「景清」さんのページ
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7点 おひっこし
あれはもう10年前になるか、当時青雲の志に胸躍らせていたピカピカの大学一年生の自分は、友人の部屋で無造作に転がっていたアフタヌーンシーズン増刊を拾い読み、本作に出合ってしまった。「無限の住人」は存在は知っていたが読んだことは無かった。(今も無い。)
そこで描かれる奇妙な青春群像とマニアックなギャグに惹かれるものを感じて「蟲師」や「ラブやん」や「もっけ」と併せて大いに楽しみ、単行本も購入。そうこうしているうちに夢のように大学時代は過去のものとなった。
今、手元に「おひっこし」の単行本は無い。卒業時に実家に帰った際、他の荷物とまとめて押入れにしまいこんでしまった。それから更に数年、しかし今でもあの鮮烈な印象は脳の片隅になお残る。
以下、記憶を頼りに印象的だったシーンやセリフを拾えるだけ拾ってみる事とする。細かいところは間違っていると思うけど御容赦。
第1話
「俺は赤木さんが好きだ!」
「おお、自分探しの旅じゃぁ」 「ケッ反吐が出る」
「ウェルカムトゥーザヘール!」
「銀ビス少女隊」
「♪バナナセーキ バナナセーキ」
第2話 ←ここから読み始めた
「ローマは一日にして成らずんば虎児を得ず」
「ベヘモト (中略) 斉天大聖 (中略) マドモアゼルフロムヘル」
「やっぱ行楽地のお昼はカツカレーだよねー」
「くらえっデスマサカー!!」
「今いるここはどこ?魔界?」(背景;ジェダステージ)
「マンマ!僕も一緒に行くよォッ!」 「ああっ、ピザ野郎が逃げた!」
「ジャッジメントギャルズ」
第3話
「ですめたるは不滅です」(巻頭アオリ文句)
「伊太利亜人のお墨付き」
「ペスカトーレ! ユダめェェェェェ!」
「ブタに食わせとけ!」
「今時デスメタルに硬派性を感じるってのは、本棚の目立つ場所に「地獄の辞典」を並べるのと同じくらい格好悪い事だと思うんすよ。」
「何故ベノム?現世とは没交渉の一枚」
「あたしこの車、晴海の催事場え見たことある…」
「あたしは小学館のコロタン文庫で」
第4話
「世界のどこかにあるという回転しない寿司屋へ!」(BGM;ガンダーラ)
「所持金700ペリカ」
「実は私ずっと夜尿症が治らなくて」 「うわーダサー」
「赤木さん、私怖い!」 「マグマグ人?」
「好きなドラマーはブライアン・ダウニー 好きな呪文はザラキ 嫌いなものはお前のような女です」
「木戸草介は後に述懐す」
「早くレポート仕上げねーと」
「バローネ、このイタ公!」
最終話
「誰が言い訳しろつったよ?」
「みなさんありがとう 土佐の黒潮に揉まれて巨乳になって帰ってきます」
「うわーーん赤木さーーん」
「♪あなたーの胸で泣かせて欲しいー」
「これで飯でも食てやー」(←ウルヴァリン) 「えっ1万円も?」
「……がんばんな…」
「ぶわっはっはっはっは」
「♪君の名を呼ぶときは…」
「危険って何がですカー!?」
「その後、それなりに幸せになったという」
…不思議だ。当時確かにいろいろ思うところもあったしそれなりに感動もしたはずなのに、思い出されるのはどうでもいいシーンやデティールばかりである。というか上のセリフだけ見たらどんな漫画かさっぱりわからん。
フラフラしているようで生活臭く、何も考えてなさそうでその実ひたむきでもあり、永遠に続くような時も「おひっこし」と共に終わりを告げる。この底が浅いのか深いのか、大事な何かを学べたのかそうでないのかも良く分からんが妙に楽しい読後感は、しかしそれゆえにマニアックなデティールと共に記憶に残ることとなった。いまだ自身の大学生活というものを人生においてどう位置づけるべきか分からぬわが身なればこそ、かもしれないけれど。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-03-24 23:41:47] [修正:2010-03-24 23:41:47] [このレビューのURL]
7点 芋虫
原作:江戸川乱歩、作画&脚色:丸尾末広。前作「パノラマ島綺譚」に続く至高にして(悪)夢のコラポレーション第2弾である。前作が手塚治虫文化省を受賞するなど反響も大きく完成度も高かったので、大きな期待と安心感を持って本作には接することができた。
まず一つ言えるのは、本作「芋虫」は前作「パノラマ島」よりもはるかに丸尾末広の持ち味…大正昭和風味の残虐猟奇趣味が発揮できているという点だ。おそらく昔からの熱心な丸尾ファンには「芋虫」の方が肌に合うと思われる。
物語の舞台は大正期の軍国時代の日本。大正というと「サクラ大戦」や「大正野球娘」のような華やかなイメージの作品が多いが、一方本作はというと…。戦場で四肢と言葉を失い物言わぬ肉塊となった軍人とそれを看護する妻。あてがわれた屋敷の離れを舞台に、世間的には「名誉の軍人」と「夫に尽くす良妻」である二人の、その実いびつで倒錯した愛憎模様が描かれる。もうこの舞台設定からして丸尾末広のためにあるような作品といえる。モダンと華やかさの影に咲く、腐臭を放つ奇形花の妖気。
まさに水を得た魚、羽を得た芋虫のように丸尾末広はこちらの期待に応えるべく素晴らしい仕事振りを発揮している。短編である原作を肉付けするために様々な小話も盛り込まれ、浅草十二階や仁丹の絵看板などの小道具にも気が配られている。
何より圧巻なのはやはり悪夢のように淫靡な”夫婦生活”のシーンで、奇形の芋虫とそれを弄びまた弄ばれる中年女の濃厚な絡みから、丸尾末広言うところの「前近代的湿潤」、日本的なじめっと湿度のある狂気がページを通り越して読者の顔面にこびりついてくるような錯覚すら覚えさせる。体液や汚物のすえた匂いまで立ち上って来そうなその描写力は凄まじく、特に第2話後半で憔悴しきった妻がさいなまれる悪夢のシーン(奇形、死体、毒虫、男性器などのおぞましいイメージの集積)を見た日には…。これぞ江戸川乱歩、これぞ丸尾末広であろう。
が、本作を丸尾末広や江戸川乱歩ファン以外の読者に広く勧められるかというと、なかなかそうも言い切れないのが歯がゆい。前作「パノラマ島」と比べてもエログロ描写が上記のとおり段違いに上がっているため、耐性のない人に見せたら人間性を疑われることになるだろう。
江戸川x丸尾のコラボをもっと読みたい自分としては本作も商業的に成功して欲しいと思っているが、文庫版で30ページに満たぬ原作を4話構成にまでカルピスのように水増し・過剰装飾した印象はぬぐえず、それがハードカバー1200円(税抜)というのもやや疑問が残るところである。これであれば、例えば芋虫以外にも手ごろな江戸川乱歩の短編を漫画化して単行本に収めてくれた方が良かったと思う。
何より残念だったのは、これは別に誰が悪いのでも無いが、既に「パノラマ島綺譚」で江戸川乱歩x丸尾末広という究極のタッグの完成を目撃してしまっていた為、本作を読んだ時も信頼感に似た安心を覚えこそすれ、前作を書店で偶然発見した時ほどの衝撃を受けることは無かった。今後もこのコラボは続けて欲しいと心から願うが(個人的には「蟲」とかを是非)、初見の悪夢を上回る悪夢を生み出すハードルはどんどん高くなっていくのだろう。夜の夢のごと、まことに歯がゆい。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-03-22 14:43:51] [修正:2010-03-23 23:14:53] [このレビューのURL]
7点 バオー来訪者
少年マンガ史上の唯一無二の天才、荒木飛呂彦先生の代表作と言えばやはりみんな大好き「ジョジョの奇妙な冒険」だが、その個性的すぎる作風が仇となって一見さんにはやや敷居の高い作品となってしまっている部分があるのは否めないだろう。むろん第一部から順を追って読んでいけばいいだけの話だが、20年来に及ぶ長大なボリュームを前に尻込みする人も多いのではないか。
そんな場合に荒木入門として真っ先におすすめしたいのが本作「バオー来訪者」である。すでにさんざん言われてきた事だが、
・正統派で感情移入のしやすい主人公と物語展開。
・一方で特異なキャラクターデザインやセリフ回しなどの、作者ならではの無二の個性も味わえる。
・何より幸か不幸か単行本2巻足らずのボリュームの為に読みやすく、かつ物語的にもきれいにまとまっている。
などの理由のおかげで、荒木初心者にもある程度安心してお勧めしやすい作品には仕上がっている。
しかしッ、短かろうと読みやすかろうと荒木は荒木、上記のような理由だけで本作の魅力を語りきれるとは無論思っていないッ!個人的に本作に強く惹かれたのは、本作が「仮面ライダー」に代表される”異形者”としてのヒーローの格好良さと悲しみを、実にスマートに継承していたからである。
「悪の秘密組織の人体実験により誕生した悲劇の改造人間が悪と戦う」という仮面ライダー以来の伝統を色濃く受け継ぐ本作だが、荒木飛呂彦はそこに様々なSF的意匠をふんだんに盛り込むことでそんなヒーロー像を見事に描き直してみせた。(本作が連載されていた80年代中期、仮面ライダーシリーズは休止状態だった。)
生物兵器を体内に寄生させ、それの放つ分泌液によって促される”変身”の原理。そして変身を「武装化現象(アームド・フェノメノン)」と呼称するこのセンス。これらに端的に表れているSFマインドが本作を単なる「北斗の拳もどき」以上の作品に仕上げており、変身ヒーローに付いて回るある種の野暮ったさを見事に解消している。一方で、不気味な寄生生物「バオー虫」にも見られるように、バオーは格好良さと不気味さの同居したキャラでもあり、安らぎの中にもどこか悲しみの残る最終回の余韻と併せて、石ノ森章太郎以来の「悲しき異形者としてのヒーロー」の魅力を再確認する事もできる。
また注目すべきはバオーのキャラクターデザインである。バオーはしつこく語ってきたように”変身”するヒーローだが、顔や皮膚が分泌液の作用で異形と化す一方、服装は変身前の少年、橋沢育朗の普段着のままなのである。優れたデザインのおかげで違和感なく仕上がっているが、仮面ライダーなどとの一番の違いはそこだろう。昔のヒーローとは特殊なコスチュームを身にまとったり巨大化したりするものだったが、近年はどこにでもいそうな普通の少年少女が、普段着のまま超能力を駆使したりして戦う作品の方が少年誌には多い。「ジョジョ」の波紋やスタンドもそんな系譜に属するが、バオーのデザインにはそんな新旧のヒーロー像の混交が見て取れる。そういう面からも興味深い作品ではある。
前述のSF的意匠や作者特有のセンスが当時の大多数の読者には受け入れられにくかったのか、本作は短期間で連載を終えた。しかしその個性ゆえに少なからぬ熱狂的なファンも獲得し、それが後のジョジョ人気や現在の「能力系バトル漫画」の人気にも連なっていく事となった。
わずか2巻たらずのボリュームの中に、実に様々な魅力の凝集した豊穣で味わい深い一作である。魔人ウォーケンのように明らかにどこかの漫画キャラのそっくりさんも出てくるが、現在「唯一無二の孤高の天才」の地位を確立し、他の漫画でもさんざんネタにされたりパロディされたりする荒木先生も、若い頃は他作品のマネをしていたというのも微笑ましい話であるw
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-03-04 00:59:53] [修正:2010-03-04 23:14:03] [このレビューのURL]
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