「頭突き串の寿司」さんのページ

総レビュー数: 99レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年09月14日

出てくるのは元ヤクザ(会計担当)、2人のメイド(1人は片目が義眼、もう1人は身体中ツギハギという出で立ち)、姉妹の殺し屋、ホモの殺し屋。
ジャンキーな麻薬捜査官がいれば、ロボット刑事に義手の女殺人犯、少年探偵団まで。

この濃ゆくてエキセントリックな登場人物たちが繰り広げる群像劇
南国の島を舞台に登場人物それぞれの思いをのせて
物語はゆるりと進みながら、しかし確実に交錯していく。


BSとかでやってるヨーロッパの旅行番組とか(個人的に)好きなんだけど、
あれと同じ感覚で読めてしまう。
エキゾチシズム漂う癒しの空間
その中では淡々と人が死に、麻薬も横行する
さりげなく物語の核心に近づいていくようで
でも結局はなんでもないこの世界。
どこまでも雰囲気マンガのようでいるのに伏線を張ったストーリー展開は見もの。


喧騒から離れたくなったらこのマンガで旅行した気分を味わえる。
なんだろう…とても好きなんだよな。
もう言葉で説明できないけど琴線に触れた
どころかクリーンヒットな作品

エロもグロもゲロwも
不謹慎なネタからスリル シリアス バイオレンス ラブコメも
すべて可愛らしい絵柄でまとめられてしまうのは
道満作品の真骨頂といえる。

およそ2年ぶりに続巻が出ました!2巻ではさらに退場者が増えたり登場人物同士の関係を深く描いたり…
新キャラの「悪魔」も出てきてますます先の読めない展開に。
当初2巻完結の予定だったみたいだけど完結は次巻に持ち越しで、これはうれしい予定変更。
3巻も気長に待ちます…

ナイスレビュー: 2

[投稿:2012-06-26 19:08:37] [修正:2013-02-28 19:02:46] [このレビューのURL]

柔道選手の主人公・黒沢心はケガでその道を絶たれことにより出版社に就職、漫画雑誌編集部に配属される。体育会系らしく、持ち前のガッツと体力で漫画作りの仕事に奮闘していく…という、よくあるといえばよくある熱血仕事モノ。

新人漫画家の育成や、はたまた巨匠がスランプから脱するきっかけを作る。生き生きと、ときにオーバーに、日々の仕事に感動を覚える主人公のキャラには好感を持てる。
主人公は編集部の心であるが、書店員や製作所の社員、“消えた漫画家”の娘などマンガ作りの周りにいる人たちも描かれ、人間ドラマとしての側面も持つ。
そうしてたくさんの人たちの手を経てヒットは作られていくという事実。1巻ラストの「売れたんじゃない。俺たちが売ったんだよ!!」というセリフには震えた。
そしてなにより、この単行本自体の奥付にはスタッフや編集者だけでなく、装幀・販売担当・宣伝担当・制作担当の名前がクレジットされている。この一冊にたくさんの人の手が関わり、また逆にたくさんの人の人生を支えていることを実感できるのだ。

こういう裏方を描いた作品はどこまでいってもフィクションとして捉えられがちだが、業界とはそもそもマンガの題材にならない限り目につかないのだ、とも思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-09-08 10:37:26] [修正:2014-09-08 10:37:26] [このレビューのURL]

最初に断っておくと、自分は作者の自殺を知ったあとにこの作品を手に取った。(というか、自殺報道でこの作者を知った)
未完終了ながら多くの人が「読む価値がある」と評していたので気になったのだ。
そして結果から言うと、読む価値はあった。
ていうか、なんだこれ、めちゃくちゃ面白い。

まず今までに見たことのない題材。
「宗教」と聞くとなんだか怖いイメージがつきまとうがそれは本質を分かっていないがためなのかもしれない。
「みんなのせかいをよりよくするために」という大本は政治となんら変わらない。

その題材が決して出オチではなく、ちゃんと描き切れるだけの設定や考察がある。
学校のクラスというのは社会の縮図だ。その場所でクラスメイトをまとめるために、小さい組織から作り上げていく過程が面白い。
このあたりにはスクールカーストといった裏テーマもあるのかもしれない。

宗教勃興を企む主人公の言動が小4とは思えない…というのも分かるが、
宗教というものを無邪気に信じ、かつクラスのなかに上下関係が存在する、となるとたしかに年齢の設定が難しいよな。

・「宗教は必要か」という根本的な論争
・既存の宗教との共存(親が新宗教団体に入信している児童)
・異端の発生(宗派の分裂)
・教団の暴走(遠足中のバスジャック)
・生徒による教師の性的支配
などなど、2巻に収録されている今後のプロットを見る限り、このまま続けていればマンガ史に残る怪作になったのではないか。
なんにしても自殺はダメでしょ。残念としか言いようがない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-03-02 23:04:26] [修正:2014-03-03 00:17:11] [このレビューのURL]

5点 女の穴

タイトルや表紙から連想されるような安直な"エロ"ではなく、女性の"性"や"愛情"についての物語。
初期(表題作「女の穴」とか)では黒田硫黄に影響されたような絵を描いていたりする。

話自体は深くもなく、かといって軽くもない微妙としか言い様がない
この一冊だけをもって「21世紀ニューウェイブ」の文脈で語られるにはピンとこない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-04-03 17:08:30] [修正:2013-04-03 17:08:30] [このレビューのURL]

飛び方を忘れたペコ
ヒーローを見失ったスマイル
才能に悩むアクマ
勝ちを宿命付けられたドラゴン
報われないチャイナ
それぞれの心理が見事に伝わってくる。

チームスポーツの選手には分からないような個人スポーツとしての心理だ。

松本大洋の絵は独特。
普段は黒塗りの目がアップになるときとか鳥肌が立ってしまう。
試合のときのコマ割りや効果線、影の付け方だったり擬音にいたるまで
演出もすごい。
流れるようなコマの運びは映像を見ているよう。

ここに書くことじゃないけど、映画では窪塚洋介の演技がハマっていて
ペコの顔や特徴あるセリフもマッチしていた。
マンガ原作でも成功した作品のひとつだと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-03-29 18:34:32] [修正:2013-03-18 17:04:08] [このレビューのURL]

8点 予告犯

社会に潜む‘行き過ぎた行為で弱い立場の者から自尊心を奪う連中’に
正体不明の男が制裁を加えていく
それに同調するネットユーザーたち
かたや見えない相手を追う警察側

賛否両論を生む現代のテロリズム
あえて例えるならネット社会版デスノートといった感じか。
でもデスノのように追う側追われる側の頭脳戦という感じではないし、
やっぱり例えるのは少し違ったかも…


最初に絵についていうと、
連載環境が整っていなかったということもあり
雑誌掲載時にはやや淡白だった背景も
単行本だと加筆修正されているので問題なし。


一巻の最後にあたる7話を初めて読んだときの衝撃が忘れられない。
立場の弱い者は結束すれば力を発揮する
でもこの方法は正しいのか?
ほかのやり方はないのか?
‘正体不明のシンブンシ’を見ているとそんな疑問も浮かんでくる

何が正義で何が悪なのか?
たくさんの情報が錯綜し
取り上げられては捨てられていく今の情報消費社会
そのなかで答えを見つけることは叶わない。


普遍的なマンガって数あるわけではなく。
このマンガは社会で問題になってるあれやこれやをテーマにするような
これまた決してよくあるようなマンガではないわけだけど
そういうカウンター的な作品は、今、読むべき。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-05-24 19:11:31] [修正:2013-03-12 17:25:00] [このレビューのURL]

「ヴォイニッチホテル」で道満晴明の虜となり
「ぱら☆いぞ」に代表されるような、そっちの作品群も読み終えたころに‘IKKIで連載’
という吉報を聞くことになる。

ニッケルオデオンとはその昔アメリカにあった映画館のことらしい
映画好きな作者らしく短編映画の寄せ集めのような作品になった。

不条理な設定のなかでちょっとイイ話だったりちょっとホラーだったりするのは
作者の成人マンガにあるような感じなんだけど
8ページずつのショートショートはどれも小綺麗にまとまっていて
話の続きが読みたくなる終わり方をさせる。
読み切りショートに使うにはもったいない
でも語りすぎないくらいでちょうどいいそれぞれの話。


ネタが尽きないなあ…発想の奇抜さもあると思うけど
思い付いたシチュエーションをちょっぴり、がっつり幻想的にアレンジ
道満の手によって昇華されエンターテイメントに変わる。

とまあよく分からないままそれっぽいことを書いてみたけど
要はそれなりにメジャーな劇場(掲載誌)なんだから楽しめなくちゃいけないんだ。
わりと万人にオススメできると思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-07-18 18:25:49] [修正:2013-03-12 17:18:55] [このレビューのURL]

ドリフターズでヒラコーという人物を知った。

クロスオーバーというモチーフ自体はどこにでもあるもんなんですね。
小説映画ゲームから、あとアメコミには多いらしく。(アベンジャーズ大人気)
私としては某コーエーの某OROCHIを想起した。
歴史上の人物に加えてエルフゴブリンドラゴンまで出てくれば面白くないわけがない。

ヘルシングは身も蓋もない言い方をしてしまえば「勢い」だけ
一方本作には知将ハンニバルに陰陽師の安倍晴明、ワイルドバンチ強盗団が持ち込んだ銃に心を奪われる信長(結局ガンか)などなど
国も違えば時代も違うので戦いの幅が広がりそう。

あとはドイツ語もそうだったけど薩摩の方言はもっと仰々しくて、これまたアクセントになってて良いと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-05 00:45:23] [修正:2013-02-28 18:58:36] [このレビューのURL]

いろいろとうまくいかない、10代女子を中心としたオムニバスショート
基本的に
 ちょっと変わったコミュニケーションをとる女の子の日常が最後まで続く
のだけどなかには
 ちょっと変わったコミュニケーションをとる女の子の日常が続くと思いきや最後にどんでん返しをくらう
という爆弾が混じっている

とくに後者のパターンのオチがこの作品の魅力。
軽く笑い飛ばせるものだけでなくちょっとゾッとするものもあり、
こういうところは少年誌のレベルを超えているような印象。
そして作者が数ページでできることを心得てるというか。
最後のページを開くまで物語がどう転ぶか分からない。

圧倒的に後者のほうが面白いわけだけど
それは前者のような"べつに心がざわつくわけでもない"話があって初めてそのなかで光るから
週刊連載の結果かもしれないけど単に奇を衒ったような話ばっかりではなく
ありがちな話もこの人なりの描き方で挟んでくるのはアリ。

際立った我を持ついかにも人間的な登場人物たちは(萌え絵も相まって)
もれなく全員好きになってしまう。
ただ、"強がる女子"がワンパターンな気もする。
そういうキャラが作品の特徴でもあるんだろうけど。


新人だとか1巻は発売翌日に重版しただとかチャンピオンの懐の深さだとか
なんだか色々言われているけどまあ一度読まないことには。
一話ごと読みきりのはずなので本誌で試し読みするのが良いかも。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-07-21 16:49:36] [修正:2012-07-21 16:49:36] [このレビューのURL]

農業高校に入りながらも自分には将来の夢がないとウジウジしたり
都会と違う大自然での生活に翻弄されたり
そんな中で生きることについて学んでいく八軒には清々しさを感じる
一歩ずつ止まって悩んで「それっぽくまとめられる」のでは満足できない
牛歩でもしっかりと進んでいく

フィクションではない分現実にもこんな生活を送っている同世代の学生がいるのだろうなと
八軒の目線で読むといろいろと思うところがある

ハガレンにおいてあいさつと感謝の言葉を入れるよう心がけた荒川先生
エドとアルは旅の途中で出会う人たちとのつながりを大切にしてきた
そしてこれからさまざまな形で生き物の命と出会い別れていくであろう八軒
そこには「いただきます」「ありがとう」という同じ命に対する感謝やあいさつを
変わらず大事にする主人公の姿が描かれるはずである
そう、前作が「人間賛歌」のマンガであったとすれば
今作は家畜を含む「生き物すべてへの賛歌」なのだろう


また(個人的に)気になるタイトルの「銀の匙」とは
silver spoonとは「裕福な家に生まれる」という慣用表現であるが
これは八軒の家庭を示唆するものなのか
それとももう一つの意味である「よい星の下に生まれる」として使われているのか
作品の中で詳しく語られることはまだないがこの先テーマとなっていくのかもしれない

「あの荒川弘の最新作」というネームバリューだけで評価される部分は多い
内容が評価されるにはまだまだだがきっとこの人ならまた素晴らしいマンガを描くだろう
と、やっぱり「あの荒川弘」だから期待してしまいます。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-01-20 17:46:44] [修正:2012-06-03 19:03:50] [このレビューのURL]

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