「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

「カイジ」の正統な続編ということで、黙示録のテンションをどこまで引き継げるかに注目してたけど、さすがによくできてる。
カイジをはじめとするダメ人間なりに筋の通ったキャラクターは魅力的。相変わらず心理描写も秀逸で、多少オーバー気味に表現される追い詰められた人間の思考や読み合いの奥の深さは他の追随を許さない。

シリアス一点張りじゃなくて、ところどころギャグ要素が取り入れられてるのも成功だと思う。当人たちはいたって真面目に振る舞ってるのに、どこか滑稽に見えるのはこのマンガならではの笑いの表現。
ただやっぱり黙示録での文字通り「身を削った」緊迫感には少し届かなかったかな、という印象。これは設定を考えると仕方ない気もするし、作者も分かってることだと思う。
もう少しコンパクトにまとまってればなお良かった。良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-09 00:18:00] [修正:2007-07-09 00:18:00] [このレビューのURL]

7点 DEATH NOTE

かつてないほど邪悪な主人公と緻密な構成、そして何よりデスノートの発想が印象的。

散々言われている通り、Lとの一騎討ち的な頭脳戦対決は非常に面白い構図で、「まず行動ありき」な少年漫画の王道パターンを覆す斬新さがあった。Lのキャラクターは何度見ても秀逸。
第二部の出来はとりたてて悪くはないが、やはり第一部のインパクトが大きすぎてどうしても比較して見てしまう。より「行動」を重視させたスピーディーな展開はこれはこれでおもしろいのだが、もはや麻痺してしまった感覚からすれば確かに物足りなさはあった。
わざわざ第一部第二部と分けて描いてなければ、これほど比較されることはなかったかもしれない。結果的に第一部の完成度の高さが作品全体の印象を悪くしてしまったのではないかと思う。良くも悪くも第一部の存在感が全て。

とはいえ、終始ぐいぐいと先を読ませられる説得力とサスペンス感は抜群。戦闘ものでもないのにこのテンションの高さは特筆もの。ドライで繊細な絵柄も雰囲気がよく出てる。
話題性が大きいので評価が難しいが、きちんと内容は伴っている。十分賞賛に値する良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-07 02:04:21] [修正:2007-07-07 02:04:21] [このレビューのURL]

まず僕たちにとって今のところあまり身近な存在ではない古代ヨーロッパを舞台にしたという設定が良い。この作者特有の異質感がうまく表現できる時代だと思う。

話自体はオーソドックスな伝記ものながら見せ方が非常に上手く、はやく先が知りたい衝動に駆られる。言葉にできない心の叫びが絶妙に描かれており、特にエウメネスが叫ぶシーンやカロンが涙する様子には心をゆさぶられる。
また奴隷や戦争が当たり前のように存在していた当時の時代背景を伝える小話もさり気なく散りばめられていて、話の本筋とは別に興味深いものがある。
絵もシャープさを増しており、戦闘描写やリアルな残酷表現も違和感なく見れる。ただしかなり生々しいタッチなので苦手な人は避けた方がいいかも。

まだ3巻ながら、かなりの手ごたえが感じられる。今後の展開に注目。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-07 00:48:38] [修正:2007-07-07 00:48:38] [このレビューのURL]

7点 HELLSING

古本屋で立ち読みしたときはゴチャゴチャした絵が受け入れられなくて放り投げたけど、本腰入れて読んでみるとこれがなかなかおもしろい。
「狂ってる」っていう表現ができるマンガはいろいろあるが、その中でもこれは非現実の世界をとことん突っ走ってる感じの狂いっぷりが好き。グロい表現やかなりヤバい思想も、フィクションの世界だと割り切って読めるから単純にエンターテイメントとして楽しむことができる。
ときどき入るギャグパートも作者の遊び心やいい感じの手抜きが感じられて良い。

また敵味方問わずキャラクターが非常に魅力的。主人公が最初から強いマンガはあまりおもしろくないのが多いけど、これはそもそも設定自体がぶっ飛んでるから不快感はなかった。先が読めるシーンも多いけど、とにかく熱さと勢いで乗り切っている。

しかしこのマンガ、よくイギリス国教会やバチカンから抗議が来ないもんだ…(かなりの言語に翻訳されてるというのに)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-02 23:19:46] [修正:2007-07-02 23:19:46] [このレビューのURL]

7点 ONE PIECE

何と言われようが、「10巻までの雰囲気が好きだった」という意見は変えられない。

その後のあまりにも人が死なない理不尽さや短絡的な思考が多すぎるのに嫌気が差して何年か読むのをやめていたが、久しぶりにまとめて読んでみると、やっぱり良いところも数多く持ちあわせているマンガなんだということを再確認。
とことんまでバカに徹するキャラクターになったルフィはこれはこれで魅力的だし、中途半端なキャラだった頃よりはだいぶ良くなった。
世界観や登場人物なんかもどんどん広がってるし、伏線も張られまくりだけど、不思議と消化できるような気がして安心して見てられるのはこの作品独自の魅力。

ただ死を描かないことはどうしても戦闘の緊迫感を損なうし、そもそもの航海の部分もかなりおろそかになっている。その点において「海賊」っぽさは相変わらずちっとも伝わってこなかった。
海洋冒険ファンタジーとして読むには十分に面白い。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 17:14:09] [修正:2007-06-29 17:14:09] [このレビューのURL]

明るめな展開が多くなっているのは個人的には好き。
前作が「現世の汚さ」を描いているなら、今作は「現世の素晴らしさ」を描いた人間賛歌と取ることができる。つくづく人間とは裏表の生き物なんだなぁ。
特に猫の話は思わずウルッとくる。

ただ前作とあわせて5巻、6巻と続くにつれさすがに題材が尽きてきたのか、あまり入り込めないエピソードもちょくちょくあった。
それでも着眼点が良いというか、主題の見つけ方が上手いと思わせられる話が多く、全体的にクオリティーは高い。
誰が読んでも見所を見つけられる作品だと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 19:48:49] [修正:2007-06-27 19:48:49] [このレビューのURL]

死を前提にしているだけあり、全体的に暗い雰囲気が漂う。死んですぐの人間の視点で現世を描くというのは新鮮味があった。

天国に行って転生を待つか、死を受け入れず現世で彷徨い続けるか、人間を一人呪い殺して地獄に行くか。
淡々と死者にこの選択を与えていくだけのストーリーだが、それぞれの選択に深い人間模様が描かれていてマンネリは感じなかった。
幸せを奪われた者、不幸のうちに死を迎えたもの、全くの事故で命を奪われた者、数多くの死が描かれているが、他人を殺めるということがどんなに不幸を与えるのかを教えられる。
どんな人間であれ命というものは重いんだなぁ、と。
子供が多く出てくるので絵が少し柔らかくなった感じがするが、相変わらず上手い。ただ「地雷震」後期の方が鋭さがあって好きだった。

地雷震から続けて読むと作者の社会問題への関心と人間観の変化が感じ取れて面白い。
サクッと読むことも深読みすることもできる良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 19:33:27] [修正:2007-06-27 19:33:27] [このレビューのURL]

かなーり敬遠していた作品。周囲の熱い推薦もあってこのたび思い切って読んでみた。

やっぱり最大の不安材料だったあのグロテスク表現は凄まじく、1巻の時点で何度か読むのをやめようかと思った。しかし読んでいくうちに徐々に気にならなくなっていってしまった自分がちょっと怖い。
絵もさることながら登場人物も一人残さず狂人。それも常識の範囲内では考えられないような狂いぶりで、逆に惹かれるものすらあった。思えば絵が気にならなくなったのも、この狂った人間像と完全にマッチしてるからなのかもしれない。
そんな副次的な要素に目が行きがちだけど、どんどん読めてしまうのはストーリー自体に魅力があるからに違いない。最初に衝撃的な情景が見せられ、それから過去に戻るという構成になっているので、何気に先が気になる。

面白い、というのが素直な感想。ただ面白いだけじゃなくて、人によっては麻薬的にハマる魔力を持ったマンガだと思った。幸か不幸か、僕は「まだ」その領域には行ってないけど。
全く万人にお奨めできるような代物ではないけど、臓物がOKな人はなんだかんだ楽しめるんじゃないかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 01:35:16] [修正:2007-06-27 01:35:16] [このレビューのURL]

7点 墨攻

戦国時代の思想家の人生を描いた教科書的歴史漫画かと思ってたら、意外にもかなり脚色の入ったエンターテイメント性の強い内容。典型的な劇画調の「濃い」作風で、残酷なシーンもそれなりに出てくるので読む前にある程度の覚悟はした方が良い。

もともと墨子や墨家の思想は学校の授業で少しかじったのだけのおぼろげな知識しかなかったが、これは無理に思想的な部分を押し付けてこなかったのですんなり読み進めることができた。
描写はかなりリアルで、良くも悪くも「大昔の価値観や戦争の様子はこんな感じだったのか」という雰囲気はよく分かる。現代人の視点から見れば墨家の思想など単純だ、と思うかもしれないが、当時の常識となっていた物事の考え方がしっかり描かれているので、いかに革離が先進的な価値観を持っていたかというのが伝わってくる。
また攻城戦をメインに描いている作品だけあって、アクション的な要素やかけひき、読み合いにもリアリティーがあって良い。

映画が面白かったから、といって軽い気持ちで読んでしまうとちょっと痛い目に遭うかもしれない。
しかし中国史が好きな人や本格的な歴史漫画を求める人を満足させるには不足無い出来。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 00:49:14] [修正:2007-06-27 00:49:14] [このレビューのURL]

一人のしがないおっさんの生き様をここまでコミカルにできるのはさすがといったところ。なんでこの人はこんなにダメ人間を描くのが上手いんだろう。
冷静に考えてみたらかなり異常なキャラクターと無茶苦茶な展開ばかりなのに、なぜかこの作者の手にかかると違和感がなくなってしまう。突っ込みどころ満載な内容だが、ふと自分に対して言われているような気分にさせられるリアルさがあり、素直に笑えないことも。

ただ終わり方が…。「え、これで終わり?」という感じでかなり呆気なかった。えてして人生なんてそんなもんだ、と言いたかったのかな?
ギャグ漫画として読む分にはかなりおもしろい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-25 23:36:21] [修正:2007-06-25 23:36:21] [このレビューのURL]