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総レビュー数: 258レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月29日

ごく普通の男の子がコスチュームを着てヒーローになろうとするとこんな凄惨なことになってしまうのね。

いやー、本当に血みどろ。バイオレンス。
内臓とかそういうのはないからそこまでグロくはないけどなかなかにえぐい。アメリカは日本よりかなり表現規制が厳しいんじゃなかったかな?よくパス出来たなぁと思いつつ読めるのはありがたいです。

私達が生きる現代の世の中、コミックオタクの少年デイヴはこう思った。”これだけヒーローコミックがあふれているのに、なぜ誰一人本当にヒーローを目指そうとしないんだ?”
何となく分からなくもない気もする。そう思うだけならね。
しかしこのデイヴの一味違う所は、いくら現実に不満で、現実と向き合いたくなかったとしても、本当にヒーローになろうとしてしまう所だ・・・そう、キック・アスに!

デイヴに超人的な力なんてない。というかコミックオタクでスポーツをしているわけでもない彼のことだから恐らく平均的な高校生より運動能力は低いだろう。コスチュームだってブルース・ウェインのように金持ちではないからウェットスーツに自作の改造を施しただけのものだ。
そんなデイヴが街の自警団として不良やマフィアに立ち向かった時にどうなるのか、そして彼は殺し屋少女ヒット・ガールに出会って何に巻き込まれていくのか・・・という物語。

最高に刺激的で、素直に楽しめる作品。最初から最後まで興奮しっぱなしですよ。
アメコミは作家の思想性が強く出てて、しかも文字数が多いから比較的日本の漫画に比べて読むのに時間がかかる作品が多い。でもこのキック・アスはエンタメ性が強くてすごく読みやすい上に、それでいてマーク・ミラーの工夫だったり新しいヒーローものの形の模索というのは上手く表現されているからもう脱帽するしかない。さすがは現代アメコミ界希代のヒットメーカー。
そもそも冒頭から話にすごく引付けられる上にその後の展開もおもしろいんだよなぁ。やっぱり先が読めないって大事だよ。すごく楽しいしわくわくする。ヒットガール登場あたりからはもう一気にぐわぁぁーーとね。

普段あまりアメコミを読まない方にも自信を持っておすすめできる作品。
上に書いたように非常に読みやすい上に、わりと日本の漫画に近いと思うから。美少女(幼女か?)が悪人を銃や剣で殺戮するというのもそこはかとなく日本的だよなぁ。ということでヒットガールはもちろん私のお気に入り。何とも可愛くて、凄惨で、悲しきヒーロー。

しかし何気にオタクに対して相当手厳しい気がする。デイヴは結局強くなるわけでもないし、大きく成長した様子は見せない。オタクはずっとオタクで、ヒーローはずっとヒーローだ。それは当たり前だけど、何となくさびしい。

ちなみにマーク・ミラーはキック・アス2を描いているらしいです。映画の続編も決まったことだし、その公開と併せて邦訳が出てくれることを切に期待します。
ヒットガールは出るのか?、レッドミストはどうするのか?、わくわくは尽きない。

【追記】
書き忘れてたけど、映画も傑作。同じ素材でも調理によってここまで違う料理になるのかと。セットで読むとよりおもしろいのでおすすめです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-10-01 01:59:52] [修正:2011-10-09 16:09:09] [このレビューのURL]

駅から5分の町、花染町を舞台に描かれる連作短編集。色んな意味で超濃密。
やはりくらもちふさこはすげぇーよ、と思わせてくれる。いや、技巧的な意味だけではなくね。

連作短編集ということで、短編によって主役は異なる。ある短編では主役でも、他の短編では脇役だったり、脇役とも言えない端役だったり、短編によって視点と人間関係はどんどん変化する。例えば知人や友人という直接的なものから落し物を拾った程度の些細なものまで色んな形があるし、もちろん登場しないことだってある。

別にこの技法はくらもちふさこのオリジナルというわけではなくて、映画や小説、時に漫画でも同様の技法が使われているものはけっこうある。陰日向に咲くなんてまだ記憶に新しい人も多いだろう。
しかし、くらもちふさこの凄さはこの複雑な技法を完璧に使いこなしている所。短編を一つ読むと、この人はこんな感じなんだなと考える。しかし読んでいくうちに、視点が変わるうちにどんどん色んなキャラクターの印象が変わっていく。まるで万華鏡のように見る角度によって色んな人の違う面を見せてくれる。1巻、2巻、3巻、そして読み直すごとにそれはどんどん深化して、変化が止まることはない。

本当に刺激的な漫画体験。読めば読むほどにおもしろい。
くらもちふさこは別にみんなが主役、なんて言いたいわけではなくて、一人の人間を掘り下げて描くためには一つの視点では足りないと考えただけだと思う。私がイメージしたのは連立方程式の、あの2つの式で一つの点が決まる感覚。もちろん人間はそんなに単純じゃないから絶対的にこういう人だ、と決まることはない。でもその点に近づいていく感覚が楽しいのだ。

一つ一つの短編を見ても十分おもしろい。やはりくらもちふさこが描く妄想劇は気づかぬうちに引きずり込まれてしまう。共感するというかもう本当にそのキャラクターの内面に引きずり込まれる感じ。
表現技法も相変らず新しいというか、すごいわ。文字や言葉に頼らない濃密な心理描写は相も変わらず見事の一言だけど、インターネット掲示板のイメージとかおもしろいよね。

実験的なために人は選ぶかもしれないが、くらもちふさこが天才と言われる理由を肌で感じられる作品。読むとひどく疲れるくらいに。
ちなみにスピンオフの「花に染む」の連載のために現在駅から5分は休載中。セットで読むとより理解が深まると思うのでおすすめです。あちらも同じくらいおもしろいし、やっぱりくらもちふさこはすごいな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-18 01:28:47] [修正:2011-10-03 17:47:33] [このレビューのURL]

8点 Sunny

もう何かたまらんなあと思う。
どこまで進化するんだよ松本大洋。

親元で暮らせない子供達のための施設「星の子学園」。そこに生きる子供たちを描く物語。

松本大洋自身、かつてこういう施設で暮らしていたそうで、だからこそデビュー当初から温めていた作品だったらしい。でも自分の中の体験となかなか折り合いがつかなくて、ようやく40代になった今描くべき物語と感じて執筆に至ったと。
まさにこの作品は松本大洋の少年期への落とし前なのだ。

学校に来る子どもは彼らにとって2種類に分かれる。「施設の子」と「家の子」だ。施設に暮らす彼らは決して不幸ではない。施設の運営する人々は優しいし、ここではみんなが家族だ。

でも、それでも決して割り切れないものがある。家の子を認めたくなかったり、どうしても羨ましく思ってしまったり、施設にいる自分を認めたくなかったり、色んなやつの色んな思いがひしひしと伝わってくる。
彼らの思いを体現するのがSunnyだ。Sunnyとは星の子学園の敷地内にある今は使われない廃車。どうしようもなくなった時彼らはここに来る。彼らはSunnyで旅に出る。何とも切なくてたまらない夢。これこそが本当のファンタジーなのかもしれない。

ピンポン以降、松本大洋は革新的な表現技法や二つとない物語でたくさんの傑作を生み出してきた。
でもこのSunnyには装飾が全くない。松本大洋らしさはあっても平々凡々な物語。でもだからこそ松本大洋の核が見えてくる。いつも彼の作品の根底にあったのは心の奥底に訴えかけてくる力。今までにないほどそれははっきりとしていて強い力を持っている。
本当に泣ける、というのはこういうことだ。

また絵柄は少し変化した。過去の情景を思い出しているような、少しぼやけてかすれた叙情的な絵。日本の作家でここまで多彩な線やトーンに頼らない黒を突き詰めているのはこの人くらいじゃないかな。
いつまで松本大洋は進化し続けるのだろう。止まらないからこそ彼やくらもちふさこはここ数十年漫画界のトップを走ってきた。本当にすごいよ。

めちゃくちゃ切なくて愛おしい少年達、彼らはどこへ向かうのか。
松本大洋の新たなる代表作の誕生、見逃すのはもったいない。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-10-03 00:35:15] [修正:2011-10-03 01:09:54] [このレビューのURL]

うーん、これは良かった。間違いなく傑作。
アラン・ムーア作品に代表されるような海外の優れた作品は日本の漫画が1番なんて幻想をぶち壊してくれる。アランの戦争もそんな作品の一つ。日本の中だけに鎖国しているのはもったいないです。

バンドデシネ(BD、ベーデー)はフランスの漫画のことで、描かれた帯という意味。フランスの第九芸術とされ、メビウスやエンキ・ビラルは大友克洋や荒木飛呂彦を通して日本の漫画にも大きな影響を与えている。
BDは日本でもユーロマンガを皮切りに2年前くらいから地味に盛り上がっていて、例えばこのアランの戦争は国書刊行会のBDコレクションというおもしろい企画の第三弾にあたる。

アランの戦争は表題にあるようにアラン・イングラム・コープの回想録だ。誰よそれ?っとなるかもしれない。それは当たり前で、アランは有名人でも何でもなく至極普通の人だから。
タイトルを見ると誤解しそうだが、戦争駄目とかそういう作品ではない(そもそもアランは直接的な戦闘はほとんどしていない)。アランが戦争に行き、戦友や戦争で行った地域の人々と交流したり、通信兵として学校で勉強したり、戦車の掃除などの行軍中のくすっとくるエピソードがあったり、帰ってきて仕事を探したり、結婚したり、何が起こるわけでもなく時系列にそってただただアランの人生が綴られていく。
アランにとっての戦争ははだしのゲンほど悲惨なものではなかったにしろ彼の人生に確実に影響を及ぼした。彼の一生は必ずしも順調ではなかったようだ。

ここで語られる話はほとんどが大きな意味を持っていない些細なことで、別にストーリーがあるわけでもない。しかしそもそも人生で起こるほとんどのことは些細なことだし、人生にストーリーなんてないのだ。

「存在を証明する絵画を描くためには人生のどんな瞬間も思いだされる価値があると思わないかい?」アラン・イングラム・コープ

作者のエマニュエル・ギベールの仕事はすばらしい。余計な装飾なんて全くなく、ここにあるのはアランの生、それだけだ。
そして抒情的な美しい絵。何でもない風景になぜかほろっときて驚いた。この作品で彼は水彩画の技法を使っていて、これまたすごく良いのだ。youtubeにアップされているし、アランの戦争でググれば見れるはずなのでぜひ見て欲しい。井上雄彦が筆を使ったことが話題になっていたけど、世界は広い。

一人の人間の生を描いた作品としてアランの戦争は屈指の出来だろう。それをどう受け取るかは読む人が決めることだ。誰かの人生というのは他人のためにあるものではないのだから。人生は無意味の連続で、そこに価値を作るのは私達次第、つくづくそう思う。
アランは歴史的に偉人ではないかもしれないけど、とても魅力的で素敵な人だった。これからも長く読み返すだろう傑作。
ぜひアランの人生を体験してみて欲しい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-28 19:03:53] [修正:2011-09-28 22:53:22] [このレビューのURL]

岡崎京子が描く少し不思議な世界で繰り広げられるラブストーリー。

このSF的世界観が独特すぎるあまり、最初読んだ時は消化不良感が残りまくりであまり楽しめなかった。ラブストーリーにこんな風変わりな装飾がされているんだから何かしらの寓意があるんだろう、何なんだ?とそっちの方に思考が行ってしまったわけ。

でもそうではなかった。
作者は恐らくただただ美しい物語を書きたかっただけなのだ。

うたかたの日々は2組のカップルの恋の物語だ。
ネタバレは避けるが、ストーリーだけ書き出してもすごく安っぽい話にしかならない。それこそあの「世界の中心で愛を叫ぶ」みたいな。
でもこれは美しくしようという気概が違う。
悲恋とか悲劇っていうのはそれだけでも美しい。でもどうせなら現実世界よりお洒落でファンタジックな街の方が、どうせなら白血病より肺に睡蓮が根付く奇病の方が、どうせならetc…。
この涙ぐましいまでの努力笑。
いや、でも冗談じゃなくてすごいです。普遍的なラブストーリーをこうまで美しく創り直せるのかと。しかも嘘っぽく安っぽくならないように考え抜かれている。

岡崎京子の絵もすばらしい。この作品では原作つきだからか絵のタッチは抑えられ、軽やかで優雅な世界に仕上がっている。一つ一つの絵を見ても普通なのにまとめて見るとこうまで美しいのは何故だろう。

うたかたの日々はポリス・ヴィアンと岡崎京子の美の結晶だ。
酔える人にはたまらない作品だと思うし、珍しく気軽に楽しめる岡崎京子作品でもある。紛れもなくこれも岡崎京子の傑作の一つ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-05 00:52:19] [修正:2011-09-06 01:48:15] [このレビューのURL]

ヘルタースケルター。

つくづく秀逸なタイトルだと思う。
りりこがすべり台に乗って一直線へ破滅へ向かっていく様、その混沌、そして発表後に世間に衝撃を与えたという点でもこの作品を上手く表したタイトルと言える。

本作はりりこが煩悶の末に虎になるまでを描いた作品ではない。
本作はりりこが煩悶の末に内から生まれた虎に食い殺されるまでを描いた作品だ。

破滅が目に見えていてもそこに向かって疾走していくりりこ。
女性的な価値観への風刺、りりこと対照的な存在の吉川こずえ、全てがりりこの花火のような鮮烈さを際立たせる。

正直私はこの作品があまり好きではない。岡崎京子のすさまじい才能が、表現力がほとばしりすぎていて物語に乗り切れないのだ。才能をコントロールできていない、あるいはしていないのかもしれない。

ヘルタースケルターを分類するとしたら悲劇だろう。でもそこに悲壮感はあっても絶望はない。この作品はそれでも生きろと背中を押す、いや強烈にぶん殴ってくれる作品だから。
重松清の「疾走」と同じくらい”ひとり”でも、ヘルタースケルターはあくまで前向きだ。

吉川こずえは最終話でこう言う。「あ、”ヘルター・スケルター”じゃん。この曲大好き。」
何てことはない。私もりりこに魅かれていたんだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-04 18:02:01] [修正:2011-09-06 01:43:39] [このレビューのURL]

「駅から5分」の登場人物、生徒会長こと圓城陽大を花乃の視点から描く駅から5分のスピンオフ作品。

駅5はオムニバス形式の作品ながらも陽大が明らかに一際違う存在感を放っていることが気になっていた読者も多いでしょう。駅5で雛が言っていた「彼は史上最悪の良い子ですから」の意味や陽大の雛に対する微妙な関係性、神社で倒れた男性の「決まった人がいると思ったんだだけどな」という雛に対する台詞など色んな伏線の意味、陽大と雛の過去が花に染むでは語られていきます。

相も変わらずくらもち先生の進化は止まりません。元々行間を読ませて心情の機微を表現するのが得意な方ですが、こんなにミステリアスなおもしろさのある作品を書けるとは。陽大の真意、雛の思惑はどこにあるのか。何気ないような台詞、表情まで見逃せず、とことん考えないと分からない。タイプは全く違いますが、BLAME!と並んで知的好奇心をびんびんに煽ってくる作品です。
恐らく最初読んだ時は陽大と誰がくっつくのか気になるかと思います。しかし読み込んでいくと花に染むの真のおもしろさはそこにはないことを気づくはず。別にくっつかなくてもいいし。
絵も駅5から少し変化しました。弓道の場面は必見。弓をひく時のそこだけ切り取られたかのような静謐さ、そして矢が空気を切り裂いて勢いよく的に突き刺さる。見入ってしまうほど美しい。

この人ほど作品ごと、時代ごとに作風が異なる人を私は松本大洋くらいしか知りません。それほど完成という言葉から遠く、常に実験的な姿勢を維持し続けている人です。だからこそこれだけ長い間評価され続け、最先端に立ち続けているのでしょう。

これ単体でも十分読めますが、駅から5分と併せて読むと120%楽しめます。ローラはもちろん、ちょこちょこ駅5のキャラが登場しますし、また視点が違って興味深いです。雛なんてもう別人ですよ。
作中で説明されるのではなく、自分で作品から読み取って考えるからこそピースがはまっていくこの感じ、中毒性のあるおもしろさがあります。スピンオフの上にその独特の作風から敷居は高いかもしれませんが読まないでいるのはもったいないです。ぜひぜひどうぞ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-18 00:34:43] [修正:2011-08-18 01:43:17] [このレビューのURL]

その名の通り、中央アジアの「若い嫁さん」、「美しい嫁さん」についての話。

1巻と2巻では12歳のカルルクに20歳のアミルが嫁ぎ、絆を深め合っていく話が主に描かれている。年の差や実家とのトラブルなど多少の弊害はありつつも順調に他人から夫婦へとなっていくのは派手じゃないですがほのぼのして良いですね。エマみたいに世間の常識や身分の差を乗り越えて良くも悪くも周りを巻き込む激しい恋愛とは真逆で、あくまでも当時の中央アジアの常識に則した恋愛を意識しているような感じ。
前作と同様恋愛に主軸が置かれてはいますが、エマを読んで疲れた人にはこちらの方をすすめときます。

また中央アジアの文化・風習を紹介してくれる漫画でもあって、皆さんが仰るように森先生の愛に満ち溢れた絵を楽しむことが出来る。刺繍・彫刻・民族料理と、好き好き好きと言うようなもはや引いちゃうくらいのクオリティは見る価値ありです。異なる風習・考えを正確に調べて描くのは難しいと思うのだが、風俗描写は丁寧に調べられており興味深い。説明臭くならないようスミスさんを通しての解説もうまいし、何気に細かい目線や表情まで意図してるところが多いようで何度も読み返せる。

また森さんの、現在の私達の常識で善悪を判断せずに一歩引いて物語を書く姿勢がかなり好印象。父権制度が分かりやすい例だと思いますが、今の私達からすると悪い印象のことでも当時の中央アジアでは当然あります。しかし森薫はそれを自分の、今の価値観で勝手に裁くようなことはしません。作中では当たり前のこととして描かれています。とはいえ私達からするとおかしいだろ、と思ってしまうのは致し方ないのでそこの緩衝材に私達と考えが近い外部の人間であるスミスがなっているのも巧いです。
要するに恋愛の形にしろ、風習や考え方にしろ文化や時代で異なっていても良い悪いの問題ではなくてただ違いがあるだけということなんでしょう。絵だけでなく、このように構成は細部まで驚くほどによく練られているし森さんの愛ゆえかの気遣いがみてとれます。

三巻で気づいた方も多いでしょうが、副題を良く見るとThe Bride’s Storiesとなっています。そう、これはアミル達を中心としつつも様々な乙嫁たちの話になるのだろう。

最後に…パリヤさんが結婚できるのを祈っています。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-06-25 22:59:30] [修正:2011-08-13 23:53:57] [このレビューのURL]

「トライガン」の内藤泰弘が描くSFアクション。

一晩で崩壊、再構築されたかつてニューヨークだった場所。そこは異界と現世が交わる魔都、ヘルサレムズ・ロットという都市に変貌していた。この人智を超えた都市で、秘密結社「ライブラ」の面々が世界の均衡を守るために奮闘するお話。

前作トライガンは様々な街を旅するロードムービーだった。今作血界戦線はバットマンにおけるゴッサムシティのように、一つの都市HLの中で起こる事件を描いている。
内藤先生の好きなものを詰め込んだ箱庭的な作品らしい。内藤先生の「かっこいい」は私の中の「かっこいい」と言っていいくらい好みの世界観。アクションだったり人物の造形だったり技を叫んで殴る所だったり色んな部分が最高にシビれます。
トライガンでシリアスになりすぎたからなのか「軽さ」を選んだそうだが、そのやり方は狂ってます。何といっても1巻から「征け! まず手始めに世界を救うのだ!」ですから。毎回のように人が大量に死に、世界が危険にさらされていくうちに無くなっていく緊張感。そして生まれる「軽さ」。何このぶっ壊れたスプラッタコメディ? 凄く楽しいよ(笑)。
ライブラの面々も揃って魅力的。リーダーのクラウスは可愛くもありずば抜けてかっこよくもあるという奇跡的な存在だし、レオとザップのでこぼこコンビは笑えるくらいくだらないし、メンバーが多くて語りきれないのが残念です。ちなみに私はチェインに惚れました。モデルの真木よう子が好きってのもあるけどビジュアルから性格まで好みすぎて困る。私だったら手を踏みにじられてもいいですw。

多分好みがあう人ならだだはまりする作品。とりあえずトライガンが好きだった人は絶対読みましょう。トライガンとは色々と毛色が違う作品ですが、私は大好きです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-08 01:11:35] [修正:2011-08-10 00:52:43] [このレビューのURL]

8点 NOiSE

BLAME世界の数千年前と「災厄」の発端が描かれる。BLAMEの前日譚。

これを読めばBLAMEの世界観に対する理解がかなり進む。しかしそれだけじゃない。単体としてもすさまじい。
スピード感にあふれるストーリー展開。ほらほら分かるやつだけ見ろよ、分からないなら見んなと言わんばかりの硬派なSFです。SF好きにしか絶対薦められないけど好きなやつは絶対好き。
相変わらずの巨大建造物のド迫力と退廃的な世界は健在。知らない世界に連れて行かれるような酩酊感に浸れます。
意味が分からないと思われる部分が多いかもしれませんが、大方のストーリーは必死に考えれば分かります。無論分からない所も多いですが。

知的好奇心をびんびんに煽るこの作品、たまりません。もはやSF好きにはBLAMEとセットで聖書です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-08-08 16:56:20] [修正:2011-08-08 16:58:24] [このレビューのURL]