「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

7点 恋の門

羽生生流・純文学コミック。
ある種の異質で不気味な情熱が激しく飛び交い、読者を儚くも奇妙な純愛の世界へと導く作品。

自らの作品を芸術だと信じ、周囲に理解されないことを苦悩する門。
そんな門をコスプレのパートナー、自らの人形として囲う恋乃。
それぞれのプライド、信念、打算、エゴ、虚栄心、焦り、苛立ち、それらが激しくぶつかり合って
ドロドロに絡み合いながら、激しく狂い咲く恋の物語。

個性なんていう言葉で簡単に片づけてもいいんですが、とにかくこの作者は漫画家として
目指している地点、方向性が他の漫画家とは違うように感じられます。
その辺りが合わない人にとっては何やってんだかさっぱりで、読むのも苦痛な作品かもしれません。
作者の他の作品よりはずっと大衆向けで読みやすいですが、それでも濃さと熱さが凄いです。

最初の方は、全く異質で違う世界の人たちの恋愛もの、いやむしろ恋愛ものかどうかも
よくわからない展開が続きます。 感情移入する隙すら見つからないです。
なのに二人が本音と本音でぶつかり合うようになってきてからは、なぜか不思議と
それぞれのキャラの濃さがどこか身近なものに感じられるようになってきます。
他の方のレビューにもありますが、とにかく人物の描き方がすさまじく濃いです。
恋愛の汚い部分を小綺麗に描いている漫画なんて腐るほどあると思いますが、
醜い部分までを激しく赤裸々に描いている漫画なんてそうはないんじゃないかな。

事前に思っていたよりずっと面白く読めた作品でした。
でも終盤のアレがなあ…。
本当にこの手の恋愛話って特段必要ないのにアレな展開になったりしますが、少なくともこの作品では
全く必要な展開とも思えなかったので、そこが本当に残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-10 00:33:29] [修正:2011-11-10 00:33:29] [このレビューのURL]

ちょっと旅行に行ったり学校でイベントがあったりすると周りで殺人が起こるという不幸な星の下に
生まれた高校生が、ジッチャンの名にかけて犯人を指名し、指名された人がもれなく自白するお話。

推理小説を漫画というジャンルで描き、さらには犯人当てを読者参加企画にするという手法は
当時あまりにも斬新で、数多のフォロワー作品を生み出し、その功績は計り知れません。
有名作だけに批判の声もあり、中でも特に多いのが「こいつら殺人事件に遭遇しすぎ」というもの。
それは超長期連載だけに仕方ないとは思うんですけどね。
事件に巡り会うのも名探偵の証とはよく言ったものですけど、あれだけ目の前で何十人も殺されても、
金田一はもちろん、美幸まで精神障害やPTSDに悩まされることなく平然としているのは凄いですが。

むしろそんなことより他にツッコミどころが満載のこの作品。

金田一は公式に捜査協力を依頼されたわけでもなく、単に警部や警視と個人的に仲が良いだけの
民間人なのですが、捜査に関する情報(もちろん個人情報含む)が事細やかに入ってきます。
これって警察の重大な守秘義務違反じゃないのかなと思うのですが。 本来は懲役刑の対象です。

また、覆面や包帯を顔面に巻いた人物が頻繁に登場するのも気になります。
最初は叙述トリックが使えない漫画ゆえの苦肉の策かなと思って読んでいましたが、あまりにも多すぎ。
しかもこの人たち、結構活発に活動したりして、颯爽と現れてホテルなどに泊まったりもします。
明らかに怪しいです。 殺人に関係なくいろんな意味で。 ホテル側も身分等を確かめずに泊めてたり。

でも一番納得いかないのが、金田一が勝手に捜査し始めて容疑者たちが邪魔くさがったとき、
「この少年は名探偵・金田一耕助の孫なんだよ」「な、なんですとー!?」
いやいや孫だからって関係ないでしょ。 金田一耕助本人が来てそのリアクションならわかりますが。
普通なら「ふーん、お爺ちゃん有名だね。 で?」ってなるレベルの話かと。

確かに探偵ものとしては話が破綻している部分もあるかと思います。
派手な展開を好むことで有名な現在の原作者になってからは、人を殺すためにトリックを
考えるというよりは、トリックを見せたいがために人を殺すようにしか見えなくなってきました。
犯罪芸術家とか怪盗紳士とか訳の分からん者が出てくるようにもなり(コナンに対抗したのか?)、
現実的な感覚とはかけ離れてちょっとカオス気味にもなってきます。

ただ、再読に適していない推理漫画というジャンルながら、特に初期の話は何度読んでも楽しめます。
これはストーリー部分の構成がよく練り込まれていて秀逸ということでしょう。
質が低下してしまった最近では、私なんかは真剣にトリックを推理するというよりも、楽しみ方としては
秀逸なミステリー…ではなく、何人も人を殺すほどドロドロの人間ドラマ、あるいはいつ誰が死ぬのか
(いつものメンバー以外ですが)わからないサスペンス、として読んでいます。
感覚としては年配の人が水戸黄門やら暴れん坊将軍やらを楽しむ感覚に近いのかもしれません。
いつも同じような展開になる、言わばパターンが決まっている作品(悪く言えばマンネリ)ですが、
そのマンネリが楽しめる作品。
一度好きになってしまえば、いつまででも読み続けていられそうです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-10 00:24:23] [修正:2011-11-10 00:27:02] [このレビューのURL]

若い女性の主人公が、男性優位・経験重視の伝統的な陶芸の世界に飛び込み、
経験や苦労を重ねながらも成長していく様を本格的に描いた作品。

古来から焼物大国として栄え、大陸の文化を吸収し独自の文化に昇華させてきた歴史を有する日本。
そんな土への郷愁、窯元の師弟制度、アマとプロの違いと厳しさ、新人や無名陶芸家の辛苦や困窮、
例えば1個300円の湯呑み茶碗を売ることがどれだけ難しいか。
その辺りが綿密な取材に基づく膨大な量の薀蓄とともにしっかりと描かれています。

同じ食べ物でも発泡スチロールの器で食べるのと陶器の器で食べるのとでは感じが全く違いますし、
陶器のジョッキで飲むビールはグラスとはまた違った旨さがあります。
旨い食事と見事な器は切っても切り離せない、言わば「表と裏」の対等な関係。
この作品は萩が舞台なので主に萩焼について触れていますが、備前焼、丹波焼、無名異焼など
代表的な陶器ももちろん登場。 各地の土によってこんなにも性質が違うものなのかと勉強になります。

ただ、私なんてこれを読むまでは陶器と磁器の具体的な違いすらよくわからないど素人だったので、
もうちょっとわかりやすく描いてくれれば良かったかなと思ってしまいました。
不満というほどでもないですが、説明も注釈もあるもののどうも全体的にわかりづらい気がします。
まあ現在の親切丁寧な作りの業界漫画ならもっとわかりやすい構成になっているのでしょうが、
この当時としてはこんなものでしょうか。

あと惜しむらくは展開がちょっと(時々かなり)安っぽいところ。
そもそもこの作品は、萩近辺在住で焼物に没頭していた原作者がある日「夏子の酒」を読んで感動し、
自分でもこんな話を作ってみたいと思ったのがきっかけとのことですが、ジャンルこそ違えど、
やっぱり夏子の酒の二番煎じという評は自分の中で覆せなかったですね。
美咲が独立するまでは話がかなり練り込まれていて面白かったんですが、そこからは料理漫画のように
勝負や対決なんかも多くなり、突拍子もない展開などもたまに出てくるようになってきます。
もっと深い部分まで切り込んで描けたのではないかとも思えますが、陶芸ビギナー層を取り込むために
浅く分かりやすい話に特化したのか、全体的に話の厚みが足りない印象を受けます。
より一層深くて良い作品になり得ただけに非常に惜しい感じ。

とまあ色々書きましたが、少なくとも本作を読んで焼物の世界に興味を持てたのは間違いないです。
これまで食事のときには皿の上のもの(=料理)のみを注目してきましたが、これからは皿自体にも
目を移して楽しむことができるようになったかな、と。
奥が深いなどという言葉では表しきれないほどの伝統を誇る陶芸の世界なだけに、この漫画だけで
語り尽くすのは当然ながら不可能なんですが、入門編としては申し分ない作品だと思います。
萩にも実際に行きたくなりましたね。
ちなみに続編は美咲が青磁を追い求めて世界各地を駆け巡ったりする話。 あんまり萩は出てきません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-05 01:25:18] [修正:2011-11-05 01:51:48] [このレビューのURL]

原作者の作品はいくつか読んだことがあるという程度で、これは未読。 理由はbooさんと同じです。
なので原作との比較はできませんが、ここは漫画レビューサイトということで、あくまでこの漫画を
読んだ感想を書いてみます。

決して割れないガラス、びくともしないドア、どこにも繋がらない電話、無人の校舎、
自殺のあった時刻である午後5時53分で止まってしまった時計。
理解を超えた事態に戸惑う彼らに静かに迫る悪意……。
ストーリーをすごく大まかにまとめると、無人の校舎から出られなくなった仲良し8人の生徒が
自殺したクラスメートの名と顔が自分たちの記憶から消されていることに気付き、この中の1人が実は
死んでいるのではと互いに疑心暗鬼になる中、1人また1人といなくなっていく…、というもの。

クローズド・サークルっぽい舞台や1人ずついなくなる展開から、「そして誰もいなくなった」的な
話っぽくも思えますが、この話のメインは「忘れていたことを思い出す」ということ。
非現実的な世界でそこのルールに則りながら、緊迫した心理戦が繰り広げられていきます。
とともに、「自分たちが巻き込まれたのはなぜか」、「自分たちにも関係があるのでは」という観点から
「その人物がなぜ自殺したのか」という動機の面をも追いかけていくことになります。

この作品、原作はミステリー小説なのかもしれないですが、少なくとも漫画版は違うと思います。
というのも、主人公を含めた登場人物は真実の解明のためにいろいろと推理していくものの、
結局は謎を解いたわけではなく、ただ単に思い出しただけ。
思い出すにしても論理性や何らかのきっかけがあるわけでもなく、思い出した者勝ちという感じ。
その点で、よくあるミステリーのように主人公(=読者)が自らの知恵と推理で謎を解明した、
というようなカタルシスには乏しくなっています。、

原作の長編小説は、恐らくはそのページの多くを登場人物の掘り下げに費やしているのでしょう。
漫画版でもそれなりに多くのページが割かれてはいますが、やはり元のページ数に差がある分
どうしても人物の掘り下げも中途半端なものになってしまっている感があります。
ミステリー部分で物足りなかった点をその辺りで補ってほしかったですね。
作画担当はジュヴナイル的な作品が滅法上手い印象ですが、初期の作品だからかその点もいま一つ。
その分、それぞれの登場人物の追い詰められ方がホラーじみていてなかなか面白く読めましたが、
これは本来の原作の楽しみ方に適合しているのか甚だ疑問。 まあ面白けりゃいいですが。

で、漫画の雰囲気は良いと思うんですが、全体的に出来が良い作品とは言い難いです。
悪い作品ではないんだけどな、という感じ。

最後にちょっと思ったことを一つだけ。
この作品のヒロインには原作者の名前が付いていますが、これが違和感ありまくり。
有栖川とか法月みたいに主人公となって自ら作品を動かしていくのならまだしも、殊に受動的な
ヒロインなので、変な先入観ばかりが頭に残ってしまって作品としてのメリットが感じられないです。
まあこの辺りは原作小説が出た時点で議論し尽くされていると思うのでこのぐらいにしておきます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-05 01:22:16] [修正:2011-11-05 01:22:16] [このレビューのURL]

8点 OZ

わずか40分間で終了した第三次世界大戦によって世界人口は激減。
疑似氷河期を経て未だ戦乱と混迷の治まらない地球において、囁かれる一つの伝説。
それは、飢えも戦争も無いという伝説の都市、OZ…。

舞台は旧・アメリカ合衆国が大きく6つに分裂したうちの1つの共和国。
大戦によって植物は完全に枯死し、寸断された交通・通信網は容易に回復せず、各地で争乱が起こり
至る所で住民達により立国宣言が相次ぐ、という北斗の拳もビックリな世界観。
優秀な傭兵である主人公は、周囲の国々との戦争・交渉・謀略が続く中、雇い主の女性を守りながら
伝説の都・OZを目指す、樹なつみ氏お得意の近未来SFアクション。

少女漫画誌に掲載されてはいたものの、絵も内容も世界観も少女漫画の規格を遥かに凌駕した作品。
『オズの魔法使い』をモチーフにしたという本作は、とにかく骨太でスケールの大きさを感じさせます。
少女ドロシー、知恵がない案山子、心を持たないブリキ男、臆病なライオン、そして魔女や大魔法使い。
それぞれのキャラがどれに相当するのか楽しみながら読み進めてみるのも良いと思います。

主人公とヒロインとの恋愛模様もありますがそこまでメインとして描かれているわけでもなく、
むしろ少しずつ自我や感情を獲得していくヒューマノイド(=人造人間)との心の通わせ方
(と言うか疑似恋愛と言うか愛憎と言うか)が作品の核となっており、その描写が非常に秀逸。
ラストは綺麗にまとまっていて素晴らしいです。
同時に、アシモフの「ロボット工学三原則」に作者なりの解釈が加えられており、
考えさせられるような結末にもなっています。

作者の絵はこの頃が一番好きですね。
洗練されていながらも読みやすい絵柄に加え、骨太の近未来SFに相応しく、アクション映画を彷彿と
させるようなエンターテインメント性をも感じさせる構図。
まさに樹なつみという作家の持てる力を存分に凝縮した、個人的には作者の最高傑作だと思います。
が、一つだけ残念な点を挙げると、あまりにも凝縮させすぎて、内容のボリュームの割に
巻数(通常版4巻、完全収録版でも5巻)が少なく感じられること。
おかげで展開が速い速い。 もうちょっと巻数を増やしてじっくり描いても良かった気がします。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-28 01:39:33] [修正:2011-10-28 01:42:25] [このレビューのURL]

ジャズを通して描かれる古き良き青春物語。

友情の見せ方、恋愛の描き方、雰囲気、絵柄、どれもが古臭く、常に新しさを追い求める漫画界では
古臭さは致命的なはずなのですが、この作品ではその古臭さを上手く長所に転じさせています。
もちろんただ古臭いだけではなく、現代の人にも読みやすいように1960年代を再構成して
田舎の素朴な空気と共に放つ手腕は見事。
至る所にマイナス(基本的に主人公が不幸になる系)の伏線が仕掛けてあるタイプの作り方で、
その点も昔のタイプというか、最近ではちょっと珍しい系統の作品かなと思います。

この作品の見せどころの一つが、他の方のレビューにもあるように、ジャズの演奏シーン。
これがまた本当に楽しそうで魅力的。
演奏シーン以外の展開が割と暗めな話なので、その対比が尚更に際立っています。
ジャズはもともと溢れ出るような感情のありったけを曲に込めて解き放つような印象。
どちらかというと人生の渋みを覚えた世代に適した音楽ジャンルだと思っていたのですが、
それが青春漫画での感情表現にも実によく似合うのかなと目からウロコでした。
などと語れるほど私も全然詳しくないですし、この作品でもジャズはあくまで話を彩る脇役であり、
メインは主人公たちの青春物語なので、そちらを静かに見守ることにします。
素朴な中に暖かみがあり、グイッと引き込まれるというよりは徐々に心に浸透していくような良作。

こういう音楽系の作品は好きなアーティストがどこまでフィーチャーされるかも楽しみの一つ。
この作品ではアート・ブレイキーやビル・エヴァンスの出番が多く、ファンの人にはたまらんでしょう。
ちなみに本当にどうでもいいんですが私はサッチモとサラ・ヴォーンが好きなんですけど、
サッチモは未だ出てこないし、サラは一応出てきたけど鳩っすか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-28 01:33:08] [修正:2011-10-28 01:33:38] [このレビューのURL]

声が出なくなるほど極度のあがり症。 やりたいことが見つからない。 自己主張ができない。
周囲に対して、友人に対して、自分自身に対して、どうしても一歩が踏み出せない。 前に進めない。
そんなもの凄く後ろ向きな主人公が強引な勧誘と不運な巡り合わせとで演劇に出会う話。

漫画をちょっとでも読み慣れた人なら、第一話を読んでその後のあらすじが何となく頭に浮かぶはず。
そしてその思い浮かんだ展開は恐らくながらあながち間違いではないはず。
そのぐらいに特段の捻りや意外性に欠けるような作品。
他の方のレビューにもあるように、数多くの漫画の中からこれを選ぶ必然性にも魅力にも乏しいです。
せっかく張った伏線を思いっきり無視したりするし、主人公は見ていてイライラするしで、
作者にとって初の連載ということもあってか最初の方は特に読みにくかったですね。

ただし、つまらないかと言えばそんなことはなく、特段の期待もせずに読んでみたら
思いのほか面白かった作品という印象です。
何だかんだでキャラの造形が上手くて皆それぞれ個性をはっきりと読み取ることができ、
作者がしっかりと話を作るというよりは各キャラが勝手に動いて話が出来ていくという感じ。
至極オーソドックスな展開なのに気が付けばどんどん話に引き込まれていきます。

成長物語かどうかはさて置き、「やってて良かったって思える」ものに出会えた彼女は実に幸せ。
ジャンルや主人公の性格などは違いますが、「宙のまにまに」なんかに近い空気を感じます。
自分はずっと運動部でしたけどこういうのを読むと文科系の部活が楽しそうに見えて仕方がないです。
綺麗にまとまりすぎていて、現役の学生の人が読んで共感を得られるかは正直わからないですが、
かつて学生だった人がノスタルジーに浸る作品としてはなかなか良いのでは。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-25 01:16:30] [修正:2011-10-25 01:16:30] [このレビューのURL]

他の方のレビューにもある通り、「魔王」と「グラスホッパー」を掛け合わせた感じの内容です。
少年漫画らしく主要登場人物を少年または青年ぐらいの年齢まで落としていて、
作品の勢いという点ではむしろ原作小説よりもこちらの方がずっと感じられます。
作者好きだけど原作小説はそうでもない私ですが、楽しめたことは確か。
連載されてた頃はちっとも読む気にならなかったですけど、これはコミックスで一気読みタイプの
作品だと思います。

物語はちょっと特殊な能力を持った二人の兄弟が主人公。
兄の「安藤」編だけならもっと高い点数を付けても良いかも。
途中かなり中だるみするものの、最初と最後がスリリングに上手く描けていて楽しめます。

弟の「潤也」編が、つまらなくはないもののちょっと路頭に迷った感じ。
潤也くんもかたき討ちをするはずだったのにいつのまにか敵が<令嬢>にすり替わってしまっていて、
打倒犬養はいつの間にかどこへやら、最後の殺し屋勢揃いも面白かったんだけど展開としては無意味。

全体的な感想としては、原作よりも壮大な感じを出そうと試みているのはわかりますが、
結果的にだいぶスケールが小さくなってしまったような気がします。
やっぱり終わり方が良くなかったのが残念だったかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-25 01:13:43] [修正:2011-10-25 01:13:43] [このレビューのURL]

作者の青年誌掲載第3弾。
過去2作と違って妙なSF的設定も不幸的展開もなく、普通のラブコメ。
基本的に万人向けで絵も上手く、誰が見てもそれなりに読めるような出来に仕上がっているものの、
悪く言えばとても無難な作品となっています。
前作の読者からの反応がアレすぎて冒険しづらかったのかも。

この作品では両想いになってからが(もちろん当の本人たちはそんなこと知りませんが)とても長く、
しかも互いの気持ちを読者ははっきり知ってしまっているため、読んでいて全くドキドキしません。
「もうここまで来たんだから早くくっつけよー」という展開が、月イチ連載だったからなのか
随分長いものに感じられたような気がします。
相手の気持ちが分からないような構成ならまだしも、それで読者をじらそうとしているのなら
やり方を多少なりとも間違えたのでは。

ただそうは言ってもコミックスで読むとまあ普通な感じになるのかも。
内容も重くもなく暗くもなくなので、まとめ読みに向いているのではないでしょうか。
むしろなぜ月イチ連載なのかがよくわからない。 次作も月イチになるのかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-21 00:49:26] [修正:2011-10-21 00:49:26] [このレビューのURL]

フィクションを交えた島本和彦の自伝的作品。

当然ながら私はこの時代に青春を謳歌していた訳ではないですが、出てくる漫画は概ね読んでますし、
社会風俗的なことも知識としてなら知っていますので(当時のアニメとかの話は全くわかりませんが)、
舞台背景は読んでいて理解できるという程度。
特に感慨深さや懐かしさを感じるということもないですし。

なのであくまで漫画作品として贔屓目なしに読むと、序盤はその熱さと濃さが上手く作用して
引き付けられるように読んでしまいますが、慣れてくるにつれて徐々に冷めてきてしまいます。
主人公が暴走と空回りばかりで全然前に進まないのが自分の中で冷めた大きな理由ですね。
作者は「青春とはそういうものだ」というスタンスで恐らく描いているのでしょうが、その辺りが
個人的にちょっと相容れないのかな。
これは自伝的作品だからまだ良いものの、本来ならこれだけ進展に乏しいと話がダレてしまいます。

あと、「吼えろペン」の前日談的な話なので仕方ないものの、他の登場人物(庵野秀明とか)が
実名なのに対し、主人公が焔 燃(ホノオ モユル)なのもちょっと違和感を感じてしまいました。
ってよく考えたら「まんが道」もそうでしたね。 失礼しました。

まあそんな感じで、現時点では「吼えろペン」ほどの熱さや魅力は自分の中で感じませんでした。
トンコさんとの距離感も訳わかんないですし。 なので現状はこの点数。
ただ、これから起こるであろうと予想できる話の展開如何によっては、これまでの作者の作品を
凌駕するほどの爆発力をも秘めていると思います。
今はまだ炎が燻っている状態。 そういう意味で「アオイホノオ」なのでしょうか。
そう考えるとなかなか深いタイトルですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-18 01:29:08] [修正:2011-10-18 01:34:44] [このレビューのURL]