「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

8年7ヵ月の距離のすれ違い。

絵も雰囲気も極上なほどに綺麗な作品。
原作のアニメ未見。 というかアニメだったんですね。 自分はアニメに全く疎いので
タイトルすら聞いたことがなかったですが、かなり有名な作品のようです。

作品の設定はとても良いものの、ストーリー自体は至って普通。
ただそれが素直に面白かったです。
素直と言うのは読んで字のごとく、奇を衒ったりとか捻りに捻ったりとかではなく、
思いをストレートにぶつけてくる感じ。
直球でないと届かない思いもあるのだろうな。

他のレビュワーの方の評価がこのぐらいの点数になってしまう気持ちもわかります。
ストーリーも終わり方も淡々としすぎていて、さすがに高得点は付けづらいです。
でも、これは良い作品。 この切ない空気感と淡い思いが、頭ではなく心に直接届いてきます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-13 01:01:00] [修正:2011-05-13 01:01:00] [このレビューのURL]

この手の作品は大概「めぞん一刻」の影響下にありますが、
この作品は確かにどちらかと言うと「ラブひな」の影響を強く受けている気がします。

萌えーな感じの絵柄と、結構重めの内容とのギャップが特徴的な作品。
全体の構成が巧みで見せ方も上手く、常に遊び心を感じさせるような仕掛けも散りばめられていて、
こういう絵柄が苦手な自分でもすんなり読めました。

ただし、登場人物のキャラ造詣は、どうも読者受けを狙いすぎているというか、
上手く「配置」されているように感じて、ちょっと鼻につきました。

さて、この作品を語る上でヒロインのキャラについては外せないと思いますが、
「くしゃみをしたら人格が変わる」とか「水をかけたら性別が変わる」みたいにギャグの一環として、
「ヒロインの人格がコロコロ変わって楽しいなー」ぐらいにしか伝わってきませんでした。
多重人格の出てくる漫画なんて腐るほどあるので今更どうこう言うのもおかしいかもしれませんが、
少なくともこの作品では「病気だから対処していこう」というスタンスなので、そうであれば
もうちょっと真剣に取り扱って欲しかったなと思います。 その辺の扱いが中途半端な感じ。

ラスト(というか後日談)は良かったですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-13 00:57:14] [修正:2011-05-13 00:57:14] [このレビューのURL]

その古びたコインランドリーで、乾燥機の中から現れたのは、髪の長い女だった…。

ホラーのような表紙と絵柄ですが、そんな変態たちが集まるナンセンスギャグ漫画。

事前に思ってたほどはつまらなくなかったです。
作品の雰囲気は「荒川アンダー ザ ブリッジ」にちょっと似てるような感じ。
ただ、あちらの方がキャラがもっとぶっ飛んでますけどね。
そういう意味で、キャラ的にも作品のスケール的にも若干小さくまとまってしまった印象です。
本来ボケを担当すべき真魚子がツッコミに回るようではいかんですな。

可もなく不可もなくな内容ですが、何となく雰囲気でスラスラ読めてしまいます。
まあ確実に言えることは、画力の無駄使い。
というか絵柄と内容とのギャップが最大の売りっぽいです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-09 01:14:56] [修正:2011-05-09 01:14:56] [このレビューのURL]

天然美少女の宇宙人が突如現れ、主人公を巻き込んで繰り広げるドタバタラブコメ。
集英社が明らかに2匹目のドジョウを狙いに行ったように思える作品。

これが初連載とのことですが、雑な部分も多いものの絵はなかなか上手いです。
ただしギャグが致命的に寒いのが残念。 内容も例の作品と同じぐらいにスッカスカです。
その分キャラが際立っていれば良かったのですが、それほどキャラにも魅力が感じられませんでした。

そんなこんなで本家・矢吹氏がSQに移ってきて共喰い状態に。
そしてダークネス連載開始に合わせるように強制終了。 お疲れさまでした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-09 01:07:47] [修正:2011-05-09 01:07:47] [このレビューのURL]

7点 砂時計

砂時計。
時間の経過を示す象徴であり、人生を暗喩するアイテムであり、
過去と現在と未来を繋ぐ物語の重要なキーワードであり、杏の大切な想い出。

強気に見えるヒロイン・杏の打たれ弱さ、不安定さ。
自分の弱さを自覚し、そして自分の弱さが周りを巻き込んで傷つけることを自覚し、
強くなりたいと願うものの、なかなかうまくいかなくて。
強くなるために頑張って、頑張って、頑張って、気がつけばただ母親の足跡を追っていただけ…。

12歳から物語はスタートし、26歳でラストを迎える大作ですが、それぞれの年代の季節ごとに
ダイジェストで取り上げていくような形式なので、展開が速いです。
でも軸となるストーリーがしっかりしていて読み応えがあり、キャラ作りや感情描写も上手く、
コメディ部分もあってテンポ良くサクサク読める割に、実に濃厚な本編全8巻。
4人のメインキャラの強さ・弱さ、そして成長が、時間の経過に合わせて丁寧に描かれています。
番外編は2冊も必要かとも思いますが、まあ無いよりはあった方がいいのかな。
あんまり番外が多いと本編の良さが薄れる気もしますけど。

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
人の気持ちも移ろいやすいものですが、決して忘れられない部分も確かにあって、
そういう気持ちは人生の足枷ではなく、人生を支えてくれている、そんな作品。
過去を大切にし、現在と向き合い、未来を願う。 時の流れゆくままに。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-28 00:49:13] [修正:2011-04-28 00:49:13] [このレビューのURL]

6点 C

“Message to Complex People”
どこかしら、何かしらにコンプレックスを抱えた人々が織り成すオムニバス形式の作品です。
それぞれの話がつながっているわけではなく、中編作品の集合体のような珍しい作品。


「男性失格」
確かに主人公の性格はいつものきたがわ漫画ですね。
展開もありきたりではあるものの、90年代初頭ラブコメとしては上手く描けていると思います。
作品全体の雰囲気は、当時のトレンディードラマ(死語)のような感じ。
ただしコンプレックスが全体のテーマならば、もっと前面に出していかないと。
コンプレックスうんぬんに関係なく、単なるヘタレの兄ちゃんのベタなラブコメと化してしまっています。

「マゼンタ・ハーレム」
狂ったような世界観と、鮮やかに彩られた情景描写。そして名画をモチーフにした数々のイメージカット。
全般的に絵画を意識して描かれたであろう絵柄が、ダークでポップな作品の雰囲気と見事に調和して、
週刊連載とは信じ難いぐらいのクオリティと凄みを感じさせる出来に仕上がっています。
才能がありながらもコンプレックスの塊のような歪んだ主人公と、真っ直ぐで快活なヒロイン。
絵画っぽく色で例えるなら、ダークグレーの主人公と、鮮やかなオレンジのヒロインか。
絵の具ならばこの2色が混ざっても汚い色にしかなりませんが、これは漫画。
2人の色が混ざり合い、溶け合って、読者に全く違う色を見せてくれます。
それがマゼンタなのかどうかは読む人次第。

「モンロー・ジョーク」
今度はうって変わってアメコミを彷彿とさせるような絵柄で、弾けた雰囲気のコメディ。
思えば自分がYJを読み始めたときに載っていたのがこれでした。
ただし作者がおまけページで書いているように、この手のジャンルはかなり不慣れな感じ。
常にハイテンションのノリや痛いギャグなど、無理やり感が作品全体に漂っています。
だいたい「C」はComplexのCだったはずなのに、この話のどこにコンプレックスが絡んでいるのか不明。

「ほんとうの行方」
青春もの。
内容がコテコテかつ綺麗にまとめすぎな気もしますが、ストレートで面白かったです。
作者によると紡木たくっぽさを取り入れたかったらしいですが、それについては明らかに失敗かと。


時代を色濃く切り出した作品は色褪せてくるのも早いです。
この作品でもモンロー・ジョークなんかはその傾向にあり、今だとかなり時代を感じてしまうかも。
ただそうは言っても、作者の脂が乗りきっている時期だけに全体的に作品の質は高いです。
あとこの頃の作者の絵柄はものすごく好きですね。
男性失格が一番人気だったそうですが、個人的にはマゼンタ・ハーレムが一番でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-28 00:46:38] [修正:2011-04-28 00:46:38] [このレビューのURL]

女のミステリアスさと男の弱さとにスポットをあてた作品。

だと思ったのですが、読み進めていくとどことなく違う展開に。
現在の関係をあと一歩進めたい男と、そのあと一歩の踏ん切りがつかない女。
その辺の非常にもやもやした微妙な関係を巧みに描いています。

ミステリアスさは計算されたズルさに起因するものではないということなのでしょうね。
ヒロインの謎めいた天然っぷりに振り回され、引き付けられ、魅せられていく主人公。
なるほど、だから「ナイーヴ」。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-26 21:27:55] [修正:2011-04-26 21:27:55] [このレビューのURL]

新たな解釈を交えた吸血鬼伝説。

吸血鬼の考察としては手垢のついたネタの感もありますが、宗教観、考古学、伝承、科学的知識など
様々な要素を綿密に絡めることで飽きの来ない作りに仕上がっています。

Quo Vadisとは「何処へ行くのか?」という意味。
作品全体のスケールがかなり大きい分、話の進みが遅々としているのか、8巻現在で話がどこに
向かっているのかさっぱりわかりません。 皮肉にもタイトルどおりの展開。
ただベテラン作家ならではの安定感を存分に感じますので、先行き不安にならずに安心して読めます。
まあその分、絵柄や会話に古臭さを感じるのはやむを得ないか。

新谷氏の絵で読んでみたかった気もしますが、このご夫妻は本当に絵柄が似てますね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-23 13:37:53] [修正:2011-04-23 13:38:25] [このレビューのURL]

7点 セルフ

「誰が聞いてもバカなことにしか見えないものを真剣に研究する」漫画。
しかしその研究対象は自慰行為。 とにかく何かがおかしい作品。

女性の作者によって健全な部類の青年誌で連載されていたためか、あまり下品な印象もなく、
高尚なテーマを追求するかのごとくに描かれているのが笑いを誘います。
登場人物の姓がなぜかみな明治の文豪に由来しているのも高尚さを皮肉っているのかも。
まあ極論すると、いい歳してオナニーに振り回される主人公と、そんな主人公にさらに振り回される
彼女や同僚を淡々と描いたコメディです。

普通のラブコメならば告白シーンになりそうなシチュエーションで、ヒロインが真面目な顔して、
「私でオナニーしてるんですか?」
「……………はい」

何だこのおバカな展開。
何事も大人になってからはまった方が、周りも見えなくなるほどに突っ走る傾向があるとは
よく言われる話ですが、主人公の研究者気質もあってか、真面目におかしな方向へ没頭していくのを
見ているのがとにかく楽しい作品。
とりあえず同僚の泉さんがとてもかわいく見えます。

いや本当に、こんなテーマなのにどこか気品があり、それでいて面白くまとめているのはすごいです。
あんまり長続きさせるような漫画でもないですが、全4巻はやっぱり短いなあ。
もうちょっと読みたいと思わせてくれる作品でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-21 00:54:28] [修正:2011-04-21 00:55:13] [このレビューのURL]

17歳の主人公の前に突如現れた美少女は、母親の命を救うため未来から来たという、何と自分の娘。
自分の未来の奥さんの正体や行方を追い求め、謎が謎を呼ぶ展開に。
でもまだ見ぬ未来の奥さんよりも、目の前の彼女が可愛すぎ。 しかしときめいちゃったら歴史が変わる。
「この時『歴史』が大きく変わった、ような気がした」
シリアスなSFアクションの皮を被ったドタバタ父娘ラブコメ。

主人公とヒロインの中身は、まんま八雲とパイですね。 それもまたご愛嬌。

説明不足と強引な展開とで話をどんどんややこしい方向に持っていくのが作者の悪いクセですが、
この作品でもそのクセを見事に発揮していて、もうゴチャゴチャ。
気を抜くと話の展開がさっぱりわからなくなります。
が、不思議とそこまで違和感なく楽しめました。 基本コメディなので勢いで読めるというか。
どちらかと言えば「Don't think. Feel!」な作品。

この作者はどうも大きな伏線とかどんでん返しとかを仕掛けるのが得意ではないみたいなので、
その辺りにあまり期待しないで読んだ方が楽しめると思います。
まあ良くも悪くも高田裕三全開な作品ですね。
少なくとも作者の入門書としては敷居が高すぎるので、作者の作品を未読の人にはお薦めしかねます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-21 00:45:51] [修正:2011-04-21 00:51:54] [このレビューのURL]