「まれら」さんのページ

総レビュー数: 112レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年02月12日

作者特有の多様な作品群ではあるが、現代から近未来を舞台にしたSFが中心。例えば「不安の立像」等と比較すると、怪奇的な作品が少なくなっている替わりに、虚無的な作品の比率が高いように感じる。以下寸評。
「商社の赤い花」大企業の異常性を描くシリーズに入るのかも知れないが、一層諦念的で悲惨な印象。(6点)
「食事の時間」このまま映画化しても面白そうな近未来SF。醜悪な話ではあるが、シニカルさが先に立つ。(7点)
「夢みる機械」コメディタッチの軽い作品ながらよくできた話。星新一の短編のような印象。ただ、収録作の中では最も作風が異なり、なぜ表題作になったのかは疑問。(6点)
「猫パニック」社会の脆さをドタバタで描く小品。事件の異常さと発端やオチの矮小さがおかしい。(5点)
「地下鉄を降りて…」誇張やデフォルメはあるものの、基本的には虚構ではなく現実の描写。都市自体が持つ狂気をじわりと描いており、2度目に読んだら怖くなった。(6点)
「遠い国から」虚無的な作風の嚆矢になるかと思う。淡々と綴られる旅行記の体裁で展開する絵物語だが、文章もきわめて美しく、そのまま朗読しても詩として成立しそうな気がする。大好きな作品の一つ。(8点)
「感情のある風景」虚無的な作風ながら、前作の「遠い国から」とは絵柄も技法も異なる。恐怖や絶望の内容を語らず、感情を失うという虚構を通して読者により大きな恐怖と絶望を感じさせる。(8点)
「地獄の戦士」珍しいハードSF。ブレードランナーをバッドエンドにしたような印象。(7点)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-31 02:51:35] [修正:2007-12-31 02:51:35] [このレビューのURL]

今思えば当時の少年雑誌の印刷はかなり酷く、色が滲むような青インクは本当に読みにくかったわけだが、その滲んだ世界の中で読んでもおそろしくカラフルな漫画という印象を受けた。それまでの野太い線と熱い展開で構成される少年漫画の中にあって、極度に洗練された絵柄や都会的なギャグは衝撃的とも言えるほどだった。
再読してみると結構薄味でたわいもない話が多いが、今でも通用するセンスが凄い。
コミックスに収録されていた絵日記風漫画(暗闇に石を投げる話や2階から落ちる話)が爆笑もので、本編より面白かった。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-24 00:55:00] [修正:2007-12-24 00:55:00] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

料理漫画の元祖だと称されているようだが、今読んでも非常に面白い。この手の漫画の王道としては主役に蘊蓄を語らせるものが多いが、味平はきわめて無知な駆け出しのコックとして描かれ、観客やライバルに説明をさせているところが却って新鮮に映る。またその分、根性やカンにまかせた勝負が多くなり、スポ根さながらの熱さがある。
大きく分けて5回(一の瀬とのキャベツ切りも含めると6回)の対決が描かれるが、それぞれの敵がまた個性的かつ天才肌で、主役を食うほどキャラが立っている。個人的にはカレー勝負が一番面白く、また鼻田など秀逸なキャラだと思う。(事実上味平が勝てなかった唯一の料理人ではないか。)
カレー、ラーメン、チャーハンなど、きわめて庶民的な料理を取り上げ、美味さがストレートに伝わってくるのもポイントが高い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-14 20:54:31] [修正:2007-12-14 20:54:31] [このレビューのURL]

敵のインフレ化が酷い。過去の対戦相手がどんどんザコ化して行く。
前振りが長い割には、肝心の試合は原則としてワンパンチで終わる。前半(特に児童期)は、ボクシング理論らしきものも交えて展開されていくのだが、そのうち「ネーミングが凄い割には原理不明」な必殺技のオンパレードになる。
おまけにストーリーも奇想天外かつ行き当たりばったりでリアリティ皆無。

以上欠点ばかりをあげつらってみたが、そんなことがいずれも気にならないほどの熱さとパワーに満ちあふれており、今でも面白い。
やるならここまで徹底しないといけないという見本だと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-01 19:38:36] [修正:2007-12-01 19:38:36] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

作品全体が3期に分かれると思うが、それぞれが随分違った印象を受ける。トータルで考えても、スポーツ漫画の名作にしてギャグ漫画の傑作である。
<ラグビー編>
正直なところ普通のギャグ漫画。面白くはあるが、もしここで終わっていれば、月並みな漫画で終わっていた。
<柔道編>
格闘団体戦ものの元祖ではないかと思う。しかし「団体戦に出られない程の弱小チーム」「別の競技の経験者」「なぜか混じっている素人」など、王道のパターンはほとんど出揃っているように思う。YAWARAも五所瓦も、すべてのルーツはここにある。
反則も含めた数々の技はきわめてアグレッシブで、プロレス編への伏線は十分だった。
<プロレス編>
ストーリーと試合場面の緩急が絶妙なので、筋だけ追って行っても十分面白いとは思うが、何と言っても素晴らしいのは作者のプロレス(また格闘技全般)への思い入れである。試合場面は丹念に描かれていて、恐らく目の肥えたプロレスファンでも納得の出来だろう。三四郎がスーパーマンではなく、根性の人として描かれるあたりも「闘魂」に忠実でひたすら熱い。
ギャグの合間に放り込まれるプロレスネタも小気味よい。作中に実名で登場する猪木をはじめ、シンやブッチャーやハンセンのエピソードがちりばめられ、プロレスが熱かった往年の雰囲気が蘇る。
ラグビー編から比較したら、キャラやストーリーなど別の漫画のようであるが、「闘魂」という一貫した主題が花開くのは、まさにこのプロレス編だと言って良い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-01 00:20:38] [修正:2007-12-01 00:20:38] [このレビューのURL]

そもそも絵日記漫画が出発点の作者であるが、その延長で、閉じられた世界観の中で描いているところが功を奏している。基本は郷愁系絵日記漫画であり、さくらももこのスタンスに近いものを感じてしまう。
新聞漫画の限界で、結婚シリーズ等で見せた毒が少ないのが残念。
標題は「あたしンち」であり、主人公はみかんなのだと思うのだが、どう見てもお母さんの独壇場。とはいえ、お父さんやユズピー、ケン、新田などの脇役も秀逸。(モデル実在の予感がする。)
爆笑ネタはそう多くないが、値段程度には楽しめるアベレージヒッターといった感じの作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-11-26 00:13:56] [修正:2007-11-26 00:13:56] [このレビューのURL]

原作(小説)を筆頭に、さまざまに表現されてきた「日本沈没」。それだけ衆目を集めるテーマなのだと思う。
ハードボイルドに「科学」と「日本」を追い求めた原作版、重厚な人間ドラマだった旧映画版、とりあえずSFXのリアリティには驚愕させられた新映画版と、それぞれの語り手はそれぞれの切り口で見せようとして来た。もちろん限られた制約の中での表現であるため、それぞれが一長一短を持つ。
漫画版はそれらの悪いところをすべて集めたようなもの。話の軸が定まっておらず、猥雑な絵柄の割には軽薄な印象しか受けない。小松左京作品特有のストイックさが微塵も感じられないのは、「解釈」では済まないように思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-11-24 23:48:28] [修正:2007-11-24 23:48:28] [このレビューのURL]

ネタとしてはねじ式やゲンセンカンの方が有名かも知れない。映画化された点を除けば実に地味な作品。
作品終盤で語られる井月は、安政年間から明治半ばまで伊那谷を漂泊し、芭蕉や西行にあこがれたまま野垂れ死んだ。やがて昭和の世には、山頭火もまた伊那谷を訪れる。漂泊の人は漂泊の人にあこがれ、彷徨い続けるのが宿命なのだろう。つげ氏もまた同じなのかも知れない。
井月の話が淡々と語られ、それまでの作中の喧噪が浄化されてゆく。陰鬱な話の筈なのに、なぜか清々しい結末。井月の辞世の句で締めくくられた後は、自分もまた無能の人にあこがれる穏やかな読後感。
つげ作品の頂点と感じた。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-11-20 00:40:31] [修正:2007-11-20 00:40:31] [このレビューのURL]

「ドラえもん」を読んだことのない日本人がどのくらいいるだろうか?現代日本漫画の代表作であることは間違いないだろう。いい歳をした大人の間でも、「ドラえもんの道具で何が欲しい?」といった論議が十分に成立するのはすごいことだと思う。
万人受けするストーリーは感動や爆笑といった類ではないが、あれだけのアイディアをコンスタントに描き続けた才能にはただ敬服するのみである。
余談だが、のび太のママの「なりませぬ」や静香ちゃんの「ヘ長調ね」など、本筋とは関係ない台詞に爆笑のツボがあることが多い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-03-12 00:33:14] [修正:2007-03-12 00:33:14] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

いわゆる少女漫画の絵柄が苦手で、長い間敬遠して来た作品。思い立って読んでみたら、とんでもない目にあった。止まらないのである。寝る間を惜しんで一気読みし、勢いでもう一度読み直してしまった。コテコテの少女漫画絵であるしネタも随分と古くさいが、そんなことはどうでもよくなってしまった。文句なく10点。
特に念入りに噛みしめるべきは「女海賊ビアンカ」「真夏の夜の夢」「二人の王女」の各エピソードあたり。他の方のレビューでも触れられているが、特に「二人の王女」のオーディションなどは圧巻。いずれもマヤが抜群に嬉しそうに演じているのがいい。
そう感じてみて気づいたが、自分の視点は速水真澄なのであった。芝居の内容や演じる楽しさよりも、マヤの才能への驚き、演じることの楽しさを体現していくマヤへの羨望を感じながら読んでしまう。もし子供の頃に読んでいたら果たしてどのように感じていたか、あるいは他の方(特にマヤや亜弓と同世代の少女など)がどのような読み方をしているのか非常に気になるところである。
これからクライマックスというところで中断しており、今後の展開が気になるが、以下のような懸念もないわけではない。
?々氾圭龍ケ蕕砲△燭蝓⊂?野寺の才能は大丈夫なのか。一方の黒沼の能力はしっかり描かれているが、どうもこれまでのところ小悪党としてしか出番がなく、しっかりと勝負してもらうためにはもう一ネタ欲しいところ。
??同じく桜小路の能力も大丈夫か。あまり実力を見せるストーリーがなかったせいか、彼の本気を感じない。
??水城や聖など、真澄の周囲でキャラが立ちまくってしまった者をうまく活かすストーリーになるのか。このまま埋没させるには惜しい。(ちょっと伏線張りすぎか?)
?ど雲邁了劼箒眞?など、もっと見たかったキャラにもう出番はないのか。
?ゥ泪笋痢崋綸澄廚呂匹Δ覆襪里?。特訓を積むほどの時間的余裕はないように思うが、アクロバチックな解決策でもあるのか。

本当に完結できるのかわからないほどの大作になっているように思うが、作者のテンションが上がるのをゆっくり待ちたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-02-16 20:52:31] [修正:2007-02-16 20:52:31] [このレビューのURL]