「ITSUKI」さんのページ

サンデー連載中は読んでなかったのに完結してから評判がよさげだったので買ってしまいました。
前作である「道士郎でござる」と比べると、笑いの最大瞬間風速では道士郎の方が上。
でも全体的な構成のうまさとか、キャラクターの立ち位置の良さはこっちの「お茶にごす。」の方が好きです。
主人公がケンカ最強なのは相変わらず。でも今回の主人公は妙にピュアです。

「優しさって、何だろう?」という事を11巻通じて悩みぬきます。この作品のテーマともいえるでしょう。
誰かを助ける、とか道士郎と同じ路線に走りそうになってちょっとヒヤっとしましたが。
それを描いていくうえで作者が選んだ舞台が茶道部っていうのが凄い発想だと思いました。だってどうみても不良なヤツなのに。
11巻での主人公マーくんが新入生にお茶を出すシーンには、成長にちょっと感動。

この作品の好きな所はキャラクター構成です。
周りから恐れられる不良だけど、根は優しく天然である主人公・マーくん。
その相棒でありちょっと軽いヤツにみられがちだが、実はマーくんよりケンカっぱやい山田。
茶道部の部長であり、礼儀正しく、心やさしく、気丈で、マーくん達を茶道部に入部させた張本人である姉崎さん。(もっぱら部長って呼ばれるから違和感が・・笑)
マーくんは部長に恋する訳なので、このメンツだけでも話は構成しようと思えばできるんです。
部長の大和撫子な魅力は一巻を読むだけでもわかるはず。完璧なヒロイン像です。
しかし、この3人の他に重要なメインキャラクターとして、夏帆がいます。
船橋達と同じ学年・同じ茶道部で、気が強く曲がったことは許せない性格な彼女は船橋にガンガンモノを言っていける数少ないキャラであり、この立ち位置で存在感を発揮するキャラクターっていうのが今までの西森作品にはいなかったなと思います。
夏帆もまた、頑固な性格の為「部長の様に優しい人間になりたい」と思っていて、のちに船橋を理解し、支える様な存在となります。
第二の主人公の様でもあり、第二のヒロインの様でもあり。面白いキャラでした。

「部長の笑顔がみたい」というマーくんの願い、他人を部長と見間違えて思わず心が揺れて動揺するマーくん、夏帆の喝、最後の見開きへの構成は見事。でももうちょい余韻があっても良かったなと思いました。

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[投稿:2010-02-28 23:22:06] [修正:2010-02-28 23:22:06]

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