「チーズカバオ」さんのページ

総レビュー数: 75レビュー(全て表示) 最終投稿: 2017年07月23日

ゴッド・オブ・コミックである。
ストーリーがどうだとか、伏線がこうとか、そんな観点で昨今の漫画と比べて優劣を論じることすら馬鹿けている。
あまつさえ、ドラゴンボールに『今読んだら普通』みたいな評価を下すことは愚の骨頂だ。

手塚治虫神が基本を造り倒し、藤子不二雄や石ノ森章太郎、永井豪、松本零士ら数多の天才が発展させまくった漫画というメディアを、この作品が究極の娯楽にまで進化させたことは間違いない。
この漫画がやったことは謂わば、漫画の概念や、表現の天上を吹っ飛ばしたに等しい。
漫画界だけに留まらず、あらゆるクリエイター達の礎となり、全ての創作物の表現レベルを爆発的に押し上げた、漫画界至高の遺産である。
しつこいようだが、そんな本作に『今読んだら普通』など………!

古今東西未来に至るまで、本当の意味でこれを超える漫画は存在しないだろう。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2017-10-04 13:17:08] [修正:2017-10-04 14:34:55] [このレビューのURL]

この作者は読者に甘えすぎだと思う。
ヘルシングの後半から言えることだが、平野耕太がどんな話を描いても「ヒラコーカッコイイ」って感じで全肯定する読者が多いものだから、もはやこの十余年は作者も「以下に楽に、適当に仕事するか」しか考えていないと思う。
だから、1、2年に一度出るコミックスでまとめ読みをした時ですら、滅茶苦茶散漫な展開で、メリハリがまるで無い。
たまにちょっと閃いたときや、少し興が乗った時にイカす話は描くものの、基本的に向上心も探究心も無いのですぐになぁなぁで終わるし。
ドリフターズもこれだけ完璧なベースを創ったのに、作者のモチベーションがこれでは名作には成り得ないだろう。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2017-07-30 20:46:08] [修正:2017-07-30 20:46:08] [このレビューのURL]

90〜00年代前半くらいまでの名作漫画や映画とかを、作者がしっかり吸収しているんだろうなというのがわかる。パクリ・オマージュ・リスペクトの分別をつけた上で、話を盛り上げるためにどのタイミングでどの札を切るかを見極めるセンスが特出していると感じる。
あと、胸くそ悪い展開とかも作品の面白さを突き詰めるならガンガン入れていくというスタンスも良い。
過去の天才作者達のセンスを技として吸収している秀才が、色々考えながら面白い漫画を描こうとしている感じがして、個人的にはかなり好きな作品。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2022-04-01 11:28:01] [修正:2022-04-01 12:53:52] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

サンデー55周年記念として「55作品新連載させる」とかいう編集部のゴミのような舵取りのせいで、ゴミのような最終章を迎えた残念な漫画。

最終章に入るまでは本当に面白い漫画で、サンデーが毎週待ち遠しくなるほどだった。
50巻を超えてもまだまだ読みたいと思えた作品は、サンデーでは初めてだったと思う。

ストーリーのテンポは良いし、アクションは派手だし、ギャグもキレがある。登場人物も達人・弟子問わずキャラが立っていて、戦闘パートも日常(修行含む)パートもまるっと楽しめた。
凡作以下の作品が誌面の大半を占めるようになっていった21世紀のサンデーにおいては屈指の良作であり、特にバトル漫画としてはサンデーの最後の良心と言っても過言ではなかっただろう。

ところがどうだ。冒頭に述べたふざけた企画に伴い、サンデー編集部は松江名にケンイチを終らせて新たな作品を創るように打診したのだ。
そして、なんと松江名はそれを承諾して、そこまで丁寧に積み上げてきたきたものを全てぶん投げて、近年稀に見る酷い話の畳み方で無理矢理本作を完結させてしまったのである。

後のコメントによると、この選択は松江名にとっても苦渋の選択だったらしく、職業漫画家としては賞賛されるべきところもあったのは事実である。
だが、1〜2年だけ連載したような作品と、12年連載した本作では、話を唐突に打ち切ることの重みが全く違う。
50巻以上のコミックスを買い続けてきた20万人近くの読者を、60巻近くになって突然裏切ることを作者も了承したことが、個人的には何より許せない。
正直、ラスト数冊は本当に買う気が起こらなかった。

ここまで最後の打ち切りについての怒りを綴ったが、本音を言えば相変わらずまだまだ続きが読みたい気持ちは残っている。
この漫画は、あんなところで終わらせてしまうのは勿体ないほど魅力的なのだ。
ジュナザード戦あたりまでなら、7点以上は堅いと思う。
いつか松江名が続編を執筆してくれることを、今も期待している。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-11-17 23:00:20] [修正:2020-11-18 07:14:48] [このレビューのURL]

序盤は傑作だったが、アニメ化が決まった石版編前くらいから児童向け路線に寄せすぎたせいで、ガッシュ周りの展開が幼稚になりすぎた(小学館との訴訟トラブル当時の雷句のブログによると、編集からそのような矯正を強いられたらしい)。

実際、この矯正は商業的には成功したし、アニメ放送頃には作風の移行は完了していたため、アニメ化決定後に本作を読み始めた層は違和感に気付きづらかったと思う。
これが、今作が完結まであまり評価を落とすことなく、いまだに名作扱いされている理由の一つではないだろうか。
だが、この流れが雷句のポテンシャルを潰してしまい、業界内における小学館(とりわけ当時のサンデー編集部)へのイメージが悪化する一因となったことは間違いないだろう。

ただ、個人的には本作の真価はガッシュサイドではなく、ブラゴ側のストーリーで見られると思っている。師匠の藤田和日郎から受け継いだケレン味や渋さ等の魅力は、ブラゴ側のエピソードに集中されているように感じる。
特に最後の最期、ブラゴとシェリーのやり取りはガッシュと清麿では出せない渋い感動がある。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-11-16 13:31:08] [修正:2020-11-16 14:58:21] [このレビューのURL]

内藤泰弘という漫画家は、他の漫画家へのアシスタント経験が無く、脱サラ後に我流で実力を身につけていった人物である。

トライガンマキシマムの中盤以降から覚醒したかのように技術が洗練されていったが、それ以前はセンスと勢い任せの荒削りな作風であったと思う。
特にこの短編集に関してはプロデビュー以前の初期同人作品が中心となるため、技術面や話運びに拙さがあることは否めない。

だが、技術こそ今と比べると歴然の差があるものの、作品の本質的な根っこはこの頃から驚くほどに変わっていない。
同人誌時代を含めると30年近く漫画を描き続けているのに、この作者の創作に対するスタンスや精神は全くブレていないのだ。
本作を読み、サムスピを読み、トライガンを読み、ガングレイヴをプレイし、アッセンブルボーグで遊び、血界戦線を読み、再び本作を読むことで、その事実をしみじみ実感できる。

自分の好きなことを貫き通し、それで飯を食い、業界も力を貸してくれるという、漫画家の中でも稀有な強運の持ち主である内藤泰弘がいかに幸せな存在であるか。
そしてこの人が創る作品が、どれほど多くの人間に幸せを与えてくれているかを改めて認識する上で、この短編集は非常に重要な役割を果たしていると思う。

しかし、こんなディープな作品集を一般的な書店にも流通するように出版してくれたハルタコミックは最高である。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-04-15 21:29:05] [修正:2020-04-17 06:23:32] [このレビューのURL]

丁寧に練られたストーリー構成の中で、少年少女にも届きやすいよう丁寧に描かれるテーマ性が素晴らしい。
作者の人格が滲み出ていると思う。
道徳的観点で言えば、寄生獣並に子供に読ませたい名作である。

惜しむらくは、アニメの完結に追われる形で半ば強引に纏められたラスト数話の展開の早さか。
アニメ版を見るからに、初期プロットではもう少し丁寧に描かれていたであろうことが予想される。
そこに至るまでが過不足無かったため、最後の駆け足的展開のバランスの悪さが本当に惜しい。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2019-11-16 05:43:22] [修正:2019-11-16 05:43:22] [このレビューのURL]

すごいなぁ、なんでこんなものが描けるんだろう。
ただただ突き詰められた日常の情景、それを描き表せることが出来る作者の感性に感服。

作中のシチュエーションというか、登場人物が生きる環境は小さな幸せに満ちていて、現実世界のような過酷な部分が切り捨てられているようにも感じ、そういう意味ではファンタジーのようにも思える。
だが、あくまでこれはよつばを通して世界を見た感覚を描いているのだろうし、これが正解なのだろう。

とても大好きな作品で、読んでいる時は心が洗われているような気持ちになるが、殺伐とした現実との感覚のズレからか、読後には虚しさというか哀しさも少し感じてしまう。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2019-05-20 21:04:09] [修正:2019-05-20 22:16:46] [このレビューのURL]

7点 SLAM DUNK

スポーツ系の少年漫画としては超一級品であることは間違いない。作品の漫画としてのレベルやクオリティにケチをつける気はない。

ただ、個人的にこの作品の登場人物や、物語の根底の価値観はあまり好きになれない。
なんというか、メインキャラクターたちの行動、言動、思想その全てから、恵まれた人間のエゴが滲み出ているような気がする。
赤木のようなスポーツに勉強、私生活までストイックな漢はともかく、他の連中はとてもスポーツマンとは思えない幼稚な精神しか持ち合わせていないと思うし、最後まで大して成長しなかったように感じた。

本気でスポーツに向き合うことの素晴らしさは「肉体と精神を鍛え、厳しさと優しさを学び、人間的に成長すること」にあると思う。
そしてなんとも上手く言い表すことはできないが、この漫画で表されている成長や努力は、美しくて見映えの良い表層的なものに過ぎないような気がする。
スポーツというより、ゲームに必死に取り組んでいる少年たちの青春劇に見えてしまうのだ。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2018-09-02 23:15:56] [修正:2018-09-03 00:46:10] [このレビューのURL]

根本的な話運びが今一つ。
展開が劇的なのは良いが、作者の描きたいシチュエーションありきでキャラクターが動くので、色々と唐突な流れが多い。
しかもその割りにはとりとめのない場面をじっくり描いたり、妙に伏線が張ってあったりと、慎重に読ませようとしてくる要素が多くバランスが悪い。

全体的に作者が自分の発想に陶酔している感があるような気がするが、それぞれの要素の繋ぎ方が稚拙に感じる。
大まかなプロット自体は悪くないとは思うが、若年層向けの子どもだましな展開が多くてしんどかった。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2022-06-25 05:58:33] [修正:2022-06-25 05:58:33] [このレビューのURL]