「Scrooge」さんのページ

総レビュー数: 182レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年07月10日

桜庭一樹の連作短編小説のコミカライズ。
簡単に説明すると、舞台はマリみて。

良家のお嬢さん方がごきげんようと微笑み会う学園が舞台。
数ある部活動のうち、学園のはぐれ者が集まるのが読書倶楽部。
彼らは学園の表の歴史には決して残らない珍妙な事件の、
当事者であり観察者であり記録者である。
ここに、代々の読書倶楽部メンバーが書き残した倶楽部史があって・・・
というお話。

作品の主役は学校そのもの。
一つの場所をたくさんの人間が出たり入ったりして、最後には誰もいなくなる話、と著者インタビューで言っていた。まさにそのとおり。

原作小説はかなり濃い作品で、ページ数の割りに情報量が多い。
コミカライズにあたって原作の美味しいセリフや美味しいシーンを
つまみぐいするように並べ雰囲気を再現するようにしている。
タカハシマコの描く少女たちはかなり良い感じで、
儚い美しさ、傲慢さ、醜さを端的に表し目を奪われる。
雰囲気の表現には成功しているが、一方でどうしても物語は唐突な印象を受ける。

漫画はそれなりに面白いけど物足りないなと思われた方は原作を読むといい。
原作のみ読まれた方は、おお、こいつはこんな顔なのかという感じで本作をどうぞ。

2014年4月現在、最終回の一歩手前。
最終エピソードは複雑な構成になっており、
現役の読書倶楽部員と、卒業後に学園を訪れたOGが同時に別の空間で行動している。
原作小説ではこの複雑さをスムーズに処理しきれずに、何度か読み返したが、
漫画版の描写はなめらかで、テーマがより伝わりやすい。

本作は桜庭一樹のストーリーとタカハシマコの漫画力が見事に結晶化し素晴らしい作品になった。

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[投稿:2013-04-03 17:28:04] [修正:2014-04-03 18:51:58] [このレビューのURL]