「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

7点 砂時計

砂時計。
時間の経過を示す象徴であり、人生を暗喩するアイテムであり、
過去と現在と未来を繋ぐ物語の重要なキーワードであり、杏の大切な想い出。

強気に見えるヒロイン・杏の打たれ弱さ、不安定さ。
自分の弱さを自覚し、そして自分の弱さが周りを巻き込んで傷つけることを自覚し、
強くなりたいと願うものの、なかなかうまくいかなくて。
強くなるために頑張って、頑張って、頑張って、気がつけばただ母親の足跡を追っていただけ…。

12歳から物語はスタートし、26歳でラストを迎える大作ですが、それぞれの年代の季節ごとに
ダイジェストで取り上げていくような形式なので、展開が速いです。
でも軸となるストーリーがしっかりしていて読み応えがあり、キャラ作りや感情描写も上手く、
コメディ部分もあってテンポ良くサクサク読める割に、実に濃厚な本編全8巻。
4人のメインキャラの強さ・弱さ、そして成長が、時間の経過に合わせて丁寧に描かれています。
番外編は2冊も必要かとも思いますが、まあ無いよりはあった方がいいのかな。
あんまり番外が多いと本編の良さが薄れる気もしますけど。

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
人の気持ちも移ろいやすいものですが、決して忘れられない部分も確かにあって、
そういう気持ちは人生の足枷ではなく、人生を支えてくれている、そんな作品。
過去を大切にし、現在と向き合い、未来を願う。 時の流れゆくままに。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-28 00:49:13] [修正:2011-04-28 00:49:13] [このレビューのURL]

6点 C

“Message to Complex People”
どこかしら、何かしらにコンプレックスを抱えた人々が織り成すオムニバス形式の作品です。
それぞれの話がつながっているわけではなく、中編作品の集合体のような珍しい作品。


「男性失格」
確かに主人公の性格はいつものきたがわ漫画ですね。
展開もありきたりではあるものの、90年代初頭ラブコメとしては上手く描けていると思います。
作品全体の雰囲気は、当時のトレンディードラマ(死語)のような感じ。
ただしコンプレックスが全体のテーマならば、もっと前面に出していかないと。
コンプレックスうんぬんに関係なく、単なるヘタレの兄ちゃんのベタなラブコメと化してしまっています。

「マゼンタ・ハーレム」
狂ったような世界観と、鮮やかに彩られた情景描写。そして名画をモチーフにした数々のイメージカット。
全般的に絵画を意識して描かれたであろう絵柄が、ダークでポップな作品の雰囲気と見事に調和して、
週刊連載とは信じ難いぐらいのクオリティと凄みを感じさせる出来に仕上がっています。
才能がありながらもコンプレックスの塊のような歪んだ主人公と、真っ直ぐで快活なヒロイン。
絵画っぽく色で例えるなら、ダークグレーの主人公と、鮮やかなオレンジのヒロインか。
絵の具ならばこの2色が混ざっても汚い色にしかなりませんが、これは漫画。
2人の色が混ざり合い、溶け合って、読者に全く違う色を見せてくれます。
それがマゼンタなのかどうかは読む人次第。

「モンロー・ジョーク」
今度はうって変わってアメコミを彷彿とさせるような絵柄で、弾けた雰囲気のコメディ。
思えば自分がYJを読み始めたときに載っていたのがこれでした。
ただし作者がおまけページで書いているように、この手のジャンルはかなり不慣れな感じ。
常にハイテンションのノリや痛いギャグなど、無理やり感が作品全体に漂っています。
だいたい「C」はComplexのCだったはずなのに、この話のどこにコンプレックスが絡んでいるのか不明。

「ほんとうの行方」
青春もの。
内容がコテコテかつ綺麗にまとめすぎな気もしますが、ストレートで面白かったです。
作者によると紡木たくっぽさを取り入れたかったらしいですが、それについては明らかに失敗かと。


時代を色濃く切り出した作品は色褪せてくるのも早いです。
この作品でもモンロー・ジョークなんかはその傾向にあり、今だとかなり時代を感じてしまうかも。
ただそうは言っても、作者の脂が乗りきっている時期だけに全体的に作品の質は高いです。
あとこの頃の作者の絵柄はものすごく好きですね。
男性失格が一番人気だったそうですが、個人的にはマゼンタ・ハーレムが一番でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-28 00:46:38] [修正:2011-04-28 00:46:38] [このレビューのURL]

究極の名に恥じないような、ある意味伝説の作品。
この時期にリアルタイムで読んでいた世代限定、という狭い対象ながら、該当する人にとっては
いつまでも記憶の片隅に残り続けるような衝撃作です。

すごく大まかに言うと、真面目で内気な青年が仮面を被って変身し、悪を懲らしめる勧善懲悪もの。
でも被る仮面は女性のパンツ、そして変身後は超変態。
「おいなりさん」とかw
いつも同じような展開ですが、芸の数は少なくてもそれを極めれば何回見ても楽しめるという代表例。
ドリフとかダチョウ倶楽部みたいに。

この頃のジャンプは三本柱(ドラゴンボール、スラムダンク、幽☆遊☆白書)を筆頭に、
大半の作品がアニメ化等メディアミックスされるすごい時代でしたが、
そんな中、それらとは全く別の次元で光り輝いていた孤高の作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-26 21:35:53] [修正:2011-04-26 21:36:56] [このレビューのURL]

女のミステリアスさと男の弱さとにスポットをあてた作品。

だと思ったのですが、読み進めていくとどことなく違う展開に。
現在の関係をあと一歩進めたい男と、そのあと一歩の踏ん切りがつかない女。
その辺の非常にもやもやした微妙な関係を巧みに描いています。

ミステリアスさは計算されたズルさに起因するものではないということなのでしょうね。
ヒロインの謎めいた天然っぷりに振り回され、引き付けられ、魅せられていく主人公。
なるほど、だから「ナイーヴ」。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-26 21:27:55] [修正:2011-04-26 21:27:55] [このレビューのURL]

非常に丁寧な作りの良作。

裁判開始から判決までが一連の流れとなっており、どこかの名探偵みたいに事件の謎を解いて
真実を暴くのではなく、あくまでも裁判員制度に重点を置いたドラマ仕立ての作品です。

挙げられている事件は確かにありがちな展開が多いですし、裁判員に選ばれた登場人物たちも
ステレオタイプ的なキャラが目立ちますが、この作品は独創性を前面に出すようなものではなく、
実際に裁判員になったときにどのように考え判断すればよいか読者に擬似体験させることまでを
念頭に置いて作っているのがよくわかります。
人情ドラマの要素も多少含まれているために被告人に有利な判決になりがち、という点を差し引いても、
そこに行き着くまでのプロセスもきっちり描かれていて、十分に見応えのある話に仕上がっています。

裁判ネタだから当たり前かもしれませんが、何が正しいかを明示していないところが良いです。
人の数だけ正義があり、主義があり、哲学がある。
そんな中で、年齢も性別も社会的立場も全く異なる人たちが集まって「人を裁く」とはどういうことか。
有罪か、無罪か。 量刑はどのくらいか。 正解などもちろん無い中で答えを出さなければなりません。
死刑にするか否かの討論を「人殺しの相談」と評するセンスにはなかなか驚かされました。

当初、主人公の主張は単なる青臭い理想論にも聞こえましたが、主人公の背景が描き出されて
考え方のバックボーンが明らかになると、途端にその発言に深みが感じられるようになってきました。
全体の構成や見せ方はかなり上手いと思います。

裁判員制度の説明が詳しくてわかりやすいだけでなく、普通に漫画としても面白いです。

これから成人を迎える人の67人に1人が、生涯に一度は裁判員になる可能性があるそうです。
この作品のサブタイトルは、「知らずに人を裁くのですか?」
読んで裁判員制度に必要な知識を十分得られるかどうかはわかりませんが、
少なくとも興味を持つきっかけとしては申し分ない作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-23 13:41:57] [修正:2011-04-23 13:41:57] [このレビューのURL]

新たな解釈を交えた吸血鬼伝説。

吸血鬼の考察としては手垢のついたネタの感もありますが、宗教観、考古学、伝承、科学的知識など
様々な要素を綿密に絡めることで飽きの来ない作りに仕上がっています。

Quo Vadisとは「何処へ行くのか?」という意味。
作品全体のスケールがかなり大きい分、話の進みが遅々としているのか、8巻現在で話がどこに
向かっているのかさっぱりわかりません。 皮肉にもタイトルどおりの展開。
ただベテラン作家ならではの安定感を存分に感じますので、先行き不安にならずに安心して読めます。
まあその分、絵柄や会話に古臭さを感じるのはやむを得ないか。

新谷氏の絵で読んでみたかった気もしますが、このご夫妻は本当に絵柄が似てますね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-23 13:37:53] [修正:2011-04-23 13:38:25] [このレビューのURL]

7点 セルフ

「誰が聞いてもバカなことにしか見えないものを真剣に研究する」漫画。
しかしその研究対象は自慰行為。 とにかく何かがおかしい作品。

女性の作者によって健全な部類の青年誌で連載されていたためか、あまり下品な印象もなく、
高尚なテーマを追求するかのごとくに描かれているのが笑いを誘います。
登場人物の姓がなぜかみな明治の文豪に由来しているのも高尚さを皮肉っているのかも。
まあ極論すると、いい歳してオナニーに振り回される主人公と、そんな主人公にさらに振り回される
彼女や同僚を淡々と描いたコメディです。

普通のラブコメならば告白シーンになりそうなシチュエーションで、ヒロインが真面目な顔して、
「私でオナニーしてるんですか?」
「……………はい」

何だこのおバカな展開。
何事も大人になってからはまった方が、周りも見えなくなるほどに突っ走る傾向があるとは
よく言われる話ですが、主人公の研究者気質もあってか、真面目におかしな方向へ没頭していくのを
見ているのがとにかく楽しい作品。
とりあえず同僚の泉さんがとてもかわいく見えます。

いや本当に、こんなテーマなのにどこか気品があり、それでいて面白くまとめているのはすごいです。
あんまり長続きさせるような漫画でもないですが、全4巻はやっぱり短いなあ。
もうちょっと読みたいと思わせてくれる作品でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-21 00:54:28] [修正:2011-04-21 00:55:13] [このレビューのURL]

17歳の主人公の前に突如現れた美少女は、母親の命を救うため未来から来たという、何と自分の娘。
自分の未来の奥さんの正体や行方を追い求め、謎が謎を呼ぶ展開に。
でもまだ見ぬ未来の奥さんよりも、目の前の彼女が可愛すぎ。 しかしときめいちゃったら歴史が変わる。
「この時『歴史』が大きく変わった、ような気がした」
シリアスなSFアクションの皮を被ったドタバタ父娘ラブコメ。

主人公とヒロインの中身は、まんま八雲とパイですね。 それもまたご愛嬌。

説明不足と強引な展開とで話をどんどんややこしい方向に持っていくのが作者の悪いクセですが、
この作品でもそのクセを見事に発揮していて、もうゴチャゴチャ。
気を抜くと話の展開がさっぱりわからなくなります。
が、不思議とそこまで違和感なく楽しめました。 基本コメディなので勢いで読めるというか。
どちらかと言えば「Don't think. Feel!」な作品。

この作者はどうも大きな伏線とかどんでん返しとかを仕掛けるのが得意ではないみたいなので、
その辺りにあまり期待しないで読んだ方が楽しめると思います。
まあ良くも悪くも高田裕三全開な作品ですね。
少なくとも作者の入門書としては敷居が高すぎるので、作者の作品を未読の人にはお薦めしかねます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-21 00:45:51] [修正:2011-04-21 00:51:54] [このレビューのURL]

うーん何と言うか、とんでもない作品。

ストーリーを端的に言うと、平凡な女子高生の主人公が、転校生の美少女に彼氏を取られ、
親友ともすれ違って孤独になってしまい、「よし、彼氏を殺して私も死のう」なんて考えちゃって
家にあったチェーンソーを引っ張り出し、学校で同級生たちを虐殺していく、というお話。
PTAが知ったら激怒間違いなし。

一般家庭にはチェーンソーなんか無いはずですけどね。
でも主人公の家にはあってしかもそれを巧みに使いこなすことができる、という設定と理由付けは、
目からウロコと言うか、違和感なさすぎて妙に感心してしまいました。
平穏な日常風景の場面と、それが一転する非現実的な惨劇とのギャップが痛快な作品。
衝動的な事件と思いきや用意周到に計画を練り、周囲の状況判断等を冷静に行いながら
顔色一つ変えずに同級生や教師を惨殺していくところに、より一層の狂気を感じさせられます。

絵は綺麗な方ですが、虐殺シーンの描写が軽く、迫力に欠けるのが残念。
バトル風ではなくもっとスプラッターな感じの方が良かったと思います。 戦闘シーンも長めだし。
あまりネタバレ的なことは書きたくないですが、ラストで補足説明があるものの、
主人公が孤独になっていく経緯も説明不足。
冷静に狂っていく様子をもっとしっかり描いてほしかったです。

とまあここまでは軽いジャブみたいなツッコミでしたが、メインのツッコミどころはやはり本筋。
どうにもこうにも理解不能。 そもそもジャンルからしてさっぱりわからん。
このレビュー冒頭でのとんでもない作品という感想の真意はここにあります。
原作の短編小説(こちらは未読)がSFマガジン読者賞受賞ということでとりあえずSFなのでしょうかね。
単なるサスペンスとかスプラッターではなさそうですが、コメディ? アクション?
少なくともラストだけ見るとジュヴナイルっぽくもあります。

こういう荒唐無稽なのは嫌いではないし、結構楽しめました。 全く意味はわからなかったですけど。
ただしこれは読む人によっては極端に低い点数も付けられて当然であろう、そんなとんでもない作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-18 01:12:32] [修正:2011-04-18 01:12:58] [このレビューのURL]

「テルマエ・ロマエ」の作者が描く、異文化交流エッセイコミック。

この作者はギャグ漫画である「テルマエ・ロマエ」で一躍有名になりましたが、
元々はこういうコメディ風のエッセイコミックが本領なのでしょうか。
海外生活豊かな作者がこれまでに味わった実体験が、テンポ良く鮮やかに描かれています。

作者の他のエッセイコミックは大家族ネタを中心にしたものが多いようですが、
こちらは食文化の違いや絶品の庶民料理などをネタにしたグルメ?エッセイ。
テーマ的にも(個人的に料理漫画は好きなので)とても面白かったです。
なお、他作品で大暴れする個性的な姑や舅はもちろんこの作品にも登場しますので、
他の作品にも目を通しておくとより一層楽しめること間違いなしです。

ちょっと空いた時間にちょっと手に取ってちょっとクスッとできる、そういうのにお薦めの1冊。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-18 01:03:41] [修正:2011-04-18 01:03:41] [このレビューのURL]