「まれら」さんのページ

総レビュー数: 112レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年02月12日

[ネタバレあり]

料理漫画の元祖だと称されているようだが、今読んでも非常に面白い。この手の漫画の王道としては主役に蘊蓄を語らせるものが多いが、味平はきわめて無知な駆け出しのコックとして描かれ、観客やライバルに説明をさせているところが却って新鮮に映る。またその分、根性やカンにまかせた勝負が多くなり、スポ根さながらの熱さがある。
大きく分けて5回(一の瀬とのキャベツ切りも含めると6回)の対決が描かれるが、それぞれの敵がまた個性的かつ天才肌で、主役を食うほどキャラが立っている。個人的にはカレー勝負が一番面白く、また鼻田など秀逸なキャラだと思う。(事実上味平が勝てなかった唯一の料理人ではないか。)
カレー、ラーメン、チャーハンなど、きわめて庶民的な料理を取り上げ、美味さがストレートに伝わってくるのもポイントが高い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-14 20:54:31] [修正:2007-12-14 20:54:31] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

実に壮大でロマンチックな話である。明治期の北海道という、野望と絶望と喧噪に満ちた舞台で、なぜもこんなに爽快で甘美な読後感の得られるストーリーが存在できるのか驚くほかない。
手塚作品においてブラックジャックや七色いんこなど、アウトローじみた人物を主役に据えることはままあるが、シュマリという男は本物のアウトローとして登場する。殺人犯であり、脱獄囚であり、反体制である。女性感情にはとんと興味がないようだし、酒癖も悪い。しかし嫌悪感を感じさせるわけでなく、ピカロとして描かれるわけでもない。窮屈な時代の枠には収まりきらないほどまっすぐで大きな人間として奔放に描かれるシュマリには、心底憧れる。
野火の場面、雪解けの場面、最終話でシュマリが遠ざかって俯瞰になっていくあたりなど、描写も映像的で非常に美しい。
子供向けではないためか知名度は今一つかもしれないが、手塚作品の中では一押し。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-08 23:37:30] [修正:2007-12-08 23:37:30] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

作品全体が3期に分かれると思うが、それぞれが随分違った印象を受ける。トータルで考えても、スポーツ漫画の名作にしてギャグ漫画の傑作である。
<ラグビー編>
正直なところ普通のギャグ漫画。面白くはあるが、もしここで終わっていれば、月並みな漫画で終わっていた。
<柔道編>
格闘団体戦ものの元祖ではないかと思う。しかし「団体戦に出られない程の弱小チーム」「別の競技の経験者」「なぜか混じっている素人」など、王道のパターンはほとんど出揃っているように思う。YAWARAも五所瓦も、すべてのルーツはここにある。
反則も含めた数々の技はきわめてアグレッシブで、プロレス編への伏線は十分だった。
<プロレス編>
ストーリーと試合場面の緩急が絶妙なので、筋だけ追って行っても十分面白いとは思うが、何と言っても素晴らしいのは作者のプロレス(また格闘技全般)への思い入れである。試合場面は丹念に描かれていて、恐らく目の肥えたプロレスファンでも納得の出来だろう。三四郎がスーパーマンではなく、根性の人として描かれるあたりも「闘魂」に忠実でひたすら熱い。
ギャグの合間に放り込まれるプロレスネタも小気味よい。作中に実名で登場する猪木をはじめ、シンやブッチャーやハンセンのエピソードがちりばめられ、プロレスが熱かった往年の雰囲気が蘇る。
ラグビー編から比較したら、キャラやストーリーなど別の漫画のようであるが、「闘魂」という一貫した主題が花開くのは、まさにこのプロレス編だと言って良い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-01 00:20:38] [修正:2007-12-01 00:20:38] [このレビューのURL]

既に数多の批評がなされており、批評するような余地があまり残されていないような気がする。映画より深くて面白いのは確かだが、その映画版自体を宮崎氏が監督して相当の高評価を得ているのだから、今一つ位置づけが理解しづらい。(私としては、「原作」だとは思っていない。)
そもそも、同じ絵を描く仕事といいながら全く別ジャンルの漫画を手がけ、なぜこんな凄い作品が創れるのか?
ひたすら評価を拒否するような作品。どうしても点数をつけざるを得ないなら、8点未満ではないと思うのでとりあえず8点をつけておく。
余談ではあるが、映画制作期間は休載が多くなるのが非常にもどかしかった。(本サイトは若い方が多く、リアルタイムで読んでいる者の方が珍しいかも知れない。)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-11-26 00:12:38] [修正:2007-11-26 00:12:38] [このレビューのURL]

ネタとしてはねじ式やゲンセンカンの方が有名かも知れない。映画化された点を除けば実に地味な作品。
作品終盤で語られる井月は、安政年間から明治半ばまで伊那谷を漂泊し、芭蕉や西行にあこがれたまま野垂れ死んだ。やがて昭和の世には、山頭火もまた伊那谷を訪れる。漂泊の人は漂泊の人にあこがれ、彷徨い続けるのが宿命なのだろう。つげ氏もまた同じなのかも知れない。
井月の話が淡々と語られ、それまでの作中の喧噪が浄化されてゆく。陰鬱な話の筈なのに、なぜか清々しい結末。井月の辞世の句で締めくくられた後は、自分もまた無能の人にあこがれる穏やかな読後感。
つげ作品の頂点と感じた。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-11-20 00:40:31] [修正:2007-11-20 00:40:31] [このレビューのURL]

アニメから先に見て、そのあと漫画にはまった。あまりに何度も読み返したせいか、何点つけてよいか判断できなくなってしまったような気がする。
敵役はもちろん、ザコの末席に至るまで異様にキャラが立っており、熱すぎる台詞の数々はギャグにされるのも頷けるところ。冷静に読むと次々と敵を倒すだけの平凡なストーリーなのだが、だんだんとそのテンポが心地よくなってくる。
読み飽きたつもりでいても、手元にあればつい読んでしまうのはやはり面白いのだろう。ラオウ編までに限っていえば8点献上したい。
(得点内訳)
ラオウ4点+トキ2点+ケンシロウ1点+「今日のは口にあわぬ」0.2点+牛にでもばけるべきだったババア0.2点+「目かくし目かくし」0.2点+「俺じゃないるれ」0.2点+ジャギほか0.2点

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-02-20 18:44:00] [修正:2007-02-20 18:44:00] [このレビューのURL]

競技はよく描けているし、キャラも立っている。ただ、リアリズムに徹したがために少し窮屈なストーリーになってしまったように思う。リアルだということは、言い換えれば漫画でなければ表現できない要素が少ないということであり、現実のスポーツ観戦や実写ドラマ以上のパッションを感じることは難しい。
三四郎のような突き抜けたパワーを期待していたので、少し寂しかった。
(そうはいいながら、スポーツ漫画としては十分以上の良作。)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-05-30 00:33:53] [修正:2008-05-30 00:33:53] [このレビューのURL]

同じ短編集でも、前作「夜の歌」に比べると随分洗練された感がある。無理やりな詰め込みではなく、素材の最も上質な切片だけを見せるテクニックが冴えている。また、内容もホラー・ミステリー志向から、よりファンタジー寄りにシフトしており、爽快感では前作を上回る。
確かに怪奇もので強みを発揮する作者ではあるが、「美食王の到着」のような、官能的・耽美的なメルヘンも実に捨てがたい味がある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-04-11 00:55:53] [修正:2008-04-11 00:55:53] [このレビューのURL]

7点 レベルE

非常に面白いが、感動するといった類とは少し違う。どちらかと言えば「唸らせられる」とか「感心する」いった感じだろうか。非常に緻密な仕掛けとテンポの良いギャグで綺麗にまとめており、随分手のかかりそうな作品だと思う。ここまでの構成力があるなら、もう少し毒が強くてもいいのだが。
王子は結構ボロクソに言われながらも思いのほか好人物に描かれ、脇も意外なほど穏健でバカなキャラが固めている。そのせいか、設定の異常さ・悪趣味さに反して妙に読後感がいい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-04-09 01:09:42] [修正:2008-04-09 01:09:42] [このレビューのURL]

4コマの中では最も作者らしさが出ている作品かと思う。ほのぼの系に見えながらも鋭いネタを振ってくる作風であり、「アシベ」のようにキャラ人気が先行したり、新聞4コマのように制約が多かったりすると本来の切れ味が発揮できていないように感じた。その点本作はまんがくらぶという格好の土俵を得て、闊達な作品になった。
ソフトな絵柄ながら妙にエゴイスティックなキャラばかりで、ギャグを離れて考えれば結構シビアな話題も多い。人間関係を茶化して笑いに持って行くのが上手く、ブラックな笑いもあり、見かけによらない辛口ギャグとして読んだ。
なお、再開版は未読。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-03-19 00:58:04] [修正:2008-03-19 00:58:04] [このレビューのURL]