「臼井健士」さんのページ

現代社会の「童話」と言う言葉が相応しいと思う作品。

小説家のお父さんと2人暮しの小学生の知世ちゃんの目から語られる日常。
まるでドラマさながらの家族設定で、実際に後にドラマ化もされている。
だが、この小学生の知世ちゃんの視点はなかなか侮れないものを秘めている。

この作者は社会において当たり前とされている常識を疑ってみる。
例えば、作中でお父さんの妹で知世ちゃんには叔母に当たる女性が結婚せずに仕事をこなしているということに代表されるような
未だに「女性にとっての1番の幸せは結婚」であるとか、「女性は結婚したら家庭に入るのが当たり前」とかいう保守的な思想に対して「本当にそうか?」と疑問を投げ掛ける。

本来ならばこの社会において「異端」として扱われてしまうような人々に知世の目を通して応援歌を送るのだ。それは現実の厳しさや辛さをオブラートに包み込むようなものだが、決して「現実逃避」でもなく、ましてや「現実無視」でもない。

頑張る人たちに向かって「戦っているのはあなた1人じゃないんだよ」「独りぼっちの孤独な戦いではないんだよ」というメッセージは作中で一貫しているテーマだ。

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[投稿:2010-11-18 23:49:40] [修正:2010-11-18 23:49:40]