「Scrooge」さんのページ

総レビュー数: 182レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年07月10日

7点 陰陽師

夢枕獏の原作小説を忠実に漫画化した作品。
なのだが、陰陽師という作品のテーマに向けて夢枕獏は小説でアプローチし、
岡野玲子は漫画でアプローチしていると考えるほうがしっくり来る。

陰陽師のテーマを簡単にまとめると日常→怪異→万物の理はすべてリンクしているということ。
その意味を説明する小説に対して、漫画はそのあり様を示している。
知らせてくれる小説と見せてくれる漫画と役割を分担し一対の作品になっている。

物語の後半はそのように面倒くさいが、前半はわかりやすく漫画だけでも十分。
平安の都で陰陽師と貴族の青年が怪異とわたりあう冒険を描く。
相棒モノ、妖怪モノの娯楽作品としても面白いし、美青年同士の純粋な友情もいい。

最後までいってしまうコアな人にも、途中で見切る人にもオススメできる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-05-18 11:32:50] [修正:2016-05-18 11:32:50] [このレビューのURL]

主人公が料理について独り言を言いながらしみじみする短編漫画。
物語らしい物語はなく、今日も美味しくご飯が食べられて幸せ、というだけの漫画。

シンプルだが説得力のある漫画。
ズボラ飯は(健康に悪いだろうが)たしかに旨そうだし、
主人公がニコニコしながら料理したり食べたりしているのも愛らしい。

単行本1、2冊まではこれで十分OKだが、連載が長くなると、やや辛い。
言動が個性的で面白い主人公も、長く続けば新鮮味が薄れる。
いい年の主婦が、たかが食事でハシャギ過ぎて痛い。
脇役キャラが増えたり描きこみが豪華になっても、面白さには繋がっていない。
ほんわかした温もりが冷めないうちに手仕舞いするべきだと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-11-30 11:19:30] [修正:2015-11-30 11:19:30] [このレビューのURL]

ハクメイとミコチという2人の女性の暮らしの物語。
ハクメイとミコチは小人で本作に「人間」は登場しない。
虫や動物と会話したりしながら、2人は穏やかに日々を暮らす。

ここに描かれているのは技術と自然の関係性。
小人、虫、動物はもちろん「人間」ではないが、
彼らの暮らしはとても「人間らしい」。
自然に技術と手間隙をかけて恵みを享受し、調和して生きている。

長い時間をかけて洗練された生活の知恵に対して、素朴な尊敬と賞賛がある。
2人の主人公はともに技術者で、ハクメイは土木、建築、工芸といった男性的な技術を体現し、
ミコチは食、織物、染物などの女性的な技術を体現している。
彼女らの技術的な工夫や発見の喜びも詳細に描かれている。

この世界には調和のとれた循環があるだけで、何も変わっていかない。
その意味では1巻でも3巻でもやってることは同じだ。
今後、大いなる転換を迎えるのかあるいはこのまま世界が維持されるのか。
ほのぼのと読み進めたい。

雑感
演出上、ほぼ全てのコマが物で溢れているので、どうしても読むスピードが遅くなる。
じっくり読ませたい意図だろうが、白黒なのでいささか辛いところもある。
これがアニメで色がついていれば、より見やすいのになぁと思うことがある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-10-28 16:37:26] [修正:2015-10-28 16:39:49] [このレビューのURL]

オシャレでスマートで可愛い絵柄と、ぶっとんだタイトルから、
美形がチャラチャラする漫画を想像したが、一読して驚いた。

良い意味で内容がまとも。テーマは青春そのもの。
メインのキャラクターは、2人の男性と2人の女性で計4人。
彼らは2組の姉と弟で、日ごろ親しく接している。
年齢は男性が18歳の高校三年生、女性が21歳。

おだやかな日常を繰り返しながら、4人の時間が過ぎていく。
進路のこと、自分の夢のこと、本当はずっと片思いをしていること。
4人はこの居心地良さの残り時間を強く意識しながら、
時に勇気を出し、時には励ましあう。
そして4人の関係も少しずつ変わって・・・という漫画。

作中で特別な事や大げさな事はほぼ起こらない。
日常的なことが起き、日常的に反応している。
それを漫画的にもたせるために4人とも美形キャラになっているのだろう。

美形なら何をやっても、やっていなくてもサマになる。
なので、内容は地味で共感できるものがいい。そんな感じの漫画。

繊細で現実的な漫画ゆえに、むしろ4人がどうなってもおかしくない。
彼らがそれぞれ自分の道を見出していけるのかどうか、続きが気になる。

これは勝手な意見だが、完結した直後にまとめて読むのが良いように思う。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-10-25 13:50:34] [修正:2015-10-25 13:50:34] [このレビューのURL]

人間と喰種の争いをベースにその中で生きていく「人」を描く。
キャラクターはみな争いを虚しく感じながら生存のために争い続ける。
虚しさと怒りが極端に強く現れて、物語をスピーディに展開する。

ぶっちゃけ人間も喰種も違いはない。
外見も同じ、言葉も通じる。文化も共有してるし、生殖も不可能ではない。
だが、喰種は人間を食べなければ生きられない。これが争いの源。

ありふれた設定で読者にはわかりやすい。
それでいて主人公の数奇な運命や、そこまでやるかと思わせる過剰さにページをめくってしまう。
絵ヅラはグロいがよくできた娯楽漫画。

生きるためには争いに勝たなくてはいけない。
勝つためには力が必要、という身も蓋もないメッセージを端的につきつけてくるのが潔い。

その絶対的なルールの中で唯一の特別である主人公がどのような結末に至るのかが楽しみ。

この作品巻で完結し、東京喰種:re(トウキョウグール:アールイー)として直接の続編が連載中。
内容的には一連のものなので、新章開始に際してタイトルを改めたと言うべきか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-09-26 15:13:43] [修正:2015-09-26 15:13:43] [このレビューのURL]

良いか悪いかはともかく、自分に描けるものを精一杯で描き切ろうとする漫画。
ちょっとした台詞回しや絵ヅラの作り方、キャラの立て方にマニアックな拘りが盛りだくさん。

とにかく目前の敵をノリと勢いに任せてガンガン潰していくことが全て。
製作に尋常でない手間がかかるので長期連載は避けられないだろうが、
その勢いを作者、読者ともにどれだけ維持できるかがポイントになるだろう。



ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-11-26 18:44:56] [修正:2015-03-01 02:59:53] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

平凡な少年が魔王ダンテに食われて合体。
はるか昔から続く神と悪魔の戦いに巻き込まれる漫画。

演出がやたら劇画調でサスペンスが強く読者は続きが気になる。
期待をもりあげて登場する魔王ダンテは単純ながら非常にすぐれたデザインで、まさに悪魔そのもの。
おそろしさと滑稽さをあわせもつ魅力的な姿で大暴れしてくれる。

華々しく登場したダンテは神の軍団との壮絶な怪獣バトルを繰り広げる・・・
はずだったが、雑誌の休刊にともない決戦の直前で連載終了。

「神」がエイリアンの侵略者というのが戦いのネタ。
古代の地球にすぐれた文明を築いていた原地球人がおり、
そこに精神体の「神」が宇宙から飛来して原地球人と激しく争う。
「神」は猿に乗り移り進化を促して「人」の軍団を増強。
劣勢となった原地球人は機械や動物と自らを融合させて「悪魔」になっていくという話。
こうして「神」+「人」vs「悪魔」の生存競争を描いているのだが、
ぶっちゃけ設定はどうでもいい。
若者の破壊衝動や大きく強いモノへの憧れ、周囲から逸脱してしまう事の孤独感を娯楽マンガに表現しようとした作品。

点数の7点は説明が必要。魔王ダンテはよくできたマンガではない。
ハッタリは効いているが中身はスカスカだ。それでもテーマが普遍的で
しかも物語冒頭からストレートにぶつけてくるので、すごく続きが読みたくなる。
また物語らしい物語になっていないので妄想の余地が大いにある。
馬脚があらわれる前に手仕舞いしたのが結果としてプラスになり7点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-20 18:34:29] [修正:2015-02-20 18:34:29] [このレビューのURL]

高校生バスケを題材にしたスポーツ漫画。
アメリカNBAのプロバスケットボールのように、スターを散りばめて
華やかな必殺技の応酬と勝負の緊張感が楽しい。

ページをめくると何かが起きて楽しい漫画。
ただし、展開が少年漫画的すぎてもはやほとんどバスケットの枠をはみ出しそう。

運動能力で負ける→気合で対抗→隠し技→覚醒→こっちも覚醒、といった
暑苦しい応酬が延々続く。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-07-11 14:33:16] [修正:2013-07-12 11:15:40] [このレビューのURL]

ヤクザ組織に潜入捜査する警察官の話。
泥臭い絵柄でオシャレさは欠片もないが、それすらも作品の魅力にとりこんでしまっている。

面白さで言うと海外ドラマ24の初期シリーズに近い。
次々に危険がせまり追い詰められた主人公がどうやって危険を乗り越えるかがポイント。
単行本10巻まで読んだところでは、このサスペンス要素は非常に成功している。
絶体絶命の状況を演出し、打つ手なしに見える場面で主人公が何とかする。
この繰り返しはやはり気持ちいい。

ストーリー本筋の語り方も巧み。
ヤクザにはヤクザの事情がある。凶暴だが人間的に魅力を感じる。
警察には警察の事情がある。一般市民を蝕む麻薬犯罪を抑制しなければならない。
読者はヤクザと警察の狭間でややもすれば揺れる。
だが主人公は迷わない。最終目標であるヤクザの大ボス逮捕へ向けてひたすら突き進む。これも気持ちいい。

まとめて読むとえづきそうなほど濃い漫画なので、ちょっとずつ読むのがよろしかろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-07-01 09:41:05] [修正:2013-07-01 09:41:05] [このレビューのURL]

2030年の社会を舞台に狂四郎とユリカが結ばれるまでを描くエログロバトル漫画。

作品全体のテーマは、恋人のためならどんな辛いことも乗り越える、ということ。
2030年はとても過酷な世界で狂四郎とユリカは次々と苦難に遭遇する。
2013年の私から見ると、とても耐えられないような試練を2人は
知恵・力・勇気・意志で受け止めていくのが感動的。

作品の工夫は舞台の設定にある。とにかく過酷。
作中の2030年は道徳やイデオロギーなどの建前が無効で、
誰しもが自分の欲望のために行動するのが当たり前の社会になっている。
そこには善悪はなく、切羽詰った事情が露骨に表れている。
狂四郎とユリカの愛も欲望のひとつでしかなく、2人は互いのために罪を犯し続ける。

生きることが苦しく、生きる意味である愛も苦しい。
苦しさを紛らわすために下ネタとエロシーンが頻繁に挿入される。
これで笑うこともエッチな気分になることもないが、ともかく息苦しさの緩和には役立っている。

この作品は徳弘正也の個性が良い形で現れている。
エログロナンセンス、愛、シビアな人間観。
よくぞここまで掘り下げて描ききってくれたと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-06-08 14:27:12] [修正:2013-06-08 14:27:12] [このレビューのURL]