「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

River's Edge

「あたし達は何かを隠すためにお喋りをしてた」
「ずっと  何かを言わないですますために」
何かを隠すために人を傷つけ
何かを隠すために人を求める

完璧に1ミリの狂いもなく真っ直ぐ生きている人なんていない
みんな多かれ少なかれ必ずどこかズレている

誰がおかしいわけでもない  誰が悪いわけでもない
みんな少しずつズレているだけ

そのズレが偶発的に絡まり合って大きくなったとき、事件は起こる
でもそれは特別なことではない
現実なんてただそんなものなのだ

もう二度と交わることがないかもしれない直線
でも確かに彼らは出逢った
あの河のほとりで
河口にほど近く、広くゆっくりよどみ、臭い、 でも確かに海の匂いがする、あの河のほとりで

River's Edge
 

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-09 21:12:25] [修正:2010-06-09 21:14:41] [このレビューのURL]

旨いもん喰ってるときが何より幸せ。
そんな方々へ贈るハートフル……もとい、満腹ストーリー。

フィクションとのことですが、エッセイとも思えてしまうぐらいにリアリティがあって完成度が高いです。
巷の食マンガを席巻している、味を言葉で表そうとする例のこねくり回した表現も、この作品では不要。
表現はとにかくストレート。

「魚介の旨味が!! うまいっしょ!? うまいっしょ!?」
「(うなぎが)あんまり甘くなくって もーとにかくふんわりでおーいしーいーー!!」
「なんじゃこの上ハラミ!! 脂のうまみと肉汁がかむとジュワーッと!!」

読んでいて腹が何度も鳴りました。すごく旨そう。楽しそう。

食事の楽しさっていうのは食べる楽しさだけでなく、誰かと時間を共有し、喜びを分かち合う楽しさも
とても重要だと思います。
この作品では何よりそれが大切にされていて、とても良い感じ。
会話が楽しい。雰囲気が楽しい。だから食事が楽しい。
タイトルとは裏腹に、食事に対する愛がたっぷり感じられる作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-09 21:01:52] [修正:2010-06-09 21:01:52] [このレビューのURL]

民主主義はもういらない あなたのための全体主義

国民クイズは、国政にあなたの意見を反映させる唯一の手段。
優勝者の望みは国策となり、日本国政府がその威信をかけて叶えさせる。
どんな願いでも構わない。だって勝者は絶対だから。

国民クイズの司会を務めるK井K一は、国民を熱狂させ、支持率98%を誇る、言わば国民的スター。
輝かしいポジションにある彼だが、実はクイズの敗者であり、強制無償労働で司会をさせられていた。
司会をしていないときは拘束着を付けさせられ、独房に収容される日々。
そんな彼の本心は、彼にしかわからない。

この作品がマンネリ化に陥りそうな感じになってきたとき、話が大きく動く。
反国民クイズ体制派が他国と共謀し、革命を企てる。
K井K一の別れた妻、そして残された娘を巻き込んで……。
日本は、国民は、どこに向かって動いていくのか。どこに向かえばいいのか。

とにかく単純明快な作品です。でも扱っているテーマははもの凄く深いです。
ぶっ飛んだ設定。妙なテンション。パワフルで、ストレートで、強烈なメッセージ性。名言たっぷり。
当時(あくまでも90年代初頭)の日本や世界情勢を皮肉った、でも現在にも通用する展開。
打ち切りになってしまったらしく、後半がドタバタで駆け足だったのが残念。
名作になり得ただけに何とももったいないです。
それも含め、人によって評価が大きく分かれるかもしれませんね。
個人的にはこんな時世だからこそ読みたい作品だと思います。 怪作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-07 21:00:21] [修正:2010-06-07 21:33:00] [このレビューのURL]

死後一定時間内に取り出した無傷の脳をスキャナにかけると、
生前に見た過去数年分のすべての眼の記憶をスクリーンに再現できる。
その技術を凶悪犯罪の捜査に駆使し、事件を解決していく、というオムニバス形式のサスペンス。

簡単に書くとそういうことですが、本当に恐ろしい話です。プライバシーも何もあったもんじゃないです。
自分が普段どのような生活をしているのか、どういうものを眼で追っていったのか、
誰のことを見続けたのか、何を見てしまったのか…。
人間の頭の中を直接覗く行為。
秘密。どんなに隠しても逃れられない、秘密。

再現される映像は客観的な事実ではなく、あくまで主観的な眼の記憶。
自分というフィルターを通したあとで脳に焼き付けられたものが映ります。
麻薬中毒なら実際に幻覚が見えてしまうし、Aさんのことが好きなら実際よりも可愛く(格好良く)見え、
Bさんに対して強い強迫観念を抱いていれば、疑心暗鬼から周りの人がすべてBさんに見えてしまう。
そしてその映像には一切の音が無い。眼の記憶ですから。
その他諸々の技術的・倫理的・政治的制約もあり、いろいろと考えさせられてしまう深さを持ち合わせた
本当に上手い設定だと思います。

主に猟奇的な殺人事件を扱うこの作品。
連続殺人犯の頭の中も覗くわけで、その狂った世界に捜査員の精神が影響を受けない訳がない。
いま自分が見ているものは、他の人にも見えているのだろうか…。
いま頭の中にある記憶は、本当に自分自身の記憶なのだろうか…。
彼らは闇の世界、狂気の世界に引きずり込まれそうになりながらもなんとか正気を保ち、
事件解決のために奔走します。
主人公たちのそういうせめぎ合いもこの作品の見所の一つです。

ベテラン作家による綺麗でスマートな絵柄のため、決して見苦しくはないのですが
かなりエグい、グロい、重い作品です。
人体解剖なんて普通に出てきますし、大量虐殺のシーンとか、自分が惨殺されるシーンとか、
手を抜かずにしっかり描き込んであります。
「羊たちの沈黙」や「セブン」(っていう昔の映画です)なんかが苦手な人にはお薦めできないかも。
物語が単なるハッピーエンドで終わらず、時に残酷で、もどかしく、やるせなく。
それでも、息を呑むほどにとにかく面白い。良作です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-05-09 22:38:37] [修正:2010-05-09 22:41:04] [このレビューのURL]

少女漫画における最高傑作との呼び声も高い古典的超名作。

永遠であるがゆえの孤独。少年であり続けるがゆえの儚さ。
愛する人を失った喪失感までも永遠に持ち続けなければならない辛さ。
永遠の時を生きる運命を背負わされた悲しみを描いた、繊細で優美な物語です。

ある意味一つの芸術品とも言える完成度を誇り、この作品自体に人を寄せ付けないような
圧倒的な雰囲気があるため、誰にでも親しみやすい作品ではないことも確か。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-29 22:28:23] [修正:2010-04-29 22:28:23] [このレビューのURL]

主人公は祖父譲りの強い霊感を持ち、霊的なトラブルによく巻き込まれますが、
彼は退魔などを専門としていない一般人であり、基本的にはただ「見える」だけ。
妖怪や霊の類と戦ったり、逆に仲良くなったりするのではなく、
あくまでも畏怖の対象として描かれている点が良いです。

伏線が効果的に張られたミステリー仕立てのストーリーと、繊細で艶やかなタッチの幻想的な絵柄。
作品の雰囲気は、時にシリアスに、時にコミカルに、時にほのぼのと。
しかしその裏側には、気を抜けば引きずり込まれる恐怖が常に存在しており、
生と死が隣り合わせで身近にあることを感じされてくれます。

和の美しさ。迷信の怖さ。伝統の大切さ。そして人の思いの強さ。
恐ろしい話も、心温まる話も、考えさせられるような話もあり、
読むごとにじわじわとその面白さが伝わってくる良作です。
ちょっと読んだだけではこの作品の良さが伝わりにくいのが残念。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-03-28 17:29:52] [修正:2010-03-28 18:15:36] [このレビューのURL]

キャプテン翼の次に長く続き、キャプテン翼の次に売れたサッカー漫画。

自分と年齢の近いサッカー経験者なら、「必ず」と言ってもいいほど
ヒールリフトやクライフターンを練習したことがあるはず。
うちのチームなんか皆で真剣にフラッシュパスの練習をやってました(もちろん遊びで)。
かく言う自分も、試合中にダブルヒールを試みて監督にかなり怒られました。

そんなこんなで当時のサッカー小僧にかなりの影響力を及ぼしたこの作品。
この頃はサッカー漫画も今ほど多くなく、比較対象となるのがキャプテン翼やリベロの武田など。
それらに比べるとずっとちゃんとしたサッカーをやっていたのが妙に新鮮でした。
この作品の良いところは、主人公だけでなく脇役もしっかり描き、活躍の場を作ってあげていること。
それによってそれぞれの選手にかなりの思い入れができ、作品に親しみやすくなっています。
平松や神谷なんかはトシよりずっと活躍していたかもしれませんけど。

冬の静岡県予選決勝までは本当に好きでした。
その後は「困ったら最後にトシが点を獲る」パターンが横行してしまい、
試合の緊張感やワクワク感がなくなってしまったような気がします。
現実にそういう選手がいれば凄く頼りになると思いますが、
残念ながらこの作品ではどうしてもご都合主義みたいなところだけが鼻についてしまいました。
あと、アイドルとかの展開もはっきり言って全く不要でした。

当初はちょっと大人っぽくて熱い、本格志向の少年サッカー漫画でした。
この後のシリーズは、どんどん安っぽい感じになってきて、どうにも悲しい限りです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-03-15 22:19:03] [修正:2010-03-15 22:21:15] [このレビューのURL]

難しいテーマですが、不器用でドライながらも、ほのかに温かくて優しい物語です。
そういう空気を醸し出しているのはダイキチの漢っぷり。格好いいです。

第1部はダイキチ視点での子育て奮闘記、
第2部は主にりんの視点で、高校生としての等身大の思い、悩みが描かれています。

第1部の続きをもっと見てみたかったのが正直な感想です。
が、反対意見や批判が多く出ることが予測できたにもかかわらず、
敢えて新しいステップへと進んだ作者と関係者の決断には、ただただ敬意を表したいです。

第1部が面白すぎただけに、好きだった人は慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、
第2部だって捨てたものではないです。
と思っていたら、第2部もどんどん面白くなってきました。
作者が本当に描きたかったのは、もしかしたらこっちだったのかも。
年月が過ぎてもテーマは同じ。単純な恋愛ものにはしてほしくないです。

家族を持つとはどういうことか。親子とは。2人の生活は。将来は。
ダイキチは、りんは、どういう答えを出すのか。そもそも答えなんてあるのか。
温かく見守っていきたい作品です。

作者がこの作品のゴールをどこに設定しているかにもよりますが、
いつ第3部に飛ぶかわからないので、そういう意味でも目が離せない作品です。

とりあえず購読に当たって致命的な欠点があります。高い!
1冊979円(税込)はいくらなんでもやりすぎでしょ。
知らずに3冊まとめてレジに持っていったとき(2937円)は、
レジのお姉さんの打ち間違いかと本気で思いました。
確かにすごくいい紙とか使ってるんですけどね。1巻から愛蔵版みたいにしなくてもいいのに。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-03-07 21:44:23] [修正:2010-03-10 22:17:21] [このレビューのURL]

恋愛要素をあまり詰め込まず、既存の少女漫画のイメージとはちょっと違う印象。
「友情・努力・勝利」の言葉とかがよく似合いそうです。
負けて悔しい、勝ちたい、もっと強くなりたい。
そういう気持ちを前面に押し出した、爽やかさ、熱さが魅力です。

メリハリの付け方がうまくて、とても丁寧な描写ながらテンポも良く、
大ゴマの使い方が非常に効果的なので、ここぞという場面での力強さが引き立ちます。
綺麗で細やかな絵柄と共存した荒々しさ、力強さ、骨太さ。
この作品を推す人は、このギャップに惹かれるのかもしれません。
こういうところが男性にも読みやすいんでしょうね。

読んでいて面白さが熱くこみ上げてくる作品です。

ただ敢えて言うならば、登場人物が皆いい人で、毒が足りない気がします。
爽やかすぎるのもいいですが、もっと波乱があってもいいかも。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-02-25 21:55:00] [修正:2010-02-25 22:39:46] [このレビューのURL]

どんなテーマで描いていても、結局はいつもの川原漫画。
多すぎる文字、同じような登場人物、緊張感のなさ、ものすごくマイペースな作風。
合わない人は何を読んでもダメでしょうね。
でも好きな人にとってはどの作品でも外れがありません。
何の変哲もないようなストーリーに思えても、
作者の手にかかるとどうしてこんなに面白くなるんだろうと思えるぐらいに。

そんな川原作品の中で個人的に一番好きなのがこの表題作。

「夢見たものは 夢見たものは 銀のロマンティック …そしてまぶしくて まぶしくて もう何も見えない」

笑いあり、涙ありの内容が、いつも通りのほのぼのとした独特のテンポで展開されます。
コメディの中に綺麗に織り交ぜられた優しさ、爽快感、哀愁。
見事としか言いようがありませんです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-02-20 21:14:36] [修正:2010-02-20 21:16:44] [このレビューのURL]