「十歩神拳」さんのページ

総レビュー数: 76レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年11月30日

9点 寄生獣

内容の素晴らしさは既に語りつくされていると思うので、ここはあえて本筋とは関係のないレビューをさせていただきます。

まず、本作はかの名作「デビルマン」をリスペクトし大きな影響を受けていることは、岩明先生が「ネオデビルマン」に一編を寄せていることからも間違いないかと思います。

もし本作が中途半端な作品であれば、「パクリ漫画」と叩かれた可能性も否定はできませんが、いまだ本作は名作と語り継がれています。
その理由は、多くのデビルマンファンが感じた「デビルマン」の本質や真髄を理解し、汲み取っているからではないでしょうか。

永井豪先生がもとより明確な理念を持った上で計算して「デビルマン」を創り上げたかどうかはわかりませんし、偶然により誕生した悪魔的な名作であったかもわかりません。

しかし岩明先生はその「デビルマン」から何かを感じ取り、それを滋養分として漫画家になり、他のクリエイターが成し得なかった「完全版デビルマン」とも言える作品を見事に完成させることで、「デビルマン」の凄さをデビルマンファンの代表として知らしめたのだと思います。

そしてそれと同時に人間の優しさや温かさ、冷酷さを独自の感性で奥深く描いたり、類まれな構成力を見せ付けることで自身の漫画家としての実力や存在感も明確なものにしました。

自分の好きな作品を礎としながらも、自分だけのセンスも100%発揮した作品なのだから、これは間違いなく名作とよべるのではないでしょうか。

ナイスレビュー: 11

[投稿:2010-01-30 11:12:01] [修正:2010-01-30 11:12:01] [このレビューのURL]

この作品は理屈抜きにして、エンターテイメントとしてそのスケールと迫力を楽しむべき作品だと思います。

よくストーリー性の低さを指摘される方もいますが、確かに近年のジャンプの看板漫画であるワンピースやその他の多くの重厚なストーリーを持つ作品と比較すれば、その面での完成度は劣っていると言えます。

しかしドラゴンボールは複雑な複線などを一切排除したからこそ、鳥山先生の能力をフルに生かした極上のエンターテイメントとして完成されているのではないでしょうか。

また、作者の価値観や思想、感動などを読者に押し付ける場面も皆無で、読者は自然に感じたままにワクワクしたり感動したりできることも魅力の一つだと思います。そこに物足りなさを覚える方も多いかと思いますが、少なくともドラゴンボールにおいてはその淡白さがストーリーのシンプルさと調和して、絶妙なバランスを保っているように思います。

もし他の漫画家がこのようにエンターテイメントに徹したシンプルなバトル漫画を作ろうとしても、おそらくドラゴンボールには及ばないはずです。


ドラゴンボールは単純にして唯一の、純粋なアクション漫画の金字塔なのです。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2009-11-28 12:33:07] [修正:2010-02-10 10:35:54] [このレビューのURL]

ストーリー自体は基本的には王道的な展開で、且つ綺麗にまとまっているため割と誰が読んでも楽しめると思います。スケールも大きく、最終巻が一番面白い数少ない名作です。
ストーリーだけの評価でも8点前後はつけられると思います。
それに加えてアクションシーンが素晴らしい。

多くのレビュアーの方々が言われているように、アクションシーンはかなり解り辛いと思います。
しかし、そのわかり辛さは、描かれている描写や構図が余りにも奇抜で凄まじすぎるために生じたものだと思います。
これほどまでに凄いアクションは他の作品では見ることはできないでしょう。

特に9巻以降のアクションは、漫画という媒体で表現できる描写の限界点に到達しているのではではないでしょうか。個人的にこの作品はアクション漫画の一つの完成形だと考えています。


また、奇抜なキャラクターやおバカウェポンの数々も大きな魅力だと言えるでしょう。星雲賞の名に恥じない傑作だと思います。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2009-11-28 12:47:24] [修正:2010-02-04 11:06:30] [このレビューのURL]

6点 ARMS

「父ちゃんは史上最強のサラリーマンに、母ちゃんは史上最強の主婦になったんだゾ!」(by野原しんのすけ、「ヘンダーランドの大冒険」より)

しんちゃんは知らなかったのでしょう。
“静かなる狼”の存在を。
“笑う雌豹”の存在を。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2010-02-23 10:49:09] [修正:2010-02-23 10:49:09] [このレビューのURL]

この作品が名作と呼ばれる理由として、漫画史的な価値やクオリティ、重厚なメッセージ性などは勿論、キャラクターのリアルな存在感が挙げられると思います。

例えば主人公であるブラック・ジャックには紙の上の人物とは思えない深みがあります。
彼の理念には作中通して一貫性があり、さらに彼の心理描写は非常に繊細に描かれているため、多くの読者は自分の中でのブラック・ジャックというキャラクター像をまるで知り合いのようにはっきりと確立しているはずです。

ところが、作中に登場する多くのキャラクターは彼の内面を知る機会などないので、彼の言動に不快感をあらわにする場面が目立ちます。
ここまで表面上と内面で相手に与える印象が異なる2次元のキャラクターというのもそうはいないでしょう。

またブラック・ジャックは、彼を深く理解していると思っている読者すら予想だにしない言動をとる場合もあります。なぜなら彼は非常に気まぐれ屋さんだからです。このイレギュラーな思考が、さらに彼の存在にリアルさを与えているように思えます。
240話以上のエピソードを重ねても、その片鱗しか掴めないほど彼の心は奥深く、未だ解明されていません。だからこそ漫画の登場人物という枠組みを超えた存在感を放ち続けているのでしょう。

そして、記憶に残る「名言」が多い本作ですが、そんな彼が放つからこそ、彼の言葉は読者の心の奥底まで響くのだと思います。

ここではブラック・ジャックについて語らせてもらいましたが、ピノコやドクター・キリコをはじめとする多くの骨太な登場人物からもまた、確かな存在感を感じます。
多くの読者がブラック・ジャックをはじめとする魅力的な登場人物に魅せられた、これが連載終了から20年以上たった今でもこの作品が多くの人に愛される一番の理由ではないでしょうか。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2009-12-24 12:12:24] [修正:2009-12-24 12:32:20] [このレビューのURL]

4点 BLACK CAT

ジブリ好き!さんがパクリについて様々な疑問を投げかけていたので、その答えになるかどうかは分かりませんが少しだけ私も考えを述べようと思います。

まず、本作をはじめとする作品を「パクリ漫画」と批判する人たちは、おそらくですが多くの場合は「パクリ=悪」と考えてはいないような気がします。
問題は「読み終わっても“パクリ”という印象しか残さない」というほど、その作品自体の魅力が低いことにあるのだと思います。(稀に、悪意やネタ的な意味で侮蔑して“パクリ”と罵る人もいるかもしれませんが。)

どんなジャンルにしても、クリエイターは人間であるため、その感受性や発想の大本は過去に自分が体験してきた作品であることは間違いありません。だからジブリ好き!さんの言うとおり大概の作品は多かれ少なかれ過去の名作と重なる部分が存在するのは当然です。

では、何故「パクリ」と呼ばれる作品とそうでない作品に分かれるのか。
それはその作品だけが持つ一点の魅力(登場人物、ビジュアル、構成etc)が読者の心を揺さぶる程のものか否かということにかかっているのではないでしょうか。

具体例を挙げれば「寄生獣」です。あれは作品の根幹となるテーマや、所々のプロットはどう考えても「デビルマン」を引き継いでいます。もし「パクリ=悪」と考える読者が多いのならば、「寄生獣」もパクリ漫画と罵られているはずですが、たくさんの読者が「名作」と讃え、後世の漫画好きにも語り継がれています。
その理由はやはり、岩明先生が「デビルマン」の真髄を汲み取り、独自の解釈を含め、自らの作品として再誕させるほどの突き抜けた表現力と構成力を持っていたからでしょう。

一方、「ブラックキャット」の独自の魅力は何ですか?

もちろん、中には本作独自の魅力を見つけだしている読者もいるでしょうが、私が思うに、それほど強力な魅力はなかったように見えます。

大抵の読者をうならせるだけの能力や仕掛けもなく、ただ様々な名作を当たり障りなくくっつけただけなので、読み終わった後に評価しようにも「パクってた」ということしか言えないのです。
絵も奇麗には奇麗ですが、もっと凄い絵を描く漫画家はたくさんいるし、ビジュアル的にもどこかで見たような場面が多かったりするので、作品の評価を飛躍的に上げるほどとは個人的には思いませんでした。


つまり、「ブラックキャット」がパクリ漫画と呼ばれている理由は、単純に当時の矢吹先生に実力がなかった、本作に魅力がなかっただけだと思います。
点数が低いのも「パクっているから」というわけではないのではないでしょう。実際、パクリを気にしない方々の評価もここでは低めのようですし。
それ以外語る要素がないのですから、レビューする上で必然的にパクリという言葉が目立ってしまうだけだと思われます、多分。


もっとも、パクリを全く気にせず読める方にとってはこんなこと極めてどうでも良い話だと思いますが。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-01-27 11:06:55] [修正:2011-01-27 11:46:32] [このレビューのURL]

この漫画は、従来のギャグ漫画とは違います。

私が思う従来のギャグ漫画とは、主人公はあからさまな非常識人であり、その人物の半ば悪意にも見える馬鹿げた行動「ボケ」により作品を混乱に陥れ読者を笑わせるというのが基本型です。
また、たいていの場合はツッコミポジションを除く他の人物や、その世界観自体がお馬鹿だったり非常識だったりします。

しかしテルマエ・ロマエは違います。本作の主人公・ルシウスは真面目な浴場建築技師であり、彼の行動理念はその殆どが仕事に対して全力で取り組むプロ根性だけです。
そして、ルシウスの周りのローマ人もまた、彼らの果たすべき役割に真面目に臨み、ただ普通に日常を過ごしているだけなのでしょう。たぶん・・・

そして、本作のもう一つの舞台となる「平たい顔族」の世界、すなわち現在の日本での出来事もまた、その世界にとっては変哲のないただの日常なのです。

つまりこの漫画には、人物にも世界観にもボケらしいボケが見当たらないのです!


では、本作の笑いの根源はどこにあるのかと言うと、それはおこらく文化の異なる二つの世界を常識×常識でぶつけ合わせた化学反応です。

ギャグ漫画の中には真面目さとシュールさを追求した「シリアスな笑い」を武器にする作品は稀に見ますが、本作の笑いにはより豊富な知識と、複数の常識的な視点を使いこなすセンスが作者に求められる分、さらにシュールで高度なギャグだと思います。

美術学校出身等の、作者の特殊な経歴により育まれた能力と感性あっての作風でしょう。

本当に面白いです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-11-22 14:21:23] [修正:2010-11-22 14:27:02] [このレビューのURL]

戦慄した。
めちゃくちゃ面白いです。

1巻を読んだ時点で既に興奮していてすぐにレビューしたかったのですが、作品の内容上、もしかしたらすぐに失速してしまうんじゃないかという不安があったため、逸る気持ちを堪え待機していたのですが、2巻を読んだ時にきっとそれは杞憂に終わるだろうと思えたので堂々と高得点を付けます。

皆さんの仰る通り、巨人に蹂躙される人類が抵抗を続けるというシンプルなお話なのですが、容赦ない絶望感と凄惨さを描くことで強烈なインパクトを放っていて、とにかく刺激的です。しかし、過激な描写に頼りきっているわけではなく、しっかりと物語をつくり込んでいるので、心の底から「面白い」と思わせてくれます。
おそらくこの作者は、とてつもなく激しく野性的な感性を持ちながらも、それをまとめ上げる理性と知性を持ち合わせているのでしょう。

また、このようなシンプルな題材は過去に別の漫画家が使っていそうなものですが、私の知る限りでは漫画でこのような内容のものはなかったように思います(本当はあるのかもしれませんが)。
その理由は、題材がシンプルで地味だからこそ扱う側のセンスや実力が問われるからではないでしょうか。おそらく、大半の漫画家はこんな華のない題材で作品を描こうなどとは思いもしないでしょう。

地味な題材を扱った名作として私が真っ先に思い浮かべるのは「寄生獣」ですが、「寄生獣」はまだ青年誌での連載であり、時代もあくまで「実力主義」の傾向にあったはずなので、多少地味でも読者層を考えればそれほど問題は無いでしょう。
しかし本作はこの時代に、能力者もいなければ萌もない、綺麗な絵面でもないこの作風で少年誌に掲載されているのです。これはものすごいチャレンジです。
結果的に掲載誌と内容のアンバランスさがこの作品の魅力を増強していると思います。

とにかく、時代の波に逆らう硬派な作風と、自分が本当に面白いと思うものを創りあげようとする作者の姿勢に感銘を受けたので8点で。



ただ、登場人物の描き分けだけはしっかりできるようになってほしいと思います。でも画力が上がりすぎても、作品の魅力の一つである「巨人のキモコワさ」が無くなりそうで不安ですが。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-08-11 14:03:34] [修正:2010-08-11 14:35:00] [このレビューのURL]

5点 YAIBA

私が小学校低学年の頃に、初めて自力で全巻集めた長編少年漫画。

はっきり言って今読むとくだらないものに見えるし、大人が読むのには少し幼稚すぎるかもしれませんが、少なくとも小さい頃の私にとっては傑作でした。
現在のコナンといい、青山先生の作品には多くの子供の心を掴む魅力があると思いますし、少年が漫画という媒体に触れる上での入門書のような役割を果たしていると思います。


近年の少年漫画はもはやターゲットとなる層が「少年」ではなくなりつつあるためか、絵柄や内容にこだわりすぎて、本来のターゲットであるべき層には取っ付き辛いものが多くなっているように思えます。
このような傾向が、近年の少年少女の漫画離れの一因になっているのではないでしょうか。

私を含めた多くの漫画好きの人にとっては、今更ベタベタで大雑把な漫画をやられてもあまり嬉しくはないかもしれませんが、「YAIBA」のような純粋に少年のために描かれた少年漫画も必要なはずです。

大人にとって5点でも子供にとっては満点。
「YAIBA」は少年漫画として名作だと思います。


ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-07-09 11:16:52] [修正:2010-07-09 11:16:52] [このレビューのURL]

7点 ONE PIECE

10年以上の長期連載にも関わらず、いまだ良質のストーリーを保っているのは流石。

しかし最近の尾田栄一郎は「静と動のシチュエーション」を書き分けられなくなったように感じるのは私だけでしょうか。

空島編以降は日常場面も戦闘場面もテンションが殆ど変わらず、常にやたらとハイテンションで、「動のシチュエーション」一辺倒な気がします。

また、前半と比べ絵の書き込み量が増えたのはいいですが、その結果背景とキャラが同化してしまったり、見せ(魅せ)ゴマのインパクトが普段のコマと大して変わらなくなったり、前半に度々見られた渋みのある演出が消えたりと、一つの場面を際立たせるスキルも失われてしまった気もします。

結果的に全体のメリハリが消え、折角のストーリーの面白さを著しく損なわせているような印象を受けました。

その辺が、前半と比べると後半がつまらなく感じてしまう理由なのではないでしょうか。


<追記>
ジャンプ本誌で2010年に入ってからのストーリー(エース救出編の後半)の、最終決戦でもないのに毎週予想のできない超展開が次々とたたみ掛ける様子は、過去のどんな漫画でも味わったことのない壮絶さでした。

普通なら、漫画において読者はたとえものすごい展開を目の当たりにしたところで、さらにもうひと押しを望むことが多く、一応の満足は出来ても多少は燃焼しきれずに終わる部分があるはずです。

しかし今回のワンピースは違います。恐らく多くの読者は「ここまでやるか」と感じた方が多いのではないでしょうか(その展開が好みか否かは別として)。

国民的な超有名タイトルでありながら保身に走らず、これだけの手札を数週の間に出し惜しみなく、絶妙なタイミングで切ることのできる大胆さとセンスを持った漫画家は恐らく他にいないと思います。

ここ数週で読者に焼き付けた興奮と衝撃は紛れもなく漫画史に残る程だったと思うので+1点。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2009-11-30 11:44:58] [修正:2010-04-07 11:24:34] [このレビューのURL]

<<前の10件
12345678