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総レビュー数: 258レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月29日

やはりこの人の独特の雰囲気の絵とギャグは
すばらしくおもしろい。キャラもほんと魅力的。

何といってもこの作者のすごいところは取材と
コメディのバランス。取材しましたっていう雰囲気は
考えて読むとなくもないのだが、ギャグを入れつつも
本来のテーマからは逸脱しておらず、笑わせつつも
考えさせてくれる。接客や店のスタイルについて
描かれた回は納得させられた。絶妙のバランスだと思う。
コメディオンリーの回も、雪祭りとか泥棒が入ってくる
回とかめっちゃおもしろくて良かった。

ただ、ラストがちょっと微妙だった。無理やり終わらせた
感じだったし。まあ終わって欲しくないと思わせる
のがこの作者の漫画全般に言えるのでそのせいもあるかも。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-07-08 22:30:57] [修正:2011-10-27 17:54:10] [このレビューのURL]

花田少年史やピアノの森で有名な一色まことの短編集。
一色まことの人間への愛にあふれた「ガキの頃から」シリーズと初期の読み切りを集めた「ばか。」シリーズの2つに分かれる。
帯の「ダメだけど ドジだけど 切なくて 優しくて 人間ってこんなにも愛おしい!」というキャッチコピーに惹かれて購入。大正解だった。

ガキの頃から…帯の言葉通り一色まことの人間への抑えきれない愛が感じられる人間賛歌。この人の作るキャラクターは何でこんなにも飾らないんだろう。平凡だけど、平凡だからこそ本当に愛おしい登場人物の数々。笑って、泣いて、切なくなって、最高だった。
個人的に好きだったのは姉ちん、いつも一緒の2つ。駒子は名編だが、一色作品に珍しく人間の悪意が露骨に出ていて読むのが辛かった。だからこそ最後の幸せにカタルシスが生まれるのだろうけど。

ばか。…初期の読みきりなのでまだ絵も話も荒い。しかし作者独特の人間観察の妙というものが見れて興味深い。
この作品群では「人間って馬鹿だよね。でも馬鹿だからこそ愛おしいよね」という一色まことの根底に流れる考え(と私が勝手に思ってる)がテーマに思える。傑作とはいえないものの気軽に笑って楽しめる作品が揃っている。

どちらかというと花田少年史が好きだった人に薦めたい一色まことの傑作短編集。この値段でこのページ数と質は買いです。ある程度古い作品もあるので時代がかった作品もあるものの、描かれていることは普遍的な人間の心情なので、誰が読んでも楽しめるでしょう。
一色まことの作品の中では日が当たってないように思えて悔しいですが、他の作品の影に埋もれてしまうのはもったいなさすぎる短編集です。
心温まる良作が読みたい人はぜひ読んでみてください。おすすめです

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-24 22:44:15] [修正:2011-10-27 17:53:07] [このレビューのURL]

fellows!掲載の読みきり作品はもちろん、作者の同人時代の作品まで収録された8篇からなる短編集。
内容は優しいほのぼののとした作品から、絵や雰囲気を楽しむ作品、笑える作品、考えさせられる作品まで多岐にわたる。テーマが明確ですっきり読める話が揃っているので短編集としてはかなりいい出来だと思う。デビュー作や同人で描いてたものとは思えないほど精密で美麗な絵なのでそれだけでも見る価値はあるはず。
以下気に入った短編について少し…結局ファンティエッタ以外全部にw

花の森の魔女さん…デビュー作。魔女と噂されるしゃべらないお婆さんと2人の兄妹の交流を描いた優しい雰囲気の作品。この作品では線のタッチが細くて五十嵐さんみたい。

月夜のとらつぐみ…表題作。これと水面の翡翠はそれぞれ鳥を可愛く擬人化したアートとも言える作品に仕上がっている。笠井スイの世界観全開の雰囲気が楽しめた。

仏頂面のバニー…笑ったことを誰も見たことがないと言われるバニーちゃんを親父達があの手この手で笑わそうとするお話。コメディ色が強くてかなり笑わせてもらった。この雰囲気は少しジゼルに受け継がれてる気がする。

Story Teller Story…01と02の二作で、まさかの同人時代の作品。このクオリティで同人とは驚き。
01では優しい嘘をついた男、02では嘘をつかざるをえなかった女性が自身の嘘に耐えられなくなり、嘘をつく相談をしてくれるという「ストーリーテラー」の所へ向かうという内容。他の短編と異なって、ページ数も多くシリアスな話となっている。02の最後には驚いた。まさかそんな話だったとはね。

猫とパンケーキ…妻に先立たれたじいさんとみなしごの女の子の話。誰かより先に死なない人なんていない。「そうこんな温度があった…」再びパンケーキより熱い大切な人を見つけたじいさんが泣かせます。私が一番好きな話で、これが最終話のおかげでいい読後感が残る。

ジゼルから入っても楽しめるし、幻想的な世界観が好きな人にもおすすめ。
今まで読んだ短編集の中でもかなり好みの作品だった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-13 22:53:23] [修正:2011-10-27 17:52:24] [このレビューのURL]

いい漫画ですよね。
私が小さい時に姉の本棚にあったこれを読みふけっていたので、かなり思い入れがある作品。短編が連なっている構成で、起承転結がしっかりとしているのですごく読みやすいし読後感がいい。笑えて、泣けて、考えさせられてと括りは少女漫画だけど万人が楽しめると思う。

基本的には小5の拓也と幼児の実、それを見守る父親を中心としたホームドラマ。育児を中心としつつも色んなテーマが取り扱われており、全体的にかなり質が高い(銀行強盗の話だけは好きじゃないけど)。
脇を固める人物として拓也や実の同級生、ご近所さん、父親の同僚など大量の人物が登場するのだが、まあこいつらが揃いも揃ってあくが強い!羅川さんのすごい所はこの脇役達を暴走させずにうまく作品のテーマと絡めていった所だ。何気に大変だったと思う。後半は多少ネタが尽きたのかキャラ頼みの話も見られたが、それでも十分おもしろかった。特に藤井家絡みの話は鉄板ですね。

最終回は泣いた、確かに号泣しましたよ…
でも反則技というか安易というか納得しきれない部分はどうしてもあります。あまりにも唐突だったしありがちなのはこういう漫画の最終回が難しいからというのはあるのだろうけど、羅川さんならもう少しうまくやれた気がするんですよね。
ただ今まで育ててきたキャラだからこそあそこまで泣けたのであってそういう意味では最終回にふさわしくはあったのかもしれません。

誰もが楽しめて、気軽に読める良作品なので時間があればぜひ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-08 00:36:34] [修正:2011-10-27 17:51:39] [このレビューのURL]

ジャズ全盛の1960年代、ジャズを通して繋がる正反対の高校生、薫と正太郎の青春を描く。

まず思ったのは時代背景や絵柄を含めてとにかく古いってこと。しかしこの作品の古さっていうのは恐らくすごく考えて練られたもの。
60年代の固い恋愛観、ビートルズやジャズの大御所に代表される小ネタ、控えめな絵柄、そういう要素が全て純粋で爽やかなキャラクターと素朴な物語を魅力的に見せてくれるのだ。
小玉ユキはこのド直球な青春群像を現代でやってしまうと嘘っぽくなってしまうことを分かっていたんだと思う。この時代でしか、この時代だからこそ成り立つ甘酸っぱさが確実にあるのだから。
素朴な物語を純粋に楽しませてくれるというのは相当力量がないと出来ないし、1960年代を切り取って見せてくれるということを考えてもかなり良い作品。

何といってもジャズの演奏シーンがいい。ここまで音楽してるって作品他にあったかな? まさに音を楽しむという表現が似合う。
私もアポロンを読んでアートブレイキー辺りを聞いたクチなんだけど、色んな音楽を題材とした漫画を読んできたにも関わらず実際にその音楽を聞いてみたのはこれが初めて。クラシックという音楽が限られた枠組みの中で表現を凝らすという素人には分かりにくい凄さだからだろうか。世界を目指して必死、真摯にピアノをやる漫画が多いというのもあるかもしれない。
その点この時代のジャズというのは大衆音楽で、薫達も別にプロを目指しているのではなく単純にやりたいからやっているのだ。すごく身近。また、フリーセッションは私がギターを弾いていて1番楽しいことだし、その楽しさが伝わりやすいものだと思う。だってみんな演奏するのが楽しそうだしジャズが大好きそうだもんね。これは聞きたくなるよ。
しかもこのスタンダードなジャズが片思いにめちゃくちゃ合うんだ。

最近多いぐだぐだなモラトリアムを描く青春ものとは一線を画す作品。異端に見えて王道です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-26 14:30:24] [修正:2011-10-27 17:50:56] [このレビューのURL]

奇才・市川春子の第1作。久々にアフタらしい鮮烈な才能を感じた。

アフタヌーンは昔から良い意味で突飛な漫画家が多い。ただ植芝理一、弐瓶勉、木村紺あたりが最近丸くなったなーと感じている。尖ったまま変化するのは難しいし、その是非は読み手次第だから悪いことではないのだろうけど何となく寂しい。
そんな風に感じていた中で登場した鮮烈な奇才、市川春子はかなり楽しみにしている作家さん。

虫と歌はSF風味の4話からなる短編集。人とそれ以外のものとの交流を描く。
どの話もとても「痛い」。少しずつねじれていて、変質的で、痛すぎる。たまらない。
個人的なベストは表題作の虫と歌。すごいよ。痛いよ。

その作風から市川春子は高野文子とよく比べられるし、人によってはパクリだと罵られることもある。実際私も似ているとは思うし、本人も高野文子を尊敬しているそうだ。
ただ、考えてみて欲しいのは高野文子の後を追うというのがどんなに難しいことであるかということ。そもそもどんな作家だって誰かしらから強く影響を受けている。市川春子は表面上ではなく、曲がりなりにも自分のものとして高野文子を取り入れられているように思う。

私が虫と歌の好きな所は、世界を描く熱心さ。
ただその熱心さというのは分かりにくさと表裏一体のものでもある。なぜなら彼女は彼女の世界観を描くことには熱心でもそれを読者に説明することには熱心ではないからだ。だから最初読んだ時はあまりに難解に感じられる。
でもそれはあくまで難しいであって不可能ではない。読み解くのに必要な材料は作中に最低限ではあるにしろ揃っているし、その読み解く作業が楽しいのだ。

分かりにくい、不親切だと作家を非難するのは容易い。そりゃあ作者から読者に歩み寄ってもらうのもいい。でも時には読者の方から作者の世界に近づこうとしたっていいじゃない。そうすることで他の漫画では感じられないものがあるのだから尚更だ。

漫画好きなら高野文子含め、好き嫌いは分かれるにしろ一読を勧めたい作品。その奇才に驚愕する方もいるだろうし、大好きな作品になる方もいるだろう。こんな漫画もあっていい。あって欲しい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-13 12:54:51] [修正:2011-10-26 00:16:52] [このレビューのURL]

こうの史代の作品にハズレはないなぁ。何でそんなに安定感があるのかと考えた時、核にあるのはさんさん録や長い道に分かりやすい温かみじゃないかと思う。

参平さんみたいな老後がいいなと思うのは別に家事がしたいとかではなくて、老いても何かしら存在意義を感じていられたら生きている喜びが感じられるのではないかなってこと。
そりゃまあ趣味に生きるのもいいのだけど、他人に必要とされるのは人として大事な気がする。孫の面倒を見るのだって何でもいい、生活に張りがあれば参平さんのようにそれなりに楽しくやっていける。

妻に先立たれた参平は息子に勧められるまま、息子夫婦とその小学生の娘との同居を開始する。成り行きで参平は家事全般を担当することに。妻のおつうが残した「奥田家の記録」を頼りに参平の主夫生活が始まった。

参平じいさんのどたばたな生活を見ているのは楽しい。家事を「奥田家の記録」から学ぶ参平、時には、いやかなり頻繁に勘違いをやらかす参平、かなり変人な孫との微笑ましい?交流、時にはどきどきするロマンスもあったりして参平さんの老後はなかなかに忙しい。
この忙しいというのがすごく幸せな忙しさに感じられる。老後の生活に張りがあるというのは多分こういうことだ。

参平の家族も本当にいい家族。ちょっと現代的なライトさもありつつも優しい息子、もはやこうの作品常連とも言える天然な可愛い奥さん、そして気持ち悪いもの好きの変な孫。それぞれにとても愛おしい。

ちょっと興味深いなと思ったのは参平さんが常に妻・おつうを意識している所。参平さんは彼女に恥ずかしくない行いはしまいと思って生活している。
これってアメリカの「常に神は見ている」精神にすごく似ている。人の目はもちろん誰だって気にする。でもアメリカ人は誰も見ていなくても神が見ているからという意識はすごく大きいらしい。別に宗教に限らず、何かに恥じない生き方というのは一つの理想かもしれない。窮屈とも言えるかもしれないけれど。

こうの史代といえば夕凪の街 桜の国やこの世界の片隅にという名作のイメージが強いと思う。でもやっぱり何度も読み返して楽しい気分になれるさんさん録のような作品だってすごくいい。
本当にこんな老後を送りたいと思わせてくれた。まだ私はそんな年じゃないけど、羨ましいなぁ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-10-25 00:37:33] [修正:2011-10-25 00:38:14] [このレビューのURL]

7点 青い春

松本大洋の青すぎる春。

松本大洋初見だとかなり取っ付き難く感じるかもしれない。もしかしたらピンポンや鉄コンを既読の方であっても。

度胸を示すために簡単に命を懸ける。
ロシアンルーレットで生を感じる少年達。
取り返せるものならば…打てども打てども終わらない夏。
ヤクザの世界に飛び込む木村と誘い入れる鈴木。
飛べなかった少年は糞ったれな現実にピースする。
繰り返されるだべり。噛み合わない会話。
終わらない悪夢と報われない思い。

青春の鬱屈とした全てがここに詰まっている。

「誰か俺をこの檻から出してくれ!」

少年達の心からの叫び。閉塞からの開放を求める思い。出口は無い。
だからこそ青い春を読むときは息が詰まる。でも思い返してみれば、あの頃はそんなだった気がする。

青い春は松本大洋が奏でる青春のブルースだ。ただ本来のブルースというのはやりきれない現実や思いだからこそ明るく歌い上げる意外にノリのいい音楽なのだけど、ここにはひたすら陰鬱なものしかない。

でもこの暗く、青すぎる抑圧があったからこそ鉄コン筋クリートやピンポンで見せた解放がある。
青い春という作品は松本大洋のイニシエーションだったのかもしれない。トンネルの中が暗いのは当たり前なのだ。

松本大洋、この時未だ26歳。そのあまりにも青く鮮烈な才能が垣間見える。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-18 01:41:38] [修正:2011-10-18 01:41:38] [このレビューのURL]

オカルトを代表とする小道具の使い方がすごく上手い。くらもちふさこの隠れた秀作。

主人公が運命の男(女)に出会う物語、というと少女漫画の一つの典型例かもしれない。
月のパルスもそういう話なんだけど、そこはくらもちふさこですよ。一筋縄ではいかないかなり癖のある作品に仕上がっている。

父親に殴られた衝撃が原因か、16歳の高校生宇太郎は異世界や人に憑いているものが見えるようになってしまう。あることで同年代の女の子、紀は宇太郎と知り合い、恋をするが、宇太郎は彼女は頭の上に黒い憑き物を見ていた。
紀には月子という友人がいる。しかし紀が恋をした男の子はいつも月子を好きになってしまうのだ。だから彼女は月子と宇太郎を近付かせないと決意していたが、彼はしばしば異界の奥や夢の中で月子の姿をそれと知らずに見るようになり…。

最初の方をちょっと読めば嫌でも分かってしまう。ああ、宇太郎は月子に出会うんだなと。
主人公が運命の人と出会う、こういう物語ではほぼ100%その恋の障害となる人が現れる。ほとんどの作品でそういう存在というのは本命の2人を盛り上げる刺身のツマでしかないのだが、くらもちふさこは刺身のツマ、紀をも主人公格に持ってきてしまう。
視点の変更、紀の気持ちが哀しくて切ない。シンプルな話なのに一味違う。

これだけでも十分おもしろくはあるのだけど、それだけでは終わらないのがくらもちふさこ。
2回読むとまた違うものが見えてくる。鍵となるのはおばあちゃん。ただ呆けていたと思っていた言動、そしてミスリード、これはただ運命の出会いといえるのか?

以下ちょっとネタバレなので未読の方は見ないほうがいいかも。



ちょっと違う点から考えてみる。
題名である月のパルス。単純に月子の波動が宇太郎を捉える話としてもいい。また紀(きの)はのり(糊)とも読める。なのでのりが月とうた(パルス)の間に挟まる障害物でありくっつける存在であることを示唆しているという穿った見方も出来る。
2度見た後だとまた変わってくる。魔法のあめ、前世…月ちゃんは憑きちゃんなのだ。憑きの波動?それが運命?

正直震えた。下手なホラーよりよっぽど怖いよ

単純な物語に二重三重と意味を持たせるくらもちふさこには感服するしかない。もはや私にとっては怪作と言えるほどだけど、人によって色んな見方が出来ると思う。
読者によって異なる受け取り方が出来る漫画、多分そういう作品はすごくいいものだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-15 00:55:11] [修正:2011-10-15 00:55:11] [このレビューのURL]

シークレットオリジンはハル・ジョーダンがランタンとなるまでのお話。
このリバースでは冥府に堕ちたハルの再生が描かれる。

これは多分傑作だろう、熱いぜ!
多分と言ったのには理由があって、上のあらすじを見ると何となく分かるかもしれない。
何の予備知識もなく見た人はどうなるか。オリジンでハルがランタンになりました。これからハルはどうなるのかわくわくです。リバースを見ました。え!?何でハル冥府に堕ちちゃってんの?しかもその前に最高のランタンになってたわけ?てか冒頭の地球担当のランタン達は誰よ?
あれ?キングクリムゾン時ぶっ飛ばしちゃった?

実際ダイジェスト的な感じでリバースの作中で大まかな経緯は説明されるので大筋はつかめても、細部の情報は全く足りない。事前にグリーンランタン/グリーンアローを読んでると多少はましだがそれでも足りない。解説見ても実感できるのとは違うしね。
こんな不親切な刊行になっているのもしょうがない部分はあって、まずランタンは連続したストーリーが続いているのでそれを全て邦訳することは恐らく出版社的に難しい。また、リバースからリニューアルされたこのシリーズだが、ハルが堕ちるまでの作品群はその一つ前のシリーズにあたるということ。ということでかなり流れをぶっ飛ばした邦訳になってしまったと。
バットマンだとそれ自体でほぼ完結する作品が多いんだけど、ここらへんは長い時に渡って連載されるアメコミならではの楽しさでもあり弊害でもある。

このリバースというのはスターウォーズを彷彿とさせるような壮大なエピソードなわけです(実際参考にしたらしい)。スターウォーズとは逆ベクトルの、堕ちて、苦悩し、それでも内で戦い続けたハルの堂々の復活とランタンズの再生。しかしエピソード1を見て、2を飛ばして、3を見たときにそれが十分に楽しめるかというと否でしょう。
ハル復活!!ハル復活!!ハル復活!!ハル復活!!なんて烈海王ばりにテンション上がりつつもそれだからこそこの作品をそういう事情で十全に楽しめなかったことは残念だなと思う。いやー、でもランタンズには熱くなったしガンセットは渋かったし、何だかんだかなり楽しめた。相変らずオリーもかっけぇよ。ランタン/アローが大好きな私は彼とハルとの絆にはほろっとね。

本作のライターのジェフ・ジョーンズはマーク・ミラーあたりと並んで間違いなくこれからのアメコミを引っ張っていく人。フランク・ミラーがDKRでスーパーマンをぼこぼこにしたように、ハルがバットマンを殴り倒してるのも彼の新たなヒーロー像を作るという決意の表れと思える。
結果熱く無鉄砲な少年漫画の主人公としては共感できる好感度の高い主人公に仕上がったわけだけど、あまりヒーローとしては魅力的ではないかもしれない。でもDKR以降ミラーのバットマンの類型がスタンダードになっていた中でそれに風穴を開けたというのはかなり歓迎すべきことだし、すばらしいことだろう。もっと色んなヒーローがあっていいよね。

リバース後も話は続いていきます。それらが邦訳されるかというと、正直映画がアメリカでは大コケしたのでめちゃくちゃ不安。映画に合わせてそれ関連の邦訳というパターンが多いので続編がないと果たしてどうなるか。
皆さん今からでも映画見に行きません? もちろん邦訳されたランタンシリーズを買ってもいいです。このままだとブラッケストナイトまで行き着くかが怪しいような…。
ヴィレッジさん、よろしくお願いします! そして願わくばエメラルド・トワイライトあたりから邦訳を!
誰かまじでAKB買いしてくれないものか笑。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-21 01:48:27] [修正:2011-09-21 08:25:49] [このレビューのURL]