「チーズカバオ」さんのページ

総レビュー数: 75レビュー(全て表示) 最終投稿: 2017年07月23日

7点 トガリ

出す時代が早すぎた、又は遅すぎた不運な名作。

本作は藤田和日郎や師匠である皆川亮二の作品に通じる、90年代前半のサンデーの名作アクション漫画に近い趣きがあった。そして、そういった作品を好む読者からは一定以上に評価された、硬派な王道ピカレスクアクション作品だった。
特に魅せゴマの作り方や、主人公の葛藤の描写は秀逸で、ところによっては師匠以上のセンスを発揮していた。

だが、不運にも発表された時代が悪かった。
当時はサンデー誌面のカラーが低年齢層化する過渡期であり(固定ファンの多い藤田や皆川作品の読者も年齢層が高まり単行本派にシフトしていった時期で、本誌では基本的に後ろの方に掲載されていた。本誌のメイン読者層にはバイオレンスアクションより、ガッシュやうえきの法則等の、低年齢層向けのポップなバトル漫画がウケていく時期だった)、本作の優れた部分が当時のサンデー読者にイマイチ評価されないまま打ち切りという憂き目を見ることとなった。

もし発表される時期が、進撃の巨人等のヒットを受け漫画のアプローチが多様化した現在であれば、もしくは藤田や皆川等が最前線でブイブイいわせていた90年代前半から中頃であれば、世間での評価は大きく異なったのではないかと思ってしまう。

なお、打ち切りの約10年後にフラッパーに連載の場を移し無事に完結しているのだが、その頃には夏目義徳が漫画界の荒波にもまれてセンスが衰えてしまったように思える。
個人的にはやはり打ち切られずに、当時の勢いのまま完結させてほしかったという無念が残った(それでもラストは非の打ち所のない、完璧なものだったが)。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2020-11-13 09:56:38] [修正:2020-11-17 13:00:36] [このレビューのURL]

序盤は傑作だったが、アニメ化が決まった石版編前くらいから児童向け路線に寄せすぎたせいで、ガッシュ周りの展開が幼稚になりすぎた(小学館との訴訟トラブル当時の雷句のブログによると、編集からそのような矯正を強いられたらしい)。

実際、この矯正は商業的には成功したし、アニメ放送頃には作風の移行は完了していたため、アニメ化決定後に本作を読み始めた層は違和感に気付きづらかったと思う。
これが、今作が完結まであまり評価を落とすことなく、いまだに名作扱いされている理由の一つではないだろうか。
だが、この流れが雷句のポテンシャルを潰してしまい、業界内における小学館(とりわけ当時のサンデー編集部)へのイメージが悪化する一因となったことは間違いないだろう。

ただ、個人的には本作の真価はガッシュサイドではなく、ブラゴ側のストーリーで見られると思っている。師匠の藤田和日郎から受け継いだケレン味や渋さ等の魅力は、ブラゴ側のエピソードに集中されているように感じる。
特に最後の最期、ブラゴとシェリーのやり取りはガッシュと清麿では出せない渋い感動がある。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-11-16 13:31:08] [修正:2020-11-16 14:58:21] [このレビューのURL]

読む前は血生臭い硬派なミリタリーアクションかと思っていたが、読んでみたら馬鹿丸出しのボンクラ漫画だった。もちろん褒めてます。

しかし、第1部の後半あたりからは読む前のイメージに近い作風になり、描く側も読む側も相応の気力が必要になっていった。
そして、作者が大病を患い体力が落ちてからは、描く側の気力が目に見えて下がっていったように思う。
そうなってからはストーリー展開も作画も残念な感じに…

最後は正直なところ不満が残るが、こればかりは致し方ないか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-11-16 13:37:13] [修正:2020-11-16 13:37:13] [このレビューのURL]

デビルマンとかヘルシングとかドロヘドロとか進撃の巨人といった、特定の層が好みそうな作品群のエッセンスを踏襲しているような作風に思えるが、辛うじてジャンプ漫画感も備えている。

アクションシーンを描くセンスは抜群。奇抜な描写の連続する戦闘場面はかなり魅せてくれる。必殺技ドーンって感じでキメる作風ではないが、その分バトル系青年漫画のようなアプローチとなっており、非常にスタイリッシュである。

何より、デンジが変身するまでの展開が毎回秀逸で、絶妙に溜めた上でチェンソー化する場面のカタルシスには目を見張るものがある。

現状で少し足りなく感じてしまう点は、作者のセンスの高さに技術が及んでいないように思えてしまうところか。
恐らく、作者の脳内ではもっと壮絶なイメージが広がっているが、その破壊力を充分に描き切れていないような気がする。
描写する技術がイメージ力に完全に追いつくことができれば、さらに凶悪な伝説的怪作になり得ると思う。
この点は今後の伸び代として期待したい。
そんなに長く続けないかもしれないけど。


余談ではあるが、本作といい最近のジャンプは昔のジャンプと比べると準看板以下の主力作品のカラーや運用が実験的になってきていると思う。
もしかすると、過去にジャンプ編集部に諌山創が漫画を持ってきた時に、彼の作風を認めずに追い返したという件の反省が活かされているのかもしれない。
ずっと看板でいるが故に驕りが出てきてしまう作品に刺激を与える為にも、このスタンスは突き詰めてほしい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-10-22 15:24:22] [修正:2020-11-13 07:51:06] [このレビューのURL]

前作同様少し特殊な嗜好のボーイミーツガールであるが、今作はヒロインがやたら躍動したり、夜の街並みを上空から描く描写が度々あったりするので、作者の画力や演出力の高さがより伝わりやすい。
叙情的な表現が多く、感性を刺激してくる作風なのが個人的に好印象。

物語が若干の連続性を帯びてきたが、現状ではこの流れが吉と出るか凶と出るか五分五分な印象。
今後の展開次第で良作にも駄作にもなり得ると思う。

登場キャラクターがどいつもこいつもさかっているのは作品の性質上仕方がないのだろうが、若干胸焼けしてしまう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-11-12 13:15:28] [修正:2020-11-12 13:19:39] [このレビューのURL]

5点 銀魂

[ネタバレあり]

間違いなくギャグ漫画の新境地を開いたという点は凄いと思う。あの台詞のセンスや序盤の間の取り方、アホを極めたようなギャグシナリオや登場キャラの数々は伝説レベルだろう。

でも長期連載に伴いシリアス長編が増えるにつれて、確実に作者が自分の能力を過大評価していって、作品全体が徐々に歪んでいったように感じる。
最終章に至る頃には前半の魅力は完全に消え失せていたと思う。
と言うか、将ちゃんを退場させた時に完全に作者は銀魂の魅力を見失ったと思っている。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-10-22 17:48:37] [修正:2020-10-22 17:48:37] [このレビューのURL]

恐らく、当時の多くの子供達が自分たちの読んでいる漫画というメディアがいかに無限の可能性を秘めているかに気付かないまま古典的名作漫画に触れ続けていた時に、
直感的に漫画の凄さを思い知るきっかけとなった作品なのではないだろうか。

作者の技術とかそういうものではなく、根本的な感性がイカれてないとこんなものは描けないし、容赦なく少年漫画としてこれを世に送り出されたことも信じられない。
この作品が誕生したこと自体が奇跡的である。

そしてこの作品がなければ、漫画やアニメを日本の文化と言われるまでに押し上げた数々の歴史的名作も生まれなかっただろう。
漫画・アニメ界に残した功績の偉大さで言えば、ドラゴンボールに次ぐと言えると思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-10-22 15:07:09] [修正:2020-10-22 15:07:09] [このレビューのURL]

キャラ萌えの到達点と呼べる傑作。
登場キャラクターの造形や設定の魅力が、漫画創りにおいてどれほど高いアドバンテージを持つかということを実感させられる。
長編バトル回のストーリー構成や迫力はイマイチだったが、それでも良牙やムース等が活躍してるというシチュエーションだけでそれなりに成り立っているのも、キャラの魅力の高さ故だろう。


それと、作品の評価とは直接は関係無いが、高橋留美子作品の議論でたまに見られる、「特定のヒロインを執拗にディスる読者」はどうなんだろうか。

「○○が嫌いだから楽しめない」とか、「○○が出たら△△だから面白くなくなる」とかならレビューとしてありなのだろうが、
「○○が嫌いだから、メインヒロインを代えればもっと面白くなる」的な素っ頓狂な意見を述べたり、グッズの話を持ち出してまで必死に特定のキャラを下げる人が、作品を真っ当に評価できるとは思えない。

ましてやラブコメなど主人公とヒロインの関係性が作品の魅力の礎であり、人気を博している作品はこの要素がしっかりしていて、多数の読者はその部分も楽しめているという証明でもあるのだ。
この礎の部分が合わないのであれば、それは作品の本質を楽しめていないとも言えるだろう。(逆に言えば、本質を楽しめていなくても、一部のキャラの魅力でファンを獲得できる作品であるとも言えるが。)

ここで触れているメインヒロインはあかねのことだが、あかねが好きだから読み続けて、あかねのメイン回ばかり何度も読み直す人もたくさんいる。
少なくとも自分は、仮に許嫁がシャンプーとかだったとして、これ以上面白くなったとは思わん。
らんまとあかねの物語だから、これほどまでに愛しいのだと思う。

あかねをディスるレビューを見かけたからムキになって長々述べたが、これも本作のキャラの魅力の高さを物語っているということだろう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2020-09-23 07:53:13] [修正:2020-09-23 16:04:19] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

漫画史に残るような爆発的ヒットとなった本作だが、それも納得してしまう程に、近年のジャンプ作品には無い魅力がこの作品には凝縮されている。


評価点としてよく挙がるのは、殆ど引き伸ばさずに面白さを維持したまま完結した圧倒的勢いだ。これは確かに、近年のジャンプ漫画のヒット作としては異例である。

恐らくこの作者は、物語のプロットは早い段階で決めていて、概ねそれに沿って最後まで駆け抜けることが出来たのだろう。
だからこそ、味方の実力者や敵の幹部を出し惜しみなく登場・退場させることで、クライマックスを連続させるという、物語作りにおいて究極の手法を実行できた。
これは作者が自らの力量を把握した上で、作者や編集等が欲をかかずに着地点を見極めることが絶対条件であり、これを満たせる漫画はごく稀だと言える。
特に本作のようなメガヒット作品でこれを成せたのだから、作者もジャンプ編集部も見事だとしか言いようがない。


だが、これほど幅広い層が本作にハマっている理由は、もっと根源的なところにあると思う。
それは、読者が本能的にアクション漫画に求める「バイオレンス表現」の要素と、それと相反する「愛」の要素が、極めて効果的に描かれているという点である。

まず「バイオレンス表現」についてだが、
近年の少年漫画においての暴力表現はマイルドだったり、スタイリッシュだったりすることが多く、いまいち緊張感を引き出せていない作品が多いように感じる。
もちろん、それが必ずしも悪いとは思わないが、少なくとも昔の名作アクション漫画にはそれなりの暴力表現は切り離せないものであり、それにより生まれるゾクゾク感というのは結構大事なものだったと思う。
かと言って、進撃の巨人みたいにバイオレンス描写に振り切った作品造りは、読者にとってのハードルを上げかねない。
その点で言えば、鬼滅の刃のバイオレンス描写は、古き良き名作群に近いバランスを持っているように思える。
重症を負った者は戦力が低下し、四肢を欠損したものは戦線を離脱し、致命傷を負った者は死ぬ。
こういった当たり前のバイオレンス要素が作品に程よい緊張感やゾクゾク感を与え、直感的に読者の心を掴んでいるように思える。

次に「愛」の要素である。
はっきり言って、これこそが鬼滅の刃最大の魅力ではないだろうか。
読めば誰しも分かることだが、本作の物語は人間愛に基づいている。
そして更に言うならば、「家族愛」を偏執的に、これでもかというほど描きまくっている。その執拗さは常軌を逸していると言っても過言ではないが、だらこそ他の追随を許さない唯一無二の魅力となっている。
それにより、人間であれば誰しもが持つ感覚や感情をダイレクトに刺激してくるため、子どもから大人まで多くの読者が魅せられてしまう。
ジョジョが人間讃歌を謳ったように人間愛をテーマにしている名作少年漫画は過去にも多々あるが、本作ほどド直球で終始それに徹した作品は過去に類を見ないだろう。

総括すると、暴力と愛という、一見では二律背反の要素を物語にガンガンぶち込んで本能を揺さぶってくるのが、鬼滅の刃の魅力であると考える。


長々とレビューを書いたが、社会現象を起こした事もうなずけてしまう、とても良い作品だと思う。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2020-09-01 14:04:50] [修正:2020-09-10 11:45:46] [このレビューのURL]

ONE版の独特なクセを薄くした分、大して真剣に漫画を読まない層でも一見して分かる「超作画」というセールスポイントを取り入れることで大衆向けに調整してあるところが、長所であり短所でもある。

「漫画ってすげえ」と心の底から思わせてくれるような衝撃的な作品に出会わぬまま漫画の沼にハマることなく成人してしまい、しかし漫画を読まないわけでもなく、かと言って一昔前までおじさんたちが暇潰しで読んでいたようなビジネスマン向け漫画を読むほど老け込めない的な、
オタクにはならずに少年漫画離れもしない層が、手軽にド迫力なバトルを楽しめる良い感じの秀作というポジションか。

余談だが、この作品はドラゴンボールとかの王道バトル漫画というよりは、ラッキーマンの系譜に属していると思う。
個人的には、村田雄介がラッキーマンをリメイクしたら、ワンパンマン以上の秀作になる気がしている。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-08-10 11:41:49] [修正:2020-08-10 15:00:57] [このレビューのURL]