「ジブリ好き!」さんのページ

総レビュー数: 343レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年12月10日

「Heureka!」

アルキメデスが浮力に関するアルキメデスの原理をひらめいた時、入浴中に大喜びで叫んだ言葉で、「見つけたぞ」とか「わかった!」といったニュアンスがあります。
ただ作中の最後、アルキメデスがそう叫んだすぐ後には…
なんとも悲しい、皮肉交じりのタイトルです。

岩明さんの要素がいかんなくつぎ込まれていて、更には珍しい恋愛要素も組み込まれており、ストーリー的にもしっかりまとまっている。

展開に無駄がなく、テクニックも凝縮して1巻にまとめているので高得点をつけたいのに、それ故に物足りないという気持ちが勝ってしまうのは本当に実力のある作家の宿命なのかも…
ヒストリエと一緒にどうぞ!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-09 20:11:41] [修正:2010-12-23 01:10:27] [このレビューのURL]

今は『半神 自選短編作品集 萩尾望都Perfect Selection 9』に収録されているので、もし読みたいと思いましたらそちらの購入をお勧めします。

産んだ子供がイグアナだった…
しかしイグアナに見えるのは母親だけで、他の人からは普通の子供にしか見えない。
そのため母親から嫌われ、もう一人の娘(こちらは誰が見ても人間)ばかりかわいがられる。イグアナ娘は母に気に入られようと色々努力するが母は常に煙たがる。
次第に母親から離れたいと思い結婚するが、やがて母親が亡くなり葬式へ行く。
しかしそこで見た母親の姿は…

母親からの憎悪、母親への諦観、真実を知って変わる想い…
どんなに忌み嫌いあっても切れない親子の縁と絆、見事です。

上のあらすじの2行目は伏線ですが、仮にオチが見えても全体の完成度は高いので一読の価値あり。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-22 16:23:57] [修正:2010-12-22 22:35:09] [このレビューのURL]

最近「復刊.com」により復活しました。
ボンボンで読んでいた当時は画も内容も全部が濃い(濃ゆ過ぎな)作品で、これを果たしてボンボン読者(主に小学校低学年)が読むものかと思ってましたが、面白いものはやはり生き残ります。
とはいえ最後は打ち切り…これはボンボン編集部が悪かったのですが、小学生に劇画調は厳しかったのも少なからずあるでしょう…

あくまでボンボン読者向けではあるのですが、それを差し置いても展開・テーマ・熱さ、全て高レベル。
話によっては少年漫画を超える熱量、青年漫画以上のドラマがあり、特にX3のアシッド・シーフォース戦の結末は切ない余韻を残します(作者も述べているが、あえて全てを語らずに描いたのが成功しているのだろう)。

エックスの葛藤は毎回凄まじいし、表情もどっちが敵だかわからなくなったりするくらい険しくて面白いです(ex、X3のVAVA戦など)。
各シリーズ楽しめるけれど、やはりストーリー的にはX4が最高レベル!…のはずだったのに先に述べた打ち切りが悔やまれます。
ポケモン漫画に例えれば個人的に「電撃ピカチュウ」の位置付けだけど、X4シリーズが完成していたら「ポケスぺ」の位置にある有賀ロックマンを喰っただろうに。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-22 16:45:11] [修正:2010-12-22 22:30:46] [このレビューのURL]

【既刊3巻まで読了、全文更新】

巨人が進撃するお話であり、巨人で進撃するお話でもある。

可能な限りのご都合を排除しながらも、しっかり少年漫画している部分も見られます。絶望色が強いのがこの作品の味なんですが、そのせいで展開が遅いのが難点かも。
シリアス一辺倒の内容なだけに、巻末の次回予告でギャグを交えてくれる作者の配慮は嬉しいです。画は気になるレベルなのかなぁ、表現力あって力強くて味があると思うけれど。

間違いなく、今きてる漫画です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-27 02:05:15] [修正:2010-12-10 01:47:21] [このレビューのURL]

怖い。

太っていることと痩せることを描いただけなのに、ページをめくるのを躊躇う恐怖がある。「食べよう」「食べてれば落ち着く」なんてセリフのコマを見た時は特に次のコマを見たくない…

登場人物が皆、自分に甘えた歪んだ欲望をもっている。でもそれが自然に見えるからまた怖い。この歪んだ人間・人間関係にさらされた主人公は、その歪みの矯正のために食べ続けるのだろう。当然矯正などされるわけもなく、ただただ太っていくのだが、真に太る原因が「心がデブだから」だなんて言われた日には、もう恐怖を通り越して絶望だ。
そんなわけで通常版はお薦めできないが、どちらにしろ読みごたえのある作品であることは確か。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-26 01:12:24] [修正:2010-11-26 01:12:24] [このレビューのURL]

7点 ライフ

正直最初は、いじめを売りにしてるなぁとか現実には羽鳥みたいな奴がいるわけねーじゃんとか思ってたけど、次第に主人公が前を向いて自分の足で踏み出していく姿は健気で勇気付けられる。
序盤の陰湿な展開も巻を増すごとに爽快な展開へと変わり、巻末の作者コメも素直に受け止められていった。

いじめって、この作品ほど深刻なレベルじゃないにしろ、若い人なら見たことや(少しでも)関わったこと、もしくはされたことがあると思う。だから問題になったわけで。
いじめられる側にとってその一番の解決法は、やはり良き理解者の存在なんですね。それを意識させられた時点で、この作品が凄い説得力を持っていたことに気付かされる。

ただ、この漫画をいじめられる側の人間が読むだろうか?
ドラマを、いじめる側の人間が観るだろうか?
なんだか結局、第3者のための読み物になってしまっている気がするけれど、例え第3者でもいじめについて知ることは重要なのだろう。

キャラが過度でいい味出していて、極端と言うよりはむしろ話を楽しめた。
薗田が化けるシーンなんてたまらないよ!

最速1巻2.5分で読めたので、巻の長さは気にしなくて大丈夫。
手を出すか迷ったらGOの作品です。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-11-26 01:03:26] [修正:2010-11-26 01:03:26] [このレビューのURL]

大学の図書館にあったくらいだから、高い評価を受けた作品なんだろうし、浅野いにおが比べられてしまうのもわかる。
彼の綺麗で作り込まれた画とは対照的なPOPでゆるーい画
ならば内容は、浅野氏が深く重々しく、岡崎氏が浅く軽快になるべきだろうが、そこでは逆転現象が起こっている。

とはいえ浅野作品はその「軽さ」が魅力であると思っているし、RIVER'S EDGEが底知れない深みのある作品だとも思えない。
多用される(主に主人公ハルナの)モノローグの中に深みを感じる言葉があったかと思えば、すぐに否定しだすし、親しみを持ちやすいのはハルナだけで後は皆少々狂い過ぎている。
それに「ソラニン」と比べるのなら、この作品にはあまりに希望も救いも無さすぎる…


だがそれが良い

ハルナが悟ったようなことを言えないのは、彼女が若者だからであり、
吉川さんと山田くんが達観してるのは、二人が狂った人間で、それでいて「平坦な戦場で生き延び」ているからだ。
希望も救いもないのは、この作品がよく起きる「惨劇」の話だからだ。
アホな日常、たいくつな毎日のさなかに、それは、風船がぱちんとはじけるように起こる。
それでも僕らは、何かをかくすためにえんえんとお喋りをする。

その街の河の端(リバーズ・エッジ)には、狂気と明日が、流れ着く。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-10-18 03:18:50] [修正:2010-11-15 03:23:06] [このレビューのURL]

序盤から最後まで衝撃的な作品でした。
ムチャクチャな展開ばかりですが、冒頭の家庭に関する引用とラストの父の最期が繋がっていると感じ、作品を通して伝えたいことが少しは理解できた気がします。
ただ、お父さんの「ありがとう」の言葉の想いは、まだ子供側である自分には100%の理解はできていません。
そのため、思春期まっさかりで反抗的な貴子にひどく共感できました。
自分も父親や家族に対する苛立ちや距離感を感じているから、言いたいこと言ってくれてたと思います。大学生にもなってそんな風に感じてしまっているのは長すぎる思春期で問題あるかもしれませんが、家族への嫌悪感は誰でも一度は感じるものではないでしょうか。
この漫画のような単身赴任で距離が開き、無責任で空回りした父親ってほど過度なシチュエーションではなくとも、親や家族に対して綺麗な想いだけで過ごしてきた人は少ないと思います。

同時に、家族の絆を取り戻そうと頑張っていながらも空回りな結果となってしまうお父さんもまた印象的でした。
解散、という結論は非常に効果的でナイスアイデアだと思います。
独り暮らしして初めて親のありがたみが分かる、なんて言われるけど、大学に入って1年独り暮らしして、また家族で暮らしてみてじゃあ以前より感謝の思いが強まったかと言われれば、何とも言えません。
でも「オヤジは相変わらずうるさかったが、そのうるささも気にならないほどだった」というのは凄いわかる。それがオヤジの変化なのか自分の変化なのかはわからないけど、たぶんそれは「家族」に対する理解が深まったということなのだろうな、と思います。

不良が出てくる序盤は読んでて非常に心苦しいけど、後半のエセ宗教やいじめは落ち着いて読めました。
記号的なキャラが多く、家族以外のキャラは役割付けられているのですが、カクマだけは結構掘り下げて描かれているのが嫌でした。
最初の展開(強姦、暴力、崩壊した家族、犬殺し)は本当に強烈で容赦がないけれど、エロ描写に関しては18禁の同人やアダルト漫画の追随を許さない過激さや情熱がこもっていて、芸術とまで評されるのもなんだかわかる気がします。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-07 15:47:25] [修正:2010-11-07 15:47:25] [このレビューのURL]

読み手の恐怖感覚や感性によって、各話の面白さが異なると思う。
「このエピソードはだれが読んでも面白いだろう」ってよりは、「自分はこれに惹かれる」といった話が詰まった「怪奇漫画」の短編集。

不安の立像→「恐怖漫画」寄りの話。些細な好奇心から出会った恐怖によって、日常の退屈さから逃げだせた男の話。(7点)

子供の遊び→意識のすり変わりは諸星作品ではよくあるのだろう。この短編集でも、最初と最後で考えや意識が全くすりかわってしまうエピソードが多い。その中でもこれは最も典型で秀逸なエピソード。表面的な恐怖だけでなく、深層部分にも刻まれる恐怖感。(8点)

復讐クラブ→どんでん返しというほどではないだろうが、オチは良い。「人を呪わば穴二つ」ということを、説教臭くなくシニカルに描いた話(8点)

海の中→美しくも生臭い、怪奇談(4点)

ユニコーン狩り→ファンタジー作品と評するだけあって、恐怖や怪奇を描くというより、夢を見せてくれる作品です。それでもやはり、異様さはあるのだけれども…(7点)

真夜中のプシケー→まさしくホラー漫画といった感じ(5点)

袋の中→人間の残忍さ・猟奇性が具現化されたものが、袋の中の怪物なのだろう…(5点)

会社の幽霊→ホラー性よりユーモアな表現が勝っていて、皮肉のこもったギャグ漫画にも読める作品。(6点)

子供の王国→これは怖い。そして興味深い。子供を嫌い批判していたつもりが、知らぬ間に子供世界にはまり込んでしまっていたという皮肉。おそらく最初からの子供批判な態度は、永遠に遊び続ける子供への憧れや羨望の裏返しであり、命がけで「子供の遊び」を体験したことでその深みにはまってしまったのだろう。このオチを知ってしまった後には、何とも言えない気持ちになってしまうだろう…(9点)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-22 16:33:03] [修正:2010-10-22 16:33:03] [このレビューのURL]

ファンタジー系RPG型の作品は苦難の末のハッピーエンドが相場だけど、これは安易にハッピーとは言えない気がする。
決して長い作品ではないけれど、数多くのキャラクターが登場し、そしてモブ・サブ・メイン敵味方関係なくみな平等次々と退場していく。
それでも皆きちんと美徳を与えられて死んでいくから、残酷な鬱展開というよりは壮絶という言葉がふさわしいと思う。

約束のためとはいえ夜叉王が一族を捨ててまで阿修羅をとった理由も共感できず、最期までこの二人の見せ場では感動できませんでした。
夜叉王に限らずみんなして一族より自分の意志を尊重しちゃってるのはどうかと思ったけど、話自体がキャラではなく内容で作られている感じだからそれで良かったのかもしれない。
他にも帝釈天の迦陵頻伽への仕打ちなど、プロデビュー作だからか無理やりな部分も多かったけれど、毘沙門天の間者の伏線などは流石。

個々のエピソードも十分楽しめるけど、終盤の怒涛の展開が凄まじいので、通し読みでどうぞ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-17 00:16:26] [修正:2010-10-17 00:16:26] [このレビューのURL]