「columbo87」さんのページ

総レビュー数: 284レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年04月28日

最も偉大なヒーローの死。余りにも突然に訪れたそれは、先の内乱で彼が犯した過ちの清算としては余りにも重すぎた。
一体誰が、何のために。彼の死を悼むヒーローは多かれど内乱の爪痕は深く、協力して犯人を探すことさえも出来ない。アメリカが理想とする精神の体現者だったキャプテン・アメリカ、彼が失われたことはヒーロー全体の凋落をも意味したのか。彼の精神を受け継げる人物は、希望はどこにあるのか。

かつてのキャプテン・アメリカの相棒であり、洗脳されテロリスト「ウィンターソルジャー」として暗躍していたバッキー。暗い過去の為に孤立していた彼だけが、キャプテンの死に際して行動を起こすことができた。
政府機関シールドからキャプテンの象徴である盾を奪還した彼は、更には暗殺犯と目されるレッドスカル一味とシールドが関係していることを突き止める。
一方でキャプテンの恋人シャロンは、ファルコンと共にバッキーの後を追っていた。仇敵ドクターファウスタスの洗脳を受け、罪の記憶に精神の安定を失いつつある彼女がレッドスカルの陰謀を知った時、もはや事態は取り返しのつかない段階に突入していた。


本書はその名の通り、キャプテン・アメリカの死がテーマとなったエピソードである。キャプテンの死の謎を探りつつ、彼の過去が回想される。その高潔な生き様から、そしてヒーロー達の感傷を通じて、人々の言葉を通じて、キャプテン・アメリカという人物の偉大さと喪失の痛みを読者は分かち合うことができる。
アメリカンドリームは死んだ、ではその理想を受け継ぐのは一体?
落ちた英雄の復活から繋がる新生キャプテンの誕生という一種ご都合主義的な展開ではあるが、丁寧で説得力のある心理描写と多くの試練が用意されており、アメコミなぞ子供向けという思いを払拭する、ハードかつ胸の躍る内容になっている。
メインキャラクターの死というのも余りお目にかからない話だが、その引き継ぎをするのがメインの話、というのは更に珍しいように思う。しかも主役のバッキーはテロリストだった過去を持つ嫌われ者というから、これはちょっとした挑戦ではないだろうか。
そして、この挑戦は成功したと思う。ダーティーな要素を持ち味として活かし、かつてはサイドキック(バットマンでいうところのロビン)にすぎなかった少年を、野性的で魅力溢れるキャラクターに成長させているのだから。流石話題のエド・ブルベイカーといったところだ。
エピソード自体は続巻の「バーデン・オブ・ドリーム」が一応の完結篇であるが、所詮導入部分と侮るなかれ。広げられた風呂敷に辟易する暇もなく繰り広げられるスパイ・アクションは圧巻の一言であるし、先のシビルウォーで一躍嫌われ者になったトニーがバッキーに叩きのめされたりと、読者のフラストレーションを解消してくれる場面もある。


読者はきっと、今はまだ復讐の怒りに燃えるバッキーがこれからどう成長するのかを見てみたくなるだろう。つまりバーデン・オブ・ドリームも買わなきゃということである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-01-05 04:00:09] [修正:2012-01-05 04:16:08] [このレビューのURL]

ラストエピソードと冠して出された邦訳集。
スーパーマンという作品の一時代を締めくくるべく作られたのが「何がマンオブトゥモローニ起こったのか」
物語はスーパーマンの死についての回想として語られる。そのため表現としては全体的に落ち着いているが、既に決定されている終末への悲しみやスーパーマンというキャラクターに対する慈しみの視線が感じられ、まさに時代の終焉に相応しい物語となっている。またこれは同時に新たな時代の始まりの物語でもある。彼の物語が決して失なわれるわけではなく、新たな希望が同時に与えらえれる。時代の移り変わり、少年期から青年期への転換といった作品そのものに対して、あるいは読者に対してのメッセージがこめられており、切なくもありまた楽しさも感じられる見事な物となっている。
惜しくらむは、この作品を同時代に読めなかったことか。映画やドラマで知っていて...というくらいでは受け取りきれないメッセージがこめられており、私にできるのはその一端に触れることのみなのだと痛感させられるのが悲しい。
とはいえ同じくスーパーマンの死についてのエピソードである中公アメコミの「スーパーマンの最後」と比べると多分に共感しうる要素があるのでそこまでスーパーマンという作品に造詣が深くなくとも満足して読める物だと思う。

他収録作品について
「ジャングル・ライン」
スワンプシングとの共演、狂気のスーパーマンの顔が怖い。

「他に何を望もう」
望み通りの夢を見せる花の話。スーパーマン、バットマンらのwhat if的世界が垣間見れて面白い。やっぱデイブ・ギボンズのアートはいいね!と思った。


点数内訳は順に7、5、6

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-11 11:20:50] [修正:2011-11-11 11:20:50] [このレビューのURL]

ジョーカーのオリジンの一つとして最近描かれたもの。恐らく新規の呼び込みなのかな?とても読みやすい。
やはりジョーカーというキャラクターはバットマンがいてこそ、あるいは逆もまたそうなのだが、光と影のようなものなのだというのが共通認識としてちゃんと存在している。こういう換骨奪胎された作品の中にそれを実感できるとなんだか感慨深い。

コメディアンでもない寡黙なジャックからジョーカーへと変貌する場面にはちょっと戸惑うが、バットマンとの関係性を非常に判り安く、それでいて固定観念にあまり囚われずに表現している。恐らく長年のファンにも新解釈として面白く読めるんじゃないかと思う。
微妙にハーレイとかスケアクロウになる前の人達も出てきたりする。
「キリングジョーク」と違ってバットマンの側にも焦点が置かれており、「マッドメン」という複数系なタイトルに即した内容となっていて良し。やっぱバットマンは狂人ですよ、ジャックの視点からみるとなおさら。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-15 17:22:10] [修正:2011-11-02 16:36:48] [このレビューのURL]

非常に繊細な中学生像を描いており、一つ一つの問題はくだらないのだが、ある部分で共感できてしまうので面白い。
鈴木先生というキャラクターは名前の通り没個性的な、しかし「良きスタンダード」として理想とされる教師といった存在となっており感情移入がし易い。
性問題、親子、人間関係も真っ向から冷静な視点で見据え、それぞれの登場人物の視点に立たせ心の内を覗かせる。同時に読者にもある内面の痛い部分にもメスがいれられるのである。このあたりの引き込ませる描写力は見事としか言いようがない。作品全体を通して感じられる部分である。


魅力的なキャラクタが多い鈴木先生だが、一方でその扱い方はあまり好みではなかった。顔の適当さで"良い"人間と"悪い"人間が区別できるのは分かり易いし、まぁ有りだとは思うのだが、あまりにも差が酷い。
具体的には椿とか、足子先生とかなのだが、なんのフォローも無く理不尽に劣った人間として描かれるのは不快であった(竹地あたり人間的に姑息な奴はいてもまあいいかと思えるが)。足子先生に関しては山センのエピソードでやったことを繰り返しただけでも疑問だったのだが、作者でも手がつけられない程暴走していたのに何故復帰させたのかがさっぱりわからなかった。
 そういえば、「鈴木先生」には狂人レベルまでいってしまう人物がまま出てきたが、一般的に見てそこまで悪人ではない、普通の人間がちょっとした間違いで道を踏み外してしまうパターンが多かった。この過程はリアリティがあって良いのだが、実際の人物の描き方があまりにも漫画的すぎて非現実的なものに映ってしまっていたのは残念な所、漫画的表現の使い方が巧くなっているだけに生じた歪のように思える。

 漫画作品としては、最初が良かっただけに後半には不満が残った。
「掃除当番」のエピソードがピンと来なかった(受け手の想像力の欠如ということではなく、「鈴木先生」の物語としてこれには違和感があった)ことや、盛り上がるはずの鈴木裁判が予定調和的で少し期待外れだったのもあるが、とにかく後半は文字の多さが苦痛だった。ゴー宣とかより多いんじゃないかと思えるほどの文字の羅列、もはや漫画ではない。しかもそれが、やられ役が語った論理を鈴木先生か誰かしらが論破するという形式としてパターン化されていて、先が見えているのに読まなければいけないのも苦痛であった。

結構クサしまくってしまったが、まぁ、不満があったにも拘らず引きつけて読ませる吸引力、作品の持つエネルギーがすごいってことで…

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-10-24 17:58:30] [修正:2011-10-24 18:02:00] [このレビューのURL]

マーベル邦訳でなかなか「大当たり」に出会わないなと思うこの頃、そういえばデアデビルさんなんてDCキャラっぽいし行けるかもと思い購入。フランク・ミラー原作デビッド・マズッケリ作画といえばバットマン:イヤーワンのコンビ、これなら外れはない!

物語はいきなりデアデビル失墜から始まるので面食らうかもしれないが、映画を見てればまず問題ない程度。
キングピンの策略によって全てを失い、どん底に突き落とされるマット・マードック(デアデビル)と、ドラッグほしさに彼を売ったかつての恋人カレン。二人の復活が描かれる。

一度はバラバラになった友人たち、それぞれの戦いやマードックとの絆が熱い!
生まれた場所にたどり着き、己のアイデンティティーを再認識するマードック、恐れを知らない男への復活!古典的だが熱い!
そしてカレンもまた許され救われる(この辺はミラーの描く女性像ってワンパターンだなとか思いつつ)。
これまで一緒に堪え忍んできた読者に見せつけてくれるであろう逆転劇への期待が高まる!

・・・しかしこのあとの展開はちょっと「どうして?」という感じ。
暗い時期が長くて人気が出なかったのか?明らかなテコ入れ、あのキャラ出てくる必然性があったの?DKRでスーパーマンが出てきたのとはワケが違うぞこりゃ。
そして幕切れもちょっと不満。なので6点くらいか。

ミラーでも結構制約されんのかな、マーベル作品はもういいかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-15 17:37:42] [修正:2011-10-16 02:47:06] [このレビューのURL]

あのジャックカービーとスタンリーの伝説的コンビの作品が読めるなんて!といわれてもよくわからない。60年代のソーの外伝的作品集。
北欧神話ベースのアメコミで、オーディンの活躍からソーの少年期、仲間たちとの冒険劇を多数収録。予備知識も要らずにさくさく読めるのは良し。
イメージとしては学校の図書館にあった「漫画で見る古事記」みたいな感じで、好きなジャンルなのでよかった。
アメコミの資料的価値もでかい。

「キング」と呼ばれるカービーのアートを楽しむものだのでアメコミファン以外には需要無さそう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-15 17:39:12] [修正:2011-10-15 17:39:12] [このレビューのURL]

エルフやら信長やらがでてくるよ!

ヒラコーはTRPG好きだったと思うが、これは脳内TRPGを漫画にしてるのではないかと思う。世界観の融合が非常にゲーム的。

これならネタにはしばらく困らないだろう。二巻はおおむね良し。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-23 22:56:13] [修正:2011-10-13 17:30:48] [このレビューのURL]

スーパーヒーローに憧れるオタクが本当にコスチュームを買って夜間徘徊するという・・・
このあたり、子供のころヒーローごっこしてたものとしては胸をかきむしられる。

設定としてはそれほどぶっ飛んだものではなく、日本人の感覚でも結構すんなりと読めるのでオススメ。
というか、歴史の長いシリーズものじゃなくて独立した作品だからメチャクチャ読みやすいっていうのがデカイw


途中からスーパー父娘が登場して雰囲気が変わりますが、全編に渡り徹底してリアリズムを追求した(この内容でリアリズムどうこういうのも気が引けるが、話の筋は一貫していると思う)内容になっているので、爽快なヒーローものを期待しちゃうと非常に後味が悪いです。
ただこの作品がどういう方向を目指しているかは最初の導入で十分に提示されるのでそんなに混乱することはないんじゃないかと・・・



あと、映画と比較して見ると面白い。たぶんどっちから先にみても問題ない。
ぼかあ作品としては漫画の方が好みだが、細かい設定や心理、人間描写のリアリティは映画の方が勝ってるとか思ったりする。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-04 20:27:59] [修正:2011-10-04 20:27:59] [このレビューのURL]

点数のみ

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-20 22:01:34] [修正:2011-09-20 22:01:34] [このレビューのURL]

諸星先生はもともとどの作品もちょっとシュールギャグっぽくみえることがあったのですが、意識的にこういう物もかけたんだなーと思うと少し驚き。インタビューとかみると結構堅物なイメージがありましたので。
いつもの空恐ろしさを感じさせないナンセンスで、そこぬけに白けた面白さのある傑作だと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-09-20 21:58:03] [修正:2011-09-20 21:58:03] [このレビューのURL]