「DEIMOS」さんのページ

総レビュー数: 126レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月14日

6点 自殺島

自殺したい奴らを漫画で救いたい、って思ったとしたら、どんな漫画を描くだろう?

萌え美少女マンガを描いて、「どうぞ夢中になってください。」っていうアプローチなのか?
それとも、努力・勝利・友情の末のサクセスストーリーを描いて、「正統派少年漫画のように仲間見つけて楽しく頑張ればその向こう側にいいことあるんじゃね?」、っていう提示をするのか?

これらはかつては正しかったが将来に暗雲が立ち込めている現在の日本においては概ね誤謬だ。
上記のような作品の「嘘くささ」はもう皆知っている。それらのエンターテイメントは一時の慰みしか与えず、人生観に響くような感動は与えられない(ケースが多い)。
そういう意味では、この「自殺島」にはリアリティがある。

死にたい気持ちで生きている奴らが何を考えるか、どう行動するか、そのリアルがある。
人間が極限まで落ち込んだときの一つの行動指針として、「サバイバル」を取り上げたのは秀逸だ。しかも、そのサバイバルは、「仲間と」ではなく「一人で」だ。かくいう私も、落ち込んだときは一人で山に登る。そして、広大な自然の前に人間の無力さを思い知りながら、人里に生還したときの喜びを噛み締め、「生」を実感するのだ。

本書は、人生に絶望した奴らが、「生」を実感するための一つの指針を示した良書である。

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[投稿:2010-09-26 15:39:42] [修正:2010-09-26 15:39:42] [このレビューのURL]

9点 火の鳥

広大かつ深遠なストーリー構成で見るものを圧倒させる。
「不死」というモチーフを扱い、人生とは何か?自ら生きる目的は何か?を改めて考えさせられる作品。

そして、その問いへの一つの解として、人生の根幹に位置づけられているのは、「愛」である。
多くは男女間の恋からはじまるが、兄弟愛、家族愛、人間愛など愛の形も多岐にわたる。「愛」なき人生に幸福はない、猿田彦の叫びは我々にそれを教えてくれる。

晩年の手塚絵は往年のディズニー画のバタ臭さがあるという印象だったが、改めてみてみると、さほど違和感はなく読めてしまう。それだけ、ストーリーに散りばめられたスパイスが話に重量感を与えているということだろう。

手塚の懐の深さを改めて実感できる作品。
よしんば、子供の頃に出会いたかった。。

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[投稿:2010-09-26 15:17:48] [修正:2010-09-26 15:17:48] [このレビューのURL]

私は島本信者だが、冷静に本作品を評価するッ!

一つ、この当時はまだ島本のパロディの使い方が下手ッ!
(結局、世界征服ジムの目的って。。。)

二つ、島本といえば熱さとヘタレの調和だが、本作品はヘタレ度合いが強すぎるッ!!

三つ、熱さにかき消されていたが、仮面ボクサーの行動原理が不明ッ!!!そもそも、何この世界観(笑!!!

とはいえ、
島本×(仮面ライダー+あしたのジョー)÷3
っていう公式で全て理解できてしまうし、島本イズムを体現するには十分に面白い。

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[投稿:2010-05-02 05:33:54] [修正:2010-05-02 05:33:54] [このレビューのURL]

キャラでもなく、人間関係でもなく、雰囲気で読ませる短編集。
否定するほどのことはないが、心に染み渡る何かがあるわけでもない。

漫画に何を求めるのか、を再認識させてくれたことは一つの成果だが、私の求めるものはここにはないかなと。

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[投稿:2010-05-02 05:00:56] [修正:2010-05-02 05:00:56] [このレビューのURL]

4点 忠臣蔵

忠臣蔵を愚直に劇画化した作品。

意外にも、忠臣蔵の漫画は少ない。真面目に忠臣蔵を描いた漫画は、本作品が初めてかもしれない。そういった意味で、本作は資料として一定の価値があるが、遊び心や意外性がなく、愚直に忠臣蔵を漫画に焼きなおした、という印象。
それならばいっそのこと、映像作品でよいではないか、そう思えてします。
女や金に負ける人間のリアルさを描くあたりは、個人的には好きですが、内面に到達する「群像劇」の域には達していないかなぁと。

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[投稿:2010-02-28 23:08:17] [修正:2010-02-28 23:08:17] [このレビューのURL]

作者の思い入れに偏重したアニメーター漫画。

はい、私はアニオタです。(アニメーターではありません。)

この漫画は、つまるところ、以下のような作者の(アニメーター時代の?)思い入れに集約される。
?自分が思うように描けない無力感
?アニメ業界の滅茶苦茶さ(労働環境、業界構造など)への失望とアニメ(作画)への憧憬(動かしたい願望)とのジレンマ
?「働く女性」の困難(恋愛至上主義への懐疑)

これらはあまりにリアルすぎる。
リアルすぎて、笑えない。感動できない。もはや漫画ではなくエッセイだ。
アニオタ(もっといえば、作画オタ)だからこそ、日本産業の一部を構成する業種として、サステナブルなジャパニメーションの今後を本気で考えてしまうのは私だけか?

登場人物が嫌な奴ばかりだし、視点が原画マンに固定されている点で漫画作品としては物足りない。アニメという創作物に対し、スタッフ(脚本・演者・制作含む)がぶつかりあい、わかりあう、その結果として、偉大なアニメを作り上げる、という「夏子の酒」的クリエーター漫画、もしくは、バクマンよろしく暴露漫画にしてしまえば、さらに面白い漫画となりえただろう。

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[投稿:2010-02-14 22:20:52] [修正:2010-02-14 22:20:52] [このレビューのURL]

タイトル名を大きく下回る素朴な漫画。

タイトルからは、「どこにでもいるような一匹の犬が、空前絶後の地球の危機を救う一大冒険浪漫譚」を想像していたのだが、
守る=見つめる、という誤解で、その内実はお涙頂戴のハートウォーミングストーリーという罠。

ハートウォーミング度合としても、ありきたりで佳作の域を出ないし、ラストの救いの無さは今どきガロ系を彷彿とさせる。
そもそも、動物を使うこと自体、反則技感が強い。

予想を反対に裏切られたため、この評価どまり。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-02-14 21:57:23] [修正:2010-02-14 21:59:51] [このレビューのURL]

空気を読む漫画。

ああ、そんな感覚あったな。。。

もし、こんなだったら面白いな。。。

日常の中に潜む、ちょっとしたユーモア見つけてみませんか?



・・・・

こういった漫画を万人が描けてコミュニケーションできたら楽しい世界がはじまるかもしれない。

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[投稿:2010-02-09 01:55:23] [修正:2010-02-09 01:55:23] [このレビューのURL]

6点 モテキ

読み捨てられる面白さ、それこそが漫画の本質!?

この漫画は面白い。しかし、その面白さは、常に単行本を手元においていたい面白さではない。つまり、キャラクターへの愛着はゼロ!ストーリーへの執着もゼロ!深みなし!意味なし!得るものなし!

だが、それでもやはり面白い!

なぜだ?なぜなんだ!?


おそらくその解は、主人公の存在自体が世の草食系男子に対する強烈な皮肉となっているからであろう。一言でいえば、自虐あるあるネタ。

この時代性。このどうしようもない僕たち。そして、あのどうしようもない女性達。
そういった社会の一面を切り抜いた風刺性・同時代性こそ、この漫画の特長であろう。

おまけ漫画の作者の遊び心は、本作品が性別を超えた時代性の描出であることを物語る。そうして私は、ちょっぴり鬱になる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-02-09 01:44:34] [修正:2010-02-09 01:44:34] [このレビューのURL]

漫画という媒体の持つ風刺性を強烈に活かした介護漫画。

まず、この漫画の描く介護現場はリアルだ。私は介護研修を受け、食事・入浴介助や排泄処理なども手伝ったことがあるが、この漫画の描写は実にリアルである。また、各巻毎に介護の中でも扱うテーマを変えてきており、飽きずに読み続けられる。

今更言うまでもないが、このリアルな介護現場で起きている問題は相当深刻である。超高齢化社会に突入する日本を救えるのは、百太郎や仁のような「大志を抱いた救世主」なのかもしれない!!とこの漫画は訴えるのだが、同時に、この漫画は、その期待に対する一抹の不安を投げかけている。
それは畢竟、制度でしか、国を変えることはできない、人を救うことが出来ない、という強烈なアンチテーゼである。
この漫画の述べるところは、末端現場のヒーローと役所や政治家が傀儡する制度改革の両方が必要だよね、っていう止揚に落ち着くのかもしれない。。

オムニバス形式で主人公不在のストーリー構成では、何か読者をワクワクさせるような求心力に欠ける気もする。百太郎や仁が、もっと大暴れしてくれれば、この漫画の評価は今以上になる。「ただのリアル」を超えてこそ、漫画のリアリズムは体現されるのかもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-02-01 02:21:03] [修正:2010-02-01 02:21:03] [このレビューのURL]