「十歩神拳」さんのページ

総レビュー数: 76レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年11月30日

(激しくネタバレしていますので、未読の方は読まれない方が良いと思います。)


主人公のロゼットが前向きで逞しいので、同じ作者の「ワールドエンブリオ」と比べると楽しんで読めました。


新装版の作者コメントで「蛇足」扱いされていたエピローグですが、個人的には有ってよかったのだろうと思います。

今までどんな辛いことがあっても決して足を止めず走り続けていたロゼットが、最終決戦のあと年月を経て心身が弱っていき、それでも気丈に振舞っていたのに最後の最後で孤独な「死」に直面した時の姿は見ていて辛かったです。
絶望と孤独のあまり、今までのロゼット像からかけ離れた弱々しい姿をあらわにした時は本当に切なくなりました。
そして、ほんの少しの救いでロゼットが笑顔になるシーンでは感動もしてしまいました。

苦難ばかりである、最終決戦後のロゼットの決末をうやむやにせずこのエピローグをわざわざ描き足した作者の思い切りは、讃えるべきだと私は思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-26 12:03:16] [修正:2010-04-26 12:03:16] [このレビューのURL]

1年に10週程度、それもネームのような状態で掲載しても許される、なんともわがままな作品。

もちろんその態度は多くの読者から批判のタネにされているのですが、それでも決して打ち切られることはなく、新刊が出ればジャンプコミックスの中でも最高クラスの売上をたたき出す規格外タイトル。

このような状況が持続している理由はもちろん「とにかく面白いから」の一言に尽きるのでしょう。


私の好きな漫画家さんが以前、「ネームだけ見ても面白い漫画だってある」というようなことを言っていましたが、ハンターハンターにおいて作画が云々という問題は、少なくとも作品を楽しむ上ではそれほど大きなことではないのです。
たとえそれが誠意の感じない、手を抜いて乱雑に描かれたもののように見えても、その演出や構図は他の漫画家が頭をひねってようやく創り上げたものより遥かに洗練されているのです。
ストーリーに関しても同様のことが言えると思います。


これでは毎週真面目に全力で連載している漫画家が馬鹿みたいに見えてしまいますが、残念ながら並の作者が1年かけて紡いだ物語より、富樫先生が数週掲載したぶつ切りのハンターハンターの方が読者たちの心を掴んでしまっているのです。

ジャンプにおいてこのスタンスが許される程圧倒的な能力を持つ富樫先生は、正しく「天才」と呼べる漫画家でしょう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-26 11:24:25] [修正:2010-04-26 11:24:25] [このレビューのURL]

通常、アニメと漫画の2メディアで同時期に展開される作品(特にロボットアニメに多い)は、ダイナミックシリーズ等の例外はあるものの基本的にはあくまでアニメ版が原作であり、漫画版は適当な漫画家に執筆させる場合が多いです。

そのため、漫画版はアニメ版と比べ絵が全く違ったり、ストーリーや登場人物も大きく異なってしまう事が多くなるため、熱心なファンからは稀にオリジナルであるアニメ版と比較され、同人誌と大差ないような扱いを受けてしまうことさえありました。

しかし本作の作者である貞本義行は、自身がアニメ版「エヴァンゲリオン」制作群の中核としてキャラクターデザインを手がけているため、漫画版もアニメ版と同格の一つの「オリジナル」としての地位を確立しています。



本作は他のメディアミックス作品と異なり、アニメ版のイメージとかけ離れないように基本的にはアニメ版と同じプロットで物語は進行します。
しかしアニメ版と大きく異なる点は、シンジの視点を多く取り入れている点です。また、他のキャラクターの内面の描写もアニメ版と比較して随分多くなっている点が漫画版の特徴と言えるでしょう。

そのためアニメ版よりは戦闘シーンの比重が少なくなり、淡々とした印象は受けるものの、逆にアニメ版で妙なところばかりくどく強調された割には細かいところまでフォローされなかった心理描写は充実し、キャラクターの言動、行動が理解しやすく違和感が少なくなっています。


多分貞本先生は、ゆっくり時間をかけられる分アニメ版で少し乱暴だった部分を丁寧に補完しているのではないでしょうか。

「エヴァンゲリオン」はアニメ版と漫画版が相互に足りない部分を補完し合って初めて完成する物語だと思います。



ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-09 12:09:45] [修正:2010-04-09 12:11:48] [このレビューのURL]

残念なことに、私は歴史には非常に疎くて、あまり関心もありません。

この作品も、歴史物であるというだけで読み始めるまでにためらってしまいましたし、読了後も「続きが気になって仕方ない」というような禁断症状は今のところはありません。

しかし読み始めたらズルズルと読み進めてしまうし、すごい集中して読めてしまいました。

その理由はやはり岩明先生の「人間」の描き方が上手で、心奪われてしまうからなのでしょう。


「寄生獣」でもパッと見の印象とは裏腹にその神髄がアクションや戦闘ではなく「人間(あるいは化物)」であったように、本作も私のような半端な読者は歴史物という形式で描かれた「人間の物語」として楽しめられればいいかなと個人的には思います。
それでもとても面白く読めました。


歴史物としての特性や魅力を十分に味わえないのは、おそらく相当勿体ないことなのでしょうが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-07 15:16:40] [修正:2010-04-07 15:35:45] [このレビューのURL]

笑って泣ける名作だと思います。個人的にはソドム兄弟のエピソードが好きです。
原作では各ストーリー終了後のエピローグが1ページくらいで終わるため、アニメ版と比較して余韻がないのが若干残念なところ。


ドラゴンボール以降のバトル漫画では気功波や衝撃波の類の技が氾濫している中、この作品では基本的には梁師範以外は気を使わないことにより、梁師範の活躍するシーンそのものを作品全体のアクセントとして上手く機能しているように思いました。

また、素手でも梁師範をさらに上回る強さを持つことで、ターちゃんの規格外っぷりを見事に表現しています。


キャラクターによって戦闘態勢の構えやモーションが異なることや、きっちりと役割分担されたキャラ付けからも、キャラクターそれぞれの個性を出すための細やかな配慮が感じられるため見ていて楽しいです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-11-30 11:34:47] [修正:2010-04-07 14:54:06] [このレビューのURL]

とにかく読みづらいです。
絵が非常にゴチャゴチャしています。

それも、マキシマムと違い単純な動作のアクションシーンですら一読しただけではわかりません。
おそらく、無理をしてまで格好いいポージングで描こうとしたためだと思います。

しかしその姿勢があったからこそ、「マキシマム」の革命的なアクションシーンが誕生したのではないでしょうか。

また、このころから既に登場人物や武器のデザイン、世界観、演出、画風等のさまざまな面で独創的なセンスと可能性が輝きを放っています。


そして、黒田洋介氏を筆頭とした想像力豊かでなお且つ優れた感性を持つクリエーターの方々が、格好良くてわかりやすいアニメ版「トライガン」を創り出したことで、多くの人にトライガンの魅力が伝わり、トライガンシリーズは名作としての地位を築くことが出来たのでしょう。

それに、トライガンシリーズは様々な面において多数の漫画やアニメ作品に大きな影響も与えています。


トライガンシリーズや内藤先生の漫画家としての礎なったこと、業界に与えた影響等を考慮すれば、この作品の存在意義は点数以上に大きなものがあると私は思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-07 14:33:00] [修正:2010-04-07 14:35:32] [このレビューのURL]

確かに100巻を越したあたり(個人的には120巻前後)からはそれ以前の勢いもなく衰えを感じ、かなり微妙なエピソードが多くなったように思えます。


しかし考えてみてください。100巻までは多くの人が「面白い」と認める作品を、それもギャグ漫画で1回も休載せず創り続けたのです。これはもはや奇跡的な神業と呼べるのではないでしょうか。そんなことができる漫画家はこの人以外あり得ないと思います。その偉業は揺るぎようのない事実なのです。

そして作品初期のクオリティが尋常じゃありません。当時のギャグ漫画であのセンス。今読んでも爆笑できる過激なギャグ。毎週のように乗り物や武器などの数々のメカが登場し、それを見事に描き上げる知識と画力。もはや一介のギャグ漫画のレベルとは思えません。

そして何より「両津勘吉」というモンスターポリスを生み出した功績。


思い入れ補正と言われればそれまでですが、全盛期のこち亀に並ぶ衝撃を与えてくれるギャグ漫画に未だ出会っていない以上、この作品にこれ以上低い評価をつけることは私にはできません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-12 11:22:25] [修正:2010-04-07 14:34:59] [このレビューのURL]

7点 ONE PIECE

10年以上の長期連載にも関わらず、いまだ良質のストーリーを保っているのは流石。

しかし最近の尾田栄一郎は「静と動のシチュエーション」を書き分けられなくなったように感じるのは私だけでしょうか。

空島編以降は日常場面も戦闘場面もテンションが殆ど変わらず、常にやたらとハイテンションで、「動のシチュエーション」一辺倒な気がします。

また、前半と比べ絵の書き込み量が増えたのはいいですが、その結果背景とキャラが同化してしまったり、見せ(魅せ)ゴマのインパクトが普段のコマと大して変わらなくなったり、前半に度々見られた渋みのある演出が消えたりと、一つの場面を際立たせるスキルも失われてしまった気もします。

結果的に全体のメリハリが消え、折角のストーリーの面白さを著しく損なわせているような印象を受けました。

その辺が、前半と比べると後半がつまらなく感じてしまう理由なのではないでしょうか。


<追記>
ジャンプ本誌で2010年に入ってからのストーリー(エース救出編の後半)の、最終決戦でもないのに毎週予想のできない超展開が次々とたたみ掛ける様子は、過去のどんな漫画でも味わったことのない壮絶さでした。

普通なら、漫画において読者はたとえものすごい展開を目の当たりにしたところで、さらにもうひと押しを望むことが多く、一応の満足は出来ても多少は燃焼しきれずに終わる部分があるはずです。

しかし今回のワンピースは違います。恐らく多くの読者は「ここまでやるか」と感じた方が多いのではないでしょうか(その展開が好みか否かは別として)。

国民的な超有名タイトルでありながら保身に走らず、これだけの手札を数週の間に出し惜しみなく、絶妙なタイミングで切ることのできる大胆さとセンスを持った漫画家は恐らく他にいないと思います。

ここ数週で読者に焼き付けた興奮と衝撃は紛れもなく漫画史に残る程だったと思うので+1点。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2009-11-30 11:44:58] [修正:2010-04-07 11:24:34] [このレビューのURL]