「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

7点

山岳でのレスキュー漫画。
でも、危なかったけど助かってよかったね、というのとは違います。
むしろ手遅れだったり、救助中に力尽きてしまうことの方が多いかもしれません。

ただし、山って怖いよね、というのがこの作品のテーマではないです。
「悲しい事故が起こるのは山の半分、楽しいことがあるのも山の半分」
悲喜こもごも。 困難があり、それを克服して各々の目標を達成したときの計り知れない喜びもあり。
素人登山家にもプロのクライマーにもその喜びは等しく訪れます。 そして困難も。
結局のところ、山の魅力や怖さと言うよりも、山に関わってしまった人間達のドラマを描いた作品です。

必要なのは、ただ単に進むだけではなく、立ち止まる勇気、退く勇気、助けを求める勇気。

遭難した場合、生きるか死ぬかは紙一重。 たった数センチの差が生死を分けることも珍しくありません。
すべては山のご機嫌次第なのですが、だからと言って誰でも生きるために死力を尽くすのは当たり前。
負傷した痛みと戦い、凍えるような寒さと戦い、夜の暗闇と戦い、孤独と戦い…。
それがわかるからこそ、三歩は助かった人にも助からなかった人にも等しくこう声をかけるのでしょう。
「良く頑張ったね」
 

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-17 01:31:56] [修正:2010-12-17 01:53:44] [このレビューのURL]

殺人事件に限らず様々な事件が起こり、天才肌の少年と行動力に溢れた少女のコンビが解決する、
という構図はQ.E.D.と同じですが、Q.E.D.が「論理的思考力」ならばこちらは「科学的探究心」。
主に自然科学と雑学を駆使した、知的好奇心を刺激してくれるミステリーです。

考古学大好きなので作品のテーマとしてはこちらの方が好物ですが、
漫画としてはQ.E.D.の方がちょっとだけ面白いような気がします。
ミステリーにもいろいろありますが、「事件発生」→「解決」という流れをうまく見せることに対しては
「論理的思考力」の方が見せ物として向いているのかもしれません。
まぁあくまで好みの問題ですので、自分の得点もQ.E.D.につけたのと同じ7点です。

ついでに言うと、割と自分たちの周りで事件が起こるQ.E.D.と比べ、こちらの方がワールドワイドです。
いろいろな国に出向いていって事件に巻き込まれたりします。
遺跡巡りや名所巡りのような気分が味わえて楽しいです。
何カ国語も習得している森羅はいいとしても、七瀬さんもどこの国の人とでもしっかり会話できてますが、
そこは深く考えちゃダメなところでしょうか。

ともかく、1人の作者がこれほど趣きの違うミステリーを同時並行で連載できるのは凄いです。 脱帽。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-14 01:29:35] [修正:2010-12-14 01:30:39] [このレビューのURL]

美少女漫画で 「バキ」 をやったらこうなったッッ!!!

とは言うものの単なるパクリではなく、良い意味でのオマージュと言うか、
うまく土台にして作品を作り上げている感じ。
もう女の子だろうが何だろうが容赦なくボッコボコです。

美少女漫画なのにヒロインは安達哲の「バカ姉弟」のお姉ちゃんみたい(でも女子高生殺し屋)ですし、
多重人格暗殺者、通り魔殺人狂の天才少女、邪眼使い、米大統領付シークレットサービス、サイボーグ、
ゾンビ使い、猫男、運命を操るボクサー、などなど本当にいろんなもんが出てきますが、
このバカバカしささえ楽しめれば結構ちゃんとした格闘漫画やってます。
バカ臭いほどのB級エンタテインメントに溢れた作品。 もちろん褒め言葉です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-29 01:10:22] [修正:2010-11-29 01:10:50] [このレビューのURL]

かなりぶっ飛んだ無茶設定のコメディです。
登場人物の心情心理も、話の展開も、リアリティとはかけ離れているかもしれません。

でもそれがまた面白いんです。
無茶設定をシチュエーションコメディとして見事に楽しく調理しています。

こんな話は映画でもドラマでもなかなかできませんし、小説だと面白みが半減してしまいます。
漫画というメディアの強みを活かした作品ですね。
似たような作品がたくさんある中で、作者の力量が窺い知れる良作です。

この作品の良いところは、シュールなギャグが連発される中でも、全体が暖かさで包まれているところ。
それは主人公の父(母?)としての暖かさでしょうし、さらに言えば作者の各登場人物に対する愛情、
作品そのものに対する愛情なのでしょう。
読んでいても、作者同様に登場人物に対して暖かい目で見守ってあげたくなります。
自分が今まで7点を付けた中では、もしかしたらこの作品が一番好きかもしれません。
コメディとして細かい部分を気にせずに楽しめれば、とてもお薦めな作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-12 22:17:09] [修正:2010-11-12 22:17:09] [このレビューのURL]

潤の笑顔が素敵すぎるハートフルコメディ。

少女漫画ながら恋愛パートの比重はそれほど大きくなく、どちらかと言えばコメディ色の強い作品。
ところどころに入る小ネタがかなり楽しいです。
作品のテンポがとても良くて嫌味もなく、素直に楽しめます。
登場人物の顔の区別がつかないことが難点ですが、絵は発展途上ということで。

残念だったのが店長のキャラ。
店長が不在の間に主役3人でうまくバランス良くまとまってしまったから、入り込めるスペースがなく、
存在感が薄くなってしまったんでしょう(作者も気にしていたみたいです)。

あと、客が店内にいるのに内輪ではしゃぎすぎな気がします。 これは読んでいて若干気になりました。
接客業としては致命的な描写ですが、リアルに描きすぎると漫画として成立しなくなってしまうので、
その辺のバランスが難しいところではありますね。

この作品の魅力は潤のキャラがすべて。
今まで読んできた全ての漫画のヒロインの中でも、自分の中で相当好感度高いです。
彼女の底抜けな明るさ、芯の強さ、そしてポジティブさは読んでいて本当に気持ちいいです。
癒しとかとは少し違いますが、ちょっとだけ気持ちがほっこりしてくるような作品だと思います。
タイトルに偽り無し、ですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-12 22:09:07] [修正:2010-11-12 22:09:07] [このレビューのURL]

前作「朱鷺色三角」はころころ話の変わる作品でしたが、その続編であるこの作品も
またガラッと話が変わり、舞台をアメリカに移します。
そこで繰り広げられるのは、青春バスケストーリー。

この時代の少女漫画をリアルタイムで体験したわけではないですが、いろいろと読んでいると、
アメリカ(特に西海岸)が舞台のもの、もしくは話の根幹に絡んでくるものがかなり多い気がします。
何か憧れのようなものが強かった時代なのでしょうか。

そんな作品群の中でもこの作品はかなり秀逸だと思います。
くさい表現になってしまいますが、友情、孤独、恋愛、バスケ、人種、学校生活、ドラッグ、挫折、努力、
そういうものが、全部ごちゃ混ぜになりながらもうまくまとまり、絶妙のバランスで描かれています。
そして雲の上の存在だったキングとの対峙。 キング自身も気付かなかった本心。

日本の高校生がアメリカの、それも一流の高校生たちにバスケで勝負する、なんて今の時代でも
超無謀ですが、この漫画(というか霖)には、不思議とそれを納得させられてしまう力があります。
作者の力量でしょうね。

この作品は素直に面白かったです。
前作もそうでしたが主要キャラがほぼ男性であり、主に男性視点で描かれた珍しい少女漫画なので、
男性にも読みやすくてお薦めです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-30 01:40:32] [修正:2010-10-30 01:42:43] [このレビューのURL]

GAL'S COMPANY、略して「ぎゃるかん」。
外資系証券会社をクビになったヘッポコ営業マンが、ふとした縁からギャルゲー制作会社に入社。
周りはみんな女性社員の中、ギャルゲーについて学びながら仕事がんばろう! というお話。

一般青年誌で連載を開始し、よい子が読んではいけないような雑誌に途中で移り、
現在は誰でも読めるWEBコミック誌に移って連載中です。

この作者の作風は、青年漫画と成人向け漫画との境界線ギリギリのところがホームポジション。
ま、要するに青年誌で描いても成年誌で描いても、中身はあんまり変わらないわけでありまして。
エロレベルもそこらの青年漫画とたいして変わらないです。
だって成人向けなんでしょ、っていう色眼鏡で見てるともったいないくらいに良くできています。

これだけ女の子が出てるのに、みんな個性がそれぞれしっかり出ていてキャラ立ちまくりです。
キャラの造詣がしっかりしているから、話の展開に無理がなくスムーズに感じられます。
ゲーム制作会社という舞台で 「作る楽しみ」 に重点を置き、軽いタッチで読みやすく、
この人こんなに話作るの上手かったっけ、というぐらい自然な流れで楽しめる作品。

まぁ単なるハーレム系漫画と言われればその通りなんですけどね。
作中でもハーレムのことを自虐的にネタにしているぐらいだし。
そういうのが苦手でなければ面白いですよ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-22 00:26:50] [修正:2010-10-22 00:26:50] [このレビューのURL]

どこまでも深く…暗い闇。
彼女が抱えていたものは、「絶望」という名の死に至る病。

カウンセラーを目指す青年と、絶望に蝕まれた少女を描いたストーリー。
タイトルからわかる方もいると思いますが、キルケゴールのあの哲学書が元ネタです。
と言ってもコミカライズ作品などではないのでご安心を。
論旨のおいしいところだけをかき集めてストーリーに混ぜ合わせたような作りになっていて、
元ネタを活かしたままミステリー仕立ての作品として生まれ変わり、実際よくできていると思います。

うまくまとまっていますが、全2巻はちょっと短かったかな。 展開も若干性急だったように感じますし。
あと1巻分ぐらい足して、深く重い感じをもっともっと濃密に描写してくれればなお良かったです。
終わり方については賛否両論あるでしょうね(私は否の方です)。
ネタバレにならないようにワザとわかりにくく書きますが、「自己」とは何なのか、ということ。
「自分もまた自分の一部」なんですよね…。 うーん、そう考えるとやっぱりよくできているのかな。

絵も内容に負けず良好。 と言うか「オヤマ!菊之助」のあの方です。 途中で気付いてビックリしました。
ギャグ要素をはさまず、丁寧な描写でシリアスに描ききった力作。
こういうのも描けるんだな、と感心してしまいました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-09 13:01:21] [修正:2010-10-09 13:07:25] [このレビューのURL]

はい、今さらながらドラゴンボールです。
何だかふと急に思い立って10年ぶりぐらいに読んでみたんですが、実に楽しかったです
(面白かった、とはちょっと違います。 詳細は後述)。

フリーザまでは15点ぐらい付けたいところです。
自分は実は漫画よりも一般書籍で育った人間なんですが、少なくともこの漫画(と他にいくつか)は、
もう単なる漫画の枠を超えて、自分の人生を形成した要素の一部といっても過言ではないです。
今の若い子たちにとってワンピース等がどれほどの存在かはよくわかりませんが、
子供たちをこれほどまでに熱狂の渦に巻き込むような漫画はもう出てこないかもしれませんね
(ワンピースのコミックスは半分ぐらいは大人が買っている印象があるので、
 純粋に子供たちを熱狂させるのとはまたちょっと違う感じがします)。

大げさな表現ではなく、本当に当時(自分が小学生ぐらい)は、ドラゴンボールを読んでいないと
友達と会話にならなかったんですよ。
トランクスが新キャラで出てきたときはクラス皆でその正体について真剣に話し合ったりとか、
クリリンと天津飯どっちが強いかでケンカになりかけたりとか、
「色を表す漢字を使った熟語を書きなさい」という国語のテストで「桃白白」って書いて
先生に怒られた子が何人もいたりとか。

読んでいて、そういう思い出が鮮明に蘇ってきて、実に楽しかったです。
ではなぜ10点ではないのか?
宇宙で一番強くて悪いヤツを、千年に一人現れる伝説の超戦士が倒す、という完璧なクライマックス。
強さの頂点まで達してしまったのに、あれ、まだ上があるの? しかも人造人間って……。
で、あの当時読むモチベーションがガクッと下がりました。子供心に悲しかったんです。
大人の事情というものもわからなかった年頃なので。
セルゲームとかはまだ皆でワイワイ言いながら楽しめましたが、
魔人ブウ編の頃はもう冷めちゃってました。読んでましたけど。

それでも、そうなるまでは毎週月曜日(ジャンプ発売日)と水曜日(TVアニメ放映日)は本当に本当に
待ち遠しくて楽しみでした。
自分が漫画であれだけドキドキワクワクすることは残念ながらもうないでしょうね。
何て言ったって、この作品には夢があります。 楽しいと思えるものが一杯に詰まっています。
思い出補正、などと言いますが、この作品は本当に良い思い出を与えてくれました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-26 23:09:21] [修正:2010-09-27 23:37:12] [このレビューのURL]

夏休み。 とある喫茶店で起こるファンタジー。 夏の間の思い出か、それとも夢か幻か。
暑さと、儚さと、どこか懐かしいノスタルジックさが同居した作品。

登場人物の多くが戦中の淑女だからでしょうか、会話が全般的に落ち着いた雰囲気でなされ、
そのために作品自体もどこか落ち着いた印象を受けます。
やっていることはドタバタなんですけどね。
現在と過去とを行き来する話なのですが、この手の話には必ずついてまわるタイムパラドックスに
関しても、工夫してうまく折り合いをつけていると思います。

現在から過去に行った時、あるいは過去から現在に戻って来た時、読者も一緒に時代のギャップを
感じてしまうような、絵柄の差異、感覚の差異、雰囲気の差異の付け方が秀逸です。
差異を意識しすぎているのか、最近は過去の描写がちょっとオーバーな気もしますが。

作中のところどころで「死」という漢字の使用を敢えて避けている場面があります。
その使い方は、読んでいて違和感を感じてしまうほど。
死が遠いところにあると思っている現代人たち。 既に死を経験してしまった彼女たち。
「死ぬ」 ではなく 「しぬ」 と柔らかい表現を使うことで示されるのは、「死」への実感の無さか、
「死」をもう二度と思い出したくない深層心理の表れか。

主人公の少年たちがひと夏の間にどんどん成長していくのも好感が持てます。
対して、彼女たちの人生は止まってしまった。 人生を謳歌する前に幽霊になってしまった。

「実は私 恋愛を経験する前に 空襲で死んじゃったのよ」
「私達が生きられるのは 夏の間だけなんだもの ……そんなの切ないじゃん」

「命短し 恋せよ乙女」 ですか…。
これほどこの言葉が似合う作品もないのかな。

「だから 生きてるあなたは 恋をしなよ!」
 

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-09-15 01:34:07] [修正:2010-09-15 01:37:00] [このレビューのURL]