「まれら」さんのページ

総レビュー数: 112レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年02月12日

伝奇と科学の接点を描くという作者ならではの難解なジャンルであり、その点は流石であるし、水準以上に面白い作品ではあることは間違いない。しかし、その分欲が出てしまって、この何倍かのボリューム感で読んでみたいと思ったのも確かである。
具体的には、集中連載に納めるために様々な伏線を無理やり詰め込んでおり、かえって一つ一つの要素が希薄になってしまっている。また少年漫画的なノリで全員をハッピーエンドに持って行こうとしており、その分気ぜわしい展開になった。
力がありすぎて大長編でないと本領を発揮できないというのも考え物ではある。

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[投稿:2008-03-16 23:19:43] [修正:2008-03-16 23:19:43] [このレビューのURL]

外伝と言いながらも、パロディやアナザーストーリーに逃げない真摯な筆致が好もしい。
ヒョウやとらのストーリーは本編の骨格にも波及する重い構成になっており、むしろ本編を補完するものとして併せて読みたい。
単体での採点は困難だが、仮に外伝だけを読んだとしても、十分楽しめる良作だろう。

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[投稿:2008-03-16 23:18:37] [修正:2008-03-16 23:18:37] [このレビューのURL]

結婚は一大イベントではあるが、それがために夢想に走りすぎたり、あるいは必要以上に深刻化したりする話は多いものである。本作は極めてまじめに、そして少しシニカルに現実と向き合った奮闘記である。
コミカルなエッセイ漫画の形態ではあるが、作者一流の切り口で次々と旧癖を看破していく手法は痛快であり、またなかなか考えさせられる。
そこらのマニュアル本などよりよほど実用的であり、下手なギャグ漫画より笑えるお得な一冊。

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[投稿:2008-03-16 00:10:04] [修正:2008-03-16 00:10:04] [このレビューのURL]

7点 寄生獣

非常に良質で面白い。SFとしても、ホラーとしても、アクションとしても、あまつさえ青春もの・恋愛ものとしても水準をクリアしている。最初は唐突に感じた設定も、最後はきれいにまとまった。
あえて難点をいくつか。
メッセージ性を強く打ち出そうとする姿勢は感じたが、スピード感のあるストーリーや盛りだくさんの内容と干渉して、もう一つ入り込めなかった。内容的にもSF等で繰り返し語られてきた思想からそう飛躍していないように感じる。(リドリー・スコットやキューブリック、本邦では宮崎駿の影を感じてしまうのは考え過ぎだろうか?)
また、物語終盤で主人公が何度か喪失感に襲われるのだが、それまでのリアルな描写と異なって少し浮いているように感じられ、余韻が足りないような印象を受ける。最終話も蛇足に感じた。
ともあれ、十分他人に薦められる良作。8点に近い7点を献上。

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[投稿:2008-02-14 01:38:01] [修正:2008-02-14 01:38:01] [このレビューのURL]

キャラ設定はいかにも少年漫画っぽい軽さがあるが、内容はくそ真面目に真っ正面から青春を描いたラブコメの王道。犯罪者はいても悪人のいない生ぬるい世界の中で、ひたすら青春が爆発している。臆病さや蹉跌など、すべて爽やかに笑い飛ばせる若さが素晴らしい。
あまりにも純真でストレート過ぎる話のようにも思うが、ここまで直球勝負で来られては、もはや照れや気恥ずかしさを感じる余裕はない。ただ素直に「あの頃」の気持ちに戻ればいい。
羨ましいほど清々しい作品。

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[投稿:2008-02-09 01:13:44] [修正:2008-02-09 01:13:44] [このレビューのURL]

自宅のごく近隣を中心に、極めてありふれた日常を描いているだけのはずなのに、何故か読んでいる方まで楽しくなってくる。作者の童心のような興奮が伝わって来るような、そんな暖かい作風。街に対する好奇心と愛着がしっかり感じられるのも好感度が高い。
ただ暖かいだけでなく、ギャグ漫画としてもレベルが高いのもよい。飾らない本音のコメントと作者特有の含蓄ある言い回しが、絵柄に似合わないスパイシーな笑いを誘う。
これは散歩に行きたくなる。

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[投稿:2008-02-04 19:25:20] [修正:2008-02-04 19:25:20] [このレビューのURL]

絵の上手い下手で漫画を評価したくはないが、いわゆる上手い絵から意図的に遠ざかろうとしている作者は稀少だと思う。しかし野太い線と大胆なコマ割りで描写される世界は、いかにも熱い話に似つかわしい。
もともとストーリーを読ませる作風でもないが、それにしても読者がついて行けないほどの突飛な展開が続く。将棋漫画でありながら将棋の醍醐味を描くつもりでもないようで、現時点では方向性を見いだしにくい。ただ作者が巨大な何かを描こうとしている情念だけは伝わってくる。今後が楽しみな作品である。得点は暫定。

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[投稿:2008-02-03 00:55:56] [修正:2008-02-03 00:55:56] [このレビューのURL]

時代が前後する複雑な構成に戸惑ったが、作品世界の全貌がおぼろげに掴めてくるあたりで引き込まれる。良質なミステリーのような味わいで、相当の力量が窺える。永遠に生きる者の宿命と悲しみを繊細かつ緻密に描いており、不朽の名作としての評価も納得。絵も古典的なタッチながら、ファンタジー世界を芸術的に描き出している。
そこまで理解した上であえて難点を言えば、あまりに格調が高すぎて敷居が高い印象を受けるところか。漫然と読んで楽しむような作品ではないので、あまり無節操に他人に勧められない。国境を越え時代を超えて輪廻するエピソードを相互に関連づけながら読むのは思いのほか骨が折れるし、美文調の散文詩のような表現も技巧に過ぎるように思う。
読者側にも味わうためのスキルを要求されており、そういった部分も含めて実に大作然とした作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-23 21:13:50] [修正:2008-01-23 21:13:50] [このレビューのURL]

ヤクザネタであり、ややくどい画風と相まって少し敬遠する向きもあるかと思う。
ただ内容は面白い。一言で言えばバカで下品でくだらない作品だが、ここまで徹底すれば文句ない。「頭からドリルが生える」だの「地底人と兄弟」だのといったギャグの設定になぜヤクザが必要かということからして可笑しい。組長やサブがギャグの中心ではあるが、黒田の醒めたツッコミぶりも見逃せない。
各話の間に挿入されるページのイラスト風ギャグが時々ツボにはまり、「ニョロ−レロ−ゲルロ」では死にそうになった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-12 10:35:19] [修正:2008-01-12 10:35:19] [このレビューのURL]

最初期から10年間程度の範囲の短編集。作者自身が後書きで語るようにホラー中心になっている。同じホラーでも絶叫する類ではなく、背筋がぞくりとするようなものが多い。以下寸評。
「不安の立像」日常に潜む実体のない恐怖を描く。デビュー間もない頃の作(デビュー作との表記もあり)でありながら、既に完全な諸星ワールドを形成している。(6点)
「子供の遊び」謎の生き物が実に猟奇的で、おぞましい姿なのに見入ってしまう。同様のモチーフはその後の作品の中に繰り返し登場する。結末も秀逸。(7点)
「復讐クラブ」シニカルな小品だが、毒の利いたオチがいい。(5点)
「海の中」穏やかな詩情漂う作品。こう描けばいかにも美しい話のようであるが、その実は水死体のモノローグというところが異様。(5点)
「ユニコーン狩り」作者は照れているが、きわめて真っ向から夢と向き合ったファンタジー作品。すべての作品の中で最もポジティブな作かも知れない。『今年はじめて見る一角獣』のフレーズが実に美しい。思春期の不安定な精神状態を直撃すれば、人生が変わるかも知れない。子供の頃に読みたかった。(9点)
「真夜中のプシケー」比較的正当なホラー漫画。装丁(表紙)のモチーフにもなっているようで、基調となる位置づけかも知れない。(6点)
「袋の中」猟奇的な作品であり、殺人や屍姦など何でもありなのだが、それ以上に人間の心理描写の方が怖い。(6点)
「会社の幽霊」近代社会の脆さや組織の異常さを描きながらも、妙に戯画的なドタバタに帰着するところが可笑しい。ブラックユーモアの味わい。(5点)
「子供の王国」頽廃的な味わいの中に奇妙な不安感が織り込まれている。面白い話なのだが、読むのが苦痛なほど嫌悪感を感じてしまい、それでいてどうしても読んでしまう。作者はロリコンに対するカリカチュアである旨の自己評をしているが、幼女街娼のくだりなどは作者一流のリアリズムに溢れ、軽薄な批判以上の黒い世界を感じさせる。(8点)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-03 16:41:10] [修正:2008-01-03 16:41:10] [このレビューのURL]