「アルゲマイネ原野」さんのページ

名作「寄生獣」の次回作ということもあり、よく比較されがちだが
民俗学+SFと個人的な趣向からこっちの方が好き。

とにかくこの作品、起承転結が非常にハッキリしており、洗練された物語構成が一番の特徴である。
特に物語の随所に散りばめられた丸神の里の謎が、ラストの巻で一気に集結していく様子は
非常に鮮やかで見事というしかない。
主人公が観測者的な立場にいる点や、物語の肉付けを極力省いている点も加わって
全体的に非常に計算尽くされたスマートな印象を受ける。

ただしこの展開全体からみたまとまりの良さは短所ともとれ、物語の盛り上がりに欠けるとも言える。
特に作品の最大の山場であるヒロインが主人公に説得されるラストシーンは
ここら辺の歪みが出ており少々違和感があった。そこが惜しいと言えば惜しいかな。
(ただ、ここで主人公の主張している内容こそ非常に共感できた部分だったりもするが)
もしこの作品が丸神頼之の今までの経緯や東丸兄妹の関係など掘り下げたストーリーであれば
また違った評価を受けていたのかも知れないがこの作品の魅力である謎解きと展開のスマートさが
失われるとすれば…うーん…迷うところ

ほの暗く、淡々と静かでありながらも作品の底に力強さを感じる、
岩明均の真骨頂と言えるお勧めの作品。

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[投稿:2008-08-19 22:38:25] [修正:2008-08-19 22:38:25]