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総レビュー数: 258レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月29日

6点 AKIRA

高校生の時に初めて読んだ。有名な作品というのは知っていたけど、そこまで惹かれたわけではなく普通におもしろかったなというくらい。

あまり理解できてなかったのかなと思ったので久しぶりに読み返してみたわけだが、そんなに印象は変わらず。
絵は映画的で確かに緻密。でも今見るとそんなに飛びぬけているわけでもなく、好みでもない。
ストーリーは序盤いい感じに盛り上がったものの後は退屈な部分もあって、序盤に比べるとだるい。普通に楽しめはしたけど。分かりずらい所があまりおもしろさにつながっていない気がする。

当時読んでればまた違うんだろうな。エポックメイキング的な作品ってのはもちろん尊敬に値する。ただそれが普遍的な名作であるかはまた別の話なのかもしれない。

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[投稿:2011-09-17 03:32:20] [修正:2011-09-17 03:35:56] [このレビューのURL]

いくえみ稜の短編集。短編集とはいえつながっている話も多い。
潔く柔くのプロトタイプ的な作品もあるのでそちらが好きな方にはおすすめしたい。

基本的には潔く柔くに似た雰囲気。あちらがあまり合わなかったのでこちらも同様合わなかった。
この手の一人称的な作品は共感できないと読むのが厳しい。

文庫で読了。1巻と2巻途中までは苦痛すぎて途中で投げようかと思った。そこからはそこそこ楽しめる話もありつつ読むのが苦痛な話もありつつって感じ。

もういくえみ稜自体が好みではないのかもしれないけど、もう少し他の作品読んでから判断しようと思う。
熱狂的に好きな人がいるのも分かりはする。私が好きではないだけで。

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[投稿:2011-09-17 03:12:14] [修正:2011-09-17 03:33:26] [このレビューのURL]

おもしろいのかというとよく分からない。
すごいってのはひしひしと伝わってくる。

これ物語にトリップできたらとんでもない快感なんだろうなと思いつつ全然そこまで行けてないので一応7点で。
高野文子作品ほぼ全般に言えることだけど、思うことはたくさんあってもそれを文章にするのが難しい。
書けそうになったらまた修正します。

まあとりあえず読んでみようってこと。色んな意味で孤高の人です。

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[投稿:2011-09-17 02:59:35] [修正:2011-09-17 02:59:35] [このレビューのURL]

よしながふみの「愛すべき娘たち」を描くオムニバス短編集。

よしながふみの作品でも1番大好きなのがこれ。文句なしの傑作。

彼女の作品は常にジェンダーへの意識が感じられるとはよく言われることだ。それは確かに正しいのだけど、それだけではなく彼女は人間を型にはめるのが嫌いなのだと思う。
第1話冒頭、雪子の母親は「親だって人間だもの!不機嫌な時だってあるわよ。あんたの周囲がすべてあんたにとってフェアでいてくれると思ったら大間違いです」なんて一見とんでもないことを言う。
でもそれは真理だ。男だから、女だから…と同じくらい母親だから、お兄ちゃんだから…というのは固定的な通念で、だからこそ自分の生き方を自由に決めるためには考えるべきことなんだ、そんなよしながふみの姿勢を私はすごく尊敬している。

これは程度の差はあれどよしながふみ作品全ての根底に流れているもの(と私が勝手に思っている)で、特別愛すべき娘たちを好きな理由にはならないかもしれない。
この作品は、いつものよしなが作品と同様に何気ない会話や仕草が非常におもしろい。元ホストの青年をいくら誠実だといっても納得させるのは難しい。それをこの人はお茶を入れる仕草だけで表してしまうのだから脱帽だ。

ただ、愛すべき娘たちの秀逸な点はやはりその目の付け所、視点のおもしろさじゃないだろうか。
そんなに捻りのない話でも、よしながふみの見方はとても独特で常に新しい切り口のように感じられる。構成もとても上手い。

全体的に質は高いが、中でも飛びぬけているのは第3話と第4話。特に4話は今まで私が読んだ短編の中でも相当なもの。
3話は「分け隔てない愛」の話。優しく慈しむような愛と強烈な皮肉が相まってとんでもない怪作に仕上がっている。残るのは納得と一抹の寂しさ。
4話は「理想や夢の変質とそれを守る難しさ」という斬新なテーマをを残酷なほど丁寧に描いている。これで良かったのだという思いとそこまで割り切れない思い。そしてささやかな夢を叶えた友人。こういうのがあるから漫画を読むのは楽しい。

長々ととりとめもない文章になってしまったけど、大好きな作品なのでついつい色々と書き連ねてしまった。
よしながふみの「姿勢」と「思い」が詰まった傑作短編集。かなり気に入っているのでぜひ読んで欲しい作品です。

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[投稿:2011-09-14 01:41:34] [修正:2011-09-14 01:44:20] [このレビューのURL]

父親と息子の父子家庭を中心としたよしながふみのオムニバス短編集。

傑作佳作ぞろいのよしながふみ作品ですが、こどもの体温は比較的マイナーな気がします。とはいえかなり良い作品。

「僕の見た風景」以外は物語は淡々と進みます。ちょいちょい(1話目とか)多少ショックなことも起きるものも流れる空気はあくまで穏やか。
それではつまらないのかというと決してそうではなくて、登場人物のちょっとした仕草や何気ない会話、表情などが実に良いためか、がんがん読まされます。ストーリーに重きを置いているのではなくて、志村貴子に代表されるように行間を読むのがすごく楽しい。

よしながふみはフラワー・オブ・ライフを読んでから好きになりましたが、こどもの体温でさらに好感度が上がりました。何か良いよねぇ。
あまり目立たない作品ゆえに、ぜひぜひおすすめ。この頃からこの人が描く食べ物はおいしそうで読んでるとお腹が減ってきます笑。

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[投稿:2011-09-14 00:51:46] [修正:2011-09-14 00:51:46] [このレビューのURL]

辻村深月原作の長編ミステリーのコミカライズ。

辻村深月さんは透明感のある静謐な文章が好きで、そこそこ著作は読んでいます。じゃあなぜこの作品は読んでいないのかというと、あまりに長すぎるから。
メフィスト賞を取っただけあってある程度評価はされているんでしょうが、1000ページを超える小説なのでまあ気軽には読めない。
そんな時に、さよならフットボールがとてもおもしろかった新川直司のコミカライズを見つけたので読んでみた作品。

結論から言うと、うーん…残念ながら微妙。
まずミステリーと言いつつも、設定上中々ロジカルな解決は期待できないわけです。だって知ってるはずのことを思い出せないようにされてるんですから、常に受動的にならざるを得ない。
恐らくミステリーの皮を被ったホラー風味の青春小説なのでしょう。それにしても色々と不満はありますが、結局過去と向き合い思い出すまでの過程で説得力が薄かったことに尽きるかと。最後の方は特に。
最終的な結末もこれまた微妙。あらすじを見てもらえれば分かるように、相当不条理で現実離れした舞台なんです。こんな設定がそんな結論に持っていくまでに必要だったのかな。
またこの作品では絵も発展途上という感じで、全てが悪くはないけどおもしろいかと言われると…って感じでしたね。

新川直司の調理が良くなかったのかそれとも原作が合わなかったのか分からないので、しょうがないので、原作読もう。
読む気にさせてくれたのと、不快ではなかったので読んで良かった、かな?

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[投稿:2011-09-10 02:16:12] [修正:2011-09-10 02:16:12] [このレビューのURL]

何気に冬目作品で1番好きかもしれない。

ももの家族に守られてる感じや、ちょっと抜けてて、でも優しい性格に癒されますね。
冬目先生が「昔の少女漫画を目指した」と言っているように、シンプルで淡い恋が描かれています。恋の手前の憧憬だったり、恋のようなそうでないようこの淡くもどかしい感じが好きです。

ももが一歩踏み出すまでをほのぼのと描いたこの作品、冬目作品の「陽」の部分を良いとこ取りしたみたいで実にいいです。
今後も何となく読み返していくだろうな。良作。

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[投稿:2011-09-08 02:13:31] [修正:2011-09-08 02:13:31] [このレビューのURL]

同作者のバラ色の明日に興味があったのと、とろっちさんのレビューが熱かったので読んでみた作品。

代替のない大切な人を失った時、それを埋めるのは時間と他の誰かとの絆しかない。
再びカンナの時が動き出すまでの物語。

要はトラウマを乗り越えるまでの話だ。携帯小説から漫画まであらゆるメディアでやりつくされている題材なのに、他と一線を画すのは確か。

いくえみ先生の物語のつづり方は非常に丁寧で好感が持てる。
時はゆるやかに、穏やかに進む。
カンナが主軸とはいっても、群像劇がカンナに纏まっていくというだけで当人にとってはやはり自分が主役なのだ。

話は常に一人称で語られる。少女漫画らしい独りよがりで自己完結的な物語(悪口じゃないよ)。
ただ、ここで群像劇というのが効いてくる。独りよがりもたくさん集まれば独りよがりではなくなってしまう。狙っての工夫かどうか分からないけど、おもしろい。

トラウマを描く作品としては古谷実作品のこちらの世界を侵食してくるような生々しさはなく、日常を描く作品としてもくらもちふさこ作品の境界をいつの間にか踏み越えてくるようなリアリティの追求と妄想は存在しない。
潔く柔くは良くも悪くも読み物の域を超えてはいない。軽く読めることはそれはそれで良いことだし、その独りよがりさも作品に乗れてしまえば最高に没入できるのだから悪くはないと思う。
軽く読めるにも関わらず、その独りよがりさは人を選ぶ。これまたおもしろい。

長々と書いておいて何だけど、結局私はこの作品を好きになれない。というのも登場人物にあまり興味が持てないから。興味がないというのはある意味嫌いより悪いかもしれない。
いくえみ先生の描くいい男はほぼ全員一緒に思えるのと、その男どもを全く魅力的に感じない。別に作者が女性だからとかではなくて単純に相性の問題。三千花の話に代表されるような軽薄さと変な爽やかさのせいか違う世界の生物のように感じたことがしばしば。
お前らの頭には恋愛しかないのか?って程、ほぼ最初から最後まで恋愛の話のみだったのも要因の一つだろうか。
この作品で描かれているのは少なくとも私が共感できる日常ではなかった。

要約すると、こういう一人称の心理描写に特化した作品は登場人物に共感できないと無理ってこと。外伝の「切切と」が一番好きだった辺りから私の好みがうかがえるなぁと自分で思う。惹かれた人物もいたにはいたけど少数だったので。
思えばくらもちふさこファンの私としてはこの手の作品のハードルが高い上に、いくえみ綾というペンネームがくらもち作品由来と知っていたので無意識に比べてしまった部分があるかもしれない。そういう意味では残念。

おもしろいというか色々と興味深かった漫画。はまればバイブルになりうるとは思います。

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[投稿:2011-09-06 03:25:10] [修正:2011-09-07 15:04:43] [このレビューのURL]

前評判でグロいと聞いていたものの、乾いた作画の影響かそれほどまでには感じられませんでした。ただそういう画風なだけに十巻のあの場面は痛かったです。

この作品ではシイナと明、明とひろちゃん、もしくは小森など対照的なキャラが多く比較するのも楽しいです。各キャラのセリフには色々考えたし、影響も受けたと思います。扉絵や題名も秀逸で、それにあったものや、何かを暗示するもであったりします。

最初から最後まで、話がずれることなく書ききっており、一巻からの伏線もほぼ回収しきっていて言うこと無しです。打ち切りだと思う人もいるけど、個人的には最初から決められていたラストだと思います。賛否両論ですが、ラストは良かったんじゃないかと。シイナが文字通り地球一個まるまる使ってまでかなえた夢が最後の一こまに集約されている。フロイト的用語もけっこう物語にちりばめられてて、知ってるひとは興味深いかも。リアルタイムで終えなかったことは残念。その分ぼくらので楽しみたいですね。

【追記】
見れば見るほどこれを書いた当時厨二病の真っ只中だったことが分かってすごく恥ずかしいですが、おもしろいので消さないでおきますw
今見ても魔法の解釈やちりばめられた伏線や謎も含めてファンタジーとしてはかなりいい出来だと思う。唐突に見えて話の進め方がめちゃくちゃうまい。こんなにグロくする必要があるかはともかく。
ブレずに最終回まで突っ走ってるのは確かだけど、最終的に鬼頭さんが何を言いたかったのかは未だによく分からない(シイナがやりたかったことは分かるけどだから何?ってことね)。
ここは明確に表現して欲しかった。
単に鬼頭さんが精神的に病んでただけなのか?
ぼくらのは本質的には人間賛歌だったのに対し、こちらではそもそも地球に人間要るのか?というかそもそも生命に、私達のすることに価値はないと主張している気もする。
一番ぴったりな言葉はニーチェで言う受動的ニヒリズム。全てに意味はないというあきらめ。
最近でいうとまどマギがこの漫画に似た世界観(魔法的な解釈と雰囲気が)だったので好きだった人にはおすすめです。

【さらに追記】
さすがに今の自分からすると後ろ向き過ぎて10点はつけれんので9点に変更。
なるたるは、中高生の頃だと世界系作品特有の狭い世界観にはまる、というか逃避できる作品。
そういう時期から抜け出した後にファンタジーとして、読み物として楽しめるかが評価の分かれ目だろうな。その点十分に魅力はあるのだけど、世界系を感じる作品が嫌いで楽しめないという人の気持ちも分かる。そんな作品。

ちなみに最終話は人類の再生を意味したわけではないでしょう。地球は再生されるとしても、人類の再生は不可。単純にシイナが夢を実現させただけ。そのギャップと皮肉な虚無感がそそるような今さらのような。

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[投稿:2007-06-05 19:30:19] [修正:2011-09-06 02:35:17] [このレビューのURL]

岡崎京子が描く少し不思議な世界で繰り広げられるラブストーリー。

このSF的世界観が独特すぎるあまり、最初読んだ時は消化不良感が残りまくりであまり楽しめなかった。ラブストーリーにこんな風変わりな装飾がされているんだから何かしらの寓意があるんだろう、何なんだ?とそっちの方に思考が行ってしまったわけ。

でもそうではなかった。
作者は恐らくただただ美しい物語を書きたかっただけなのだ。

うたかたの日々は2組のカップルの恋の物語だ。
ネタバレは避けるが、ストーリーだけ書き出してもすごく安っぽい話にしかならない。それこそあの「世界の中心で愛を叫ぶ」みたいな。
でもこれは美しくしようという気概が違う。
悲恋とか悲劇っていうのはそれだけでも美しい。でもどうせなら現実世界よりお洒落でファンタジックな街の方が、どうせなら白血病より肺に睡蓮が根付く奇病の方が、どうせならetc…。
この涙ぐましいまでの努力笑。
いや、でも冗談じゃなくてすごいです。普遍的なラブストーリーをこうまで美しく創り直せるのかと。しかも嘘っぽく安っぽくならないように考え抜かれている。

岡崎京子の絵もすばらしい。この作品では原作つきだからか絵のタッチは抑えられ、軽やかで優雅な世界に仕上がっている。一つ一つの絵を見ても普通なのにまとめて見るとこうまで美しいのは何故だろう。

うたかたの日々はポリス・ヴィアンと岡崎京子の美の結晶だ。
酔える人にはたまらない作品だと思うし、珍しく気軽に楽しめる岡崎京子作品でもある。紛れもなくこれも岡崎京子の傑作の一つ。

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[投稿:2011-09-05 00:52:19] [修正:2011-09-06 01:48:15] [このレビューのURL]