「チーズカバオ」さんのページ

総レビュー数: 75レビュー(全て表示) 最終投稿: 2017年07月23日

自分は別に藤本タツキの信者ではないが、敢えて言う。

この作品には完全に心が呑まれたし、読後もしばらくの間は、他の漫画を読む時の感覚にまで影響が及ぶくらいには尾を引いた。
創り手受け手関係なく、人生の一部を創作に捧げている人種からすると、それ程の体験だった。

漫画という媒体で表現されているものの、実際はメディアの概念を超える創作そのものへの情念が可視化されたような、途轍もない作品だった。

しかし、実際に多くのプロの業界人が本作に対して言及し、称賛し、脱帽している現状を受け止めず、
それらの評価を軽率にトンデモと断じたり、信者呼ばわりできる漫画読みがいることにちょっとびっくり。
根源的なセンスや表現の次元の違いがわからない人には、それこそ向いてない作品じゃないかと思う。

ちなみに、最初に発表されたのがジャンププラスだったためか、いくつかの見開きは電子版の読み方でこそ威力が発揮される演出になっていたので、初見は電子書籍で読むことをお勧めしたい。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2021-10-03 12:30:21] [修正:2021-10-03 12:36:39] [このレビューのURL]

秋本治の多岐にわたる知識量と、普遍的な日本人の笑いのツボを突くセンスの2点が無ければ成立しない作品。そのためか、40年の超長期連載にも関わらず、この作風を継承する漫画家が未だに現れていない(ミリタリコメディー要素はうすね正俊にも通じているかもしれないが)。

博学な作者によりチョイスされたリアリティのある題材を、荒唐無稽な両津が木っ端微塵にするという振れ幅が、たまらなく面白い。
ギャグ漫画は人により笑いのツボが分かれるところだが、こち亀は話題や表現自体はオーソドックスなので、誰でも読みやすい点も素晴らしい。

後半のネタ切れ感やパンチ力不足は否めないが、それを差し引いても偉大な作品である。
というか、40年間の週刊連載を無休載でやり遂げること自体、漫画界最高の偉業の一つである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-02-11 11:36:12] [修正:2021-02-11 11:36:12] [このレビューのURL]

作品を構成する専門用語の多さやビジュアルも相まって、そこらへんのSF映画より説得力のある「本格派SF」。リアルさとハッタリを超高レベルで両立している。
作者の拘りや哲学が明らかに意識高い系なのが若干引っかかるところだが、そうでなければこの作品は成り立たなかっただろう。
続編に繋げられるよう結末を改変したバージョンが主流となっているが、本作のみで完結する初期プロットのストーリーがベストだと思う。というか、これほど完璧な物語を捻じ曲げてまで描くほどの続編だとは言い難い気がする。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2021-01-07 22:19:12] [修正:2021-01-07 22:19:12] [このレビューのURL]

夏目義徳の個性を活かしつつ、サンデーの読者層にもウケそうな作品を創ろうとしたのだと思う。
低年齢層向け雑誌になっていた当時のサンデーでは藤田や皆川がニーズに合わなくなりつつあったので、ワンチャン狙いで夏目にニッチ且つポップな作品を描かせた結果、どっち付かずの煮え切らない感じで終わってしまった感は否めない。

連載前半はセンターカラーが多かったり、読者プレゼント企画も頻繁に行われていたり、単行本のカバーが当時は特別感のあったサラサラ仕様だったりと、編集部も精力的にプッシュしていたことがうかがえる。
このことから考えると、恐らくニッチ系枠復権の起点に成り得た、割と重要な作品だったと思う。
実際、そのジャンルにおける名作の定石に能力者バトル要素を足した手堅い作りで、そこそこいけそうな雰囲気はあったのだが…

もう少し夏目の持ち味を開放していれば、トガリに匹敵する佳作にはなっていたはず。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2020-12-17 08:40:00] [修正:2020-12-17 08:51:39] [このレビューのURL]

2点 ONE PIECE

アラバスタまでなら面白いが、その後はどうしたという感じ。
ストーリーも作画もキャラクターもセリフも兎に角グチャグチャに盛り込んだ、ヘンテコで煩雑な漫画になり果てた。
喩えるなら、ヤシの実をくり抜いた器に、オムライスとカレーとラーメンとシチューとハンバーグと唐揚げとアイスクリームとチョコを入れて、その上にマヨネーズをぶちまけて、ポッキーを突き刺して海賊旗を付けたような感じ。


【追記】
最近のワンピースの醜態は目に余るものがある。
もはやつまらないとかそういうレベルではなく、作品としての品性まで失いつつある。

バスターコールプロジェクトや、尾田栄一郎に忖度したであろう鬼滅最終巻の発行部数の件(初版発売前に重版手配済みという、意味不明な状況。仮に印刷のキャパの関係があるとしても、初版分でもう少し刷ることは出来るだろう。)など、
手段を選ばずワンピースをNo.1にしようとするムーブは明らかに異常で醜悪である。

もちろんこれらの件に作者が直接的に関与しているわけではないだろうが、尾田栄一郎が自身の漫画家としての格を勘違いして異常に高いプライドを持っていることも、この状況を生んだ一因と言えるだろう(今のワノ国編を自画自賛しているあたり、作者の感覚は完全に狂っている)。

そしてこのような状況はそもそも、国民的少年漫画が存在しなかったジャンプ暗黒期においてその素質を備えたワンピースが、幸か不幸かポストドラゴンボールとして祭り上げられ、成功してしまった結果だろう。
「売上と発行部数」というある種の絶対的な指標において、鬼滅が大流行するまでは完全な一人勝ち状態が20年近くも続いたのだから、
当然作者は自分の作品に疑問を持つこともなく、誰も尾田栄一郎の作品創りに意見はできなかっただろう。
事実20巻そこそこくらいまでは斬新で高レベルな作品であり、少なくともあの時代の少年漫画界においてはポストドラゴンボールに着くポテンシャルはあったと思う。

だからこそ、終盤に差し掛かってこれほどまでに醜態をさらしまくる現状は、非常にキツイものがある。
発表された時代と、作者の能力や運(アニメが失速した時期ににドラゴンボール改がワンピースとセットで放送され持ち直したり)、編集部のマーケティング、読者層などが奇跡的に噛み合ってしまい、
皆がある種の催眠状態のような感じで本作をNo.1少年漫画に押し上げてしまったために起きた悲劇と言えるだろう。

いずれにしても、日本の漫画史上においてこれほど売上と作品の質や品格が釣り合わない作品は、今後現れることはないと思う。

ナイスレビュー: 6

[投稿:2017-07-28 10:43:08] [修正:2020-12-06 00:52:10] [このレビューのURL]

タイトルに嘘偽りなし。
雰囲気漫画に属すると思うが、作者の技術とセンスにより極めて高い完成度に仕上がっている。
構成や描写力が超ハイレベルなので、この手の作品が好きな人にとってはバイブルになり得る。
雰囲気漫画では屈指の「すごい漫画」。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-11-28 08:03:38] [修正:2020-11-28 08:06:53] [このレビューのURL]

藤子不二雄をリスペクトしたであろう作風に高度なオタク要素を混ぜ合わせたことで奇跡的な相乗効果が生まれ、唯一無二の面白味が引き出されている。
ケロロ軍曹(と、その部下たち)という珍妙なキャラクターはその滑稽さで絶妙にオタクの笑いのツボを付きまくってくるし、日向家等のメイン人間キャラも笑いに萌えにと八面六臂の活躍を見せる。
ただし、それも10巻くらいまでの話である。

20巻近くなったあたりからは長期連載によるネタ切れと、アニメ化により獲得した低年齢層読者への考慮か、話のクオリティーがガタ落ちしてしまっている。
さらに、尺稼ぎなのか作者の趣味なのかはわからないが、大長編ドラえもんを意識して失敗したかのようなしょうもないエピソードが大半を占め、読むことが苦痛になってしまっている。

今でもたまに面白い回はあるが、それらは基本的に序盤のノリに準じたものであり、中盤以降生まれた要素はことごとく作品の面白さを損なわせていると言わざるを得ない。

基本的にはケロロ小隊と日向家やその友人たちの間で繰り広げられるミニマムな侵略闘争をやっていれば、それだけで充分に面白いんじゃないだろうか。
それが描けなくなってきているのだとすれば、終盤のブラック・ジャックみたいに不定期掲載にするのも手だと思う(不思議と、あまり終わってほしいとは思わない)。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-11-24 12:24:32] [修正:2020-11-24 13:10:15] [このレビューのURL]

何度でも、一生読める漫画。
ふとした時に、自然に手に取って一話読んでしまう。
「生きること」そのものが漫画という形になっていて、根源的な本能にすっと寄り添ってくれる感じ。
文字でこの感覚は伝えられない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2020-11-13 08:09:24] [修正:2020-11-18 12:07:51] [このレビューのURL]

7点 D-LIVE!!

皆川亮二の超画力を極めてシンプルなコンセプトで楽しめる。
バトルを描ける漫画家はたくさんいるが、リアルなアクションをこんなに格好良く描ける漫画家はそうはいない。
「漫画の面白さに重要なのは画力でなくストーリー」という人をたまに見かけるが、ストーリーがいかに優れていても画力(コマ割り等の演出技術含む)が高くなければ描けない面白さも確実に存在することを、本作を読めばお分かり頂けるのではないだろうか。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2020-11-17 23:32:42] [修正:2020-11-18 11:54:17] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

サンデー55周年記念として「55作品新連載させる」とかいう編集部のゴミのような舵取りのせいで、ゴミのような最終章を迎えた残念な漫画。

最終章に入るまでは本当に面白い漫画で、サンデーが毎週待ち遠しくなるほどだった。
50巻を超えてもまだまだ読みたいと思えた作品は、サンデーでは初めてだったと思う。

ストーリーのテンポは良いし、アクションは派手だし、ギャグもキレがある。登場人物も達人・弟子問わずキャラが立っていて、戦闘パートも日常(修行含む)パートもまるっと楽しめた。
凡作以下の作品が誌面の大半を占めるようになっていった21世紀のサンデーにおいては屈指の良作であり、特にバトル漫画としてはサンデーの最後の良心と言っても過言ではなかっただろう。

ところがどうだ。冒頭に述べたふざけた企画に伴い、サンデー編集部は松江名にケンイチを終らせて新たな作品を創るように打診したのだ。
そして、なんと松江名はそれを承諾して、そこまで丁寧に積み上げてきたきたものを全てぶん投げて、近年稀に見る酷い話の畳み方で無理矢理本作を完結させてしまったのである。

後のコメントによると、この選択は松江名にとっても苦渋の選択だったらしく、職業漫画家としては賞賛されるべきところもあったのは事実である。
だが、1〜2年だけ連載したような作品と、12年連載した本作では、話を唐突に打ち切ることの重みが全く違う。
50巻以上のコミックスを買い続けてきた20万人近くの読者を、60巻近くになって突然裏切ることを作者も了承したことが、個人的には何より許せない。
正直、ラスト数冊は本当に買う気が起こらなかった。

ここまで最後の打ち切りについての怒りを綴ったが、本音を言えば相変わらずまだまだ続きが読みたい気持ちは残っている。
この漫画は、あんなところで終わらせてしまうのは勿体ないほど魅力的なのだ。
ジュナザード戦あたりまでなら、7点以上は堅いと思う。
いつか松江名が続編を執筆してくれることを、今も期待している。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-11-17 23:00:20] [修正:2020-11-18 07:14:48] [このレビューのURL]