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総レビュー数: 258レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月29日

ヘルタースケルター。

つくづく秀逸なタイトルだと思う。
りりこがすべり台に乗って一直線へ破滅へ向かっていく様、その混沌、そして発表後に世間に衝撃を与えたという点でもこの作品を上手く表したタイトルと言える。

本作はりりこが煩悶の末に虎になるまでを描いた作品ではない。
本作はりりこが煩悶の末に内から生まれた虎に食い殺されるまでを描いた作品だ。

破滅が目に見えていてもそこに向かって疾走していくりりこ。
女性的な価値観への風刺、りりこと対照的な存在の吉川こずえ、全てがりりこの花火のような鮮烈さを際立たせる。

正直私はこの作品があまり好きではない。岡崎京子のすさまじい才能が、表現力がほとばしりすぎていて物語に乗り切れないのだ。才能をコントロールできていない、あるいはしていないのかもしれない。

ヘルタースケルターを分類するとしたら悲劇だろう。でもそこに悲壮感はあっても絶望はない。この作品はそれでも生きろと背中を押す、いや強烈にぶん殴ってくれる作品だから。
重松清の「疾走」と同じくらい”ひとり”でも、ヘルタースケルターはあくまで前向きだ。

吉川こずえは最終話でこう言う。「あ、”ヘルター・スケルター”じゃん。この曲大好き。」
何てことはない。私もりりこに魅かれていたんだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-04 18:02:01] [修正:2011-09-06 01:43:39] [このレビューのURL]

9点 RED

日本ではあまり見られない西部劇(当たり前か…)、復讐譚。ロードムービー的な側面もあるので恐らくアメリカの西部劇なんかに影響を受けたんだろう。そこはかとなく洋画っぽさを感じる作品だ。

村枝賢一入魂の一作というのに相応しい。憎悪、愛、虚無感、嫉妬、友情、様々な感情が読む人の心を抉らずにはいられない。
魅力的なキャラクターがそのハードな物語を中和して、かなり読みやすくしてくれる部分もあるだろう。レッド、イエロー、ホワイト、ゴールド、グレイ、そしてブルー。読んでいて思うのは彼らには確かな色があったということ。レッドが主人公と言えど、それに塗りつぶされることのない一級品の群像劇に仕上がっている。

REDの白眉は復讐劇に村枝賢一なりの答えが示されていることだ。
復讐のために殺した。これは全く同じ論理、正当性で復讐者に跳ね返ってくる。だからこそ途中でオーエンやその妻の話が挟まれ、結果ブルーとのたった32ページに凝縮されたあの戦いがある。復讐者は幸せになり得ない、これを村枝賢一、そして誰よりもレッド自身が知っていた…。

もちろんこれは唯一の回答ではなくて、村枝賢一の答え。
イーストウッドの”許されざる者”と比べてみるとよりおもしろい。あれは許されない罪を犯したものがそれでも生きるなら…という作品なんだけど、極端に言うと開き直って生きるか世を捨てるかのどちらかしかないと示唆している。朝がまたくるからの孝なんて明らかに後者。インディアンを大量殺戮したアメリカは、クリーブランドはどちらを選んだのか…言うまでもないですね。それにしてもイーストウッドかっけぇ!

こういう硬派というか作者の美学を感じさせる作品が私は映画や漫画を問わず大好きだ。漫画では珍しいだけにREDに出会えて本当に良かった。

1つ文句を言いたいのはネイティブ・アメリカンの虐殺問題の扱い方。日本では馴染みのない問題なので取り上げたこと自体はすばらしい。世界史の教師はフロンティアが消えた年代は覚えさせてもその裏に潜む意味を教えはしない。
しかしそれならブルー小隊が凶悪ゆえに彼らを虐殺したなんて捉えられかねない書き方をすべきではなかった。この先住民族の95%が白人に虐殺されている。オーエンのような普通の人が当たり前のように殺し、奴隷扱いしていた時代であったこと、ここにもっとスポットを当てて欲しかった。

そういう意味ではブルー小隊が凶悪である必要はなく、レッドがブルー小隊の面々を殺した理由がその凶悪さでごまかされているのは村枝賢一の甘さが出たと思う。誤解を恐れず言うなら、レッドは善良な普通の人であるオーエンをこそ、スタージェスをこそ殺すべきだった。ブルー小隊が凶悪だから殺すのではなくてあくまで復讐のために殺すのだから。
ブルー小隊が基本的に凶悪な上にあちらから襲い掛かってくるもんだから勧善懲悪、正当防衛に見えかねないんだよなぁ。仇を殺した時に当たり前というかすかっとしてしまう所は大きくマイナスだし、レッドの罪をもっと強調しないと話の筋が通りにくい。ここさえなければ本当に大傑作と言えるのだけど。

点数の1点減とレビューの修正
途中脇道にそれた面があるように感じたのと上に述べた部分で1点減。群像劇ゆえに難しいだろうが、もう少し纏まっていたら間違いなく10点だった。ついでに最初書いたのがかなり前だったので書き直し。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-05-03 10:47:57] [修正:2011-09-03 03:57:33] [このレビューのURL]

この漫画を一言で表すと「ハッタリのインフレーション」。

いつからだろう、ハッタリを利かせた方が勝つようになったのは。
幼年編でオーガが地震を自身のパンチで止めたという自負心に始まり、闘技場編の想像の力を刃牙が持ち出したのを経て、花山vsスペックの「まだやるかい?」で個人的には最高潮に達した。

ベルセルクを見れば明らかだが、最高潮に達した後の盛り上げ方は難しい。じゃあハッタリ以外で勝負すればいいじゃんと言うのは多分浅はかで、実際やってしまうと盛り下がるのは目に見えている。もう後には退けないってやつだ。
その結果カマキリを皮切りに迷走が始まってしまった。後はいわゆる色物マンガ的な扱いを受けちゃってるわけで、小学生の時に闘技場編をわくわくしながら読んでいた身とすれば悲しいなぁ。いや、私もネタにしてますけどね。

板垣先生にがんばって原点回帰して欲しいという思いはあるにはあるが、無理だろう。残念ながら。
でもここまで来たら最後まで読みます。 

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-09-01 19:24:25] [修正:2011-09-02 03:25:17] [このレビューのURL]

バキの色んな成分の中で「ハッタリ」だけが抽出されたような作品。
最近のバキのネタ化を受けて板垣先生開き直ってしまったんですかね。

大まかに言えば、ひたすら主人公が土下座とハッタリで問題を解決していく話。しかしこれ、どういうスタンスで読めばいいんだ?
真面目にすげぇ!と思って読めばいいのか、それともギャグとして読めばいいのか。
まず真面目にすげぇ!とは思えない。感心できる人なんて多分いないだろう。しかしギャグとして考えてもツッコミがなくてひたすらボケボケボケなのでギャグとして成立していないわけで。うーん…。

そんな感じで読んでるこっちがふわふわした感じになってしまう漫画。今までにないって言えばそうだし、こんな気持ちになったこともないかもしれない。
まあ一回読めば何となく言いたいことは分かってもらえると思う。新たなる板垣ワールドを体験してみてはどうでしょう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-01 19:36:51] [修正:2011-09-01 19:44:04] [このレビューのURL]

自分は仮面ライダーは平成に入ってからのしか知らないので、多少ストーリーについていけない部分もあるのだけど、そんなのはまったく関係なくおもしろい。必殺技の名前も全然ださくない。むしろこれ以外はない!昭和ライダー借りて見ようかなあ、と思うくらいおもしろかった。

昭和ライダー編の最終回後のオリジナルストーリーなのだけど、話を知っているにこしたことはないが、知らなくても十分楽しめる。村枝賢一のあふれんばかりの仮面ライダー愛と漫画越しに熱気が伝わってくる作品。ライダーファンはもちろんだが、そうじゃない人にこそ、これを見てライダーを好きになって欲しい。

あと、何度見ても思うんだけど見開きでの一号vsゼクロスのライダーキックの激突はかっこよすぎる!魂が震えるってこういうことなんだなあ・・・

追記 最近の展開と戦闘がどうも安直になってきているように感じるので一点減点。

【さらに追記】
8点から6点に変更。
どう考えても9人のライダーを紹介する第一部が飛びぬけておもしろかったという矛盾。主人公ゼクロス以外の旧ライダーを描く章なのに。
ライダーとしての苦悩を描くなど、アクセントもあるものの基本的には単純な勧善懲悪なのでやはりこうまで続くと辟易してくる。まあ仮面ライダーはそういうものだけどさ。
設定や過去作をうまく使って村枝賢一の仮面ライダー愛を感じる話の練り方をされてるのは確かなので、こうなるとそもそも仮面ライダーが大人の鑑賞に堪えうるかどうかの問題かもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-09 21:26:28] [修正:2011-09-01 16:03:31] [このレビューのURL]

7点

山岳救助漫画なのだが、新人とは思えないほど一話一話のクオリティーが高い。何の装飾もなく描かれる遭難者たちは、あるときは救出され、またあるときは間に合わず死んでしまう。

助かるか、死んでしまうかの割合は半々くらいで、中々重い話も多いのだが、死んでも何かを残していくというのがほとんどであるので素直に感動できる。ラストの三歩の「また山においでよ」という言葉によってうまくしまって読後感はすっきりとしたものだ。

択一というエピソードが個人的には一番好き。すごく切ないです。今後ますます知名度上がると思われるので、今のうちに読んでおくことをすすめます。

【追記】
9点から7点に変更。
岳も10巻過ぎてきてマンネリ化が否定できない。以前の評価は4巻時点で、このあたりはまだ鮮烈な印象を受けていたからこその評価だったわけで…。
基本的に話が2パターンしかないのが見えてきてしまった。人が亡くなったら、近親者や友人がそれを受け入れるまでの話。そうじゃなければ、悩みを持った人が山に来ることで新たな光明を見出す話。
これから新境地を開拓してくれれば良いとして、このままの調子で続けるなら5巻くらいで終わるべきだったなとは思う。阿久津やナオタ、おばちゃん辺りの話で試行錯誤をしているのは感じるのでまだ希望はあるんじゃないか?
まだぎりぎりで良作。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2007-09-16 22:21:42] [修正:2011-09-01 15:33:03] [このレビューのURL]

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