「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

原作者の作品はいくつか読んだことがあるという程度で、これは未読。 理由はbooさんと同じです。
なので原作との比較はできませんが、ここは漫画レビューサイトということで、あくまでこの漫画を
読んだ感想を書いてみます。

決して割れないガラス、びくともしないドア、どこにも繋がらない電話、無人の校舎、
自殺のあった時刻である午後5時53分で止まってしまった時計。
理解を超えた事態に戸惑う彼らに静かに迫る悪意……。
ストーリーをすごく大まかにまとめると、無人の校舎から出られなくなった仲良し8人の生徒が
自殺したクラスメートの名と顔が自分たちの記憶から消されていることに気付き、この中の1人が実は
死んでいるのではと互いに疑心暗鬼になる中、1人また1人といなくなっていく…、というもの。

クローズド・サークルっぽい舞台や1人ずついなくなる展開から、「そして誰もいなくなった」的な
話っぽくも思えますが、この話のメインは「忘れていたことを思い出す」ということ。
非現実的な世界でそこのルールに則りながら、緊迫した心理戦が繰り広げられていきます。
とともに、「自分たちが巻き込まれたのはなぜか」、「自分たちにも関係があるのでは」という観点から
「その人物がなぜ自殺したのか」という動機の面をも追いかけていくことになります。

この作品、原作はミステリー小説なのかもしれないですが、少なくとも漫画版は違うと思います。
というのも、主人公を含めた登場人物は真実の解明のためにいろいろと推理していくものの、
結局は謎を解いたわけではなく、ただ単に思い出しただけ。
思い出すにしても論理性や何らかのきっかけがあるわけでもなく、思い出した者勝ちという感じ。
その点で、よくあるミステリーのように主人公(=読者)が自らの知恵と推理で謎を解明した、
というようなカタルシスには乏しくなっています。、

原作の長編小説は、恐らくはそのページの多くを登場人物の掘り下げに費やしているのでしょう。
漫画版でもそれなりに多くのページが割かれてはいますが、やはり元のページ数に差がある分
どうしても人物の掘り下げも中途半端なものになってしまっている感があります。
ミステリー部分で物足りなかった点をその辺りで補ってほしかったですね。
作画担当はジュヴナイル的な作品が滅法上手い印象ですが、初期の作品だからかその点もいま一つ。
その分、それぞれの登場人物の追い詰められ方がホラーじみていてなかなか面白く読めましたが、
これは本来の原作の楽しみ方に適合しているのか甚だ疑問。 まあ面白けりゃいいですが。

で、漫画の雰囲気は良いと思うんですが、全体的に出来が良い作品とは言い難いです。
悪い作品ではないんだけどな、という感じ。

最後にちょっと思ったことを一つだけ。
この作品のヒロインには原作者の名前が付いていますが、これが違和感ありまくり。
有栖川とか法月みたいに主人公となって自ら作品を動かしていくのならまだしも、殊に受動的な
ヒロインなので、変な先入観ばかりが頭に残ってしまって作品としてのメリットが感じられないです。
まあこの辺りは原作小説が出た時点で議論し尽くされていると思うのでこのぐらいにしておきます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-05 01:22:16] [修正:2011-11-05 01:22:16] [このレビューのURL]

他の方のレビューにもある通り、「魔王」と「グラスホッパー」を掛け合わせた感じの内容です。
少年漫画らしく主要登場人物を少年または青年ぐらいの年齢まで落としていて、
作品の勢いという点ではむしろ原作小説よりもこちらの方がずっと感じられます。
作者好きだけど原作小説はそうでもない私ですが、楽しめたことは確か。
連載されてた頃はちっとも読む気にならなかったですけど、これはコミックスで一気読みタイプの
作品だと思います。

物語はちょっと特殊な能力を持った二人の兄弟が主人公。
兄の「安藤」編だけならもっと高い点数を付けても良いかも。
途中かなり中だるみするものの、最初と最後がスリリングに上手く描けていて楽しめます。

弟の「潤也」編が、つまらなくはないもののちょっと路頭に迷った感じ。
潤也くんもかたき討ちをするはずだったのにいつのまにか敵が<令嬢>にすり替わってしまっていて、
打倒犬養はいつの間にかどこへやら、最後の殺し屋勢揃いも面白かったんだけど展開としては無意味。

全体的な感想としては、原作よりも壮大な感じを出そうと試みているのはわかりますが、
結果的にだいぶスケールが小さくなってしまったような気がします。
やっぱり終わり方が良くなかったのが残念だったかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-25 01:13:43] [修正:2011-10-25 01:13:43] [このレビューのURL]

作者の青年誌掲載第3弾。
過去2作と違って妙なSF的設定も不幸的展開もなく、普通のラブコメ。
基本的に万人向けで絵も上手く、誰が見てもそれなりに読めるような出来に仕上がっているものの、
悪く言えばとても無難な作品となっています。
前作の読者からの反応がアレすぎて冒険しづらかったのかも。

この作品では両想いになってからが(もちろん当の本人たちはそんなこと知りませんが)とても長く、
しかも互いの気持ちを読者ははっきり知ってしまっているため、読んでいて全くドキドキしません。
「もうここまで来たんだから早くくっつけよー」という展開が、月イチ連載だったからなのか
随分長いものに感じられたような気がします。
相手の気持ちが分からないような構成ならまだしも、それで読者をじらそうとしているのなら
やり方を多少なりとも間違えたのでは。

ただそうは言ってもコミックスで読むとまあ普通な感じになるのかも。
内容も重くもなく暗くもなくなので、まとめ読みに向いているのではないでしょうか。
むしろなぜ月イチ連載なのかがよくわからない。 次作も月イチになるのかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-21 00:49:26] [修正:2011-10-21 00:49:26] [このレビューのURL]

自分にとって初めてのいくえみ作品。
でもファンの人には申し訳ないですが、私の場合は以前1巻を読んだ時点で投げ出しました。
同作者の「潔く柔く」には10点を付けたんですが、この作品はそのぐらい合わなかったです。

ふときっかけがあって読み返してみましたが、うーんやっぱり合わなかったな、という感じ。
一応つながっている話などもあるものの、とりとめもないオムニバスな印象です。
読んでいて気付いたのが、いくえみ綾の作品を気に入るかどうかは即ち、独特の描写で定評がある
いくえみ男子を気に入るかどうかにかかっているのかも、ということ。
で、似た作りの「潔く柔く」では別に何とも思わなかったですが、この作品ではいくえみ男子を
しゃらくさいと思ってしまった。 ここが評価の分かれ目かと。

レビューを「好み」の一言で片づけるのは個人的にあまり好きではないですけど
残念ながら私の表現力では他にうまく説明できないです。
敢えて書いてみると、「潔く柔く」では一本ドンと作品にメインの筋が通っていて、それが上手い具合に
見え隠れするのがツボにはまったのですが、こちらは単なる話の寄せ集めにしか思えなかったこと。
評価というのは読んだ時期やその時の心情によっても大きく変わってくるので実に難しいです。
いくえみ作品では他にも面白く読めた作品はあるものの、全然ダメだった作品もあるので、
私にとって評価の難しい作者の一人と言えるかもしれません。

まあ他作品と比べてばかりでも何なのでこの作品についてちょっとだけ書いておくと、
日常を描いたオムニバス集。 たまに話がつながったりもします。
が、先ほど「とりとめもない」という表現を使ったのは、それそれの話の設定がバラバラなように
思えてしまったので。 作品全体としてのテーマにどうも一貫性がない感じ。
何か大きなテーマで括ってほしかった気がします。
短編の質はベテラン作家だけあってうまくまとまっていますが、自分の琴線に触れるような話は
一つも無かったなという印象です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-18 01:25:31] [修正:2011-10-18 01:25:31] [このレビューのURL]

5点 結界師

週刊少年サンデー恒例の長編妖怪もの。

絵はすっきりとしていて読みやすく、主人公は突っ走る系のキャラですがいかにも少年漫画の主人公と
いう感じで、なかなかバランスの良い作品という印象でした。 途中までは。
こんなに長くする必要なかったんじゃないかな、というのが素直な感想。

確かに途中までは面白かったです。
ただ登場人物が必要以上に多くて作者にも制御しきれず、そのために作品自体の印象が混沌として
かなり薄く広くなものになってしまったように感じました。

細かい設定なども良く出来ているのですが、その最終目的が何なのかが非常に見えづらい作品でした。
何というか、作品の根幹がしっかりしていないために、面白そうな要素が互いに上手く連動せず
全体像がとてもわかりづらくなってしまっています。
もともとが「誰かを倒す」という能動的な目的ではなく「森を守る」という受動的な目的であるため
描きにくかったのかもしれないですが、それならばあまり手を広げずに森の謎を解くことのみに
終始した方がずっと面白かったんじゃないか、なんて思ってしまいました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-10 00:48:51] [修正:2011-09-10 00:50:00] [このレビューのURL]

第一部と合わせてレビュー。

大ヒットしたゲームの漫画版。
作画は、原作者をして「気持ち悪い」と言わしめるほど藤島康介に絵が似た新鋭・政一九。
なぜこの時期に漫画化したかと言うと、漫画化のオファーはずっと断り続けていたらしいのですが、
あまりに政一九の絵が原作の雰囲気に似ていたため広井王子も止む無くGOサインを出したとのこと。

さてこの政一九氏ですが、確かに静止画は似ているものの、漫画家としての技量はまだまだ
藤島康介の足元にも及ばないです。
他の方のレビューにもあるとおり、動く絵は下手だし作品としての盛り上がりにも欠けます。
何より、彼独自の個性が全然見えてこないです。
モノマネ芸人だって、ただ単に似ているよりも独自の個性を足した方が面白いのに。

ストーリーも原作に忠実なのですが、これは原作に忠実に描いて今さら誰が得をするのだろうか。
せっかく漫画原作も広井王子がやっているのだから、オリジナルで勝負してほしかったです。
第二部になってちょっとは変わるかと思ったらそうでもなかったですね。
連載誌が2度も休刊するという憂き目にあったのは不幸ですが、そろそろ潮時かなという気もします。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-08 02:25:41] [修正:2011-09-08 02:26:43] [このレビューのURL]

読む前は「青春もの、もしくはラブコメがメインで、それに数学をアクセントとして絡めた感じ」かと
思っていたら、違いましたね。 むしろ真逆。
「数学を楽しく読み解くことがメインで、それにアクセントとして青春ラブコメを絡めた感じ」の作品。

着眼点が新しくてなかなか個性的な作品ですが、間口が広くて誰にでも楽しめる、と言うよりは、
数学にある程度の知識や関心がある人が読んだ方が楽しめるかも。
物語は主要登場人物3人のみでほぼ展開されていきます。
各々の性格が物語部分だけでなく数学を学ぶ姿勢や発想、問題の解き方にまで如実に表れていて
その辺りが上手くできていると思います。

ただし数学部分を取っ払ってしまうと、可もなく不可もなくな普通の青春もの。
むしろ何がしたかったのか、どう展開させたかったのか、結局よくわからん内容でした。

別れの合図としてのフィボナッチサインは作中ではちょっと楽しげに見えて、数学青春ものっぽいです。
ただ現実で使うのは痛くてとてもできそうにないですけどね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-29 00:41:49] [修正:2011-08-29 00:43:22] [このレビューのURL]

変態おバカ紅茶漫画。

好きな子を親友に取られた主人公が、腹いせにオシャレな紅茶店でケーキをヤケ食いして
勧められるままに怪しげな紅茶を飲んだら、何と女性の身体になってしまい、
でそれに気付かずに女性の身体のまま好きな子に告白したら、彼女は実は……。
その後、主人公は身体を元に戻すために渋々紅茶店でバイトすることになるが、
飲むとおかしな効力を発揮する紅茶の被害者は主人公だけではなかったのだった、というお話。

中身が何にもない作品ですが、ここまで潔いと却って面白く感じます。
これだけ頭使わないで読めると楽しいです。
作者曰く、「元々は紅茶の漫画を目指していたが、作品のパンチ不足を
なぜかおっぱいで補うという暴挙に出た結果、こういう作品になってしまった」とのこと。
紅茶店の他のメンバーや親友の性癖までも少しずつ明らかになってきて、正に変態漫画。

難点があるとすれば終わり方。 まさかのタイミングで終了。
まあいいんですけど。 もうちょっときっちり終わってほしかった気もします。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-29 00:38:15] [修正:2011-08-29 00:38:15] [このレビューのURL]

5点 とかげ

神を喰らったが故に永遠に死ねない呪いを受けた「とかげ」。
人間としての死を望むために呪いをかけた相手を探し求めるとかげと、それに巻き込まれた忍武、
そしてとかげを国に害する者として消滅させようとする国の特殊機関。

何だか重くて暗そうな話に聞こえますがそんなことはなく、雰囲気もキャラも良くて読みやすく、
不死を謳いながらどこか儚さをも感じさせる不思議な作品。

全3巻でなかなか綺麗にまとまってはいるものの、その分スケールが小さくなってしまった感じ。
1巻を読んだ時点ではかなり面白いと思ったのですけどね。
と言うか途中までは結構面白かったのですが、分かりづらい終盤と放置気味のラストのために
どうも自分の中で勿体無い感じの作品になってしまっています。

絵はちょっと雑な印象もありますが、全体的に色気があってとても上手いと思います。
男臭い雰囲気のSPよりも、若い女性(中身は男性ですが…)をメインに据えたこういう作品の方が
作者の絵柄には合っているような気がしますね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-06-29 01:22:03] [修正:2011-06-29 01:22:03] [このレビューのURL]

「突然神様になってしまった中学生の女の子」のお話。

レビューを書くためにちょっと検索してみたら、この作品は元がアニメらしいのですが、そちらの方は
他の名だたる作品(ジブリとかエヴァとかAKIRAとか)と並んで文化庁の日本のメディア芸術100選に
選ばれるぐらいの名作らしいですね。 ちっとも知らんかった。

で、こちらのコミカライズ作品ですが、結論から言うとそこまで面白いものでもなかったです。

作品の雰囲気は良い感じ。
「千と千尋」にどこか似ていながらも、まったりほのぼのした雰囲気。
主人公ののんびりした性格とも相まって、ゆったりとした空気を味わうことができます。
ただしガチャガチャした性格のキャラも多かったり、全く興味の持てないラブコメパートが
ちょこちょこ挟まってきたりと、せっかくのまったり感があまり活かせていないように感じられました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-06-22 15:53:49] [修正:2011-06-22 15:53:49] [このレビューのURL]

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