「DEIMOS」さんのページ

総レビュー数: 126レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月14日

7点 RIN

世界チャンピオンになってからの天才ボクサーの行動原理を描いた「Sugar」の続編。

天才が軌道に乗るまでの軌跡を描いたのがシュガーであるならば、その続編の本作では、余裕で世界をとった天才ボクサーが、人並みの恋愛もできないことの葛藤を描いている。

天才は孤高である。
一人ぼっちの神聖なる存在。

そこにマスゴミと愚民が支持する立石というボクサーを対峙させる。女性に振られてボロボロの精神状態になっても、宗教じみたマスゴミの洗脳を軽々と砕く天才。天才はやはり天才。

ひねた爽快感。

この漫画の面白さはそこに集約される。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-26 22:29:33] [修正:2009-12-26 22:29:33] [このレビューのURL]

8点 SUGAR

「The・天才」を描いたボクシング漫画。

天才への憧憬、一途な夢、誰しも持つであろうその感情を、いつ我々は失ってしまったのだろう。往々にして、それは、目の前に現れた「真の天才」に打ちのめされた時である。
そういった「天才」像を新井英樹が一癖も二癖もある表現で、面白おかしく描いている。

ボクシングの描画はむしろわかりにくい。攻撃なのか、防御なのか、スピード感をもって読むには記号性に欠く。
ただ、すさまじい速度をもって動いていることだけは確実に伝わる。

この「ひっかかりと圧倒的な感じ」こそ新井英樹の持分ではないか。
何か分からないが凄い。
気分悪いけど、続きが気になる。

したっけ、唯一残念なのは、挫折→再起の流れで突如として終る作品のたたみ方。
一貫した作品としてみると、ボクシング要素でもう少し魅せて欲しかった。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2009-12-26 22:17:52] [修正:2009-12-26 22:17:52] [このレビューのURL]

酒造り、を題材にしたクリエイター漫画。

作り酒屋の娘、夏子が、亡き兄の思いを受け継いで、日本一の吟醸酒造りに挑む作品。
全巻とおして描かれるのは、ただ、それだけである。プロットとしてはそれ以上でもそれ以下でもない。
ただ、その過程で紡がれる困難と解決、人間同士のぶつかり合いを丁寧に描く姿勢にはただ感服するばかりである。

また、この話における酒造りとは、畢竟、エンターテイメントのプロデュースである。コンテンツ製作とのアナロジーでは、蔵元=プロデューサーだし、杜氏=ディレクター、醸造職人=スタッフ、農家=原作者であるといえよう。酒という娯楽作品にかける情熱は、往々にして、利潤追求とは反した行動原理を導く。現実的農薬農法と理想的有機農法の対立は、ポスト資本主義社会の環境調和指向型社会の到来を彷彿とさせる。もはや、夏子の酒は、ものづくりに携わる全ての人間に通じる普遍性をもっているのである。

そして、その熱い魂に共感した読者は、
自然と酒屋で酒選びをしてしまうことだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-11-01 19:44:49] [修正:2009-12-24 02:05:44] [このレビューのURL]

神がかった少年を描いた物語「キーチ!」の続編。

キーチ青年は、前作から明確な成長を遂げ、神がかった存在感を獲得している。この成長に対する爽快感は、ドラゴンボール・ピッコロ大魔王編後の悟空の成長にも近いものを感じる。この平伏したくなるような爽快感は、「真っ当に生きた」御姿への畏怖と尊敬であることは自明であろう。

聖書のオマージュともいうべきこの?ノンジャンル?漫画は、私が生きる糧の一つとなっている。

政治や宗教や財力とは違う絶対的権力。
誰かに用意された既製パッケージ思想の妄信(=思考停止)への警鐘。
個人と対等な神。
個人の内面が大事などとエゴを唱えるセカイ系への反駁。

我々は、個々人の中のそれぞれの「真っ当な姿」を理想モデルとして、生きていくしかないんだ、という一つの訓示は、この腐りきった世の中で折れそうになった心が安易に低きに流れるのを阻止してくれる。
その個々人の「真っ当な姿(=キーチ)」は、多重な経験で紡がれる複合物でしかありえない。

生き方の模範を提示してくれた、この偉大なる書に感謝!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-11-29 04:48:02] [修正:2009-11-29 04:55:57] [このレビューのURL]

スケールダウンしたベルセルクってことでOKか。

戦争における描画の細かさとパワーや単騎突貫型の主人公はベルセルクと同じ。

しかし、主人公の活躍の描写においては、読者の予想を超えた表現がなく、爽快感は限定的(それでもかなりある方だが)。

面白いのは、戦争における個と群の距離感。いわゆるセカイ系のように個の内面に執着するわけでもなく、横山光輝版三国志のように歴史ダイジェストになるわけでもなく、個人の活躍が徐々に集団に影響を与えていくプロセスをきちんと描いている点が特長。

描写にかけている精神的「枷」を取り去れば、今後大化けする可能性アリ。
(常識的にあんな細腕の子供が大の大人を真っ二つにできるのはおかしいよね、って思わせない描画力(=説得力)があればもっと面白いはず。)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-10-18 03:51:40] [修正:2009-10-18 03:59:47] [このレビューのURL]

「燃えペン」⇒「吼えペン」⇒「新吼えペン」へと至る作風の変容を進化ととるか、退化ととるかを考えるのは不毛だ。

初期の作風は、あくまでメタ漫画であった。その面白さは、漫画家の生き様を自虐的にパロディにする新鮮さだった。

一方、新吼えペンに突入すると、容易に推察されたネタ切れに伴い(これは作者のあとがき漫画でしばしば訴えられている)、「if」の儲け話と新キャラ乱発が話作りの主軸に変化。
実は、これは「こち亀」のネーム構成と同じである。

ただ、本作品がこち亀のように長期化できなかったのは、「漫画家縛り」という条件から抜け出せなかったからか。(こち亀はもはや警官漫画ではない。)
それとも、漫画というものを哲学することに本人が耐えられなくなったのか。(漫画は売れたものが勝ち、ということに島本本人が劣等感由来の葛藤を持っていたことは容易に読み取れる。)

島本の真の力が発揮できるのは、私メタ漫画のような気もするので、売れるかどうかなど気にせず、「アオイホノオ」で「地道に」熱い魂を訴え続けて欲しい。

我々島本信者は、それを追いかけるだけだ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-09-14 00:13:28] [修正:2009-09-14 00:13:28] [このレビューのURL]

面白いのだが、その「面白さ」が普遍的なものではなく、理解が得難いのが問題だ。

まず、ありがちな批判として、
・リアリティがない
・ストーリーにのめりこめない
のようなものがある。

確かに、やたらに文字が多いこの漫画にその指摘は的確かもしれない。
しかし、このマンガの本質というか前提は、
「バクロマンガ(=バクマン?)」
なのであり、完全なメタマンガなのである。
つまり、ワンピースおもしれー、とかナルトさいこー
とか言う次元で楽しむマンガではないということが重要。
(※ワンピースやナルトを否定するものではない。)

こんな奴いたら面白いな、とか、ジャンプシステムを自社のシステムでも活かせないだろうか、とか、漫画の多様性すげー、とか、そういう新鮮さがここにはある。ある意味では、スター不在の現在の漫画界に対するアンチテーゼともとれなくもない。

我々漫画読みは面白い漫画を求め、分析し、語り明かすのをライフワークとする(時として自分でも描いてみてプロとの距離感を測る)のだが、この漫画はそういった会話のスパイスとなりうる。

この漫画の面白さは、そういう類の面白さなのだ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-08-29 23:09:48] [修正:2009-08-29 23:09:48] [このレビューのURL]

これぞ、異能バトル漫画の究極形だッ!

従前のバトル漫画といえば、根性や気合が勝った方が勝つという、いわゆる「バカ」漫画であったが、個性的能力による戦いにより戦略性が勝敗を左右するようになったのが「賢」系異能バトル漫画である。

異能バトルを確立したのは、言わずもがな「ジョジョ」であるが、その基本形を継承し、より「少年誌らしく」アレンジして完成形にまとめあげたのが、「幽白」であり、この「ハンターハンター」である。

ここで、重要なのは、冨樫の特徴は、「新規性」ではなく、「アレンジ力」と「緻密な設定構築力」 であるという点だ。H×Hには、なんら新しいところはない。冒頭などはDBそのものだし、メルエムの造形はセル×フリーザだ。しかし、ゲームやオークションといった自らの興味を上手く漫画に取り入れ、緻密な構成力によって話を破綻させずに連綿と物語を紡ぐ手法は圧巻だ。キャラクターにしても、ゴンやキルアのような少年誌キャラだけでなく、ナックルのような青年誌キャラ、シャウアプフのような美形キャラ、ピトーのような同人誌キャラ、など幅の広い分野をマージした世界観を構築していて本当に面白い。

また、近年のバトル漫画には珍しく、「修行」を描いているのも好感が持てる。「強さ」には理由がある、という徹底的な理由付けの世界観。
合理×辻褄×整合性。

その矛盾に頭を悩ませるのか、作者がつらくなるのも無理はない。
だが、いくらじらされても、読者は応援すべき。
このH×Hは、まごう事なき、歴史的名作なのだから。。。

ナイスレビュー: 5

[投稿:2009-07-20 11:26:04] [修正:2009-07-20 11:26:04] [このレビューのURL]

7点 竹光侍

この雰囲気、なんとも言えぬリズムの良さ。

松本大洋の新境地。

プロットなぞに文句を言うな。

ただ淡々と、ページをめくる。

そおら、心地よい音がする。



「ちょん!」




ホントの評価は、また完結した後の話。。。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-07-04 22:33:58] [修正:2009-07-04 22:33:58] [このレビューのURL]

5点 谷仮面

(ハチワン→エアマス→谷仮面と遡って読んでみて)

正直、柴田ヨクサル独特の演出力というかパワー感に関しては、ハチワン>エアマス>>谷仮面と言わざるをえない。何より、谷仮面連載当時は絵がまとまりすぎていて、インパクトに欠ける。バカさも足りない。

とはいえ、小技こそまだ確立されていないものの、やたらコンクリを砕いて画面を破片だらけにするなど、熱くるしさは相当のもの。この学校はどれだけ改修工事をしたんだとw。あと、おっぱいへの執着w。


ところで、谷君の仮面はどういう意味をもっていたのだろうか?
大したキャラクター性とも思えないので、あえて文学的解釈をしてみる。
・一つに、仮面が、他人との心の壁を意味するのではないか?真の恋愛を経て、初めて心をオープンに出来る、という。
・また、「愛のきっかけは、顔ではなく心だ」というメッセージ性を持つ。事実、島さんは本当の顔を知らない谷君を好きになる。

仮面必要だったのかな。。。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-06-07 22:59:12] [修正:2009-06-07 22:59:12] [このレビューのURL]