「DEIMOS」さんのページ

総レビュー数: 126レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月14日

島本漫画ではお馴染みのキャラ・炎尾燃を用いて、自らの青年期(大学時代)を叙述した島本和彦の自伝的作品。

漫画家・島本和彦は、同人誌を書き続けるとともに、幾度となくメディアに露出し、コンテンツ業界を論じ、分析してきた。個性が強すぎるため、好き嫌いは分かれるだろうが、分析派の漫画家としては一流。が、パロディや風刺、自伝を主戦場とするため、一流商業誌上でその作品を拝めることは少なく、人は彼をこう呼ぶ。「the・グレートマイナー」と。

そんな島本が、エヴァンゲリオンの庵野監督やオタキングこと作家・岡田斗司夫等、後に異なるフィールドで活躍することになる著名人達と運命を交差させる数奇な時代観を見て、右肩上がりのコンテンツ黎明期を懐かしむもよし、うらやむもよし。なんともいえない、その複雑な感情こそが、本作品の持つ魅力の本質だろう。

なお、同時代のコンテンツ史を研究するための貴重な資料として、本作とともに岡田斗司夫の「遺言」を併せて読んでいただきたい。さすれば、一つの時代の「うねり」を感じることができるだろうから。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-14 00:06:33] [修正:2013-02-14 00:06:33] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

一流のバレエダンサーを目指す少女の物語「昴」の続編。

昴は、少女から「大人の女性」へと進化していくが、その本質は、依然として「わがままで自己中心的性格」。これは、曽田漫画全般に言えること。

最愛のパートナーとの出会いと、更なるライバルとの闘いを描き、そして最後に、家族のエピソードで伏線を回収し、幕を閉じる。
無駄のない完全なストーリー完結は曽田漫画の真骨頂。

作者自ら挑戦したというバレエ、という一見わかりづらいモチーフを用いて、緊迫や迫力が沁みだす空気感を描き出す画力は圧巻。
前作から多少のインターバルがあったためか、熱が冷めた感は否めないが、それでも一気通貫で読めば、十分に楽しめる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-13 23:48:00] [修正:2013-02-13 23:48:00] [このレビューのURL]

農業高校の「日常」描写漫画。

農業高校では当り前の「日常」を題材にしてここまで面白い漫画を作れるのは、この作者の漫画家としての力量を物語る。
実際、北海道に行くと、この漫画で描かれているようなエピソード(例えば、車ではねた鹿の肉を喰う等)をちらほら耳にする。

今、TPP問題も相まって、農産品輸出や6次産業化、規制緩和による大規模化等のテーマに関心が集まっているが、農業そのものの楽しさや有難味にも注目があって然るべき。農業を産業として見た場合の大いなる課題は、後継者問題だが、この漫画によって農業の担い手となる若者が多く出てくると、社会課題解決ツール、という未知なる「漫画の力」を我々は垣間見ることになるだろう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-02-12 01:49:42] [修正:2013-02-12 01:49:42] [このレビューのURL]

主人公がダークヒーロー化した「零」の続編。

前作のレビューにて、零は、カイジよりはアカギ、と記したが、見た目からして「アカギ化」したのが本作。
闇の組織に肩入れし、ギャンブルによって大金を稼ぐ様は正にアカギ。
徐々に中だるみの気配は出てきているが、それでも、展開のテンポの良さは前作に続き良好。
カイジやアカギのようにジャンルに縛りがないだけに、今後何が出てくるのか楽しみにしたい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-12 01:40:06] [修正:2013-02-12 01:40:06] [このレビューのURL]

ギャンブル漫画を擬態した算数・とんち・なぞなぞ漫画。

カイジを少年漫画=少年マガジンに落とし込むとこうなるのか、と目から鱗が落ちた。
カイジではギャンブルの題材が「ポーカー」「麻雀」「パチンコ」「チンチロ」等のいわゆる「大人の遊び」であったが、これを少年漫画に落とし込むと、よりシンプルな「なぞ解き」になる。そして、その題材のヒント(解決ツール)は、算数に近くなり、より教育的になる。

主人公像は、カイジよりも天才肌のアカギに近い。よって、人情話よりも解決の爽快感重視。

カイジでは、中だるみがひどく、ここのところクレディビリティが著しく低下していたこともあり、テンポの良い展開は非常に好印象。

なお、ソフトバンク社長の後継者探しというリアルにも引っ掛けた設定は風刺的な趣すら感じさせる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-02-12 01:31:32] [修正:2013-02-12 01:31:32] [このレビューのURL]

7点 capeta

F1を頂点とするカースポーツを題材にした熱血スポコンのThe・曽田漫画。

曽田漫画の安定感はさすがですね、といえば、漫画読みにはこれ以上の解説は不要でしょう。

相変わらず、主人公像は、熱い・我儘・負けず嫌い・天才。このブレなさ。

そして、テンションMAXのまま幼年期→少年期→青年期→成年期という時系列フルセットで描く忍耐力は他のほとんどの漫画家が真似できない職人芸といって過言ない。

物語を盛り上げるライバルと、サポートしてくれる友人・ヒロインの存在。これぞ少年漫画の王道設定。

突き詰めていくと、曽田漫画ってヒーロー漫画なんですね。ジャンプがバトル漫画で構築した「努力・勝利・友情の雛形」を現実の職業に落とし込んだものとも言えるのかと。(リアルの世界観における天才の降臨と勝利譚。)





ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-12 01:20:57] [修正:2013-02-12 01:20:57] [このレビューのURL]

主人公を努力型から天才型に置き換え、ラーメン文化の更なる可能性を模索する、ラーメン発見伝の続編。

前作とは異なり、主人公をラーメンマニアから、ラーメン素人の料理英才教育を受けた美少女に置き換え、さらに、職場は、商社からコンサルへ。この時代に適合した設定のテコ入れが秀逸。

ブームが飽和しつつも、更なる進化、多様化を示すラーメン業界を題材にするには、この設定が絶妙にマッチしている。
ラーメンを単に掘り下げるのではなく、これまでにないような新食材を用いた斬新なラーメンの可能性を提示したり、経営面にスポットを当てて、「人気店となるための経営戦略」を例示したり、と読者を飽きさせない仕掛けがたっぷり。

汐見ゆとり(主人公)の「ピッコーン!!」は「げんしけん」でも引用されるなど、ある筋では人気ワードになったようだ。

それにしても、この作者、一向に絵が上手くならないですね。。女の子の顔が描き分けられてない。。。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-12 01:08:38] [修正:2013-02-12 01:08:38] [このレビューのURL]

自分オリジナルのラーメンを追い求め、ラーメンマニアの主人公が脱サラ・ラーメン開業を目指す、王道系ラーメン漫画。

ラーメンブームに乗って、長期連載を遂げたラーメン漫画の王道といえば本作だろう。監修はあの石神が担当。ラーメン薀蓄を学ぶにはこれ以上の良書はない。

一話完結型のストーリーは料理漫画の古典的ひな形(cf 美味しんぼ)を使用しており、人助けや勝負を織り交ぜながら、読者を飽きさせない。次々に登場する個性的なキャラクター(cf 芹沢達也)も魅力的で、構成が秀逸。

主人公達のラーメンに対する熱い情熱に共感できれば楽しめるだろうが、ラーメンに思い入れのない読者からしたら興冷めする可能性はあるので、7点止まりとさせてもらった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-12 00:57:25] [修正:2013-02-12 00:57:25] [このレビューのURL]

狂気恋愛系異能SFサバイバルバトル漫画。

想像だが、おそらくトリガーはDEATH NOTE。主人公が人を次々に殺すことを少年誌で実践した本作によって、すべての商業誌で一気に「狂気表現のハードル」が下がったように思う。そんな時代背景の中でこの漫画が登場し、アニメ化までされた。

この漫画は前述のとおり複数のファクターの組み合わせで構成されているが、元ネタは
死神が異能付与:DEATH NOTE(ノート←→日記のアナロジー)
異能サバイバルバトル:FATE(サバイバルだけなら、バトルロワイヤル、王様ゲーム、ブトゥームなど近年多数)
だろう。

強いて挙げるならば、見た目は萌えキャラの女の子が主人公の男子を殺そうとする「狂気ヒロイン」がこの作者の特徴か。女性が恋愛をリードすることや強気の女性キャラ、病的な恋愛を男性に強いる「ヤンデレ」等それ自身は珍しいものではない。

まず、この「狂気ヒロイン」が気持ち悪い。こんな女性に魅力を感じる男子っているか?しかも、報われない恋ならばまだしも最後は結ばれてしまうあたり、全く共感できない。

また、全般的に、人が無意味に死にすぎ。前述のDEATH NOTEでは死ぬのは「悪人」と決まっており、大量の死者を出すことにも一定の「ルール」があったのだが、本作のように無駄に人が死ぬことは人命の重みを感じさせず、非常に不快。このモラルハザードは教育上も良くないだろう。

話を破綻させずに12巻にまとめた作者の力量には感服するが、作風がいかんせん合わなかったのが残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-12 00:41:43] [修正:2013-02-12 00:41:43] [このレビューのURL]

名作文学の現代版リメイク作品。

漫画にする必要がないほどこの漫画は文芸作品である。絵はお世辞にも上手いと言えないし、漫画でなければ表現できない描写は皆無。それでも、無駄に奇をてらわないストレートな描写のおかげでスイスイと読める「読み易さ」がある一方で、台詞まわしは鮮烈な印象を残す。

計算高く、正義感が強く、孤高を好む主人公像は一見するとDEATH NOTE(夜神月)に近いが、巻が進むほどに主人公は「人間臭さ」を獲得し、オリジナルのラスコーリニコフとも異なる「キャラクター性」を獲得していく。

個人的には、「世直し漫画」であると期待しながら読み始めたため、「罪との向き合い方を巡る人間成長」が主題となると知り、その陳腐さに最初はがっかりしたが、人間の生きる意味や対人依存の本質などを抽出する部分にカタルシスの「ツボ」をシフトした後は、それはそれで面白い文学作品などだと思えた。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-12 00:01:14] [修正:2013-02-12 00:01:14] [このレビューのURL]