「ジブリ好き!」さんのページ

総レビュー数: 343レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年12月10日

作者の初連載とは思えないほど、新人とは思えない話の方向性と独自性をもった作品です。それでいて、序盤こそ盛り上がりに欠けるものの、2巻でZ氏が登場してからの流れには新人がもつ特有の勢いをしっかり発揮しています。(最近の新人さんにも、ぜひこれほどの気概を持った方が現れるといいなぁ。)

物語は終始天狗の謎を追う展開ですが、そこには天狗に限らない、天狗を比喩とした社会風刺を感じ取ることもできます。
最高の力を持つ天狗、Z氏の姿が外人であること。
泥人形と、それを愛する者。
師弟関係。
天狗の本質:自分を天狗だと思い込んだ強いアイデンティティをもって初めて天狗となりえること。
そして何より、人間にも天狗にもなりきれないシノブの存在と結末。
こうした様々な要素を基に、自分がこの作品に何を照らし合わせて楽しんでいくかは、人それぞれでしょう。それだけ比喩になりえる多くの物事が、たった3巻(新装版)の中に詰まっています。

作中の人物は皆、自分のアイデンティティを失いかけながらも、最終的にしっかりと「自分」を取り戻していきます。
テングを見せつけられても確固としたアイデンティティで動揺もせず天狗としての気概を取り戻した師匠
人間にも天狗にもなりきれないシノブが、様々な経験を経て、何かを悟り、前向きに進もうとするラスト
しのぶに隠してきた過去を話、しっかり向き合おうとする教授
有吾堂も比良井も幸南も、不本意な結末を迎えながらも、しっかりと自身のアイデンティティを取り戻しています。
こうした登場人物たちのモラトリアムを楽しむ作品でもあるのです。

水墨画とも劇画とも思える筆のタッチも新鮮。迫力を引き出しながらも、細かい表情までしっかり書きこまれています。

とにかくどこをとっても独特な漫画ではあるのですが、その独特さが長所とも短所とも言えてしまう嫌いがあります。最近の漫画に馴れ過ぎた人には読みにくさを感じるでしょうし、テンポの遅さも気になるかも知れません。漫画らしいエンターテイメント性を発揮しているのですが、盛り上がりに欠けたり古臭く感じるかも。
一般受けする作品ではありませんが、もし漫画に娯楽以上の何かを求めるのであれば、一度は読んでみてはいかがでしょうか?

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-11 18:00:23] [修正:2010-04-11 19:35:11] [このレビューのURL]

7点 MONSTER

完成された世界観とヨーロッパの街並みが魅力の作品。

最初、この作者のスタンスは、伏線ぶちまけといてある程度は回収してやるけど後はお前らで拾え、って感じだと思っていたが、この作品に限らず、話の中で補完できないなら自分で補完してしまえばいいと思うようになった。もちろん、この話の続きを勝手に想像するとかじゃなくて、この話を読んで感じたことや、少ない情報から推測できることを繋いでいけばいいと思う。
ラストに何を含んだのかは確かに不明瞭ですが、作者がどんな意味を込めていようが、この物語の意味は自分自身の感性で求めればいい。それは、作者がこれはこう読め、と補完できるように情報を与えられ盲目的に読まされてしまう作品ではできない、こういった作品でのみ許された特権です。

ただ、やはり伏線化してストーリーを引き延ばしていく手法が、自分には終始じれったく感じました。連載では続きを気にさせる良い方法かもしれませんが、長引いて話がわかりにくくなるし、単行本では終始まだかまだかと生殺しにされた気分でした。

ところどころストーリーと関係ない話がありますが、その部分も面白かったりします。あとは、ヨハンを巡る、もしくはテンマ達を巡る冒険で、僕らが何を感じられたかで、評価が決まるのだと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-03-20 10:41:39] [修正:2010-04-07 01:53:26] [このレビューのURL]

犯罪評論家:大塚英志が原案担当の、最高にイカレタ犯罪劇場!

とにかくグロい描写と難解で狂ったストーリーが魅力。
いや、単純に「難解」って言うのはちょっと違うかも。
僕自身は全く理解できません。たぶん、それは読解力があるかないかって問題じゃなくて、このイかれたキャラクターの心理が理解できるかどうか、何だと思います。
色々国家やなんやを巻き込んでスケールが大きいように見せてますが、実際は多重人格やら犯罪心理やらといった「内面」がポイントな気がします。ルーシー現象も洗脳も、結局は極端な内面干渉ともとれるし。

まぁほとんどSF入ってるし、イかれた犯罪者の(特に殺人犯)の心理なんて分かるわけなく、結局エンターテイメントに落ち着くと思います。
そもそも意図的に矛盾を生じさせてるそうですし、小説版と合わせて補完できるような箇所も多いので、ちょくちょく見え隠れする壮大そうなストーリー性を追ってしまうと、一気にチープな感じがしてしまいます。僕もこれが凄いのかチープなのかずっとわからないでいましたが、もう割り切りました。

ただ、ちょこちょこ出てくる思想には共感できる部分があります。
例えば、鬼干潟の「プライドとは、偏狭なナショナリズムにすぎない」って言葉。要するに、プライドなんてものは民衆を意気付けるための政治道具なんだから、国を支えるトップには無意味な拘束に過ぎず、必要ないってことなんですが、ここまで割り切った考えは凄くかっこよく感じました。

画ですが、田島昭宇さんのワイルドでかっこいい画は一枚画でその真価が発揮される気がします。漫画だと、kazuさんの言うとおり「人形劇」をやってるような感じで、カクカク具合も目につきます。

なんだかんだで、色々掲載誌変わりながらも追ってる好きな作品です。

ただ、大学の「犯罪心理学」授業で大塚さんについて学び、テストが興味あるトピックを述べよってものだったので、宮崎勤事件を書いたんです。宮崎事件に大塚さんは結構関わってるので。んで、トピックを選んだ理由を述べる際、理由だし何でもいいかと、大塚さんとこの作品への興味を書いたら、最低評価をもらいました。
教授も犯罪評論家なのですが、そういった人たちの間で大塚さんがどーゆー風に思われてるのか…
漫画原作者としては、リヴァイアサンとか黒鷺死体宅配便とか作っちゃう人です。まぁ、そーゆー人ですよw

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-04 15:06:25] [修正:2010-04-04 15:40:54] [このレビューのURL]

老若男女の恋愛を、セックスを軸にして描かれる、1話読み切りの作品です。
きれいでかわいらしい画なのにとことん痛い話を作るこのコンビですが、今作はかなり救いのある話が多いです。(もちろん痛い話も健在です)

話の種類も本当に様々で、王道・イケメン&べっぴんさんの恋愛はもちろん、じいちゃん&ばあちゃん、外見悪印象のお見合い、レズとバイセクシャルなどなど。
展開もストレートなものからねじ曲がったもの、昼ドラかってものまで1話1話全く違って飽きません。

いずれもかなり大人な恋愛で、凄く楽しめました。
「心温まる」というよりは「なんか良い話だなぁ」
「痛々しい」というよりは「なんか悲しい…」
そんな感覚の読後感。それでも総評は「読んでよかったなぁ」と思えるものでした!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-04-02 18:51:07] [修正:2010-04-02 18:51:07] [このレビューのURL]

前作の主人公アルファさんは、ロボとはいえ女性でしたが、今作の主人公はイサキと言う男性です。その違いのせいなのか、前作と同じ雰囲気漫画ながらも、少しだけ違う「視点」で話が展開していってる気がします。

10倍以上広がった大地で、飛行機が日常の移動手段となった世界。自然物と化した3333mの東京タワー。世界観はこんなにもロマンあふれ冒険心を掻き立てられるものなのに、内容はゆるーい雰囲気を楽しむ漫画という、なんとまぁ贅沢な作品だなぁと思いました。

カジカ、ちゃんと風呂入ったのかなぁ…

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-15 00:08:22] [修正:2010-04-02 13:52:52] [このレビューのURL]

7点 LIAR GAME

この作品の優れたところは、奇抜なゲームシステムだと思う。ゲームシステムの全貌を先に明かしてくれるので、がんばれば自分で今後の展開を予想できるかもしれないくらいだ。推理物として個人的にはちょうど良いし、毎回特殊なゲーム性を楽しませてもらっている。
しかしそれだけだと、カイジの劣化版ともとれるかもしれない。カイジとの違いはやはりキャラと結末。
キャラは秋山、フクナガ、神埼など、それぞれ役割分担されてる気がする。
そして脇役たちは、良くも悪くもカイジのそれと同じ。
でも結末的には、神崎が彼らを救おうとするから、カイジほど現実的というか残酷な感じはない。

実際にはライアーゲームというタイトル通り、推理戦というより心理戦なので、推理物として高レベルなものを期待するより、心理学分析に基づいた心理変化を楽しむ作品だ。そういった点を踏まえて、個人的には評価できる、好きな作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-03-09 17:26:08] [修正:2010-03-20 09:27:44] [このレビューのURL]

好きな作品ですが、ごまあぶらさんのレビューに激しく同意。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-17 10:14:25] [修正:2010-03-17 10:14:49] [このレビューのURL]

1巻と20巻以降くらいを比べると、本当に同じ作者か?と思ってしまえるくらい画がうまくなっていく作品。

裏武闘殺陣編も天堂地獄編も大好きです、小学1年、2年で好きになった作品だから幽白のパクリだという感じはもちませんでした。

テンポ良く、楽しめる戦いを繰り返しながらも、戦国時代からの因縁や永遠の命などの話にも関連させながら進んでいく、非常に完成度の高いストーリーとなっています。
味方キャラも、敵の紅麗も魅力あふれるキャラクター達です。

個人的には水鏡vs木蓮が好きです。まさか木蓮があんなに強くなるとは。しかも最低な人間じゃなくなってたしw

感動するとしたら最後に小金井が紅麗についていっちゃうところくらい。

話も難しくなく、素直に楽しめる少年漫画なので、お勧めします!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-24 02:05:14] [修正:2010-03-13 22:58:17] [このレビューのURL]

連載中の漫画では期待している漫画です。

ベトナム戦争を舞台にしていますが、ただ「本当の戦争の話」を描くだけでは伝わらない(厳密には「本当の話は物語にならない」というティム・オブライエンの言葉を作者なりに解釈した)と作者は思っているので、あえて「馬鹿みたいな嘘」を描くことで戦争というテーマにアプローチしている作品です。

故に登場人物は超人ばかりで、また人もばんばん殺されていきます。それをポップでかわいらしい画で描きます。

えぐいシーンが多いですが、同作者の「世界の終わりの魔法使い」シリーズを読む限り、作者がそういったシーンを好んでいるとか、そういったことしか描けないというわけではないように思えます。

基本は淡々と描かれた通りに読んでいき、たまに出てくる深い言葉やメッセージに注目していくと、楽しめると思います。
よーするに普通にバトル漫画として読んでいってもそこそこ面白く、「戦争とは?」と考えて読んでいくこともできる漫画。

個人的にはベトナム戦争に興味があるし、画も気にならずスムーズに読んでいける良作だと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-07 23:47:40] [修正:2010-03-11 15:11:52] [このレビューのURL]

少年漫画の主人公は完璧で良いと思う。

追い詰められてから気付き、覚醒するカイジとは違い、ありえないほど頭の良すぎるゼロ。僕ら側に近いカイジと比べれば、完璧超人なゼロだが、その天才っぷりは読んでて気持ちが良い。福本さん特有の取り巻きキャラや独特のゲーム形式が、ゼロの凄さをより際立たせていて、決して飽きることはないだろう。

福本先生なのに、ご都合的に成功を収める感があるのは、あくまで少年漫画としての作品だから。みんな救われていいじゃない!(第一部のラストが何を意味しているか怖いけどw)

いつもの福本さんのノリで読まずに、あくまで少年漫画として読むべし!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-08 00:59:41] [修正:2010-03-08 00:59:41] [このレビューのURL]