「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

「言葉」を題材にした一風変わった作品。
うまくドラマ性とサスペンス性を組み合わせつつ、あえて漫画というメディアで「言葉」を表現しようとしたのはおもしろい。構成もしっかりしており、読み応えのある内容。

が、しかし。この漫画の恐ろしいところは別にある。
唐突に見せられる生々しい描写や、トトの育ての親の常軌を逸した猟奇的心理、明かされる衝撃的なトトの生い立ち。これらが軽い絵柄との凄まじいギャップによって「グロい」を通り越し「不気味」になっており、下手なホラーよりもショックは大きい。
いったん読者を突き落としておいて、スッと救い上げる手法は分かる。しかしこの場合突き落とし方があまりにキツく、最後まで読んでも救われた心地が全くしない。何も知らずに読んだ僕はちょっとしたトラウマにさえなってしまった。
「神童」の明るい展開やライトなタッチのイメージで読んでしまうと、かなりの精神的打撃を受けてしまうことは間違いない。また結末自体は良かったのに、その経緯がやや唐突で不自然だったのも残念。

物語自体はよくできてるし、メッセージ性も非常に強い。ただ繰り返し読んでみようとはなかなか思わない。(コワイから)
悪い作品ではないが、読むにはそれなりの覚悟と心構えが必要。かなりの異色作だと言い切れる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-07 05:16:24] [修正:2007-07-07 05:16:24] [このレビューのURL]

確かに構成や仕掛けは良いし、うまくまとまってる。
が、それ以上に心の琴線に触れる何かがなかった。その原因はキャラクターの地味さ、話のスケールと比較して異質すぎるキーファクターや社会描写の粗さといった違和感にあると思う。

かなりインパクトのある時代背景や面白い設定を用意しておきながら、主人公をはじめとして人物から全体的に小物感が漂っており、なんだか割に合わないこじんまりした展開に終始してしまったというのが素直な印象。
また物語中盤であれだけの大事件が起きてるのに社会の反応が鈍すぎるのがどうも納得できない。あそこまで話を広げたのならきちんとその風呂敷をたたむべきだった。

もっと思い切った展開や魅力的な登場人物があれば化けた作品だった。もう一歩。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-07 01:08:24] [修正:2007-07-07 01:08:24] [このレビューのURL]

土田先生得意の泥臭い人間描写が、もとの話にこれ以上ないくらいマッチしてる。
どの話もリアルで痛々しいし、単行本に挿入されてる手記もより現実感を引き立てている。改めて、同じ日本の中に不幸な境遇に置かれてる人間がたくさんいるんだということを実感させられる。

ただし原作のチョイスがあまりにも土田先生「らしすぎ」て、全くと言っていいほど新鮮味がない。また原作そのものがいまや超がつくほど有名になっているので、今さらマンガ化する必要性があるのかどうか疑問。
原作をまだ読んでない人が夜回り先生を知るきっかけにするのには良い作品だと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-06 23:06:45] [修正:2007-07-06 23:06:45] [このレビューのURL]

6点 LIAR GAME

シンプルなルールのゲームと、その穴を突いた駆け引きや心理戦。この作者の持ち味が遺憾なく発揮されてておもしろい。「ONE OUTS」は馴染めなかったけど、これはより閉鎖的な場所を舞台としているので違和感は感じなかった。
ただ雰囲気的にどうしても「カイジ」の限定ジャンケンとかぶってる感は否めないし、心理描写では福本先生の方が数段上。

それでもカイジとは違い、単純な主人公を中心にドライに物語を盛り上げるのはまた一味違う新鮮さがあり、また騙し合いという点ではこの作者に分があるような気もする。
これからの展開に期待。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-06 22:41:12] [修正:2007-07-06 22:41:12] [このレビューのURL]

作者の作風から考えて明らかに分不相応なテーマかと思いきや、蓋を開けてみれば持ち味の人情味が余すところなく発揮されてて意外と違和感がない。
華やかなホストの世界の裏で厳しい現実に打ちのめされ、足掻きながらも最後には自分の生き方を貫き成長していく男たち、それを影で支える女たちの姿が実に生き生きと描かれる。またどう見ても稲○五郎や阿○寛な人が出てくるのにはニヤッとさせられる。

しかし残念なことに、結末に至るまでの展開が強引すぎる。せっかく長い時間かけて徐々に盛り上げてきたストーリーを完全にぶち壊す駄展開に、取って付けたような薄い終わり方(どう見ても打ち切り)。最終巻を読み終えた後にひどく脱力感を覚えた。

とはいえ、7巻途中までの展開は本当に文句なしにおもしろい。
ホストマンガといえば夜王が有名だけど、これもあと1〜2冊かけてきっちり終わらせていれば自信を持って薦められる出来だったのに…。まったく残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-06 20:11:43] [修正:2007-07-06 20:11:43] [このレビューのURL]

コロコロをリアルタイムで読んでた頃、かなりハマッた記憶がある。
リアルな絵柄と奇妙な世界観は明らかにコロコロの中でも浮いており、「だが、それがいい!」と子供心に思った。

このマンガの何が印象に残ってるかというと、設定を含めたキャラの魅力と、読者に媚びる感じのしないセリフ回し。特に主人公が変身するときに唱える修験道の九字は「うわ、何かよく分からんけどカッコイイ!」と強烈なインパクトがあった。
ストーリーもそれなりに良かった気がする。多分。

今猛烈に読み返してみたいマンガの一つ。
男吾は確か復刻されてたっけ? これもお願いしたい…。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-07-04 01:10:12] [修正:2007-07-04 01:10:12] [このレビューのURL]

確かに手放しで賞賛できるものではないけど、それにしてもこの点数はない。
話題作であるが故にもともとこういうジャンルに興味がない人が手を出して「合わない」と感じるのは分かるけど、ここまで人気が過熱するのはやっぱり内容が伴ってるからであって、やたらと0点とか1点とかつける極端な評価はどう考えてもアンフェア。

…という僕も友達に薦められて読んでみたクチだけど、それなりに楽しめた。人物像はそれぞれ魅力的で人間らしく、同時に今にも壊れそうな危うさも感じさせられる。この表の強さと、裏の脆さをきれいに両立させるストレートさに感心。
カップリングがあり得ないという声も聞こえるけど、個人的には「まあこういうもんなのかな」程度にしか思わなかった。

一方でイマイチ読後の満足感が薄いのもまた事実。そしてどこか間の抜けたパンク解釈が目につくこともまた事実。
それでもやっぱり先が気になるし、後味も悪くない。十分完成度の高い作品だと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-04 00:24:38] [修正:2007-07-04 00:24:38] [このレビューのURL]

少年誌の王道のような冒険マンガ的オープニングを見せたかと思えば、闇の世界や独自の設定の闘技場、さらにはネットゲームやオークションの概念まで。
いろんな世界を違和感なく料理して物語に組み込むセンスの良さはさすが。
あえて舞台を広げることで様々なエッセンスをまじえながら、読者に旅行をさせているような感覚を持たせようという意図も読み取れるし、全く飽きなかった。
念の設定も独特で、一元的な「力」の概念と操る人間によって様々な特徴を見せる「スタンド」の概念の良いところをうまく融合させたようで画期的。ときどき常軌を逸した変人が登場するのも作者らしくて良かった。

が、蟲編に入ってからどうもおかしくなった。
休載のことは抜きにしても、戦闘の駆け引きがどこか短絡的に思えたり、あまりの急展開にパワーバランスが崩れすぎてせっかくの念の概念が置き去りになってるような気がする。

ともかく、今後どう物語が進んでいくのか。気にしても仕方ないのが現実だけど、今の状態はどう考えても生殺し。ちゃんと続きを書いてほしい…。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 17:33:22] [修正:2007-06-29 17:33:22] [このレビューのURL]

重い題材をサクッと描いてしまうのがこの作品の魅力。

真面目で大人な性格のかずいと、無垢で子供な虎弥太。対照的な二人を中心として話は進む。
他人を不幸に陥れている人間をいとも簡単に殺していくかずいだが、そこにあるのは一元的な「善悪」の価値観ではなく、全ての現実を理解した上で自分が罪を引き受ける心だ。
最終的には全ての人物に救いが与えられているところに作者の優しさが感じられる。

作者の画力・構成力の未熟さゆえか、脇役の面々にあまりに薄っぺらな人物が多かったのは少し残念。期待していた次作はもっと残念なことになってしまったが・・・。

深読みせず、淡々と読んでいくと良さが分かってくるはず。
ジャンプ黄金時代末期の隠れた良作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-23 00:51:19] [修正:2007-06-23 00:51:19] [このレビューのURL]

まず、この漫画にストーリー性を期待してはいけない。
初期の低年齢を意識したものから中期以降の大人っぽい作風まで、ストーリー自体に面白みを見出すことは一度もなかった。

よく雰囲気重視の作品だという評価が下されるが全くその通りで、先人への尊敬と愛を以て描かれる幻想的な世界観や遊び心に満ちたセリフ回し、独特の画の表現方法は古い叙景映画の手法に近いものがある。
ここに魅力を見出せるかどうかによって見る者の印象はがらりと変わってくる。

かといってオタク的なウケ狙いの要素が無駄に強調されている訳でもなく、あくまで作者の頭の中に存在する奇妙な世界の一片が豊富な知識よって自由に描かれており、大衆的な他の作品とは一線を画するものがある。
かなり低年齢層向けのボンボンという雑誌上でこの不思議な作品が成立していたことは今考えても奇跡としか思えない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 17:38:16] [修正:2007-06-21 17:38:16] [このレビューのURL]