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悠久なる時を旅する、魔性なるバンパネラ達の物語


作品そのものから漂ってくる気品さ。
漫画に階級があれば間違いなくこの作品は貴族の地位。
キャラ達が、雰囲気が、構成が、圧倒的で絶対的な気高さを誇っている。
我々がこの作品に評価を下すというより、むしろこの作品が読み手の品格を試しているように感じてしまう…

萩尾望都が若くして生みだしたこの作品は、間違いなくある種の傑作である。先生曰く、この作品は(主に女性)キャラに様々な時代の「衣装」を着せたくて作った作品だそうで。それだけのきっかけでこれほどの作品を生み出すとは…。
損なこの作品、別段度肝を抜かれるような展開があるわけでもないが、この作品が持つ「雰囲気」はもはや他の漫画とは比べ物にならない強大なインパクトをもっている。この有無を言わせぬ絶対的な雰囲気が、多くの漫画家・作家だけでなく映画・演劇界にも影響を与えたというのも納得。
ただ、自分程度の品格では、この濃すぎる作品に慣れるまでだいぶ時間がかかり、軽い気持ちでは読み進められなかった。

竹宮先生の「地球へ…」とともに少年愛を描いたこの作品は、少女漫画の歴史を変えたとまで言われる。それは間違いないと思うが、少女向けと思って手を出さない方が良い。
主人公が少年である二つの作品は、かたや宇宙を、かたや時間を旅する物語だ。
広大な宇宙を舞台とする「地球へ…」は夢見る子供たちへ、悠久なる時間の流れを耽美に描いた「ポーの一族」は長い人生経験を経た大人の方が味わえるだろう。

不老だが不死ではないバンパネラは、ただ生活をしているだけでも、吸血鬼というだけで命を狙われる。
優美な生活を送っているかのように見える彼らバンパネラの生活は、常に死と隣り合わせの血にまみれたものなのだ。しかし、優雅さと残酷さが奏でるハーモニーは、あまりにも透きとおっていて美しい。

エドガー達バンパネラが悠久の時を旅するこの作品。この作品自体も、萩尾望都が命を吹き込んだ瞬間からバンパネラと化し、何世代にも渡る人々の中を旅し、読み継がれていくのだろう。
『「不朽」の名作』の名の下に…。

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[投稿:2010-06-11 02:31:16] [修正:2011-07-04 02:05:02]