「ジブリ好き!」さんのページ

総レビュー数: 343レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年12月10日

小学生の最後に密かにはまった思い出の作品。
8巻まで集めるのに苦労したなぁ。5巻が地元のどこにもなくて、親に頼んでおっきい本屋で買ってきてもらって。9巻がものすごく遅く出て、10巻は1年以上待たされたかな?
何年待ってもいいから読みたい!ってね、当時はインターネットなんて使える人のがマイナーだったから、後で終了したって知って愕然とした。

優しいほんわかなムードで続いていく冒険もの。
どこか懐かしい感じがするのは、ドラクエ3にインスパイアされた作品だからでしょう。とにかくノスタルジーが半端ない淡い画と世界

レヴァリアースの続きもので、敵・味方ともに主要登場人物は決まっています。

シリアスとほんわかが混じった流れや、十六夜のノリが嫌い・苦手な人もいるだろうけど、自分はむしろそこに癒しや単なる勧善懲悪ものからの解放感を感じた。この雰囲気こそがこの作者独自の魅力。
ストーリーにはだいぶやられまして、十六夜みたいに感情がぐるぐるしてた。イリアと十六夜の過度な平和主義とジェンドの葛藤が、ほんっと郷愁感と合わせて心に染みたの。

画は幼稚な感じというか子供向けな感じで描かれていますが、そんな画に癒され、作風にも合っているので好き。

皆さん大嫌いだという方はいないし、とりあえずレヴァリアースを読んでみて作風が合えば読んでみればいいかと。レヴァリアースは今赤松先生プロデュースのWebサイトでタダで見れます。(幻想大陸もこれまた懐かしい感じのギャグ漫画で、タダで見れます。)

でも正直お薦めはできない、未完で作者もTwitterでもう描けないって言い出すし。
8巻以降の未完となる展開は、正直作者の手にも余ったように感じる。

お気に入りは、唐突な入りでシリアスな6巻とノスタルジックな原野風景とイリアの軽業が見所の7巻
大人が古本屋で立ち読みできる感じの画じゃないので、買うしかないよ!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-12-22 02:39:00] [修正:2011-09-12 01:38:24] [このレビューのURL]

「空想科学読本」の柳田理科雄が立案し、カサハラテツローが描いた物語は、3巻途中まではよくあるRPG風の冒険活劇だったのに、最後の最後でとてつもないSFへ変わりゆく…

周りを壁に囲まれ、外界から流れ落ちる滝の底にある村。
その村を少女ミロが飛び出すところから始まるというのは、もはや王道ですかね。壁に囲まれ雪に埋もれゆく「きみのカケラ」、周りを滝が流れゆく「僕と君の間に」、いずれも外界と断絶された井の中から大海へ旅立つという、最高にわくわくする導入なんです。
冒険パートはジブリ的という意見が多いですが、柳田科学全開の世界にファンタジーはありません。
機械仕掛けの物理仕込み、ラピュタやナウシカ感もありますが、スチームボーイなんか近いんじゃないでしょうか。

冒険の中で少しずつ世界の謎に近付き、最後一気に収束していく様は本当に素晴らしい。
閉鎖された村から世界へ、そしてさらにスケールを広げ迎える結末。
無駄なく、破綻なく、そして、味わい深く。。

惜しむらくは冒険パートのブツ切れ、あの二行に一体どんな事情があったのか…

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-12 01:05:17] [修正:2011-09-12 01:05:17] [このレビューのURL]

悠久なる時を旅する、魔性なるバンパネラ達の物語


作品そのものから漂ってくる気品さ。
漫画に階級があれば間違いなくこの作品は貴族の地位。
キャラ達が、雰囲気が、構成が、圧倒的で絶対的な気高さを誇っている。
我々がこの作品に評価を下すというより、むしろこの作品が読み手の品格を試しているように感じてしまう…

萩尾望都が若くして生みだしたこの作品は、間違いなくある種の傑作である。先生曰く、この作品は(主に女性)キャラに様々な時代の「衣装」を着せたくて作った作品だそうで。それだけのきっかけでこれほどの作品を生み出すとは…。
損なこの作品、別段度肝を抜かれるような展開があるわけでもないが、この作品が持つ「雰囲気」はもはや他の漫画とは比べ物にならない強大なインパクトをもっている。この有無を言わせぬ絶対的な雰囲気が、多くの漫画家・作家だけでなく映画・演劇界にも影響を与えたというのも納得。
ただ、自分程度の品格では、この濃すぎる作品に慣れるまでだいぶ時間がかかり、軽い気持ちでは読み進められなかった。

竹宮先生の「地球へ…」とともに少年愛を描いたこの作品は、少女漫画の歴史を変えたとまで言われる。それは間違いないと思うが、少女向けと思って手を出さない方が良い。
主人公が少年である二つの作品は、かたや宇宙を、かたや時間を旅する物語だ。
広大な宇宙を舞台とする「地球へ…」は夢見る子供たちへ、悠久なる時間の流れを耽美に描いた「ポーの一族」は長い人生経験を経た大人の方が味わえるだろう。

不老だが不死ではないバンパネラは、ただ生活をしているだけでも、吸血鬼というだけで命を狙われる。
優美な生活を送っているかのように見える彼らバンパネラの生活は、常に死と隣り合わせの血にまみれたものなのだ。しかし、優雅さと残酷さが奏でるハーモニーは、あまりにも透きとおっていて美しい。

エドガー達バンパネラが悠久の時を旅するこの作品。この作品自体も、萩尾望都が命を吹き込んだ瞬間からバンパネラと化し、何世代にも渡る人々の中を旅し、読み継がれていくのだろう。
『「不朽」の名作』の名の下に…。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-11 02:31:16] [修正:2011-07-04 02:05:02] [このレビューのURL]

9点 銭ゲバ

「ザ・ムーン」や「アシュラ」など、作者の作品には過度にダークでえぐいものが多いが、そこには少なからず真理が描かれていると思う。表現的にも内容的にも問題ないとは言えないけれど、果たして人間の汚い部分、さながらコンプレックスや性悪さに目をつむって生きていくことが本当に良いことなのか。

過程もラストも、あまりに残酷でダークで、悪であり、しかし正義と呼べなくもない、倫理観をぶち壊されるような作品を、結論を、読者にぶつけてくる。これが人間なのだろうか?これが真実なのだろうか?

「ザ・ムーン」が「力こそ正義だ」という真理を提示した作品ならば、
「銭ゲバ」は「金こそ正義だ」と悟った作品だ

…と思ったが、あのラストは、考えようによっては全く逆の結論を提示したとも言えるのかもしれない。


銭ゲバ

それは金こそがこの世の全てだと悟り、罪を重ね金を集め、ほしいもの全てを手に入れた男の話

己の過去もコンプレックスも金で補ってみせた男の話

そして

誰にもその心を支配させることなく、また、支配させても良いと思える心に出会えなかった、哀れな、いや、それ故に自らの正しさを証明し、人生に勝利した男の話である。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-04 12:37:15] [修正:2011-05-25 00:55:31] [このレビューのURL]

メガミックスからの続きもの。
有賀ロックマンはポケモン漫画で言うポケスぺの地位にあると思ってます。
自他共に認めるロックマンオタクである先生によるオリジナル展開だけど、ネタや終わり方、一つ一つが全てロックマンシリーズに繋がっているのが流石。

有賀先生の「ロックマン愛」で溢れた世界はもうゲームファンなら垂涎もの。ワイリーロボ1体1体にしっかり命が吹き込まれていて、みんな良い味出してます。
ロックはもちろん、カットマンやシャドーマンも最高!
でも何より凄いのはワイリー愛。
もうライト博士もコサック博士も脇役扱い、ロックさえも喰っちゃってるんじゃないだろうか?

少年漫画全開な熱い展開、重い葛藤、このクオリティなのにこの話が単行本化され完結するまで実に10年以上。やはり児童向け雑誌には合わなかったのだろうか。
連載されても打ち切られるわ、単行本出ないわ、ほんと漫画界って商業主義で厳しい。
その分、当時から待ちに待ってようやく味わえたクライマックスには感動です。復刊ドットコム、本当に良い制度ができたものです。

もう大好きです、有賀ワールド。
特に画なんて好みです、10年で更にうまくなってて最高ス。
ロールちゃん、かわいすぎっすよ…

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-02 01:37:42] [修正:2010-12-02 01:37:42] [このレビューのURL]

電波でオカルトなんだけど、読み進めていくと、輪廻転生って設定をこれほどうまく使えた作品って他にないんじゃないかなって思ってしまいました。
内輪なようで地球を巡る壮大なスケール
長いようで無駄のないストーリー展開
はっきりと、面白いです。

少女漫画って、少年漫画と違って敵役を絶対悪として描かないことが多いように思えます。敵も味方もみんな救ってみんなで成長、すると自然と捨てキャラなんてものはなくなり、登場する全てのキャラクターに魅力が生まれるんですね(もちろん、全員がハッピーエンドなわけではないけれども)。

京都でのバトルシーンも迫力あったし、紫苑の回想以降はぐんぐん引き込まれて、最後その紫苑の回想を木蓮視点でやった日にはもうお見事の一言。
目まぐるしく変化する心理、各人によって異なる受け取り方・捉え方、それによるすれ違いがしっかり描かれてます。
設定こそ現実離れしてますが、描かれる心情は超リアル。
はっきりと、一級品の心理・恋愛描写です。

ストーリーは、一切の破綻もなくきれい過ぎるほどにまとまっていて、恐らく作者の初期構想の賜物だと思います。様々なパロが出てくるのも作者の遊び心。
でもキャラは、この作品を傑作たらしめた最大の要因であろうキャラは、作者コメを見ても、間違いなく「キャラが勝手に動いて話を作ってくれた」タイプです。
はっきりと、この作品では作者に漫画の神様が降りてきています。

最後に余談となりますが、この漫画がヒットした連載時、前世や生まれ変わりを信じた自殺願望ともとれるファンレターが作者のもとへ何通も届いたそうです。それに対する作者の返事は、作中のテーマにもなってゆくこの一言。

「人は何も死ななくても、その人生の中で何度でも生まれ変われる」


オススメの名作です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-21 16:19:44] [修正:2010-11-21 16:19:44] [このレビューのURL]

宇宙規模だけあって、世界観は壮大だけど、テーマは「差別」という比較的身近なもの。

本編はミュウサイドで話が始まるが、途中人間サイドに切り替わり、以降ミュウサイドと人間サイドの両視点で話が進む。
この両視点がキースとジョミーの各々の正義を貫かんとする態度や葛藤を効果的に見せていて、非常に善悪について考えさせられる作品です。
人間側の残酷な攻撃、争いを好まないながらも一度攻めに転じれば強すぎるミュウ達、どちらも、善にも悪にも見えます。
この善悪という概念はこの作品のもう一つのテーマだと思います。差別は人間からミュウに対して一方的に行われている。多数派の人間が少数のミュウを差別する。差別とは一方向的なので、一歩間違えれば人間側が善、ミュウ側が悪、といった構図さえできそう。勧善懲悪を是とし、敵=悪であることが美徳とされゆく風潮を最初に壊した漫画を描いたのが手塚治虫先生(アトムなど)で、続いて石ノ森先生、そして女性作家として竹宮先生がその後を継いでくれた漫画家だと思っています。

3巻と、すぐに読めそうなのに、テンポはバタバタと進む感じではないです。
しかしラストは怒涛の展開で、流れるように話が進み、善悪を超えた激動のフィナーレを迎えます。
ミュウ側、人間側、どちらにも感情移入できますが、最後の後日談では、人間とミュウが歩み寄ってる印象を受けます。

少女漫画な画、SFというジャンル。苦手な人も多そうですが、読みやすく繊細な画とSFに偏り過ぎないように配慮された人間ドラマは魅力ですよ。
短い中に多くのメッセージが詰まっている名作。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-01-02 03:39:51] [修正:2010-09-14 00:59:18] [このレビューのURL]

9点 BASARA

(2010年7月、読了につき全改変)

名シーン・名台詞がこれでもかと詰まった作品であるから、感動シーンも当然多い。
四道・錵山の最期、朱里と更紗の対面、大仏内で朱里が更紗の手を引くシーン、晒される太郎、そして揚羽…
幾多とある感動場面の中でも、自分は朱里と柊の決闘のシーンでグッときた。
初めから引きこまれっ放しだったが、中盤少し敵が間抜けすぎかなぁと失速しかけていた時、この22巻の対決場面で猛烈に感動。些細なことはもうどうでも良くなった。

最強の暗殺者・柊との一瞬の斬り合い。
たった一太刀で決着がついたこの場面の、何が自分を熱くさせたのか?


スターウォーズという映画がある。
ご存じ、フォースやライトセイバーを利用した、男なら熱くならずにはいられないバトルが魅力の映画だ。個人的には、ネタが銀河鉄道999のパクリだという論に同調しているので、大好きとは言い難いのだが、それでも壮大なストーリーや世界観、そして何よりボス級の敵とのアクションシーンは心躍る。
ライトセイバーで何度も何度も斬り結び、長い時間たっぷりと手に汗握る決闘が繰り広げられる。そう、長い間…
少年漫画の多くもそうで、ラスボスともなれば1回や2回でバトルは終わらない。本当に長いこと激戦を繰り広げる。

それに対してどうだろう、最強の敵・柊とは、たったの一太刀で勝負がつく。バトルが主体ではないとは言え、例えばナウシカだって土鬼皇帝との対決で何度か切り結んでいる。それに比べてこちらはただの一瞬、はたしてスターウォーズ以上の魅力はあるのだろうか?

山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」という映画がある。
そのクライマックスシーンで、武士の二人が斬り合う場面がある。
斬り合うと言っても、何度も刀を交えるわけではない。お互い、張りつめた空気の中、間だけを測って動きあう。
そう何度も無意味に刀を振ったりしない。それが命取りになると知っているから。
派手な斬り合いのシーンなんて一つもない。一度でも切られれば致命傷になる。家の中をひたすら動き回り、相手と自分の間合いを測り合い、一瞬の隙を狙う。剣道の有段者の闘いが、動いた一瞬で決着がつくように、一度刀が振りかざされればどちらかが死ぬことを知っている。
その緊張感たるや、見ているこちらにとっても凄まじい。

北野武監督の「座頭市」で、終盤の用心棒とたけしの居合抜きでの決闘のシーン。
目の見えないたけしが構えたのを見て、凄腕の用心棒がより早く抜ける構えをとる。
そこで勝利を確信した用心棒は、思わず笑みを漏らしてしまい…結果、素早く構えを取り直し斬りかかったたけしに敗れる。
ここにも、構えから始まる一太刀の中に、命をかけたやり取りがある。熱い。この一瞬の刹那の中に、互いの想いが、人生が、輝いて消える。そんな様が、何よりも熱い。

西洋の騎士は盾と剣を持つ。盾は相手の攻撃を防ぐためにあり、更には鎧も着る。勝負が一瞬で、一撃で決するより、何度も討ち合う中で決着が付くのだろう。
しかし、日本の武士は、侍は防具一切なくただ刀だけを持つ。
彼らの闘いには、最初から2撃目などないのだ。

一瞬で決まる勝負。
そこにはなんの派手さも、何度も混じり合う剣が奏でる音もない。
沈黙の空気。そして内に秘められた静かで熱い闘志があるのみ。
自分はこんな戦いが好きだ。
スターウォーズのような派手さよりも、少年漫画のような長い長い決闘よりも、この一瞬で輝いて消えゆく戦いが好きだ。何よりも手に汗握り、何よりも熱くさせてくれる。

朱里は鎧を纏っていたからどんな戦いになるか心配だったが、田村由美先生が選んだラストバトルは、ジパング伝説の名にふさわしい、一撃決着の斬り合いだった。一太刀の中の、ほんのわずかな動きも漏らさず描かれていた。
心が燃えるようだった。
その斬り合いにも、その一瞬に込められた朱里の、柊の、今帰仁の想いにも、感動した。浅葱の叫びも心に染みわたり、目頭が熱くなるのを止められなかった…


この漫画は、少年漫画を超えたスケールで描かれた少女漫画として認識されている。別に宇宙どころか外国とも少ししか関わらないけれど、日本全国端から端まで一つ一つに地域にまで及んで描かれた作品はこの漫画以外に私は知らない。だから確かに、少年漫画以上のスケールを持っているのは確かだろう。
しかし、自分にとっては、少年漫画を越えた部分はスケールだけではない。
この熱さ、戦い、想い!
志半ばで散る者、生きて苦しみもがく者、その全てを包み込んでの大団円!
いつまでも色褪せない名作、ここにあり!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-05-25 01:46:51] [修正:2010-07-07 02:15:57] [このレビューのURL]

石化して死を招く怪病・メデューサから始まる、地獄の古城脱出活劇!


中学でたまたま手にして以来、もう何度読み返したかわからないくらい大好きな思い出作品。「古城」を「脱出」するサバイバル・パニックだなんて、俺好みもいいとこ♪
パニック系特有の登場人物達の狼狽・疑心・不安、そして必死に状況打開を目指して進んいき、次第に全貌が分かってくる感覚。たまりません!


作者が言ってる通り、「低予算のハリウッド映画」って雰囲気です。いわゆるB級映画のノリなんですが、そう銘打つことで、誰でも安心して楽しめるし、ラストのご都合主義さえも「アリ」にしてしまうわけです。何よりノリやバトルこそB級感あふれていますが、この作品最大の魅力は「ミステリー」要素!

そう、ラストのどんでん返しが凄いのです!

散りばめられた伏線が、じわじわと回収されていき、終盤に真の敵・ゼウスから真実が明かされます。それだけでも十分なミステリー要素なのですが、圧巻なのは、ラストにカスミがドでかい怪物に突っ込んで知る姉妹間の秘密、隠された真実。世界観が一気にひっくり返ります。

ゲームのメタルギアシリーズに似たどんでん返し。ただ、MGSほど事実が2転3転するわけではないし、伏線も少ないのが残念。その代わり、ひっくり返り具合は凄いですよ!


全6巻という読みやすい巻数も絶妙!テンポがめちゃめちゃ良く、スピーディで無駄がない。加えて僕にジャケ買いさせた画力の高さ!また、作者はアニメ「Darker than Black」のデザイン担当者です。そのデザイン力&画力で描かれるモンスターや古城の雰囲気は、もう素晴らしいの一言!完成度の高い一品です。

世界がどうなっているかは明かされず、古城で始まり古城で終わります。そんなところもB級映画さながらですが、世界編をやって巻数が増え、また読者の期待値だけが高まっていってしまうよりは、良い終わらせ方だったかと。あの長さだったからこそ、ミステリーも前面に出てくるわけだし。
しかし、そんなこと以上に、あそこで終わらせたことには作者の意図を感じます。(詳細は以下)

今月映画化された話題作、ぜひ1度、いや2度3度とご賞味あれ!


(以下、ネタバレあり)
メデューサは、トラウマなどの強い思いにより、想像を具現化する力があります。作中では主にいばらやモンスターなどの有機物が具現化され物質化してましたが、終盤のモンスターが武器を生成していることから、無機物もできそうです。そうすると、古城という世界が現実か否か、最初から存在したものなのかどうかも怪しくなってきます。
加えて記憶をもった人も生み出せる。自我や自己の実在性も不確かなものなのです。
オマケで描かれた映画のカットのような世界や、監督のメデューサは、そうしたことを暗に示していると思います。つまり、世界がどうなっているか以前に、古城自体が世界なのかもしれないし、古城なんてものは世界のどこにもなかったかもしれないわけです。
あまりうまく言えませんでしたが、作者自身、世界を描くことの意味を感じていないことが、オマケ漫画から伝わってきました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-08 01:36:05] [修正:2010-05-06 15:03:42] [このレビューのURL]

9点 火の鳥

壮大なる、「命」をめぐる物語!


古今東西、権力者から動物まで、あらゆるシチュエーションで紡がれる不老不死を巡る物語です。
不老不死の血をもつ火の鳥が全ての物語を通したキーであり、本当に多様な物語が描かれています。今も昔もそして未来も、人が求めるのはやっぱり「不老不死」だからこそ、全く状況は違うのに求めるものが同じという物語がいくつも生まれたのでしょう。

命をめぐる問答が恐ろしく深く、また説得力を帯びてます。それは、手塚先生が戦争を生き延びた数少ない漫画家の代表者だからでしょう。最近の漫画でも、戦いにおける生や死を描くものは多いですが、しょせんそれを描いてる漫画家は戦争を間接的にしか知り得ません。嘘っぱちとまでは言いませんが、その描写のリアリティや説得力において、手塚先生は一線を越えていると思います。そういう意味で、手塚先生は今の漫画家にとって、越えられない壁をもっているのだと思います。

漫画としての面白さも一級品です。
展開や見せ方が半端じゃなく多様で飽きません。
子供の頃から家に初版で大判の単行本があったので、読み耽っていた思い出作品でもあるのですが、ロビタやナメクジ帝国の話や、宇宙船で彷徨う話はものすごく怖かったです。

昔の漫画には説教くさいものが多いのですが、この漫画はそんなことはないと思います。てゆうか、これはもう説教とかいうレベルじゃないです。
説教臭さは、作者の意見の代弁者として、キャラが自分の意見を頑なに貫いたりアピールすることで、読者が押し付けられた感じになって生まれるものですが、この作品では命についてあらゆる考えをもったキャラが登場しながらも、そのほぼ全てのキャラの考えが火の鳥に一蹴されてしまうのです。
また、火の鳥自身は考えを一蹴しながらも、自分の意見を押し付けません。明確な答えを提示しない場合も多いです。
つまり、読者は物語を読みながらどの考えに共感できるかを探し求めればいいのです。物語として、各話とも火の鳥以外の主要キャラの死までが描かれていますが、きれいな死に方も志半ばな死に方も様々です。男も女も子供も老人もロボットも動物も、十人十色の生き様・死に様が魅力的で感動的なんです。

不老不死が正しいか否かということ以上に、生とはなにか?死とはなにか?を問われます。
「死」というものに恐怖を感じている方は必見!
僕も「死ぬのが怖い」とか「不老不死が欲しい!」なんて思ったりしますが、この話を読む度、大切なのは「生きる喜びを感じること」や「生き様」なんだなぁと思います。
ナメクジ帝国の話で、不老不死になった主人公が何千年と孤独に彷徨う姿を見てしまった時、「死ぬことには生きることと同様の喜びがあるのかもしれない」、なんて思ってみたり…

未完だけど、それぞれの話は基本独立なので、読む分には問題ありません。なにより、火の鳥の物語は、僕らがそこから何かを感じ取ることで完結するのだと思います。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2010-04-05 15:15:58] [修正:2010-04-11 19:39:04] [このレビューのURL]