「DEIMOS」さんのページ

総レビュー数: 126レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月14日

[ネタバレあり]

圧倒的画力とはっちゃけた設定によって強烈なインパクトを放つSFバトル漫画。

この漫画がすごい2013男編にて1位を獲得したとのことで、インパクトはさすがの一言。

「火星にて進化したゴキブリと改造人間が闘う」

その一行だけで本作のすべてが説明できてしまうのだが、そのおバカな設定をさもありなんと思わせるだけの「画力」で描いていることが秀逸。そして、ゴキブリにばっさばっさ人類が殺されていくストーリーは、経済力が地に堕ちた日本人にとって、自虐SMプレイとしての快感すら抱かせる。
また、ややもするとこの設定ならば映画・「エイリアン」のようなホラーにもなりえるのだが、そうではなく、真正面の「バトル漫画」調に描いていて、そのあたりは、ヤンジャンらしいなという感想。ゴキブリの造形が完全に「黒人」なわけですが、そんな人種差別的描写をしてしまう「悪ふざけ」も本作に良い意味での勢いを与えているようだ。

陳腐な愛やら友情やらがほどよいスパイスになっていて、無難な構成力が物語の破綻を防いでいるが、トンデモ設定によるデオチ感は否めないので、そう長続きする作品ではないだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-10 20:57:39] [修正:2013-02-10 20:59:26] [このレビューのURL]

ゲーム業界を風刺した職業マンガの一つ。

この漫画は比較的高い評価を受けているようであるが、読みやすさ・エンターテイメント性・登場人物の魅力等の点で、正直、イマイチ。
職業マンガが熱いのは当たり前。その業界の魅力を掘り下げることこそが職業マンガの本質であり、「熱い」ことそれ自身だけでは名作たりえない。
漫画家マンガであれば、燃えよペン、G戦場ヘブンズドア、まんが道、編集王等の熱さと本作を比べれば、「熱さ」それ自身に大差はない。広義の職業マンガというものでいえば、海猿、夏子の酒、め組の大悟(というか曽田漫画全般)、その他スポーツマンガ全般、等々熱いマンガを挙げればキリがない。

要は、プロフェッショナルorものづくりに対する熱いこだわりというテーマを描くためのストーリー、キャラクター性によって良いマンガかどうかが決まる。

その点、大東京トイボックスは、ストーリーやキャラクター性が「ぼんやり」している印象が否めない。一話完結ではなくストーリーものになっている割に、山谷がなく、一本調子で淡々と出来事を消化していくだけ。登場人物がやたらに多く、中心人物不在のため、誰にも共感できない。天川太陽に作品への熱さを注入しているのであれば、より太陽中心に話を転がすべきであるのに、やたらに周辺の人物の出来事を描きすぎていて、落ち着いて読めない。結局、何の作品でしたっけ??と途中でなってしまう。

他方、数多ある職業マンガの一つとしてゲーム業界の内情を知るための薀蓄マンガとして一定の価値はあったので、5点の評価まで。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-10 20:44:29] [修正:2013-02-10 20:44:29] [このレビューのURL]

宇宙飛行士を目指していく過程を丁寧に描く、夢追い実現系マンガ。

2020年代というほど近い時代設定。日本人の宇宙飛行士の門戸が開かれている時代。しかし、まだまだ宇宙飛行士はエリート中のエリートのみに許された限られたゴールデンチケット。
そんな中で様々な課題をこなしながらムラがある主人公がなんとか勝ち残っていくサクセスストーリー。

そして、本作のもうひとつの側面は、出来すぎる弟が兄を舞台に引きずり上げる、という兄弟物語。そして、脇役達も、兄弟など家族を中心にそれぞれのバックボーンが丁寧に描かれる。

上記2つの設定を基軸として、各所にちりばめられた伏線が効果的に機能する。数巻前に登場した設定が、後々になってチョロっと出てくるし。(ヒビット人形の登場はワロタ。)はっきりいって、作者はノリノリで描いているだろう。

近年、職業もの、理系もの、の漫画はいろいろと描かれてきたが、ここまで面白くかけたものは稀有だろう。
(プラネテスは宇宙飛行士もの、という共通項はあるが、あれはSFなので別系列。)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-04 22:17:31] [修正:2011-05-04 22:17:31] [このレビューのURL]

8点 頭文字D

誰が何と言おうと面白い!公道バトルを題材にした超有名作品。

天然ボケの天才・藤原拓海が公道バトルに目覚めていき、超絶テクと勝利を呼び込む強運によりハチロクという時代遅れのマシンで次々と強敵を倒していく、という王道中の王道のストーリー。
そして、高橋兄弟など、個性的なキャラクター。記憶に残るキレたセリフ。
よくネタ切れしないなぁ、と思えるほどの公道ならではの奇想天外なバトルの決着方法。

これらは一見、馬鹿げている。低俗なものに見える。
だからこそ本作品の評価を下げしめる人は多いだろう。
しかし、車を知らない人でも楽しめ、そして車を好きになってしまうほどの影響力を持った本作を正当に評価すれば、こういった「馬鹿さ」を真正面から描いたことは評価できる。
若さゆえ尖りたくなる心意気、それは万人の実体験として存在するシンパシーに相違ない。

42巻現在において、プロレーサーを倒すなど、強さがインフレし続けているので、今後どう終着させていくのかは不安ながらも興味深い。プロ転向というのはありきたりだが、それはそれでアリだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-24 20:37:55] [修正:2011-04-24 20:37:55] [このレビューのURL]

水泳・恋愛・バイク・負けず嫌い・破天荒という相関しないキーワードで構築されたキャラを全面に押し出しただけの漫画。

結局、作者は何を描きたかったんだろう。読者は何を楽しめばいいんだろう。
たしかに破天荒な学生像は面白みがあるが、ストーリーはとっちらかっているし、訴えるメッセージはない。キャラは暑苦しいほどに負けず嫌いなのに、水泳勝負では全く燃えない展開。間を外してきている割には笑えない。集団になじめない主人公が成長して、恋愛を成就し、水泳で勝利を掴み、、、というありふれたカタルシスも提供しない。バイク好きとしては、バイクでの暴走は何か屈折した愛の表現だと思われてしまう。

このもやもやとした感覚、がこの漫画の読後感だ。
「青春の過ち」を懐古できるようになればもう少し楽しめるか?

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-24 19:38:20] [修正:2011-04-24 19:38:20] [このレビューのURL]

新と旧の違いに焦点を当ててみると、「新」の方は、「医者とは何か、という問題に懊悩し続けた主人公が、わからないなりにも一定の結論を出して自分の人生に結論を出す」過程を描く作品と言える。

実際、医者漫画といっても、新作の方で描かれるのは腎臓移植のトピックだけ。連載当初はどんどん新しい展開を用意して固定客をゲットしたらダラダラと話を引き伸ばして単行本の発行部数を稼ぐというのは漫画家・出版社の常套手段、という見方もできるが、人生の岐路に立った医者が悩む姿を丁寧に描いた、ともいえる。

恋愛の方でも、赤城さんが凡庸な人生に落ち着いたり、付き合っていた彼女とは別れてしまったりと、「リアリティのある結末」は「人生なんてそんなもんだよ」と言っているようで寂しい限りだが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-17 01:12:36] [修正:2011-04-17 01:12:36] [このレビューのURL]

6点 餓狼伝

格闘技のエンターテイメント性を強烈に先鋭化し、抽出・風刺した作品。

原作の餓狼伝チックな話は冒頭だけで、トーナメント云々の前後から主人公は加速度的に影を薄めていく。それなのに表紙や扉絵では執拗に文七を描くという作者の拘り(笑。だが、トーナメントに主人公が入っていないという意味不明かつ誰が勝ち上がるかが本当にわからない描き方は極めて異様で面白い。そして、それをバックで支えるのは、巽や松尾という強烈なキャラクター。リアリティとフィクションの絶妙なコンパウンドとコントラスト。

そうした方法で、「格闘技ファンが見たいもの」をこれでもかと真正面から描出し、凝縮した漫画と言えるだろう。人は鍛えるとどこまで行き着くのか、人間の肉体が破壊される時はどのような現象が生じるのか、平場で戦うと最も強いのはどの競技種目か、丸腰の格闘家と武装した戦闘のプロが戦うとどうなるか、etc。。。。。
そういった意味では、トーナメントが終わった時点で、上記の目的を達成してこの漫画は終了した様な気もするので、休載云々は気にしないでおこう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-17 00:51:31] [修正:2011-04-17 00:51:31] [このレビューのURL]

7点 アカギ

言わずと知れた、賭博の天才・アカギを描いた麻雀漫画。

この漫画の魅力は、「天才の描き方」にある。死を恐れない。攻守の時流を把握する。相手の意図を先読みする。保身を考えない。欲望を持たない。リビドーに惑わされない。そういった天才の資質をことごとく描き、アカギは名言を放ち続ける。

新井秀樹のシュガー・リンが「動」の天才を描いているとすれば、この漫画で描かれるのは、「静」の鬼才。

「アカギのようにありたい」ただひたすらにそう思えるだけで、この漫画は殿堂入りだ。ただし、「天」における「アカギの死」というクライマックスが既に明らかになっている以上、鷲津戦の今後にあまり期待はしていない。

鷲津戦の冗長さには確かにうんざりするが、未だイカサマを描かずに正当麻雀ルールの範囲内で描いている点は評価できる。(「天」のようにイカサマを描いてしまえば、何でもあり感が出て白けてしまうため。)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-17 00:29:33] [修正:2011-04-17 00:29:33] [このレビューのURL]

働き方の姿勢には学ぶものがある。

医療現場の問題点を描き出し、、、なんてことには私には全く興味がない。白い巨塔をはじめ、縦割りの医局システムに由来する権力構造と腐敗は幾度と描かれてきたし、医者不足や金銭主義はもはや手垢のついたテーマ。脳死・透析・癌宣告・精神病など、個別のホットイシューを取り上げ、わかりやすく噛み砕いている点は感心するが、私は漫画でお勉強したいわけではない。

この漫画で共鳴する最たる点は、主人公の「仕事への姿勢」だ。何の目的もなく、ただ勉強することを目的化し、生きてきた人間にとって、「目前の仕事」というのは最もとっつきやすい目標であり、人生テーマになりうる。そして、縦割り組織においては、仕事に真摯に取り組めば取り組む程、「矛盾」「腐敗」といった問題に出くわす。正義を振りかざせば振りかざすほど、それは自らの立場を危うくし、上層部の因習的なルールと衝突する。セクショナリズムの壁に打ち当ったとき、われわれは往々にして良い子になって引き下がってしまうが、この主人公は諦めない。とことんまで安直な正義を追及する。

私も、そういった「青さ」を持って働けたら、と思う。保身は何も生まない、と信じて。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-03-21 20:51:55] [修正:2011-03-21 20:51:55] [このレビューのURL]

愛という言葉を借りて、人間のダークサイドを描き出した欲望丸出し漫画。

もうなんかね、とりあえず汚い。えげつない。勢いだけ。
読んでいてとにかく疲れる。心地悪い。

しかし、読み続けてしまう。のめり込んでしまう。
これが、新井英樹の力。もはや麻薬。計算というよりは暴走で描かれた故の愛おしさ。

不必要な性描写は、同人誌か、と思えるほど。
しかも、キャラクターがみんな不細工なのは新井作品の共通点。
かわいい萌えキャラなんて描いているけど、鏡を見てみなよ、現実のお前の顔なんて所詮こんなもんだよ、と言わんがばかり。
汚さを描き続けることで、かえって、その中に光る「愛」の美しさが強調されるというコントラストの妙。

岩男の人生を誰が否定できるというのだろう?
20年後、自分が岩男になっていないという保証がどこにあるのだろう?
本当は決して笑えない内容なのだ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-03-21 20:30:02] [修正:2011-03-21 20:30:02] [このレビューのURL]