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総レビュー数: 126レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月14日

後に実写化され、そのおどろおどろしい風貌がヒーローらしからぬと中年世代の記憶に刻まれた、手塚治虫が生み出したロボットヒーローの一つ。

手塚治虫作品にしては、設定やストーリー作りが強引で「粗」がある印象。事実、手塚自身、「たいへん都合のよい設定ではじめた、一種のでたらめな漫画」として形容している。実写版では、巨大怪獣バトルものへと変貌を遂げているが、漫画版ではその要素は薄い。地球侵略を企む宇宙人VS地球の神が生み出したロケットロボットの一連のバトルが主軸である。

ストーリーは淡々としており、キャラの見た目も不気味で、アトムのように時代を超える作品にはならないだろう。
現代になってしまっては、「マグマ」「大使」といった凄みがあるが特段キャラとの相関は不明なワードは、このキャラクターを「とっつきにくいもの」にしているようにも思える。

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[投稿:2013-03-10 22:49:04] [修正:2013-03-10 22:49:04] [このレビューのURL]

自転車という自分の趣味を漫画にしました的日常漫画。

鬼頭先生といえばSF、というイメージがあるが、本作には超科学的な存在は皆無。すべてが現実世界の描写。
作者は、自らの趣味である自転車をじっくり、丹念に描きたかったのだろう。薀蓄が前面には出ず、小出しになっているあたり、自転車にあまり明るくない人にとっても新鮮な気持ちで楽しめるように工夫されている。(ちなみに私はトレックのクロス乗りなので、ほどよく楽しめた。)

が、「シャカリキ」のような熱さMAXのスポーツマンガではなく、「大人の趣味としての自転車」というスポットの当て方。このアクのない作風は、拍子抜けの感もあるが、淡々と読めてしまうのは、同一作者の過去作品を知っているからだろう。

港区・世田谷区・中野区あたりに居住し、ロハスを実践するオサレでちょっぴりロリコンの大人には楽しめる漫画だろう。

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[投稿:2013-03-03 18:34:37] [修正:2013-03-03 18:34:37] [このレビューのURL]

ヒトラー出生に関する秘密文書を巡って、アドルフの名を冠する二人の少年による数奇な運命を綴った戦中譚。

第二次大戦下のドイツと日本を舞台に、ヒトラー出生に関する秘密文書を巡って人間がひたすらに「すれ違う」様は、もどかしくも滑稽で、数奇な運命の連鎖が読者を飽きさせない最大の仕掛けとなっている。あたかも「めぞん一刻」で五代君と響子さんの想いがすれ違い続けたように―。このモチーフの上に複数の小さなサスペンスや恋愛ドラマが折り重なりつつ、タイトル「アドルフに告ぐ」という名どおりの終結に向かって見事にストーリーが収束していく様は圧巻だ。

手塚治の晩期に非漫画雑誌で連載された本作。手塚作品の中でも異彩を放つ。同時期のブラックジャックの絵柄は、画線の「ブレ」が露見されるが、本作では、比較的しっかりとした筆跡を感じられる。それだけ作者の格別な思いが詰まっているということか。

なお、史実との関係については、秘密文書の存在も含め、多分にフィクションが混在していることに留意したい。しかし、ユダヤ人の迫害と彼らが世界の経済界・学界等で大きな存在感を示す現実の裏に何があるのか、人はなぜ人種差別をするのか等、歴史上の本質的問題について思索に耽るには十分すぎる歴史「小説」だといえるだろう。

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[投稿:2013-03-03 18:05:27] [修正:2013-03-03 18:13:02] [このレビューのURL]

ヤクザ&政治両面からの世直し系劇画。

まだバブル期の名残ある時代に始まった漫画であるが、世直しの気風に満ちた若者たちがいわゆる「体制」側に戦いを挑むところは、今読んでも十分に楽しめる。昨今、世直し漫画といえば、キーチVSやデストロイ&エボリューションのように「テロ」に題材を移す傾向にあるが、本作は、「ヤクザ」と「政治」という光と闇の2つの統治機構を二人の若者が中から変えていこうとするもの。

その過程は、「暴力」と「権力者の弱味を握る」ことの繰り返しだ。細かいリアリティを追求すれば、ツッコミどころは多々あれど、その展開のテンポの良さは心地よい。お前ら、愛人とセックスするときくらいちゃんとドアのカギかけとけよ!、とか、ここでソイツ殺しちゃうの?!とか、そんなパターンも読み進めていくうちに楽しめるようになってくる。さすが武論尊先生。

絵は、静止画の劇画としては、秀逸。巧い。特に、女性は現代でも通用するエロさ。が、動きはないし、バタ臭さは否めないのだが、一時代を築いた池上先生の絵なのでそれはそれで楽しめる。

本作が連載されていたのは、90年代初期から中期。細川内閣や村山内閣等、連立工作によって目まぐるしく政権が交代していた時代だったからこそ、共闘体制を模索する「劇場型政治」のダイナミズムが注目されたのだろう。が、今や、日本は、国政選挙による2度の政権交代を2009年と2012年に目撃した。そういう意味で、改革の期待感と失望感の双方を既に経験した現代人にとって、この漫画は絵空事ではなく、よりリアリティのもった世直しバイブルとして受け止められて然るべきかもしれない。

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[投稿:2013-02-25 01:58:15] [修正:2013-02-25 01:58:15] [このレビューのURL]

7点 銭ゲバ

金の亡者となった成金の人生の一部始終を簡潔に描いた問題作(?)。

この世はすべて金、と悟った人間の人生を一気通貫で描き出している。しかも、「少年サンデー」で。金、女、政治、権力、殺人・・・おぞましい所作の連鎖。金があれば何でもできる、そういった拝金主義が跋扈していた時代性を象徴する作品だろう。思うに、現代ではこの価値観は容易に許容されないのではないか。

絵は決してうまくないのだが、登場人物はほぼ全て心の汚い人間だからか、全く違和感がない。絵のブレが、心の歪みを形容しているかのように。

拝金主義の是是非非を押し付ける作風ではなく、問題提起している形になっているため、色々と考えさせられる。

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[投稿:2013-02-25 01:23:43] [修正:2013-02-25 01:23:43] [このレビューのURL]

8点 度胸星

未知なる火星へ人生を賭けた日本人達の軌跡を描いたSFヒューマンドラマ。

一言でいえば、濃縮されたシンプルな「宇宙兄弟」。月面飛行を夢見て宇宙飛行士を目指す兄弟を描いたのが「宇宙兄弟」であり、目下大変な人気を獲得しているが、それよりも遥か以前に同系列の題材で同様のモチーフに焦点を当てている漫画があったとは、、、一種の衝撃。

登場人物はより少なく、ストーリーはよりシンプルであるが、候補生各々が自らの夢を抱いて、選抜試験や厳しい訓練を経て火星へと至る全体構成は酷似。超ひも理論などを交え、よりハードSFに近い部分もあるが、それはあくまで「未知なる火星」のエッセンスに過ぎないと思えば、この作品の本質は、主人公(度胸というより我慢強さを特徴とし、見た目はドカベンの山田太郎そのもの)とその周りの個性的な候補生達のヒューマンドラマとして見るべきだろう。

この作者の絵柄は妙な力がある。それはモブキャラの目を丸めるリアクションに象徴されるわけだが。力強さはあるのに暑苦しくない不思議な心地よさを感じられる。

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[投稿:2013-02-25 01:10:06] [修正:2013-02-25 01:11:59] [このレビューのURL]

不死のバンパネラと人間との交流を時系列に短編小分けして描いた耽美系雰囲気マンガ。

24年組の中心的存在たる萩尾望都によって、不死の美少年による人間との関わりあい、特に、恋や妹愛等が淡々と描かれる。山なくオチなく意味なく―。
不死の美少年という題材は、世の女性達の妄想ターゲットとしては垂涎ものだろう。同性愛的なシーンもチラホラとあり、BLの萌芽を垣間見ることもできる。
が、それ以上に、この本が出版された当時においては、「時を超えて生き続ける人間ならざるもの」の神秘性と美麗なる描出力こそが一種の衝撃だったのだろうと推察に難くない。
が、現代に改めて読むと、この「雰囲気」だけでは正直楽しめない。もう少し山谷が欲しい。

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[投稿:2013-02-25 00:57:22] [修正:2013-02-25 00:57:22] [このレビューのURL]

浦沢流映画手法がふんだんに盛り込まれた昭和ノスタルジー漫画。

この漫画が連載された当時、三丁目の夕日やオトナ帝国の逆襲等とともに、昭和ノスタルジーブームを形成した著名作品。

こうした時代の流れを確実に掴みつつ、週刊連載にて読者を飽きさせない絶妙の「ひき」と「ため」のテクニックを駆使。これぞ浦沢漫画の真骨頂。キャラは薄く、写実的。ミステリー調のホラー的雰囲気は独特である。そして、着実に回収する伏線の数々。練りこまれた全体構成の素晴らしさでは、漫画界に右に出るものはいないだろう。

が、いざ単行本で一気通貫に読むと、「ひき」が多すぎて、「引っ張った割にこんだけ!?」とがっかりする展開が頻繁に登場。正直、冗長感は否めない。このストーリーなら20巻以上も必要ないだろう。オチもあっけない。

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[投稿:2013-02-16 01:11:30] [修正:2013-02-16 01:11:30] [このレビューのURL]

島本和彦による学園SF異能バトル漫画。

島本ファンだからこそ、本作を酷評せざるをえない。島本が輝けるのは、おそらく、こういった真面目なSFバトル作品ではないだろう。パロディや自伝などのメタ的作風こそが彼の本分。本人は楽しんで書いていたのかもしれないが。正直、こういう作品の中に一々ギャグを入れられたら、読みづらくて仕方ない、というのが読後感だ。「バカなことを大真面目でやる」という方がしっくりくる。

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[投稿:2013-02-14 00:14:17] [修正:2013-02-14 00:14:17] [このレビューのURL]

島本漫画ではお馴染みのキャラ・炎尾燃を用いて、自らの青年期(大学時代)を叙述した島本和彦の自伝的作品。

漫画家・島本和彦は、同人誌を書き続けるとともに、幾度となくメディアに露出し、コンテンツ業界を論じ、分析してきた。個性が強すぎるため、好き嫌いは分かれるだろうが、分析派の漫画家としては一流。が、パロディや風刺、自伝を主戦場とするため、一流商業誌上でその作品を拝めることは少なく、人は彼をこう呼ぶ。「the・グレートマイナー」と。

そんな島本が、エヴァンゲリオンの庵野監督やオタキングこと作家・岡田斗司夫等、後に異なるフィールドで活躍することになる著名人達と運命を交差させる数奇な時代観を見て、右肩上がりのコンテンツ黎明期を懐かしむもよし、うらやむもよし。なんともいえない、その複雑な感情こそが、本作品の持つ魅力の本質だろう。

なお、同時代のコンテンツ史を研究するための貴重な資料として、本作とともに岡田斗司夫の「遺言」を併せて読んでいただきたい。さすれば、一つの時代の「うねり」を感じることができるだろうから。

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[投稿:2013-02-14 00:06:33] [修正:2013-02-14 00:06:33] [このレビューのURL]