「景清」さんのページ
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6点 金剛番長
週刊少年サンデーといえばかつては「漫研部室のサンデー」とも言われたような優等生的な安心感のあるブランドだったが、近年は編集部と作家との間のドロドロした確執の話題が表面化し、雷句誠や藤崎聖人といった同誌の人気作家が他社へ移籍するなどして何とも不穏な空気に包まれている感がある。両氏とも移籍先の講談社では激しくビミョーな感じではあるが…。
そのような中にあっても、本作『金剛番長』からは、少なくともそういう不穏さは微塵も感じられなかった。作家もノリノリ、編集も輪をかけてノリノリ、互いの悪ノリが異様な相乗効果を生み、この21世紀の現代に学ラン系超人バトル番長漫画をメジャー誌で堂々連載するという究極の酔狂を貫徹、潔く「筋を通して」みせたのだから。
近年の超人バトル漫画は互いの能力や心理的駆け引きなどを重視する傾向が強いが、本作の主人公である金剛晃は「細けぇ気にするな」「知ったことかー」と居並ぶ多彩な強敵たちを次々と拳一本で粉砕していく。敵も番長、味方も番長の学ラン番外地、敗れた敵の多くは主人公の男気に惚れて仲間になり、物語演出は終盤地球規模にまで加速度的にインフレを遂げる。もう今となってはギャグにしかならないようなこれれらの意匠を確信犯的にたたきつけてくるのが本作の流儀である。作者の鈴木央はジャンプから移籍してきた過去もあり、そういう往年のジャンプ的なノリを意図していたのは間違いないだろう。
編集サイドもそんな作者の本気に最大限こたえる姿勢を示しており、単行本の帯文や巻頭巻末の煽り文句などを見ても
「せっかくだかrた俺はこの金剛番長1巻を買うぜ!」
とか
「タフすぎてそんはない」
とか
「ゲーーーーッ!?」
とか、もうやりたい放題の傍若無人、わかる奴だけわかればよし!的な酔狂が暑苦しいほどに充満していた。しまいには『キン肉マン』よろしく読者投稿による「僕の考えた番長」コンテストまで開催され、登場キャラとして採用されるなど、とにかく編集サイドの熱意が非常に感じられる作品となったのである。
ただ、このように書くと本作が悪ノリだけで構成されたような作品に感じられてしまうかもしれないが、実は結構本気で「番長」という存在の魅力を描こうとしていたのも本作の良いところだ。
物語中盤、「熱くない男は死んでよし!」をモットーとする熱血主義の化身・爆熱番長との戦いが描かれるエピソードがあるが、ここでは同じ熱血系キャラである爆熱番長と金剛番長が対比され、人の弱さも受け入れる金剛番長の度量の広さが示される。よき番長の魅力とは強さや厳しさと共に他者を受け入れる度量も併せ持った存在なのであることを改めて気付かされた格好で、作品の大半を覆う酔狂の陰で輝く真っ当さが、何とも絶妙な読後感を提供してくれた。
以上のように作品のノリとしては非常に自分の好みにあう作品だったが、しかし期待していたがゆえに残念な部分も多かったのも事実である。皮肉なことにそれらの欠点の多くはこの作品の長所が裏目に出た点が多かったのだ。
本作の魅力は単純明快で強力無比な金剛番長という主人公による部分が大きかったが、この金剛番長があまりにも強く、どんな危機に陥っても「知ったことかー」「気合いだー」で形勢を逆転させてしまうため、バトルがどうしても単調になってしまうのだ。これは近年の洗練された能力系バトル漫画を読みなれた読者には最初は新鮮にうつっても、次第に飽きられる結果となる。
また、当初は東京23区の各地区で行われていた番長達のバトルも物語の(意図された)インフレに合わせるかのように規模が拡大化し、しまいには地球を破壊しかねない勢いに膨れ上がった。むろんこれは”そういうノリ”を狙った作劇だが、さすがに酔狂だけであんな人が万単位で死んでもおかしくないような展開はちょっと…と思った。物語のラスボスである日本番長(金剛番長の兄)の悪行の動機にしても、
「母さんが愛したこの世界は母さんを拒絶した。だから俺はこの世界を憎む。」
といういかにもなセカイ系の典型で、この手の作品とは食い合わせが悪いように思い非常に萎えた。この終盤のせいで、番長漫画の復権を謳った本作が結果的に番長というイメージを風船のように肥大化させ、しまいには逼塞させたのでは?という思いもぬぐいきれない。だが、まぁそんな細けぇ事は気にせず読んで充分おもしろく、奇抜なキャラ設定のおかげでネタ漫画としても一級品の良作には違いない。単行本は全巻買う。それがせめてもの自分なりのスジの通し所だッ!
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2010-07-03 02:04:35] [修正:2010-07-04 23:01:19]
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