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総レビュー数: 258レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月29日

9点 RED

日本ではあまり見られない西部劇(当たり前か…)、復讐譚。ロードムービー的な側面もあるので恐らくアメリカの西部劇なんかに影響を受けたんだろう。そこはかとなく洋画っぽさを感じる作品だ。

村枝賢一入魂の一作というのに相応しい。憎悪、愛、虚無感、嫉妬、友情、様々な感情が読む人の心を抉らずにはいられない。
魅力的なキャラクターがそのハードな物語を中和して、かなり読みやすくしてくれる部分もあるだろう。レッド、イエロー、ホワイト、ゴールド、グレイ、そしてブルー。読んでいて思うのは彼らには確かな色があったということ。レッドが主人公と言えど、それに塗りつぶされることのない一級品の群像劇に仕上がっている。

REDの白眉は復讐劇に村枝賢一なりの答えが示されていることだ。
復讐のために殺した。これは全く同じ論理、正当性で復讐者に跳ね返ってくる。だからこそ途中でオーエンやその妻の話が挟まれ、結果ブルーとのたった32ページに凝縮されたあの戦いがある。復讐者は幸せになり得ない、これを村枝賢一、そして誰よりもレッド自身が知っていた…。

もちろんこれは唯一の回答ではなくて、村枝賢一の答え。
イーストウッドの”許されざる者”と比べてみるとよりおもしろい。あれは許されない罪を犯したものがそれでも生きるなら…という作品なんだけど、極端に言うと開き直って生きるか世を捨てるかのどちらかしかないと示唆している。朝がまたくるからの孝なんて明らかに後者。インディアンを大量殺戮したアメリカは、クリーブランドはどちらを選んだのか…言うまでもないですね。それにしてもイーストウッドかっけぇ!

こういう硬派というか作者の美学を感じさせる作品が私は映画や漫画を問わず大好きだ。漫画では珍しいだけにREDに出会えて本当に良かった。

1つ文句を言いたいのはネイティブ・アメリカンの虐殺問題の扱い方。日本では馴染みのない問題なので取り上げたこと自体はすばらしい。世界史の教師はフロンティアが消えた年代は覚えさせてもその裏に潜む意味を教えはしない。
しかしそれならブルー小隊が凶悪ゆえに彼らを虐殺したなんて捉えられかねない書き方をすべきではなかった。この先住民族の95%が白人に虐殺されている。オーエンのような普通の人が当たり前のように殺し、奴隷扱いしていた時代であったこと、ここにもっとスポットを当てて欲しかった。

そういう意味ではブルー小隊が凶悪である必要はなく、レッドがブルー小隊の面々を殺した理由がその凶悪さでごまかされているのは村枝賢一の甘さが出たと思う。誤解を恐れず言うなら、レッドは善良な普通の人であるオーエンをこそ、スタージェスをこそ殺すべきだった。ブルー小隊が凶悪だから殺すのではなくてあくまで復讐のために殺すのだから。
ブルー小隊が基本的に凶悪な上にあちらから襲い掛かってくるもんだから勧善懲悪、正当防衛に見えかねないんだよなぁ。仇を殺した時に当たり前というかすかっとしてしまう所は大きくマイナスだし、レッドの罪をもっと強調しないと話の筋が通りにくい。ここさえなければ本当に大傑作と言えるのだけど。

点数の1点減とレビューの修正
途中脇道にそれた面があるように感じたのと上に述べた部分で1点減。群像劇ゆえに難しいだろうが、もう少し纏まっていたら間違いなく10点だった。ついでに最初書いたのがかなり前だったので書き直し。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-05-03 10:47:57] [修正:2011-09-03 03:57:33] [このレビューのURL]

貧乏に喘いでいた仏物専寺の坊主雲心はある日思いついた。そうだ、お金がないなら学校を始めればいいんだ!
「50単位で悟りだ!」募集をかけて集まってきたのは個性豊かすぎる生徒達だった…

禅寺ぶっせんを舞台にしたとんでも仏教コメディ。何この色物すぎる設定?と思うかもしれません。だまされたと思って読んでみてください。するともうあなたはぶっせんの虜です。

これだけ笑わせてもらった漫画は久しぶりだった。
ぶっせんの面々を中心に出てくる人物の愛すべきアホさがもう大好き。現実にいそうでいない個性的なやつらばっかりで楽しくなります。少なくはない登場人物が幾重に絡んで笑いをとっていくさまは、まさに喜劇を見ているようです。
各話の終わりでしっかり落として笑わせてくれるのはまさにギャグ漫画のそれです。単体として見ても十分におもしろい。しかし実はジョーや三条の話に代表される青春を描いた物語でもあって、各話でみるとギャグ漫画、全体でみると青春漫画という二重構造になっているんですね。だからこそ少なくはない登場人物たちを多くはない巻数でより魅力的に描写できているし、それがまたコメディパートをおもしろくする好循環となっています。
最後は地味に脇で進めてきた話がぶっせんの卒業式に結実する。本当にコメディか?ってくらい泣いてしまった。どんなに楽しいこともいつかは終わってしまうこの寂しさは今日から俺は!を読んだ人は分かると思います。冷静に考えるとどちらかというとバッドエンドのはずなのにこの清清しさというか希望に満ちている感じは何故だろうw
レオなどコマの裏での小ネタも充実しているので探してみると楽しいです。

設定といい絵柄といいパッと見て買おうとはしないかもしれない。でも紛れもない名作なんです!読まなきゃ損!
このおもしろさを人に宣伝したい気持ちもあれば自分の中の宝物にしときたい気持ちもあるという…そんな漫画です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-15 23:56:04] [修正:2011-08-01 19:46:34] [このレビューのURL]

ディスコミ完結編。
…にも関わらず、戸川と松笛は脇役扱いというね。正直悲しいです。
今までの松笛の役回りを、三島姉妹を代表とする夢使いが担うことになる。そもそも「精霊編はキツネのお面の少年からキツネのお面の少女への主人公の継承の物語だったのです」ということなので当然ではあるのだが。しかし夢使いでやってくれても良かったんじゃないか?
相変わらずの余白が許せないんじゃないかというほどの書き込みは健在。絵柄は少し変化してよりスタイリッシュになった。この頃の絵柄が一番作者の人間離れしたセンスが感じられて好きだったりする。
オールド玩具・特撮・魔法少女・江戸川乱歩・呪術あたりの好きなものをごちゃ混ぜにしたような世界観とストーリーはものすごい。やっぱ植芝理一はこうでないとね。

精霊編は冥界編と同様「なぜ人は誰かを好きになるのか」という命題に正面から取り組んだ作品。冥界編がそんなことを考える意味があるのか?と「なぜ人は誰かを好きになるのか」という命題の意義自体を問う面が強かったのに対し、精霊編では人を好きになることの闇を描くことでその答えに近づこうとしている。
冥界編と精霊編を合わせて一対になっているような印象で、どちらも甲乙つけがたい質の高さだった。
結末はどちらかというと冥界編が好みなんだけど精霊編も良い。
人類の黎明期からあるような普遍的な命題の答えなんてあるはずがない。でもそれを考えることは大切なことだし、皆で考え続けていくことでいつかは解けるかもしれない。戸川が見つけ出したのはあまりにも小さいけれど、自分だけの確実な一歩。
答えは大事じゃない。ディスコミは考えるきっかけを与えてくれる。それこそに価値があると思う。

1点マイナスの部分は精霊編としては最高だったものの完結編ということもあって、やはり松笛と戸川を主軸にすえなかったのが残念だったから。最終巻の表紙に戸川の姿すらないしね。最終ページといい、夢使いの予告をこんなところでしなくてもいいのに。
もっと2人の姿が見たかったなあ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-21 00:51:37] [修正:2011-07-21 00:58:59] [このレビューのURL]

大人の絵本。
別に悪い意味で言っているのではなく、それだけの叙情性を持った作品であるということ。子どもの頃に読んだ良質な物語と同様、心の奥にうったえかけられるものがこの漫画にはある。

最初読んだときは何がおもしろいのか分からなかった、でももう一回読みたくなった。やはりおもしろさは分からないのだけれど、何度も何度も忘れた頃にまた読みたくなった。
劣悪な環境の中でもなんとか笑って生きようとする彼らの生き様や悲哀といったものが私の心の中にできたしこりのように私の中に残ったのかもしれない。棘みたいに深く刺さって。
絵は下手だし、全体を通してこれだ!と推せるようなエピソードがあるわけでもない。でも何か深い所から私達の心を動かせるような力を持つ奇跡的な作品。

そもそも漫画と言っていいのか分からないので8点にしとこうと思ったのだが、それだけ心に残った作品ということで9点で。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-14 10:51:16] [修正:2011-07-14 11:05:09] [このレビューのURL]

久々の連載復活に驚喜したのでレビュー。
言わずと知れた能力漫画の最高峰だし有名作なのであまり何も書く必要も感じないけど。
レベルEじゃないけど今のジャンプで想像の斜め上をいってくれるのはこの漫画くらいな気がする。
本当の意味で先が読めない漫画というのは非常に珍しいので当然おもしろいわけです。

個人的なお気に入りはグリードアイランド編。今思うと念能力のバランスが一番とれてた時期だし何よりもこの発想がすごい。
現時点であるキメラアント編はインフレがひどいのは明らかだけど戦闘描写が神がかってるからこれまたおもしろいんだよなあ。しかしここが終わったらどうするつもりなのか…
とりあえず放射能オチとゴンがかの漫画のごとく安易に霊力…じゃなくて念能力を回復する展開だけは勘弁して欲しい。
そして何とかヒソカや幻影旅団あたりが相対的に弱くなった印象を挽回してくれたらいいなあ。

とりあえず下書きで載ってた以前とは違ってかなり期間は空くけどきれいな状態でまとめて載せてくれる現状は満足してます。
ほら、キルアのあれと一緒ですよ。
もうそこそこいい年した人間なんだし、富樫先生がおもしろい話を描くには充電することが必須なんでしょう。
幽遊白書みたいに最後投げるくらいなら、旅行なりゲームなり何なりとしてもらって作品に生かしちゃってください。

余談
ゴレイヌの位置入れ替え能力も大概だと思ったけどメレオロンと貧者のバラはこの漫画のバランスを崩しかねない気がする。
神の不在証明と操作系の能力の組み合わせでもう戦闘即終了というか王にも勝てるだろ。
後操作する生き物を利用してバラを爆発させるテロが流行りかねないよね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-10 21:16:12] [修正:2011-07-11 09:21:58] [このレビューのURL]

9点 イムリ

私がこのマンガを読んだのはダヴィンチの今月のプラチナ本で紹介されていたのがきっかけだった。

1巻を読んだときはどこがおもしろいのかと思ったが、先を読んでいくともう止まらない。
このベルセルクの中世ヨーロッパのような、ドロヘドロの混沌とした、ナウシカの何ともいえない美しい世界観とはまた違った三宅乱丈独特の泥臭いけれども魅力的な世界がそこにはあった。
細かいところまで設定・構成もよく練られている。
カーマの侵犯術や階級構造は興味深いし、イムリの教えや道具の謎を代表に世界の成り立ちを解き明かしていくファンタジーの王道ともいえる展開にはわくわくしっぱなしだ。
今から話がどう転がっていくのかが読めないけれど、名作になることは今のうちから断言できる。

1巻のテンポが良すぎるが故の敷居の高さでかなり損をしている気がするがそこは我慢して読みましょう。
覚えにくい人や国の名前が大量に出てくること、設定が難解、そもそも三宅乱丈初見の人には絵がとっつきにくいことなど最初はかなりきついかもしれないが、そこを乗り越えればもうこの世界にどっぷりだ。
今1番おもしろさと知名度に差がある作品だと思うし、私はタイプは違うけれども第2のナウシカになりうるんじゃないかという位に評価している。(チムリのリス?もナウシカを意識してるような部分も有り)
漫画好きなら間違えなくはまるので、質の高い作品を読みたいと思ってる人はぜひ読んでみて欲しい。
ナウシカはもちろん、上橋菜穂子さんの守り人シリーズや獣の奏者が好きな人とかは特に波長が合うんじゃないかと思う。逆もまた然りなのでこっちも薦めときます。

2011.7.11
興奮してたのか主観的すぎたのでレビューを修正

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-02 18:15:00] [修正:2011-07-11 01:17:14] [このレビューのURL]

9点 BASARA

圧倒されます。確実に名作といえる作品でしょう。

バサラ:自由に生きる人たちという意味らしいです。この作品に出てくる人物たちはみんな自分の意思を持ち、生きています。しかし、この時代では自由に生きるということは大きな危険を伴う。だから彼らは必死に、本当に必死に生きて生き抜こうとする。しかしそれでも・・・

この作品の裏主人公は浅葱だと思っています。彼は最初自分の意思では動きません。何かに寄生し、自分一人では立てないこの世界の多くの人々と同じです。しかし、その彼が変わろうとし、成長する過程が私にはこの世界の人々と重なって見えます。
他の方も言ってましたが私の最大の号泣ポイントも朱里と柊の決闘シーン。あまりにも美しい一瞬の戦いにあまりにも多くのものが凝縮されていて、もう涙ぼろぼろでした。涙腺が熱くなるシーンなど数え切れません。

そこらの少年漫画よりよっぽど骨太でかつ女性にしかかけない物語がここにあります。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-30 23:43:09] [修正:2011-06-25 22:21:04] [このレビューのURL]

私はこれを見て映画Stand By Meを思い出しました。
タイプは違いますが、そんな風な何度も見直したくなるような、なつかしさを持った作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-03 22:49:54] [修正:2009-12-03 22:49:54] [このレビューのURL]

プラテネスがあくまでも宇宙をベースにした話だとすれば、こちらはまさに宇宙そのものといった感じ。デブリの話とか月面で走る話とかけっこう似たようなのあるんだけど影響してるのだろうか。

作品内容自体は宇宙開発や中国とアメリカの対立などどれもリアルに思えるように描いている。実はかなりおかしい部分もあるらしいが、自分は雰囲気味わえればいいかなとも思う。吾郎のパートはひたすら熱く、ロストマンのパートは謀略中心であきさせない。絵も太めで、それでいて精密に描かれておりかなり好み。

一部は一段落して二部は歩が主人公のよう。楽しみだけどテンションが落ちないか不安でもある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-11-24 23:11:30] [修正:2007-11-24 23:11:30] [このレビューのURL]

ファンタジーといえば、ベルセルクやクレイモアのような中世ヨーロッパのようなものをイメージしていた自分の思考を見事にぶち壊してくれた作品。

敵味方ともにキャラが立っていて、カイマンたちよりむしろ煙ファミリーの方を好きな人が多いのではないのかと思うほど。藤田と恵比寿は見てて笑えるし、微笑ましいしでかなり好き。

いきなり野球大会などが始まったりして展開は遅めなのだけど連載当初の不思議な雰囲気はずっと継続されていてまだまだだれる気配はない。逆にそこがこのポップな雰囲気を作り出しているのかも。多少謎を出し惜しみしている感はあるのだけれど。

値段は高いけれど表紙はかっこいいし、油絵っぽく描かれた最初の数ページは見る価値あるし、魔のおまけとかおもしろすぎるしで買う価値は十分ある。結末が楽しみ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-16 12:36:17] [修正:2007-07-16 12:36:17] [このレビューのURL]