「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

「銀河英雄伝説」の田中芳樹と「吸血姫美夕」の垣野内成美がコンビを組んで贈る、
怪奇ミステリー小説の漫画版。原作は未読ですが、小説版でもこのコンビのようです。

内容についてはフクポルさんのレビューが素晴らしいので、割愛w
補足させていただくとすれば、モンスターは基本的に実行犯?なだけで、結局のところ黒幕は
それらを利用する人間なんですな。確かに化け物じみた権力者が多いですけどね。
なので、単なるモンスター退治だけで終わらないところが救いです。

傍若無人で唯我独尊で傲岸不遜で悪辣で自分勝手で無慈悲で無邪気な絶世の美女、お涼さんが、
泉田くんの気を引こうとしたり、想いを遠回しに、まれに直球で伝えたりするのがかわいかったりします。
若干読みづらいですが、絵が綺麗なのも良いです。まぁとにかく脚を見せつけてくれます。
もともと原作者の思い描いていた「絶世の美女」を表現できるのはこの人以外に考えられない、
と直に指名されたのが垣野内氏だそうで。

この作品の売りは 「謎解き」 ではなく 「爽快感」。
お涼さんの暴れっぷりと性格にイラッとくる人でなければ、充分に楽しめる作品だと思います。
いくらなんでもハイヒールで全力疾走なんて無茶ですよ…。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-21 20:55:16] [修正:2010-07-21 20:56:31] [このレビューのURL]

時代の空気をはっきりと色鮮やかに切り取った作風が印象的。
当時のエポックメイキング的な作品であり、80年代を代表する少女漫画の大ヒット作です。

少女漫画で男の主人公というのも珍しかったと思いますが、単なる白馬の王子様、という訳ではなく、
格好良いけど気さくで破天荒で、人間味があって、でも実はやっぱり某王家の嫡男で、
なんていう主人公像は、この作品のヒットを機に広まったとのこと(本当かどうかは知りません)。
まあそれはさておき、明るく楽しく元気よく、シリアスもギャグも良質で、心理描写にも長けた、
実にバランスの取れた作品であることは確かです。
これより以前の少女漫画にあるような重さ、堅苦しさ、ある意味「乙女の世界」の面影は微塵もなく、
男性にも読みやすい作品だと思います。

中東、イギリス、フランス、日本。
アメリカにとってのエイリアンである移民たちが、見知らぬ土地であるLAで出会います。
でも彼らは移民であり、いつかは本国へ帰郷しなければならない。
この楽しい時間は今だけ。このひと時はもう戻ってはこない。
最初から別れを前提とした出会いのため、あまり深く踏み込まないようにする…、のではなく、
限られた時間だからこそ、その時を大切にする。 その出会いを大切にする。
明るく楽しく元気よく、の裏に込められているのは、そんなシンプルなメッセージ。

何かこういう雰囲気の漫画って食傷気味だな、なんて思っていたのですが、
この作品に追随する多数のフォロワーのおかげで、既視感を感じてしまっていたのかも。
うまくまとまった良作であるとは思うのですが、個人的な思い入れが足りない分、
そこまで特別な作品には感じられませんでした。残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-13 23:37:13] [修正:2010-07-13 23:45:23] [このレビューのURL]

短編集です。
3編が入っていますが、表題作のインパクトが強く、表題作+その他2作、という感じです。
個別にレビューしてみました。

「女神が落ちた日」
こういうとにかくスケールの大きな作品を描くと、この人の才能は光り輝きます。
ただ、その才能を完全に発揮するには短編は短すぎました。
長編として読んでみたかった作品。
不完全燃焼。やっぱりこの人は長編向きなんだなぁ。

「こわいもの」
ホラーテイスト。
あまりインパクトなし、後に残るものもなし。

「きねづかん」
昔取った杵柄(きねづか)を繰り出して活躍する老人たちを描いた作品です。
ご都合主義なところはあるものの、爽快感があり、スカッとします。
読後感が良いですね。
肩の力を抜いて楽しみながら描いたような、読みやすい作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-13 23:32:45] [修正:2010-07-13 23:32:45] [このレビューのURL]

前半と後半とで評価が大きく異なる作品です。

前半では、一般人である営業マンが意に反して有名殺し屋の名を継ぐことになってしまい、
何とか生きのびていこうとする話がメインとなっています。
その根底にあるのが、殺し屋(ヒットマン)心得その1、「先に撃った方が勝ち」。
どんなに弱くても、どんなに素人でも、これなら相手を倒せます。
その心得を実践するために、ズル、不意打ち、心理戦、営業で培った口八丁など、
あらゆる手段を駆使するわけですが、そこまでの持っていき方が面白いです。
大人向け漫画なだけに、それなりに納得できるような説得力をも備えています。 良作。

対して後半は、当初の「営業マンの知識を殺し屋に応用して素人なりに戦う」から、
「営業マンと殺し屋との二重生活のギャップを楽しむ」ことに、作品がシフトしてしまっている気がします。
また、他の方も危惧しているように、「相手の弾は当たらないのに主人公の弾は当たる」ような
作品になってしまったことが何とも残念です。
主人公が(かなりの努力はしているようですが)たった1年で凄腕の殺し屋になってしまったことで、
前半の魅力がどこかに行ってしまいました。

とは言え、奥さんともう1人のヒロインとの三角関係とか、超一流の殺し屋との戦いとか、
戦略的な組織壊滅とか、前半には劣るかもしれませんが面白さは維持しています。
何より、この作品の良さは、愛着の持てるキャラクター達。
「B級アクション漫画ってこんな感じですよ」という教科書のような作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-08 21:09:14] [修正:2010-07-08 21:16:22] [このレビューのURL]

グリム童話を諸星流に大胆アレンジした短編集。
戦戦慄慄のサスペンス、練りに練ったミステリー、設定を実に上手くアレンジした現代劇、等々。
有名どころの話を題材にしながら、この人の手にかかると全く別の話に見事に生まれ変わります。

グリム童話の本領である不条理さ、残虐さ、不気味さ。
そういったものが作者の手によってさらに強められ、あるいは捻じ曲げられ、消化されて、
作者独特の世界観として再構築されています。
諸星作品とグリム童話との相性がよほど良いんでしょうね。
先の展開が全く予測できないストーリー、読者を引きずり込むような構成力の凄さも健在です。
元ネタの都合上、話の面白さにかなりばらつきがあるので総合的にはこの点数ですが、
赤ずきん、ラプンツェル、Gの日記は特に良かったです。

作者のグリム童話アレンジ集は、他にも姉妹版に当たる「スノウホワイト」があります。
個人的には全体的にこっちの方がちょっと面白かったかなと思いますが、
気になる方はどちらも手に取ってお気に入りを探してみてください。
特にラプンツェルは「スノウホワイト」でも全くの別アレンジとして収録されているので、
読み比べてみるのもまたご一興かと。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-23 20:12:37] [修正:2010-06-23 20:12:37] [このレビューのURL]

時空を超えたラブロマンス。
過去から来た忍者が、自分の守るべき存在である姫君と瓜二つの女子高生に出会い…、というお話。

景虎の古風な素直さ、健気さ、献身的な愛情が、この作品の一つの特長。
現代では物珍しい感じですが、過去から来た人、と言われてしまうと妙に納得してしまいます。
うーん最近の男(もちろん自分含む)はそんなものを持ち合わせていないのかw
と身につまされる思いです。

単なる恋愛ものの枠を超え、途中からどんどんスケールが大きく拡がっていくこの作品。
タイムスリップものって、時間移動を連発すると収拾がつかなくなることが多いです。
この作品はその一歩手前の状態に見え、伏線張りまくりで上手く回収できるのか、とも思いますが、
ただ、ここ最近急激に面白くなってきました。終わってみたら点数が跳ね上がっているかも。
まだまだ続きそうですし、先の展開を楽しみにしつつ、ベテラン作家ならではの手腕で
きっちりまとめてくれることを期待します。

基本的には典型的な少女漫画なので、あまり男性向けではないかもしれませんね。
ちなみに、なんかヒロインが変わりすぎです。容姿も性格も。初めの頃とはまるで別人。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-23 07:35:30] [修正:2010-05-23 07:39:47] [このレビューのURL]

「11人いる!」をベースに、「火の鳥」やら「宇宙戦艦ヤマト」やら「21エモン」やら的な要素を加え、
川原的味付けで調理したような作品。
バトルあり、スピード感あり、緊迫感あり、と今までの川原作品とは一風変わったものになっています。
だけど読んでみるとやっぱり濃厚な川原作品なんですよね。その個性には恐れ入ります。

人間の動物に対する差別、迫害、虐待。
結構重いテーマも扱っていますが、重すぎず、くどすぎず。
深い視点、哲学的な味わいを、作品にサラッと織り込ませる手腕は見事。

ほんわか、ほろり、まったり、もぎゅもぎゅ。
こういうところが変わらないのが嬉しいです。
相も変わらずささやかな幸せが感じられるのがいいですね。

でも個人的にはやはりこの人は短編の方が好きだなあ、とつくづく感じてしまいました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-23 07:27:16] [修正:2010-05-23 07:27:16] [このレビューのURL]

絵がべらぼうに綺麗です。
作品に流れる、優しくて温かい時間と空気。
ところどころで琴線に触れる台詞やシーンがあったりして、特にコハルの頑張りにホロリとさせられます。
何ともコハルがかわいらしくていじらしいです。
時折見せるその物憂げな表情からいろいろな思いが伝わり、それがまた胸を熱くします。

それだけに、何か惜しい、もったいない、というのが正直な印象。
いいテーマを選んで、もっともっと面白くなっていく要素を多分に秘めた作品なのに、
自分の中でだけかもしれないですが、どうもしっくりこないんですよね。

その違和感がどこにあるのかと思ったのですが…。
正宗はまだ仕方ないとしても、コハルも、秋も、みんな大人の目線で考え、大人の都合の良い様に動き、
大人が納得できるような内容のことを喋っているような気がします。
全ての人がお互いをすごく大切に思い、尊重し、というのはいいのですが、
なんかそれが強調されすぎて、その描写があまり自然なものに感じられないんですね。
そこに違和感を感じたのかもしれません。
すごく綺麗な作品なのですが、あまりにも綺麗すぎます。

コハルはいつまでも自分を殺してないで、もっと感情をありのままに表現してほしいです。
正宗にずっと敬語なんか使ってないで。タラちゃんか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-17 22:34:19] [修正:2010-05-17 22:41:02] [このレビューのURL]

何が何やら入り込めないままに終わってしまった青春群像劇。
会話が物語の根幹をなしていますが、誰が喋っているのかわからないことがよくあるのが辛いところ。
読みながらとにかく心がもやもやしてきます。真綿で首を絞められるような息苦しささえ感じられます。

が、なぜか不思議と読後の余韻は悪くないです。
これも澄緒ちゃんのキャラのおかげか。
全体に漂う雰囲気が良質な作品です。
悩みながら、苦しみながら、迷いながら、前向きに歩いていきたいものです。

とりあえず、思ったほどはヒロインにイラッとこなかったです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-14 21:01:17] [修正:2010-04-14 21:06:52] [このレビューのURL]

6点 かりん

吸血鬼系恥じらいラブコメ(作者談)。

一見お馬鹿でドタバタな作品に見えますが、全体の雰囲気は暗く、重いです。
「不幸」がキーワードの一つでもあり、家族関係の描き方なんかも独特です。
ラブコメ部分が甘ったるすぎるだけに、その対比が際立っています。

ラブコメになったのは作者の意志ではなく編集部の陰謀とのこと。
なので、ラブコメ色を出そうと逆に力みすぎたのか、序盤は若干空回り気味かも。
落ち着いてきた中盤以降はしっかりとしたストーリーが展開されています。

全般を通してきっちり話が作られ、上手くまとめられた作品です。
やっぱり終わり方のすっきりした作品は気持ちいいです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-20 22:33:43] [修正:2010-03-20 22:34:40] [このレビューのURL]