「頭突き串の寿司」さんのページ

総レビュー数: 99レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年09月14日

7点 ねじ式

この作品を初めて読んだのは或る大型中古本販売店で
何とは無しにつげ義春全集を手に取ったときだった
内容はとにかく不可解だがインパクトは絶大
それから少しして文庫版があるのを見つけたので思わず購入したのです

エンターテイメント性、メッセージ性 肩の力を抜いて読めるモノ続きが気になってつい何度も読み返すモノ
読んで感動したり自分も頑張ろうって思えたり
マンガというものには様々な面がある じゃあこれは?分類不能の理解不能どの面にも当てはまりそうにない
夢で見たことが元になっているという点では「夢十夜」のようであるし鉄路や機関車、狐のお面などからは「銀河鉄道の夜」が連想される
文学的といわれるのかもしれない

清水正氏の『つげ義春を読む』という本を一読したことがある
「ねじ式」についてのレビューはなんとも書くのが難しく以下氏の本からの受け売りになってしまいますがあしからず。
その本は「ねじ式」を1コマずつ考察していくもので主人公はオイディプス的野望の実現を図ろうとしているという論を中心として書かれていた(オイディプス的野望とは父を自らの手で殺し、実の母と交わろうとすることらしい)
つげに言わせればデタラメな思い付きの創作がほとんどらしいのだが清水氏の文には明らかに考えすぎな解釈だと思われるものも含まれていた
しかしひとつだけ面白いと思ったのはメメクラゲについての話だった
生原稿の段階では「××クラゲ」だったものを「メメクラゲ」に誤植したことで「女々」つまり女性的であることを象徴するものに変わったというのだ
ここで真相を明かしておくと実はつげは校正の段階でこのミスに気付いていたらしいのだ
編集者が××をメメだとした勘違いを「そっちの方が作品に合っている」と校正ミスを新しく作品の力にしてしまったという話だ

つげが心理的な分析を嫌うように
たしかにこの作品の前では「難解である」とか「これはこういうことを暗示していて」みたいなことを語るのはナンセンスなのだろう
このテの漫画はやったもん勝ちみたいなとこがあるのかもしれないがとにかく「ねじ式」が自分に与えた漫画としての印象は大きいと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-03-29 16:46:46] [修正:2012-03-29 16:51:24] [このレビューのURL]

剣牙虎や龍、導術などのファンタジー要素込みの架空戦記マンガ。皇国=日本、帝国=西欧連合みたいな感じかな。1巻の時点で主人公・皇国サイドがかなりの劣勢であり、その息も詰まる戦闘描写にぐっと引き込まれた。

登場人物もひとり残らず魅力的で、とくに主人公・新城は指揮官としてのキレ者っぷりと、いかにも人間臭い自己嫌悪や戦への恐怖という二面が描かれていて、これがめちゃくちゃ良い。
戦場以外の人間関係でもしたたかに、しかし決して完璧な人間ではないからこそ、笹嶋言うところの「面白い友人」ができるのだろう。
そんな新城の活躍をもっと見ていたくもあったのだけど…。
単行本たった5巻ではあるがその密度は高い。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-09-12 23:19:56] [修正:2014-09-12 23:19:56] [このレビューのURL]

かつてテレビドラマのなかで「怪盗ワッツェル」を演じ人気を博した俳優も、今では落ちぶれ、詐欺師まがいのセールスマン。そこへ余命短い少女の命を救ってほしい、という依頼を受け「ワッツェル」の大ファンである少女の前で彼は再びヒーローを演じることになる。
イメージ療法・・・ワッツェルには少女が夢のなかで脳内腫瘍を倒していくその手助けをさせるという。
果たしてこのシナリオにはハッピーエンドが用意されているのか?というお話。

“The desire is different from believing it.”
話作りはすごい丁寧だし、 “信じる”ことについて一貫したテーマを描き切ってはいるんだけど、強く印象に残るものもなく、佳作止まり。
アオハルコミックスへの期待度が高いのでたまたま手に取ってはみたが、これを絶賛するのは作者買いしている層なのかなと思ったり。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-09-12 23:17:34] [修正:2014-09-12 23:17:34] [このレビューのURL]

新学期の朝、食パンくわえて遅刻遅刻〜と走り出した女子高生が曲がり角でイケメンの転校生と衝突!
・・・するはずが、できなかったことで世界の歯車が狂ってしまう、という青春SF。

キャラはほのぼのとしていて、SFではあるがサスペンス色は薄く読みやすい。
ただ、キャラの掘り下げがなかったのと、話にひねりもなかったのでちょっと退屈ではあった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-09-08 10:33:21] [修正:2014-09-08 10:33:21] [このレビューのURL]

ドラム缶に住んでる主人公・春子が町のみんなのお悩み相談に乗ったり乗らなかったりするお話。

春子のセリフがそもそも少なく、キャラ像がはっきりしない。
町の住人を出して群像劇っぽくしたかったのか、それとも春子がお悩みを解決していくのを描きたかったのか、全体の方向性もよく分からず。
打ち切りだったのかも知れないがなんか色々と説明不足。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-09-08 10:31:13] [修正:2014-09-08 10:31:13] [このレビューのURL]

女子高生三人組の日常モノ。
ボケとツッコミが結構はっきりしているので、いわゆる「きらら系」のグダグダ日常モノとは一線を画すのかな。(本作は四コマではないので比べる対象が違うかも?)
ただ、ボケとツッコミがはっきりしてるから面白いというわけではなくて…
基本的にバカキャラのバカ言動に頼っていて、ネタの振り幅がないといえばいいのかな…

ここまで「女子高生」「日常」の設定に忠実なのって意外と珍しい気がする。
登場人物は三人だけで、突飛なキャラもなければニッチな会話もない。
そこが長所でもあり、短所でもあるのだろう。

でも帯はちょっと豪華過ぎかなー。
中村明日美子、沙村広明、鶴田謙二の大絶賛(?)コメント付きなんだけど、この帯が表紙の半分以上を占めている。
これに騙された人は多そう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-03-02 22:58:06] [修正:2014-03-02 23:01:13] [このレビューのURL]

「不安の種」の作者の最新作。
「不安の種」はちょっと読んでみた限りではあまり怖くなかった。
で、今作を読んでみた。
あれ?これ怖くね…?

一話は4ページから10ページくらいの連作。
田舎の民間伝承「おぐしさま」についてオムニバス形式で語られていく。
必ずしも時系列に沿わないあたり、構成がうまい。
毎回怖いオチをつけてくるわけではなく緩急があるので、
ページをめくるたびにくるのか、こないのかでハラハラする。
2巻以降、話をどう展開し、まとめていくのか期待。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-03-02 23:00:12] [修正:2014-03-02 23:00:12] [このレビューのURL]

「点子はとりわけ駆け上がるのが得意だった」という独白から始まる表題作がお気に入り。

「珍奇・奇天烈 絶滅危惧種 僕の点子」
「僕がなんでも教えてやるさ カナをふろう 辞書をひこうーー」
「あたしのこれまでのボーイフレンド みんなテールランプ派だったの」
「あたしヘッドライトのほうが好き」
「そいで あなたのこたえ聞いて あたしあなたしかいないと思ったわ」

セリフがいちいちツボなんだよなあ。

ドラマみたいな展開に憧れる、独りよがりで愛おしい女の子が頭のなかで思い描いたような、そんなお話たちだ。
売野機子はその絵柄やキャラ造形から、"古き良き少女マンガ"として語られることが多いようだが80〜90年代の少女マンガというものに触れていない私からすると新鮮に感じる。
これってある種、普遍的だっていうことなのではないかな。
作風を古く似せてあるのに(わざわざ似せたわけではないかもしれないが)今の時代においても受け入れられる。
作者の絶妙な感性がなければ不可能なことだ。

収録されている短編には、百合やBL風味、SFっぽかったりするお話も。
本の装丁ひとつをとっても恐ろしいほどかわいい。
抱きしめたくなるような一作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-08-31 01:06:40] [修正:2013-08-31 01:08:34] [このレビューのURL]

幻の島を目指す海洋ロマン、古い家屋、飛行機。
宮崎駿が好きそうだよな。(いや実はジブリそんなに知らないけど…)
主人公の田舎臭さにもジブリっぽさがある、ように思うけど。(見当違いだったらごめんなさい)

相変わらずの画力で、読んでいるとなにもかも忘れて作品世界にトリップしている気分になる。
島の街並み、メカの細部、雲に映る飛行機の影、一コマ一コマに見入ってしまう。
そしてストーリーは続きが気になる王道展開。

こっからはちょっと批判…というか文句。
冒頭の数ページは雑誌掲載時カラーページだったのだろうが、ただでさえ寡作の鶴田氏なのだからそこは惜しまないで単行本でもカラーで再現してほしい。

あとオビに「何度でも、瑞々しい。」っていうアオリが入ってるんだけど…
何度でも、っていうのがちょっと皮肉っぽくて笑ってしまったw
アフタヌーンでちょこちょこ続きを描いていたが単行本として出るかは甚だ怪しい。
もう鶴田謙二は設定だけ変えて新しい女の子を描きまくればいいのでは?とさえ思ってしまう。
…いや、ダメか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-08-31 01:04:51] [修正:2013-08-31 01:04:51] [このレビューのURL]

ソ連を模した架空の国・アゲゾコ大公国の兵站軍を舞台にした物語。
主人公はデスクワークが得意な女性少尉で、「責任問題です!」が口癖のお硬いお役所人間。

前線では戦わず、物資の輸送や補給などの後方支援が任務の兵站軍を主役に据えたところに惹かれた。
コロコロしたかわいらしい絵柄も好み。

作者・速水螺旋人氏の"魂の祖国"であるロシア(ソ連)を舞台としながら、一見マニアックに見える兵站の仕事もコメディチックに描かれていて読みやすい。
しかし読み終わったところで「ふーんこういうのが好きなのね」という感想しか出てこない。
ミリオタ読者の支持は得られるかもしれないが、ミリオタへの入り口にはなりにくいといった感じ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-08-31 01:03:24] [修正:2013-08-31 01:03:24] [このレビューのURL]