「パンダマン」さんのページ

総レビュー数: 134レビュー(全て表示) 最終投稿: 2006年11月22日

 読んだ感想は面白いという以上に怖かったです。この怖さを正確に表現できるかわかりませんが、この作品が架空の世界、架空の話でありながら戦争の闇の部分を的確に捉えている作品なので長くなりますが書いてみます

 「殺人マシン」という言葉に疑問を思ったことはないでしょうか。殺人者ではなく殺人マシン。この「マシン」という部分に戦争の暗闇の一部があるとは日本人ではあまり想像できない事かもしれません。
 第一次、第二次世界大戦で戦闘の長期化が起きると、兵士は人を殺す罪悪感と命を奪われる緊張感から、精神を蝕まれ銃を持っていても発砲しなくなったそうです。その割合は7割強。これは軍隊としてはかなり深刻な状況でした。
 事態を深刻にとらえた軍上層部は、徹底的な訓練を行います。徹底的な訓練というと聞こえがいいですが、実際は心の底から殺人できるように洗脳していきます。人の形をした銃を撃つターゲットを見たことがあると思います。あれも人をみたら躊躇なく殺せるようにする方法の一つで、これは非常に効果がありました。厳しい訓練を受けたものほど、より冷酷に効率よく人を殺せるようになっていきました。訓練は大成功でした。兵士達は敵兵だけではなく民間人でも平気で殺せるようになっていました。それこそマシンのように。
 しかしここで問題が起きました。戦争が終わり帰ってきた兵士は、元の生活に戻れなくなっていました。心から人を殺す事を「訓練」されてしまった為に。
常識的な行動、すべき事はわかっているのですが戦場から心が戻れないのです。そして自分たちが知らずに人間以外のものになっていた事に、背負いきれない十字架を背負ってしまっていた事に気がつきます。多くの者が殺人者となったり、人を殺した罪悪感から自殺者が多数の出ました。これは現代の戦争を経験した多くの国で問題になっています

 この作品の主人公も普段は温厚ですが、一度戦闘になると非情な殺人マシンへとスイッチが入ります。「スイッチ」を読者にもわかりやすく表現された青く灯るランタンがとても印象的です。そして殺した後に自分の凶暴さと罪悪感で絶望します。これはとても現実的でよく描かれていると思いました。
 作中では、一見非現実的非人道的な特殊部隊が色々出てきます。しかし、戦争という空間はやってしまってはいけないというリミットが外れやすい所。想像したことをやりたい、やってしまう事が許される世界。非現実的と思われる行いが現実になる世界。その異常さがこの漫画ではエンターテイメントの範囲で表現されています。正直怖くて寒気が止まりませんでした。
現実の世界でも厳しい訓練を行い洗脳するよりも、攻殻機動隊のように脳を直接いじって一流の兵士を作る研究が行われています

 この作品は戦争が起こす狂気の世界とそれが残した爪痕を少しでも実感できるかもしれません。ただ架空の世界で書かれているからかろうじて読めますが、この漫画で表現された狂気の世界が虚構ではなく「リアル」だという事を本当に感じた時怖くなります
 この暗闇を本当に照らすことなど出来ない事かもしれない。でも、それでも考え模索するこの作品には意味があり、それだけの価値がある

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-04-10 01:13:07] [修正:2009-04-10 01:13:07] [このレビューのURL]

 なんだかやっとフットボール好きな人にも勧められるフットボール漫画が出た感じ

プロのサッカークラブからのまともな視線から描かれているのが逆に新鮮
キャプテン翼から最近までのフットボール漫画は、複雑なフットボールの内容を漫画の中で紹介することから逃げて、ありがちな必殺技対決になるものが多かった。
しかし、この漫画は非常に専門的な事をだれが読んでもわかりやすく書いてある。試合の流れをどうやって監督がコントロールしているのか、選手の管理はどうなっているのか、クラブを支えてる人達はどのような苦労をかかえているのかなど、説明文章ではなくストーリーの中でさりげなく出してくるなど感心してしまう事が多い。現状の日本のフットボールクラブの内容をよくとらえている。
 所々で原作者が本当にフットボールが好きなのが伝わってくる
 こういうフットボール愛みたいのが詰まってる作品は面白さの安定感が全然違うなぁ

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-26 03:53:48] [修正:2009-04-09 23:29:07] [このレビューのURL]

10点 BECK

 絵の迫力や大きいコマワリで音楽の表現に成功した良作音楽マンガ
 強い悪役が出てきて、主人公達は弱者だけど才能と結束で乗り切るというコテコテサクセスストーリー少年漫画なんだけど、そんな事は感じさせないのは、題材と絵の迫力だと思う
 コテコテな分ハマリやすく面白い

 多くの男性漫画家がステレオタイプな女性像しか描けない中、この作者は生きた女性が書ける数少ない男性漫画家だと思う
 なので、恋愛マンガとしても、それなりに成功している
 作中で少女マンガがよく出てくるところから、よく少女マンガを読んで研究してるんでしょうね

 追記
 ただの音楽サクセス漫画として読んでて少し後悔した。
途中で飽きた人もこれは最後まで読んで欲しい。成功したから良かったねという漫画ではなかった
 昔、宮崎駿監督がなんで映画を作るのかというのを書いていた本があった。自分が何かを見て受け継いだものを次の世代に渡すため、その為にアニメを作っていると言っていたのに感銘を覚えたものだ
 BECKもそういう漫画だった。伝えたいから歌う。受け継ぎたいから歌う。そういう流れが一つの大きな力となっていく話だった。
 なので何かを感じ取りたいという感覚というのかな?。なんとも表現しにくいけど、そういう受容体がないとただの音楽サクセス漫画となるが、受容体がある人にはかなりの感動が待っていると思う。作者は受け継いだバトンを次に渡すために今までがんばって書いてきたんだな。感動した

ナイスレビュー: 3

[投稿:2006-11-27 03:55:39] [修正:2009-03-08 03:10:54] [このレビューのURL]

 「あれ?面白い」が最初に思った感想でした
 正直言って、ゲーム→漫画のメディアミックス作品で面白いのにあった事がほとんどない。打率でいうと9割は空振り。いやもっとひどいかも。ほとんどがハズレの経験
これも全然期待してなかった。PS3未だに高いしなぁ〜、でも高評価なゲームだし気になるから、漫画で雰囲気位は見てみるかと読んだのがきっかけ。
 一巻しかまだ出ておらず、さらっと読もうと思ったら、(面白いな・・・)と思ってしまって1巻の最後まで読んでしまって、(期待してなかったから面白かったんだ)と確認のためもう一回読んでも面白かった。

 際だっているのがすごくキャラクター性が出ていること。主人公率いる小隊の人数は10人以上出てくるわけですが、数コマでその人物がどういう思惑の人間かを表現している場合もあり、一巻でこれだけ登場人物だして、しかもそんなに派手でもない個性をよく表現できているのと同時に人種差別などの情報も織り交ぜてきて架空のヨーロッパの情勢も自然に入ってくる一石二鳥?な所も良かった。
 主人公が生物好きで、のほほんとした青年だけど、その独特な観点からの大胆な作戦や、優秀な統率ぶりもよく出てて戦争ものとしても面白いと思う。義勇軍と正規軍の扱いの違いも自然に描写してて、世界観も結構深みが出ている。

 作者の鬼頭えんさんには失礼だけど、本当に、これ書いてる時点でもこんなに当たりな漫画だとは信じられない。作風と相性が良かったのかな?それくらい、のびのび書いてる感じです

 なんだか、ゲーム欲しくなっちゃったよ。メディアミックス恐るべし

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-03-02 14:12:31] [修正:2009-03-02 14:12:31] [このレビューのURL]

 「紅」はそのままこの内容を示している
 鮮やかで、華やか、やさしい世界。しかし少し見方を換えると、狂気、恥知らずな外道な世界へと変わる二面性を指している
 日常の世界に潜む狂気の世界が魅力的

 でも、友達でも恋人でも家族ともどこか違う。しかしそれ以上に強い絆を持った主人公の紅真九朗とヒロインの紫の関係がやっぱりこの作品の一番の魅力だと思う。その関係が築かれるまでが大事だと思うけど、漫画ではもう出会ってしまっている・・・。
 一応、原作とアニメを観てたから予備知識があったけど、漫画から入った人はどうなんだろう。
とりあえず自分は原作知っててもオリジナルな話があるので楽しめました。
 
 原作は結構犯罪描写に緊張感があってリアル。
日本の裏の世界観がありえなさそうなくらい異常だけど、その異常な世界を納得させてしまいそうなほど文章に説得力がある。日本の裏を支えてきた裏十三家の力。人外とも言える異常なまでの力。
漫画はこういうのをどこまで表現できるか。文章以上の人外なバトルを表現できるか。二人の微妙で力強い関係を描けるか。それによって評価は変わってくる。
 今のところは満足できるくらいに面白い。原作に負けない位なら、かなり高評価に変わると思う 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-03-02 13:02:11] [修正:2009-03-02 13:02:11] [このレビューのURL]

3点 黒執事

 「英国」「執事」「女王直属の裏を仕切る貴族」「執事の正体が謎」。キーワードを並べるとすごく面白くできそうなんだけどいまいち。結構設定が適当。話に穴が多いなど読んでるこっちがう〜んとなってちょっとガッカリ。
 たぶんなんとなく英国な雰囲気で、軽めのダークな話でいい男が活躍する漫画を求めている人が対象なのかも

 大体、黒執事以外使えない使用人ばっかり雇っているけど、その理由が5巻現在まで一切語られないまま。なんでクビにしないんだか謎。裏家業やっているから表の仕事は出来なくても裏では凄腕でなのかと思いきや、どうやらただの引き立て役みたいだ。ただの場を和ませるだけの引き立て役なら四人もいらない。女王の番犬というには、実行力が実質、黒執事しか出てこないというのはどうしたものか。
「英国」「執事」という誰かが築いてくれた世界観にのっかてるからかろうじて読めるけど、これの世界観事態はかなり薄い。執事ブームに乗っかっただけの出たとこ勝負はやめて欲しかった。

 正直、これ書いてる時点で執事漫画は他にも結構出てるけど、みんな上辺だけで中身がない執事ばかり。非常にどの執事漫画の執事も浅い。これは絵もうまくて雰囲気あっただけに期待していたんだけど、これもやっぱり浅かった。
 まぁ、この執事がまた特殊というのもあるんだけど、別に特殊にしなくても、英国の貴族というだけでかなり面白い話作れるし、執事の世界というのもかなり歪んでいるから、いくらでも面白くできると思うんだけどなぁ

 メイドものは森薫さんのがあるが執事ものの面白い漫画はしばらく出そうもないなぁ。
 「日の名残り」っていう執事小説を読んでから、その異質な執事の世界に興味を持って調べた自分は執事ものにはちょっと辛口かもしれない。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2009-02-18 07:54:00] [修正:2009-02-18 07:54:00] [このレビューのURL]

8点 MONSTER

 この漫画は浦沢直樹以外では極少数の作者にしか描けない作品だと思う
 ちょっと変わった話の流れで、まぁ普通の一本道のストーリー漫画なら、きれいに起承転結という流れが普通です。しかし、これは起起起と続いたり起承起承たまに転でまた起承といった、まぁ非常にテンポが悪くなりそうな作りになっている。だけど、グイグイ読者を引き込む謎が謎を呼ぶ展開や、ちゃんとその謎を解いた時に納得のいく答えを持ってきてくれるので、テンションは下がらず逆にテンポは上がる一方で一気に読んでしまう力を持っている。

 まぁ手法としてはホラーで使われいるのをサスペンスに持ってきているだけなんだけど、問題は謎解き部分に持ってくるコマの絵。
ホラーのように気持ち悪い絵や非日常的な絵でインパクトのある絵をバーンッ!っと持ってこれるならまだしも、サスペンスなので現実の世界でキャラクターなり背景なりに納得のいく絵をバーンッ!とかける人っていうのはそうそういない。
画力とか表現力、想像力とかがトップレベルでその力をフルに出さないと読者が納得いくレベルのものは出せないだろうし、そもそもそこまで期待させるような話作りや組み立てだけで非常に難しい。そういう芸当ができる漫画は、そう何人もいるわけじゃない。手法がわかってもマネできる人が非常に少ないと思う

 そんな意味でもこのモンスターは意欲的だったし、緊張感のある良い絵が一杯ある。まぁ、この後にこの手法で味をしめて20世紀少年、PLUTOへと続き、今では「浦沢節」とかいわれてるけど、他にマネできないから「浦沢節」なんて言葉もあるんだろうね。非常に高度な漫画なんだなぁーと改めて読んで思いました

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-02-17 11:02:56] [修正:2009-02-17 11:02:56] [このレビューのURL]

 芸能界復讐奮闘記?みたいな話
 色々なやっかいごとをガッツで乗り切る主人公は見ていて気持ちいい

 これを読んでいて菅野美穂を思い出した。菅野美穂を初めてはっきり覚えたのは「エコエコアザラク」というホラー映画。ラストの豹変する演技はもう言葉で表現できないくらい衝撃的で、主人公達だけでなく映画丸ごと喰ってしまう位パワフル。まぁ、それから売れっ子になるには時間がかからなかったのはあの映像をみれば納得せざるおえなかった。
 菅野美穂の見事な悪役っぷりなどついついこの漫画の主人公と感じが似ているのでついつい重ねてしまった。現実の女優と比べられるくらいこの主人公は生き生きしてる

 一応復讐の為に主人公は動いているという設定だから話が暗くなりそうなんだけど、ほんとどのシーンがおちゃらけているので話が暗くならず、ケラケラ笑いながら読めて読後もスッキリ。怨念が取り付いたブラック主人公には愛嬌すら感じる。笑うとこは笑うとこ。シリアスなところはシリアスなところと、ちゃんとメリハリもあって漫画にテンポがある

 難しい演技のシーンでも、コロコロ変わる表情を読んでいる側が「おおー」っと思うレベルのものに仕上げてくるあたり、この作者のレベルの高さが出ている。漫画って自分の想像したキャラクターには既に演技させてるわけだけど、それに更に演技させて、大根演技、ベテラン演技とか描き分けるのってすごい高度だと思う。読者を納得させる表情をかくとなると、もうなんか想像するだけで胃がキリキリしてくるな。
 主人公がどういう選択をしていくのか先が気になるね〜

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-02-17 10:21:06] [修正:2009-02-17 10:21:06] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

 子供の頃の廃館探検や小さな穴蔵探検の不安とドキドキ。あの暗闇の先にはなにがあるんだろう、あの扉の先は・・・。
そんな子供時代に描く未来も似たような感覚だった。不安とドキドキであふれ、先は全く見えない暗闇。
 しかし探検ゴッコや自分の未来も、先に待っているのは、大抵ガッカリとした現実。不安どころか、ドキドキなんか待っていやしない。それは大人になるほどにリアルになっていくものだ。

 でも、もしも、もしもそれが不安ばっかりでできた未来だとしたら?
 30過ぎてガッカリの現実だったとしても、ドキドキがどんどん減っていく世界だとわかっても、そんな自分でも不安が待ってる世界なら立ち向かわないといけないんじゃないか?
 どんなに先が真っ暗でも。絶望的だとしても
 友の為に。子供の為に。どこかの知らない誰かの為に
 少しでもドキドキが待っている世界に変えようとしなければいけないんじゃないか?

 ドキドキを仲間と共有できる場所、「秘密基地」。自分たちの聖域は絶対に守らなければならない。自分たちのすべてはそこから始まっているのだから

 これは主人公のケンジの心境でもあるけど、作者の漫画に対する心境でもあるのだろう
 珍しく自分臭をださない作者が、叫び続けた作品は個人的には好きだった
 話の展開とか言いたいことは山ほどあるが、作者の叫びが感じることができた良い作品だと思った。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-02-13 23:46:32] [修正:2009-02-13 23:46:32] [このレビューのURL]

 命があるものならだれでも恐れ認めざるを得ない程強力で、原始的で残酷な力
それが暴力だ。

 日本では、未成年法のおかげで若者の将来を守る為の甘やかな法は同時に喧嘩レベルの暴力ならば容認される世界。
その世界は弱者には、時に残酷なまでの生物としての無力差を味わう世界となる

 この漫画の主人公がまさにその弱者であり、生物としての危機感ともいうべきところから、暴力の力を求め、自らの道を切り開いていく話。
 未成年であるからこそ存在が許される、残酷で甘やかで原始的な世界は一人の人間としてというよりも、一つの生物としてかなり興味深くて面白かった。

 暴力で切り開く世界、その先はどうなるのか、最後まで読み切る力があった。

 人によっては、意見のわかれる格闘ウンチクは個人敵に大好きでしたよ
 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-12-02 03:52:39] [修正:2009-02-13 22:38:35] [このレビューのURL]