特のドライな空気と先行きの不透明さが新鮮に映ったものの、5巻あたりから退屈さの方が先に立つようになってしまった。

最初に表紙を見た時点で自分には合わなさそうな雰囲気を察したけど、改めて「直感ってけっこう大事なんだな」と思わせられた。
かなり人を選ぶ作品だと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-03 14:02:00] [修正:2007-07-03 14:02:00] [このレビューのURL]

7点 HELLSING

古本屋で立ち読みしたときはゴチャゴチャした絵が受け入れられなくて放り投げたけど、本腰入れて読んでみるとこれがなかなかおもしろい。
「狂ってる」っていう表現ができるマンガはいろいろあるが、その中でもこれは非現実の世界をとことん突っ走ってる感じの狂いっぷりが好き。グロい表現やかなりヤバい思想も、フィクションの世界だと割り切って読めるから単純にエンターテイメントとして楽しむことができる。
ときどき入るギャグパートも作者の遊び心やいい感じの手抜きが感じられて良い。

また敵味方問わずキャラクターが非常に魅力的。主人公が最初から強いマンガはあまりおもしろくないのが多いけど、これはそもそも設定自体がぶっ飛んでるから不快感はなかった。先が読めるシーンも多いけど、とにかく熱さと勢いで乗り切っている。

しかしこのマンガ、よくイギリス国教会やバチカンから抗議が来ないもんだ…(かなりの言語に翻訳されてるというのに)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-02 23:19:46] [修正:2007-07-02 23:19:46] [このレビューのURL]

構成の過不足のなさ、キャラの魅力、独創的な構図やタッチ、意外な結末…全てが素晴らしい。

才能を持て余す能天気なペコと、才能を生かす気のないクールなスマイル。作者得意の二人の対比を中心に描かれる青春像は、天才であるがゆえの苦悩や孤独、努力では超えられない壁にぶつかった者の挫折感、スポーツをやっている人間なら誰もが感じる、けど誰も決して声を大にしては言えなかった、そんな真実を痛快に表現している。
主役級の二人から脇役に至るまで、それぞれの思いを胸に卓球に命を賭ける姿は、みんなどうしようもなくカッコイイ。

また、粗さと繊細さが見事に溶け合った絵は濃すぎず、薄すぎず、一度見たら忘れられないインパクトを持っている。ほとんど動きのない「静」の絵にこれほどのメッセージを込められたマンガがかつてあっただろうか。

青春という2文字をたった5冊の中に見事に集約してみせた作者の感性は驚異に値する。
文句なしに傑作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 19:14:27] [修正:2007-06-29 19:14:27] [このレビューのURL]

これは評価が難しい。
最初読んだときは衝撃を受けたしどんどん読めたけど、なぜか今考えるとどういう内容だったのかよく思い出せないほど印象が薄い。
着眼点はすごいし、現代人の深層心理について興味深い考察?がなされていると思う。ただ描写がリアルすぎてイマイチ馴染めなかったのと、展開が飛躍しすぎるため状況がよく理解できない(主人公も僕も)のが原因なのだろうか。

おもしろいんだけど、印象には残らない。
「おもしろい」と「印象に残る」は今まで常にセットで感じてきたから、これはかなり珍しい。ある意味貴重な作品なのかもしれない。
しかしながらさほど先が気にならないのは痛い。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 18:52:02] [修正:2007-06-29 18:52:02] [このレビューのURL]

少年誌の王道のような冒険マンガ的オープニングを見せたかと思えば、闇の世界や独自の設定の闘技場、さらにはネットゲームやオークションの概念まで。
いろんな世界を違和感なく料理して物語に組み込むセンスの良さはさすが。
あえて舞台を広げることで様々なエッセンスをまじえながら、読者に旅行をさせているような感覚を持たせようという意図も読み取れるし、全く飽きなかった。
念の設定も独特で、一元的な「力」の概念と操る人間によって様々な特徴を見せる「スタンド」の概念の良いところをうまく融合させたようで画期的。ときどき常軌を逸した変人が登場するのも作者らしくて良かった。

が、蟲編に入ってからどうもおかしくなった。
休載のことは抜きにしても、戦闘の駆け引きがどこか短絡的に思えたり、あまりの急展開にパワーバランスが崩れすぎてせっかくの念の概念が置き去りになってるような気がする。

ともかく、今後どう物語が進んでいくのか。気にしても仕方ないのが現実だけど、今の状態はどう考えても生殺し。ちゃんと続きを書いてほしい…。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 17:33:22] [修正:2007-06-29 17:33:22] [このレビューのURL]

7点 ONE PIECE

何と言われようが、「10巻までの雰囲気が好きだった」という意見は変えられない。

その後のあまりにも人が死なない理不尽さや短絡的な思考が多すぎるのに嫌気が差して何年か読むのをやめていたが、久しぶりにまとめて読んでみると、やっぱり良いところも数多く持ちあわせているマンガなんだということを再確認。
とことんまでバカに徹するキャラクターになったルフィはこれはこれで魅力的だし、中途半端なキャラだった頃よりはだいぶ良くなった。
世界観や登場人物なんかもどんどん広がってるし、伏線も張られまくりだけど、不思議と消化できるような気がして安心して見てられるのはこの作品独自の魅力。

ただ死を描かないことはどうしても戦闘の緊迫感を損なうし、そもそもの航海の部分もかなりおろそかになっている。その点において「海賊」っぽさは相変わらずちっとも伝わってこなかった。
海洋冒険ファンタジーとして読むには十分に面白い。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 17:14:09] [修正:2007-06-29 17:14:09] [このレビューのURL]

明るめな展開が多くなっているのは個人的には好き。
前作が「現世の汚さ」を描いているなら、今作は「現世の素晴らしさ」を描いた人間賛歌と取ることができる。つくづく人間とは裏表の生き物なんだなぁ。
特に猫の話は思わずウルッとくる。

ただ前作とあわせて5巻、6巻と続くにつれさすがに題材が尽きてきたのか、あまり入り込めないエピソードもちょくちょくあった。
それでも着眼点が良いというか、主題の見つけ方が上手いと思わせられる話が多く、全体的にクオリティーは高い。
誰が読んでも見所を見つけられる作品だと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 19:48:49] [修正:2007-06-27 19:48:49] [このレビューのURL]

死を前提にしているだけあり、全体的に暗い雰囲気が漂う。死んですぐの人間の視点で現世を描くというのは新鮮味があった。

天国に行って転生を待つか、死を受け入れず現世で彷徨い続けるか、人間を一人呪い殺して地獄に行くか。
淡々と死者にこの選択を与えていくだけのストーリーだが、それぞれの選択に深い人間模様が描かれていてマンネリは感じなかった。
幸せを奪われた者、不幸のうちに死を迎えたもの、全くの事故で命を奪われた者、数多くの死が描かれているが、他人を殺めるということがどんなに不幸を与えるのかを教えられる。
どんな人間であれ命というものは重いんだなぁ、と。
子供が多く出てくるので絵が少し柔らかくなった感じがするが、相変わらず上手い。ただ「地雷震」後期の方が鋭さがあって好きだった。

地雷震から続けて読むと作者の社会問題への関心と人間観の変化が感じ取れて面白い。
サクッと読むことも深読みすることもできる良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 19:33:27] [修正:2007-06-27 19:33:27] [このレビューのURL]

かなーり敬遠していた作品。周囲の熱い推薦もあってこのたび思い切って読んでみた。

やっぱり最大の不安材料だったあのグロテスク表現は凄まじく、1巻の時点で何度か読むのをやめようかと思った。しかし読んでいくうちに徐々に気にならなくなっていってしまった自分がちょっと怖い。
絵もさることながら登場人物も一人残さず狂人。それも常識の範囲内では考えられないような狂いぶりで、逆に惹かれるものすらあった。思えば絵が気にならなくなったのも、この狂った人間像と完全にマッチしてるからなのかもしれない。
そんな副次的な要素に目が行きがちだけど、どんどん読めてしまうのはストーリー自体に魅力があるからに違いない。最初に衝撃的な情景が見せられ、それから過去に戻るという構成になっているので、何気に先が気になる。

面白い、というのが素直な感想。ただ面白いだけじゃなくて、人によっては麻薬的にハマる魔力を持ったマンガだと思った。幸か不幸か、僕は「まだ」その領域には行ってないけど。
全く万人にお奨めできるような代物ではないけど、臓物がOKな人はなんだかんだ楽しめるんじゃないかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 01:35:16] [修正:2007-06-27 01:35:16] [このレビューのURL]