「鹿太郎」さんのページ

[ネタバレあり]

まずこの作品を連載分全て単行本化したならば、おそらく3〜4巻分あったと思います。
まあ、秋田書店お得意の「第1巻の売上げが低調だとそれ以降続刊しませんよ」が発動したわけですが、少なくとも能田先生の前作『ORANGE』は個人的にはサッカー漫画史に残る作品と思っているので、この作品の失敗(と言ってもいいと思う)は非常に残念でした。

本作がフットサル漫画ではなくサッカー漫画であるとしたら、まともな試合描写はとうとう一度も無いまま打ち切られてしまいました。
まず主人公たちのスタート時点の環境が悪すぎる。
サッカー不毛の離れ小島で親父が大の野球好き。
島全体が野球以外を認めない雰囲気(この設定でややもすれば野球ファンが悪役に見えてしまい顰蹙を買ってしまったとも思う)。
しかも、サッカーとの係わり合いがサッカー好きの転校生とプロの試合を一試合見たというだけ。
これはあまりにも希薄すぎるでしょう。
何が主人公たちを動かしているのか、なんでそこまで苦労してサッカーを続けるのかがイマイチ理解できませんでした。

さらに、サッカー漫画の主人公というのは例え努力をテーマに置いた作品であっても、どこかしらに魅力的な武器を持ち合わせていないと物語が動かしにくく、結果なかなか成功に結びつかない。
この作品で言うなら「双子ならではのコンビネーション」だったと思います。
しかし、これが作中で効果的に発揮されない。
それゆえ主人公たちがなんとも特徴の無いキャラクターに仕上がってしまい、作品として不完全燃焼で終わってしまいました。

スタート時点での枷というかマイナス要素が多すぎて、それを引きずりながら助走しているうちにスローなままゆっくりゴールしてさせられてしまった印象。
エピローグでの憧れの選手との世代交代のシーンはサッカー漫画家としての能田先生の魅力が溢れていただけに非常にもったいない作品となってしまいました(単行本には収録されていないわけですが・・・)。

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[投稿:2006-03-30 02:04:58] [修正:2006-03-30 02:04:58]