「十歩神拳」さんのページ

総レビュー数: 76レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年11月30日

この漫画は、従来のギャグ漫画とは違います。

私が思う従来のギャグ漫画とは、主人公はあからさまな非常識人であり、その人物の半ば悪意にも見える馬鹿げた行動「ボケ」により作品を混乱に陥れ読者を笑わせるというのが基本型です。
また、たいていの場合はツッコミポジションを除く他の人物や、その世界観自体がお馬鹿だったり非常識だったりします。

しかしテルマエ・ロマエは違います。本作の主人公・ルシウスは真面目な浴場建築技師であり、彼の行動理念はその殆どが仕事に対して全力で取り組むプロ根性だけです。
そして、ルシウスの周りのローマ人もまた、彼らの果たすべき役割に真面目に臨み、ただ普通に日常を過ごしているだけなのでしょう。たぶん・・・

そして、本作のもう一つの舞台となる「平たい顔族」の世界、すなわち現在の日本での出来事もまた、その世界にとっては変哲のないただの日常なのです。

つまりこの漫画には、人物にも世界観にもボケらしいボケが見当たらないのです!


では、本作の笑いの根源はどこにあるのかと言うと、それはおこらく文化の異なる二つの世界を常識×常識でぶつけ合わせた化学反応です。

ギャグ漫画の中には真面目さとシュールさを追求した「シリアスな笑い」を武器にする作品は稀に見ますが、本作の笑いにはより豊富な知識と、複数の常識的な視点を使いこなすセンスが作者に求められる分、さらにシュールで高度なギャグだと思います。

美術学校出身等の、作者の特殊な経歴により育まれた能力と感性あっての作風でしょう。

本当に面白いです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-11-22 14:21:23] [修正:2010-11-22 14:27:02] [このレビューのURL]

普通、自分が面白いと思った漫画を語るときにはその作品の好きなところや凄いところを説明するものです。
例えば「絵やキャラが格好いい」とか、「あのシーンが心に残る」とか、「張り巡らされた複線が凄い」などのように。

ところが「幽☆遊☆白書」の場合には、いざ語るときに良い言葉が浮かびません。作画やキャラクター、台詞や展開はもちろん超一級なのですが、そんな言語化された評価では全然足りないのです。
あえて言うなら、それらの個々の要素が合わさることで生じる相乗的な何かがこの作品の魅力に思えますが、具体的に言葉では表せません。
つまり結局は、それらの要素を複合させて相乗効果を生むことのできる、富樫義博の天才的な「センス」という言葉に本作の魅力は集約されてしまうのではないでしょうか。

とにかく「幽☆遊☆白書」は天才富樫義博のセンスを実感する最適のテキストであり、人に本作の良さを分かってもらいたい場合は、最終的に「読めば分かる」になってしまいます。本作の魅力を理解するには、自分で感じるしかないのです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-05 17:44:54] [修正:2010-09-07 14:19:22] [このレビューのURL]

戦慄した。
めちゃくちゃ面白いです。

1巻を読んだ時点で既に興奮していてすぐにレビューしたかったのですが、作品の内容上、もしかしたらすぐに失速してしまうんじゃないかという不安があったため、逸る気持ちを堪え待機していたのですが、2巻を読んだ時にきっとそれは杞憂に終わるだろうと思えたので堂々と高得点を付けます。

皆さんの仰る通り、巨人に蹂躙される人類が抵抗を続けるというシンプルなお話なのですが、容赦ない絶望感と凄惨さを描くことで強烈なインパクトを放っていて、とにかく刺激的です。しかし、過激な描写に頼りきっているわけではなく、しっかりと物語をつくり込んでいるので、心の底から「面白い」と思わせてくれます。
おそらくこの作者は、とてつもなく激しく野性的な感性を持ちながらも、それをまとめ上げる理性と知性を持ち合わせているのでしょう。

また、このようなシンプルな題材は過去に別の漫画家が使っていそうなものですが、私の知る限りでは漫画でこのような内容のものはなかったように思います(本当はあるのかもしれませんが)。
その理由は、題材がシンプルで地味だからこそ扱う側のセンスや実力が問われるからではないでしょうか。おそらく、大半の漫画家はこんな華のない題材で作品を描こうなどとは思いもしないでしょう。

地味な題材を扱った名作として私が真っ先に思い浮かべるのは「寄生獣」ですが、「寄生獣」はまだ青年誌での連載であり、時代もあくまで「実力主義」の傾向にあったはずなので、多少地味でも読者層を考えればそれほど問題は無いでしょう。
しかし本作はこの時代に、能力者もいなければ萌もない、綺麗な絵面でもないこの作風で少年誌に掲載されているのです。これはものすごいチャレンジです。
結果的に掲載誌と内容のアンバランスさがこの作品の魅力を増強していると思います。

とにかく、時代の波に逆らう硬派な作風と、自分が本当に面白いと思うものを創りあげようとする作者の姿勢に感銘を受けたので8点で。



ただ、登場人物の描き分けだけはしっかりできるようになってほしいと思います。でも画力が上がりすぎても、作品の魅力の一つである「巨人のキモコワさ」が無くなりそうで不安ですが。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-08-11 14:03:34] [修正:2010-08-11 14:35:00] [このレビューのURL]

8点 咎狩 白

いろいろな意味で、今もっとも人に薦めたい漫画。

2000年から1年半程の間サンデーで連載していた、あの知る人ぞ知る秀作「トガリ」が約10年を経て奇跡の復活です。


本作の背景となるストーリーは前作のあらすじやレビューを見ていただければわかるかと思いますが、主人公である統兵衛は現世で108日の間に108の罪を狩らなければなりません。

そして大胆にも、「咎狩 白」は「107日が過ぎ107個の罪を集めた」シチュエーションからスタートすることにより、あえて退路を断ち、無駄な引き延ばしを出来ないようにしてしまいました。
そのため、1話目から完全にクライマックスとなっており、物凄い勢いと密度で話が進んでいきます。

また、夏目先生は本作ではあえて先の展開を決めず、読者の生の声を聴きながら流動的に執筆しているらしいので、ベテランらしい手堅くスマートな展開ではなく、良い意味で荒く物語が進行します。
そのスタンスは「トガリ」の作風に物凄くマッチしていて、非常に面白いと思いました。

このスタンスで最後まで描かれるのであれば、本作は誰もが(作者すらも)予想できない名作になり得るかもしれません。
本作が名作か凡作か、あるいは駄作となるかの鍵はある意味私たち読者が握っているとも言えるでしょう。

とりあえず、機会があれば是非読んでみてください。
最初の数ページの強烈なインパクトで、当時の読者はもちろん、初見の方でも一気に引き込まれることでしょう。

また、夏目先生の漫画家としてのブランクが長かったせいか始めのうちは作画やテンポに若干のぎこちなさを感じましたが、話数を重なるごとに覚醒している感があるので、毎月どんどん面白くなっていくことも期待できます。

10年前と同じ轍を踏まず、今度こそは最後まで描ききられるように、少しでも多くの読者に本作を支持して頂きたいと願います。


まだ1巻しか出ていないのに高得点にするのは尚早かもしれませんが、期待と応援と宣伝の意味も込めて、8点です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-05-28 16:56:54] [修正:2010-07-09 11:24:06] [このレビューのURL]

8点 HELLSING

この漫画に勝手にキャッチコピーを付けるなら「狂気とロマンの地獄紙芝居」。

言うまでもなく本作最大の魅力は、登場人物から世界観まで余すところなく満ち溢れている「狂気」ですが、同時に作品全体にある種の「ロマン」もあるはずです。
それは登場人物の生き様やマニアックな兵器の数々、戦場の情景や奇怪な特殊能力だったりしますが、大概は狂気を感じる場面と表裏一体で混在します。
そのため、本作において「ロマン」と「狂気」は甲乙つけがたい2大要素であると私は考えます。


また、この作品のアクションシーンはあえて躍動感に重点を置かず、重厚でインパクトのある地獄絵図のような1枚絵を紙芝居のように積み上げることで構成されていることが特徴だと思います。
キャラクターの表情やポーズが強烈に記憶に焼きつくのはそのためでしょう。
この、他のアクション漫画とは一線を画する特異な作風を表すために「地獄紙芝居」と称しました。


しかし終盤は狂気もインパクトも若干控え目になり、ロマンだけが突き抜けてしまった印象があります。
切なさや儚さ等の黄昏感を出そうと、意図的にそう仕向けたのかもしれませんが、正直若干物足りなかったかもしれません。
最終話はヘルシングらしい素敵な終わり方だったと思います。

〈2010年6月修正〉

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-11-28 15:16:09] [修正:2010-06-30 15:55:10] [このレビューのURL]

ジャンプスクエア系列の雑誌にて読み切りや短期集中連載で神出鬼没に掲載され、妙なポジションを確立した作品。

うろ覚えですが内藤先生が自身のブログで「箱庭的な舞台を造り、そこに自分の好きなものをつっこみまくった」という旨の発言をしていたように、作風も世界観も内藤先生の趣味をストレートに反映したような、非常にカオスなものとなっております。

ただ、雑誌の購読層を考慮したのか、前作「トライガンマキシマム」と比べると戦闘シーンが良くも悪くもずいぶん見やすくなっているように感じました。

大層なネーミングの必殺技や特殊能力など近年希に見る良い意味での厨二成分濃厚な作品なので、るろ剣やジョジョが好きな方にはおすすめです。

ノリとしてはトライガンよりはむしろ、内藤先生が原案、キャラデザを手掛けたゲーム、「ガングレイヴOD」に近い感じだと思います。

コミックス1巻ではなぜか最初に掲載されたエピソードが未収録のためクラウスのキャラがいまいち掴みづらいかもしれないので、スクエア公式ページで一読すると良いかもしれません。
〈2010年6月修正〉

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-08 11:25:27] [修正:2010-06-30 15:54:21] [このレビューのURL]

SF漫画の名作。
専門用語が多く、脚注がやたら多いのがいかにもSFっぽくて格好良いです。スケールも大きく読み応えがあり、完成度も高いと思います。

ただ、作者の小難しい哲学的な思想を作品の随所で主張しまくっているのが少し鬱陶しいです。読んでいる間、終始作者に見下されている感じがして不快でした。

〈2010年6月修正〉
先述の不快感から評価を低めにしてしまいましたが、このクオリティで7点は私の評価基準から考えると過小評価な気がするので+1点したいと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-01 12:37:36] [修正:2010-06-30 15:05:27] [このレビューのURL]

残念なことに、私は歴史には非常に疎くて、あまり関心もありません。

この作品も、歴史物であるというだけで読み始めるまでにためらってしまいましたし、読了後も「続きが気になって仕方ない」というような禁断症状は今のところはありません。

しかし読み始めたらズルズルと読み進めてしまうし、すごい集中して読めてしまいました。

その理由はやはり岩明先生の「人間」の描き方が上手で、心奪われてしまうからなのでしょう。


「寄生獣」でもパッと見の印象とは裏腹にその神髄がアクションや戦闘ではなく「人間(あるいは化物)」であったように、本作も私のような半端な読者は歴史物という形式で描かれた「人間の物語」として楽しめられればいいかなと個人的には思います。
それでもとても面白く読めました。


歴史物としての特性や魅力を十分に味わえないのは、おそらく相当勿体ないことなのでしょうが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-07 15:16:40] [修正:2010-04-07 15:35:45] [このレビューのURL]

クロマティ高校との最大の違いは主人公たちが社会人であるという点でしょう。

背広にネクタイのおっさんたちが真剣にアホやっているのが最高にシュールです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-05 16:18:22] [修正:2009-12-19 12:50:27] [このレビューのURL]

7年以上の長期連載にもかかわらず、安定して「そこそこの面白さ」を維持しているのは地味にすごいと思います。

看板漫画にこそなれないものの、サンデーの紙面で常に同じような掲載位置に君臨し続ける姿勢は中堅漫画の鑑と言えるでしょう。

〈追記〉
最近のサンデーで語られた、逆鬼が活人拳を志す理由が語られたエピソードと、人越拳の存在により、一気にこの漫画に深みが出たと思います。
ここに来て微妙に面白さに拍車がかかってきているように感じるので+1点です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-11-30 15:31:01] [修正:2011-10-13 14:40:23] [このレビューのURL]