「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

大ヒットしたアニメ映画のコミカライズ版。

全3巻という短い中で、登場人物それぞれに見せ場を作り、読み応えのある話にうまくまとまっています。
それは話のテーマである「人と人とのつながり」や「家族の絆」にしっかり焦点を絞って描けているから。
軸がブレない作品は強いです。
昔ながらの黒電話で電話をかけまくったり、大事な場面で手紙がポイントになるなど、
デジタルの世界を描きながらも、アナログ的な要素にちゃんとスポットを当てているのも良いところ。
小道具の使い方には多少わざとらしいところもありますけどね。

のんびりした中での緊迫した戦い。
バーチャルな仮想世界での戦いが日本の原風景とマッチして、素晴らしい雰囲気を生み出しています。
作品の展開やテンポはどこか野暮ったく、あまり洗練されていない感じもしますが、
それが逆に良い具合で郷愁を感じさせてくれます。 そんな雰囲気にやられました。
開放感と爽快感が素敵すぎます。
なるほど、この雰囲気は夏じゃないとダメですね。 だからサマーウォーズ。

青年誌に連載されていたようですが、主人公の成長、先輩との恋愛模様、強敵とのバトル展開、
読んでいるときのドキドキワクワク感、そしてすっきり綺麗なエンディング、等々、
少年誌の方が向いていたんじゃないかな、という内容でした。
映画のコミカライズ版としてだけでなく、漫画作品としても良い出来だと思います。 良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-09 00:56:36] [修正:2010-09-09 01:00:46] [このレビューのURL]

面白い話を描こう、というよりは、作者が強烈なメッセージを読者にぶつけたいがための
作品のように感じられます。
それでいて漫画としても綺麗にまとまっていて、素直に面白かったです。

読んでいて「痛い」とはそれほど思わなかったですね。
むしろ「痛々しい」という表現の方がしっくりくる感じです。
青木さんが「言葉は暴力」と自ら言うほどの鋭い発言でズバズバ斬ってくれるのが爽快だったり。
部員にもっと自己投影した方がよかったのかもしれないですが、登場人物になりきるだけが
漫画の読み方じゃないですからね。 まぁ性格悪い読み方かもしれません。


この作品に対するレビューは素晴らしいものが多くて、ちょっと気後れしてしまいますが、
以上、ここまでがこの作品の感想文でした。
確かに天原君なんかは悪例極まりないですが、一般人レベルで考えると、個人的には別に
感想文じみたものでもいいと思うんですよ。
プロの批評家がしかるべき場で読書感想文なんか披露したら、もうその人に仕事は来ないでしょうが、
我々はプロの批評家ではないのだし(と言うと無責任な逃げの発言になってしまいますけど)、
このサイトのレビューなどでもそうですが、「好きなものを読んで好きだと表現すること」 の敷居を
高くしたくないなあ、と思います。

でも必ず心に留めておきたいのが、自分の発言を聞いてくれる人に、文章を見てくれる人に、
そして何よりその作品に対して、敬意を表すること、ですね。
特に悪い評価を下すときは要注意。 褒めるよりも、けなす方が簡単なんですよね。
青木さんが言うように、作品を叩くことで「自己顕示欲」を発揮するだけのものは特に。
悪い部分ばかりを指摘したものは何となく本質を捉えているように錯覚しがちですが、
それは単なる批判であって、批評ではないのですから。

天原くんの非は、「批評と感想との区別がついていないこと」にあるのではなく、
「作品への愛情がない」ことと、「自分の意見を相手に押し付ける」ことにあると思っています。


さてこの作品、タイトルからして皮肉たっぷりですが、ただ切り捨て御免で終わるのではなく、
読者にとって希望も持たせてくれるところがちょっとばかり心憎いです。

「一所懸命は、悪くないよね? いいよ!」
「夢はつぶれたり、消えたりするものじゃなくて、ただ、形を変えるだけなんです。
16歳の青木杏さんの、今の夢は…?」

読み終わった後、つい自問自答したくなりました。

見たくないものもちゃんと見えているか? 聞きたくないこともちゃんと聞こえているか?
気付かないうちに自分に都合よく事実を歪めることはしてない……よな?

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-09-01 00:55:25] [修正:2010-09-01 01:19:26] [このレビューのURL]

おバカな女子高生たちがテンション高めで繰り広げるドタバタコメディ。
って書いた後に他の方々のレビューを読んだら、見事に同じ内容ですね…。かぶってごめんなさい。
とは言え、他に気の利いたコメントもできそうにないですけどね。
洗練されたかわいらしい絵で、連載当初は20歳そこそこだった作者が自分の女子校時代の経験を
活かした作品とのことですが、その割にどこかオッサンくさい雰囲気も漂う、まさに万人向けの作品。
まぁ深く考えずに読んでみましょう。 楽しいから。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-08-09 21:27:40] [修正:2010-08-09 21:27:40] [このレビューのURL]

哀愁。 それが、ゼブラーマン。

能力が強化されるわけでもなく、コスプレしただけの生身の身体で怪人と戦う42歳のおっさん。
誰にも認められないままに、彼は戦う。
自分を疎む、虐げる、しかし守るべき、愛すべき家族のために。

「宮藤官九郎という枠組がある中で、自分の色を自由に出せた」と作者が語るように、
自らを「一度終わったマンガ家」と言える山田玲司だからこそ描けた作品だと思います。

「アンタみたいな大人には、なりたくない」
「だって、何も変えようとしなかったじゃん」
「間違う事は、そんなに悪いことじゃないと思うの」

何も見ず、何もしようとしなかった男が、立ち上がる。
熱い心と、深い愛情を抱いて。 だって彼はヒーローなのだから。

最後の方は、駆け足は仕方がないとして、ご都合主義が目立つのが気になりました。
ちょっと暴走気味。でもそれが山田玲司。きっちりまとまった良作です。

そして彼は戦う。 この世界に白黒つけるために。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-27 00:13:56] [修正:2010-07-27 00:13:56] [このレビューのURL]

ド素人だった主人公が少しずつ着実に上手くなっていく様が共感でき、
わかりやすく、テンポが良く、熱さを秘め、コメディ要素もあり、女の子はカワイイ。
正に少年漫画の王道まっしぐらな作品。
週刊少年マガジンというメジャー誌で、本来なら主役を張れるほどの面白さ。
……なのに地味すぎ。ちっとも目立たないです。

読んでもらえればこの作品の面白さがわかるんですけどね。
ただ、ここが問題。
じっくり「読んでもらう」ことが前提にあって、自分から「読者を引き付ける」ような作品ではないです。
敢えて悪い言い方をすれば、華なし、毒なし、個性なし。優等生すぎる作品。

話の展開は、現実に裏打ちされたリアルテイストなテニス漫画。
テニスに詳しい人も、そうでない人も、それぞれの目線に合わせて楽しく読めます。
「ファンタジスタ」のテニス版と言ったところでしょうか(だいぶ違うかもしれませんが)。
メジャースポーツの中で最も旬の年齢が若い部類のテニスにおいて、
高校から始めてプロを目指す、なんていう超無謀な展開にはちょっとビックリしましたけどね。
とは言え、プロを意識してからの展開の方が、漫画としてかなり面白くなっているように思います。

まだまださらに面白くなるのか。この作品が日の目を見ることはあるのか。
いろんな意味で今後に期待です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-07-16 22:47:04] [修正:2010-07-18 11:41:40] [このレビューのURL]

特筆すべき内容なんて無いです。
2組のカップルと、それを取り巻く人々の日常生活を描いた、ただそれだけの話。
でも、読むと恋愛がしたくなる。 この表現、実に絶妙です。
ゆるくて柔らかくて何より楽しい、そんな雰囲気、クセになります。 どっぷり浸ってみませんか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-20 23:27:37] [修正:2010-06-20 23:30:45] [このレビューのURL]

旨いもん喰ってるときが何より幸せ。
そんな方々へ贈るハートフル……もとい、満腹ストーリー。

フィクションとのことですが、エッセイとも思えてしまうぐらいにリアリティがあって完成度が高いです。
巷の食マンガを席巻している、味を言葉で表そうとする例のこねくり回した表現も、この作品では不要。
表現はとにかくストレート。

「魚介の旨味が!! うまいっしょ!? うまいっしょ!?」
「(うなぎが)あんまり甘くなくって もーとにかくふんわりでおーいしーいーー!!」
「なんじゃこの上ハラミ!! 脂のうまみと肉汁がかむとジュワーッと!!」

読んでいて腹が何度も鳴りました。すごく旨そう。楽しそう。

食事の楽しさっていうのは食べる楽しさだけでなく、誰かと時間を共有し、喜びを分かち合う楽しさも
とても重要だと思います。
この作品では何よりそれが大切にされていて、とても良い感じ。
会話が楽しい。雰囲気が楽しい。だから食事が楽しい。
タイトルとは裏腹に、食事に対する愛がたっぷり感じられる作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-09 21:01:52] [修正:2010-06-09 21:01:52] [このレビューのURL]

民主主義はもういらない あなたのための全体主義

国民クイズは、国政にあなたの意見を反映させる唯一の手段。
優勝者の望みは国策となり、日本国政府がその威信をかけて叶えさせる。
どんな願いでも構わない。だって勝者は絶対だから。

国民クイズの司会を務めるK井K一は、国民を熱狂させ、支持率98%を誇る、言わば国民的スター。
輝かしいポジションにある彼だが、実はクイズの敗者であり、強制無償労働で司会をさせられていた。
司会をしていないときは拘束着を付けさせられ、独房に収容される日々。
そんな彼の本心は、彼にしかわからない。

この作品がマンネリ化に陥りそうな感じになってきたとき、話が大きく動く。
反国民クイズ体制派が他国と共謀し、革命を企てる。
K井K一の別れた妻、そして残された娘を巻き込んで……。
日本は、国民は、どこに向かって動いていくのか。どこに向かえばいいのか。

とにかく単純明快な作品です。でも扱っているテーマははもの凄く深いです。
ぶっ飛んだ設定。妙なテンション。パワフルで、ストレートで、強烈なメッセージ性。名言たっぷり。
当時(あくまでも90年代初頭)の日本や世界情勢を皮肉った、でも現在にも通用する展開。
打ち切りになってしまったらしく、後半がドタバタで駆け足だったのが残念。
名作になり得ただけに何とももったいないです。
それも含め、人によって評価が大きく分かれるかもしれませんね。
個人的にはこんな時世だからこそ読みたい作品だと思います。 怪作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-07 21:00:21] [修正:2010-06-07 21:33:00] [このレビューのURL]

確か松本人志だったと思いますが、
「『和』と『洋』とでは総合的にどっちの方が上とかはないが、少なくともトイレについてだけ考えれば
明らかに『洋』の方が優れている」と言っているのを聞いて、妙に納得したことがあります。
この観点で言うと、少なくとも風呂についてだけ考えれば、明らかに『和』の方が優れているでしょう。
そんな作品。

作者はポルトガル在住とのことですが、ポルトガルに住んでいても、
いやポルトガルに住んでいるからこそ入りたくなる日本の風呂。
日本人にとっての郷愁。世界に誇れる日本の風呂。

ただ、他の方のレビューにもあるように、日本の文化のみを褒め称えるのではなく、
ローマ文化にも尊敬の念を忘れていないのがこの作品の良いところ。
読んでいても誰も嫌な気分になることなく、好感が持てます。

まず着眼点がすごい。そしてその発想を昇華させ、ここまでの完成度に仕上げる構成力。
真面目な人が真面目にくだらないことをする作風だけに、その面白さも際立ちます。
元は一発ネタだったのかもしれませんが、どこまで引っ張るのか。上手くまとめれば名作かも。
読むと風呂に入りたくなる漫画。こんな作品、貴重です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-26 20:07:51] [修正:2010-05-26 23:54:39] [このレビューのURL]

グダグダ、ズルズル、ダラダラ、ウダウダ、モヤモヤ。そんな作品。

この作品の本質を、思春期だから、反抗期だから、なんていう逃げの言葉で片付けたくない。
ダメなのは、主人公がダメだから。登場人物たちがダメだから。
でも現実では誰だって似たようなもんです。
完璧に生きていて、何かあったら自分が世界を救います、なんて人、いないですよね。
ダメなところがあって何が悪い、っていう人間臭いドラマです。そんなドラマだからこそ心地良くもあり。

そんなダメっぷりにそれほどの不快感を抱かない不思議な作風。面白いと断言できないような面白さ。
グダグダでも、登場人物に全く共感できなくても、作中で特に大きな山場がなくても、
それでも読み続けてしまった作品です。それだけの力がこの作品にはあるのかもしれません。

堂々巡りをしているようでも、前半の荒廃したダメダメさに比べて、後半はまだ潤いのあるダメダメさ。
登場人物もそれなりに成長してるのかな、という印象。
まあ成長を求める話ではないので、そこはどうでもいいんですけどね。

レビューもグダグダになってしまってごめんなさい。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-05-17 22:27:33] [修正:2010-05-17 22:27:33] [このレビューのURL]