「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

食べる事が何よりお好きな劉家の若奥様・沈夫人。
退屈に飽かせて今日も奥様はお抱え料理人・李三を相手にお戯れになる。

基本的には一話完結のワンパターン漫画。
空腹もしくは退屈のために不機嫌になった奥様が李三に無理難題を言いつけ、困り果てた李三が
旨い料理を作って奥様を満足させる、というもの。
李三は忠義に厚く、小心者で、困った事があるとこの世の終わりみたいな表情になって嘆き悲しむという
良く言えば純粋、悪く言えば愚鈍な性格。 密かに奥様のファンでもあります。
そしてこの男、困れば困るほど旨い料理を作るという、ある意味本当に困った男。

この奥様は性格が破綻しているかどうかはさて置き、別に根が悪人なわけでも李三が憎いわけでもなく
彼に意地悪を言うのはただ単に自分の食欲(と、ドSな嗜好)を満たしたいだけ。
本気で悩んで窮地に陥っている李三を見るのは楽しくて仕方ないし、そんな状態の李三が作る料理は
さらに旨くなるしで、李三を困らせることは奥様にとって一石二鳥なのです。
もちろんそれだけでは李三がストレスで倒れてしまうので、上手く褒めることも欠かさずに。
単純な李三はそんな企みに全く気付かず、奥様のアメとムチによって天国と地獄を行ったり来たり。
そういうやり取りが非常に巧みに描かれていて楽しめます。

この作品は料理は当然のこと、服や小物、街並み、文化や生活様式に至るまでその描写が凝っていて、
当時の中国の主従関係の雰囲気も伝わってきます。
主である年下の美人奥様に対して横恋慕なんてとんでもなく、ただただ奥様を心からお慕いする李三。
自分に出来ることは美味しい料理を召し上がっていただくことだけ、という気概で努力し続けます。
そんな料理をパクッと食べたときの奥様の笑顔(と李三をいじめているときの笑顔)が何とも素晴らしく、
奥様の苦労、李三の苦労、それぞれが報われる瞬間というのが読者にもわかりやすくて実に良い感じ。

上記のように基本的にはワンパターンなので、まとめ読みにはあまり向いていないかもしれません。
最初は李三に同情しながら読んでいたのですが、なんか話が進むごとに李三の阿呆っぷりにターボが
かかっていくように思えてイラッとして、途中からは奥様目線で読むようになりました。
李三目線と奥様目線、それぞれ違った楽しみ方ができていいですね。
もっとイラッとさせられる玉潔や李大など味がある脇役もいますので、彼らが出てくる話では
奥様が人格者に見えるという錯覚すら味わえます。

この作品が上手く出来ていると思うのは、料理漫画として中華料理のみに的を絞っていること。
例え同じ近世を舞台にしていても、確かに和食や洋食ではこうはいかなかったかもしれないですね。
食材やその調理法の幅広さでは他に類がなく、薬食同源的な発想で、食で体と心を整える中華。
作り手の食べ手に対する意図が作中でも明確に表現され、よくもまあ毎回のテーマごとに
これだけたくさんの料理を紹介できるなと感心してしまいます。
さてその料理ですが、調理工程から完成図の描写に至るまでとても丁寧に描かれていて、
実に興味と食欲をそそります。 とても秀逸な料理漫画。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-16 00:44:09] [修正:2011-11-16 00:46:33] [このレビューのURL]

7点 恋の門

羽生生流・純文学コミック。
ある種の異質で不気味な情熱が激しく飛び交い、読者を儚くも奇妙な純愛の世界へと導く作品。

自らの作品を芸術だと信じ、周囲に理解されないことを苦悩する門。
そんな門をコスプレのパートナー、自らの人形として囲う恋乃。
それぞれのプライド、信念、打算、エゴ、虚栄心、焦り、苛立ち、それらが激しくぶつかり合って
ドロドロに絡み合いながら、激しく狂い咲く恋の物語。

個性なんていう言葉で簡単に片づけてもいいんですが、とにかくこの作者は漫画家として
目指している地点、方向性が他の漫画家とは違うように感じられます。
その辺りが合わない人にとっては何やってんだかさっぱりで、読むのも苦痛な作品かもしれません。
作者の他の作品よりはずっと大衆向けで読みやすいですが、それでも濃さと熱さが凄いです。

最初の方は、全く異質で違う世界の人たちの恋愛もの、いやむしろ恋愛ものかどうかも
よくわからない展開が続きます。 感情移入する隙すら見つからないです。
なのに二人が本音と本音でぶつかり合うようになってきてからは、なぜか不思議と
それぞれのキャラの濃さがどこか身近なものに感じられるようになってきます。
他の方のレビューにもありますが、とにかく人物の描き方がすさまじく濃いです。
恋愛の汚い部分を小綺麗に描いている漫画なんて腐るほどあると思いますが、
醜い部分までを激しく赤裸々に描いている漫画なんてそうはないんじゃないかな。

事前に思っていたよりずっと面白く読めた作品でした。
でも終盤のアレがなあ…。
本当にこの手の恋愛話って特段必要ないのにアレな展開になったりしますが、少なくともこの作品では
全く必要な展開とも思えなかったので、そこが本当に残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-10 00:33:29] [修正:2011-11-10 00:33:29] [このレビューのURL]

ジャズを通して描かれる古き良き青春物語。

友情の見せ方、恋愛の描き方、雰囲気、絵柄、どれもが古臭く、常に新しさを追い求める漫画界では
古臭さは致命的なはずなのですが、この作品ではその古臭さを上手く長所に転じさせています。
もちろんただ古臭いだけではなく、現代の人にも読みやすいように1960年代を再構成して
田舎の素朴な空気と共に放つ手腕は見事。
至る所にマイナス(基本的に主人公が不幸になる系)の伏線が仕掛けてあるタイプの作り方で、
その点も昔のタイプというか、最近ではちょっと珍しい系統の作品かなと思います。

この作品の見せどころの一つが、他の方のレビューにもあるように、ジャズの演奏シーン。
これがまた本当に楽しそうで魅力的。
演奏シーン以外の展開が割と暗めな話なので、その対比が尚更に際立っています。
ジャズはもともと溢れ出るような感情のありったけを曲に込めて解き放つような印象。
どちらかというと人生の渋みを覚えた世代に適した音楽ジャンルだと思っていたのですが、
それが青春漫画での感情表現にも実によく似合うのかなと目からウロコでした。
などと語れるほど私も全然詳しくないですし、この作品でもジャズはあくまで話を彩る脇役であり、
メインは主人公たちの青春物語なので、そちらを静かに見守ることにします。
素朴な中に暖かみがあり、グイッと引き込まれるというよりは徐々に心に浸透していくような良作。

こういう音楽系の作品は好きなアーティストがどこまでフィーチャーされるかも楽しみの一つ。
この作品ではアート・ブレイキーやビル・エヴァンスの出番が多く、ファンの人にはたまらんでしょう。
ちなみに本当にどうでもいいんですが私はサッチモとサラ・ヴォーンが好きなんですけど、
サッチモは未だ出てこないし、サラは一応出てきたけど鳩っすか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-28 01:33:08] [修正:2011-10-28 01:33:38] [このレビューのURL]

31歳の小説家・内海真一はスランプ中。 そんな彼の家に1匹の猫と10歳の少女・森本遥がやってくる。
小説が書けなくなっていた真一に担当編集が提案したのは、遥をモデルにした恋愛小説だった…。
少女は思った。「そばにいたい」と。
男は感じた。「放っておけない」と。
そう…これは恋のはなし。

31歳男性と10歳少女のラブストーリー。
とんでもないシチュエーションに聞こえますが、ファンタジーっぽくならず、面白いです。

主人公の真一は、世間一般が作家に対して抱いているようなステレオタイプ的な性格そのままで、
厭世主義的なところがあって、中身は悪ガキで、立派な大人とは言い難いキャラ。
人との付き合い方も不器用で、子供嫌い。 そう、子供嫌い。 要するにロリコンではないんですね。
空き家だと思い込んで真一の家に入り込んだ遥に対しても邪魔臭いとしか感じておらず、
厳しい(というか結構キツい)言葉で追い返そうとします。
まあこれは大人としては当然の行動か。 変質者として通報されたらアウトですし。

その後、複雑な家庭環境のために行き場のない遥を出入り自由にしてあげることになっても、
あくまで真一の遥に対する感情は、自分と似た境遇による同情、そして保護者のような気持ち。
一方の遥はおとなしいながらも芯の強い子で、自分の気持ちに真っ直ぐ向き合います。
と言うか10歳だから駆け引きとかのしようもないんですけどね。
真一に対する「好き」の気持ちも、恋愛感情なのかどうかよくわからない。

遥は初恋を自覚していくものの、少なくとも真一の遥に対する気持ちはほぼ同情一択で変わらず、
そういう意味ではラブストーリーとはなっていないのが現状です。
そう考えてみると、映画「レオン」のような関係に近いかもしれません。

ただしここで秀逸なのがこの作品のタイトル。 そうなんですよね。 「これは恋のはなし」。
ぶっきらぼうながらも端々で優しさを見せる真一と、その優しさに気付いてさらに惹かれていく遥。
その二人の関係がどこでどう変化していくのか。 そこがこの作品の見どころだと思います。

もともと連載当初は3巻程度で終了予定だったそうですが、思わぬ人気が出たためか、
現在(3巻まで刊行)のところはまだまだ終わりそうにありません。
その代わりに新キャラが出てきましたが、これがまたグダグダ気味で。
中途半端にトラブルを起こして中途半端に解決して中途半端にレギュラーキャラになった感じ。
少なくとも2巻までの展開とはちょっと違ってしまったように思えるので、立て直しに期待。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-11 00:59:59] [修正:2011-10-11 00:59:59] [このレビューのURL]

パパは魔法使い、というか日本最強の陰陽師。
娘を溺愛してはいるものの、立派な大人とは口が裂けても言えないような人でなしの大人子供。
娘に陰陽師の仕事を継がせようと、いつも娘を巻き込んで無茶苦茶なことばかりする。
でもそんなパパは実は……。

大まかに説明すると、常識的な生活能力が皆無なパパの世話をしながら暮らす主人公の女の子が、
仕事を継ぐのが嫌で普通の生活を夢見ながらも怪奇現象に頻繁に(パパの思惑もあって)巻き込まれ、
でも彼女自身も陰陽師の素質があるもんだからついうっかり事件を解決しちゃったりするという。

基本的にはこういうドタバタ話ではあるものの、物語の端々に後に繋がる伏線が散りばめられていて、
だんだんコミカルな雰囲気から次第にシリアスな展開になっていくとともにこれまでの伏線が結集し、
物語を貫く壮大な伏線となって主人公の前に立ちはだかります。
この辺の構成の上手さがベテランならではというか、実にお見事。

ラストがとても良かったです。 やはりラストが良い作品は良いですね。
パパの性格設定の滅茶苦茶さと、それを包み込んで余りある主人公の心の広さが素晴らしいです。

現在は続編の「魔法使いの娘ニ非ズ」が連載中ですが、こちらは普通の妖怪退治ものになってしまって
いて、まだ現時点で続編からは本作ほどの面白さは読み取れないです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-20 01:13:27] [修正:2011-09-21 01:13:17] [このレビューのURL]

30代半ばの女性と50代のオッサンとの恋愛話。
こんな風に紹介しただけで興味を失くす人が大半かもしれないですが、これがまた面白かった。

ジャンルとしてはラブコメと言っても差し支えないものの、若い子たちのそれとは違い、
恋のライバルキャラのようなものはいません。
障害となるのは、自分の過去だったり、言動と本音の部分との乖離だったり、世間的な体裁だったり。
そういうものが殻となり、壁となり、素直になれず、なかなか動き出せず。

最初は海江田が本性を簡単には見せずに飄々としているわかりづらいキャラだと思っていました。
でも彼を取り巻く状況が徐々に明らかになってくるにつれ、彼の人となりが伝わってきました。
何のことはない、彼は本音で生きる単純明快な人物でした。 ただ不器用なだけで。
ただし直球勝負というよりは、自分の気持ちや発言に今まで培ってきた「経験」というオブラートを
被せていて、それらが若い人には出せない渋みというか深さを生み出しています。

で、そうなるとつぐみの気持ちにどうもすっきりしなくなる。
自分が男性だからなのか。 女性の方々には「あるある」な感じで共感を得ているのでしょうか。
作者は「山月記」の言葉を借りてつぐみを「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」などと評していますが、
仕事での成功を男で不幸になることでバランスをとり、幸せの話をすると下を向き、
過去に囚われて目の前にある幸せに目をつぶるつぐみ。
「君はぼくが好きなんや。ぼくも君が好きや。 それだけなのに、なんでこないにややこしいんや?」

そんなつぐみを年の功による包容力と大きな愛情で丸ごと包み込んで、なんていう展開には
なかなかならないのがこの作品。
つぐみがやんちゃなオッサンに振り回されつつも、オッサンが時折見せる懐の深さが何とも格好良く、
少しずつ少しずつ彼女の心を取り囲む殻が剥がされていきます。
男の自分からすると、枯れ専(って言うんですか)などは正直どうでもよくて、
ただただ「こんなオヤジになりてーな」と思わせてくれる作品。 いや本当に。

それだけに最後の超展開が……。 あれ必要だったのでしょうか。
ああでもしないとつぐみの気持ちは動かせなかったのかと思うと悲しくもあり。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-29 01:08:46] [修正:2011-07-29 01:10:24] [このレビューのURL]

優しい心を持ち、食い意地の張ったアトランティス生まれのヒーロー、ワッハマン。
不死身の肉体と無敵の強さを誇る彼は、今日もどこかでこそこそと暮らしている、はずだったが……。

序盤から中盤にかけては一話完結のギャグ漫画と言ってもいいほどの内容ですが、
ギャグにうまくカモフラージュされた終末への予兆が少しずつ少しずつ見え隠れし始め、
登場人物たちも読者すらも気付かないうちに悲劇的な展開へと導かれていきます。
最後まで明かされない謎もいくつかあるものの、全体の構成が非常に秀逸。
あんまり書くとネタバレになるので自重しますが、まさかあのキャラの名前自体が伏線になっているとは。

エピローグがとても好き。
残酷な現実と喪失感との繰り返しの中で永遠に生きていく彼へ、仲間達からのささやかなプレゼント。
「なに笑ってんだよ」。 そりゃ笑うでしょ。 もちろん泣き笑いですね。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-29 01:04:46] [修正:2011-07-29 01:04:46] [このレビューのURL]

「栞と紙魚子」シリーズとしてレビュー。
諸星氏初の少女漫画作品。 であるものの、全くそんな感じがしないです。 いつも通り。
作者もあとがきで「少女雑誌なので、一応少女を主人公にしただけ」みたいなこと書いてますし。

ジャンルはシュールホラーコメディーと表現するしかない独特の世界観。
町の大通りから一本外れた小道がどこにつながっているのか。
町外れの屋敷の庭の片隅で何が行われているのか。
路地裏の怪しい店でどんなものが売られているのか。
そういう日常のすぐ隣にある怪奇が描かれていて、日常と非日常との溶け込み具合が秀逸、というか奇々怪々。
舞台を例えて言うと「うる星やつら」の友引町といった感じでしょうか。 作風は全く違いますが。

どこか人を喰った絵柄、テンポ、内容。
恐怖というよりは、不条理と猟奇とユーモアに溢れた世界。
作中の言葉を借りれば、「細かいことは考えちゃダメ」な、「ネジが一本どころか二、三本外れた」感じ。
換言すると、そんな滅茶苦茶な内容を諸星氏のセンスで上手くまとめて楽しませてくれる作品。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-07-26 01:33:35] [修正:2011-07-26 01:33:35] [このレビューのURL]

「君だけをみつめてる」なんていう直球タイトルなのにヒロインが2人いる反則漫画。

恋愛と夢(映画)との間で悩む主人公。
恋愛と夢(役者)との間で悩むヒロインその1。
一方は恋愛ではない方を選択し、もう一方はなぜ自分がその道に進みたいのか思い悩みます。
ただそんな二人の決断には時差があり、そのすれ違いがまた二人をそれぞれ苦悩させます。
そしてそんな主人公を優しく大きな愛を持って見守るヒロインその2。

何だかんだでとんとん拍子に出世していくものの、みんな一生懸命に自分の目標や夢に向かって
頑張っていく、ジャンルでいうと青春恋愛もの。 ラブコメとはちょっと違う気もします。
登場人物は基本的にみんな良い人で各々熱さを秘めているので、そういうのが苦手な人には
お薦めしづらいかも。 特にヒロインその2のピュアさなんかもう…。

連載当時は、YJの後ろの方に載っている漫画、ぐらいの感覚で流し読みしていましたが、
最近ふと縁があって読んでみたら、時代を感じるもののいやはや面白い。
確かにベッタベタでコテコテの展開なのですが、それって決して悪いことじゃないと思います。
意外性を狙った内容よりもこういう話の方が登場人物の苦悩が上手く描けるような気もしますし。
自分が大学生ぐらいの頃までにちゃんと読めていたらもっとはまったかもしれない作品。

物足りない点を敢えて挙げると、登場人物の会話や行動がクサいのはまあ良いとして、
特に後半部分で主人公とヒロインその1それぞれの葛藤と成長を描くのに巻数が足りていないところ。
苦悩の度合いもちょっと浅いですし。
これは打ち切りとかでなく、作者の技量の問題な気がします。これ以上話を広げられなかったっていう。
もっとゆっくりと、もっと練り上げながら描くことができていれば、特に成長という部分において
深みのある描写ができたのではないかと思います。 多少もったいない感じ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-26 01:25:30] [修正:2011-07-26 01:26:39] [このレビューのURL]

奏者は地獄を味わい、聴衆は天国を味わう。
「天才」を描いたさそうあきらの音楽作品、第二弾。
その天才が子供なら「神童」、そして天才が謎のジジイなら「巨匠(マエストロ)」といったところか。

1人で弾くピアノと違い、こちらは極上の音の融合がテーマの1つ。
物語中盤まではオーケストラの薀蓄を繋ぎ合わせて機械的に1つの作品を構成している感じ。
叙情的な雰囲気の漂う「神童」と比べるとかなり異質な印象を受けます。
団員1人1人のエピソードも詳しく描いてはいるものの、一部のメインキャラを除いて、
それがサブキャラへの感情移入や興味につながるような描き方にはなっていないように思えました。

さそう作品といえばその独特な絵柄は避けては通れないですね。
表現力は高い方だと思いますし、評価においてマイナスという訳でもないですが、
少なくとも絵でプラス評価にはなり得ないのが正直なところです。
ストップモーションとも評される動きの無さに加え、次のコマとの流れるような連動性にも欠けていて、
それぞれのコマがブツ切りにされているような印象。
まあ慣れてくればそれも味わい深いものになってくるので懸念するほどでもないですが。

この作品は終盤の展開と鬼気迫るような迫力が素晴らしいです。
楽曲の最後を飾るがごとく、紙面から溢れ出してくる怒涛の音楽。
ぜひ最後まで読んでみてほしい作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-19 00:50:08] [修正:2011-07-19 01:12:51] [このレビューのURL]

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