「アルゲマイネ原野」さんのページ

総レビュー数: 131レビュー(全て表示) 最終投稿: 2008年01月18日

昔何気なく読んだチャンピオンにこの漫画が連載してあり
その完成度の高さに衝撃を覚えたことがあります。
結局それが自分がチャンピオンを買い始めるようになったきっかけでした。

ストーリーは基本的に一話完結もの。
近未来の電器屋「ピース電器店」で引き起こされるドタバタコメディをメインに
ピース一家の温かな家族像も合わせて描かれてあります。

比較的低年齢層の読者が楽しめるように作られているので
過激なギャグや感情が浮き沈みするような激しい描写はありません。
しかし親しみやすい身近なSFと科学技術の魅力を余すことなく描いており
童心に帰れるようなワクワクする設定が用意されています。
また漫画としての画力も非常に高く、
特に手の込んだ背景が描きこまれたコマから生み出されるダイナミックな演出が魅力的。
そんな作品の中でどのキャラクターも愛らしく生き生きと躍動します。
ちょこちょこ描かれる伏線やマニアックなパロディが仕込まれていたり
遊び心も盛りだくさん。
ツツさんの言われるようにいつまでも作品の世界観に浸っていたい、そんな気にさせてくれる傑作です。

上でも書きましたが、少年漫画として限りなく完成されていると思います。
このサイトのレビュアーの方々のように
いろいろな漫画を読み慣れた方にこそ、おすすめしたい作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-14 18:34:45] [修正:2010-05-14 18:34:45] [このレビューのURL]

「古来日本人は同じ性を分け合っていた」
現代の感覚でいけばちょっと信じられないような話で始まる本作品。
金田一耕介の「八ツ墓村」モデルにもなった近代事件史に名を刻む津山三十人殺し事件など
多くの事件分析が行われているが背景の一因に犯人と複数の村の女性達との
夜這い関係があった事など
ちょっと裏を覗くと、文化の波及が都市部に比べ遅かった戦前の地方では
実は意外に身近にあったものであることがわかる

作品の中で特に光っていたのは村人達の描写。
嫌悪感すら与えるような外のもの(主人公)に対しての避け様と
いざ村の風習を受け、一度仲間意識を持った後のおおらかさのギャップ
そして更なる禁忌に触れたものへの集団的心理を思わせるかのような常軌を逸した行動…
日本のムラ社会的なじめっとした雰囲気をこれでもかと書き表しており
ただただ作品に引きずりこまれるかのように読んでしまった。

タブーに挑戦するかのような民俗学的アプローチのユニークさ、
少年少女の淡い青春とそれを飲み込む村の掟
コミックスの後書きにもあるように作中の小道具の使い方も実に上手い。
また、村での出来事を通した主人公の成長
後半からのジェットコースター感覚の予測のつかない物語運び
そしてエロスに次ぐエロス…

エンターテイメントを追求しながら作品を文学的な域にまで昇華させた、文句無しの傑作。
そして個人的に初めて民俗学、歴史の楽しさについて開拓させてくれたという意味で10点。

冒頭の津山三十人殺しについて
事件後、女性を「共有する」という村の習わしについて周囲の人間は口をそろえて否定し、
犯人一人の異常性にのみ槍玉に挙げたと言われています。
事実は小説より〜とはよく言ったものだと思う。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-12-01 21:35:23] [修正:2008-12-01 21:35:23] [このレビューのURL]