「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 438レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

10点 石の花

第二次大戦中の旧ユーゴスラビアを舞台に、祖国をナチスドイツに侵攻されたひとりの少年が解放軍に身を投じて戦う姿をナチスによる強制収容所の虐待と合わせて描いていく・・・・。

とにかくナチス関連の漫画では手塚治虫の「アドルフに告ぐ」と並ぶ傑作だと思う。
画の上手さといい資料を元にした歴史的事実の詳細さも特筆。村で平和に暮らしていた少年がいかにして非日常的な戦いに巻き込まれていったのか?、巻き込まれねばならなかったのか?現代日本で日常的生活を送る我々に警鐘を鳴らしているようにも感じる。

「ナチスドイツの蛮行」を強制収容所を舞台にして描いている数少ない作品です。

手塚先生の「アドルフに告ぐ」は強制収容所の様子についてはほぼ触れていませんでしたから。
それを知る意味でも、一読の価値のある作品と思われます。
それにしてもナチス将校の外道ぶりは・・・正に「人の皮を被ったケダモノの如し」です。

現在ではそれぞれが独立したことで「完全消滅」してしまった旧ユーゴスラビアの複雑な立場。
これじゃ・・争いが起こるのもやむなし・・・と納得させるものがあります。

「人が人として扱われないこと」がいかに悲しいことであるのか。いかに悲惨なことであるのか。
そしてこの漫画はこれがつい半世紀ほど前にあった事実なのだと読者に突き付ける。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-06-07 12:36:45] [修正:2011-06-07 12:36:45] [このレビューのURL]

名作であることに間違いはないと思います。画力も極めて高い。
東西冷戦下の影響を受けた世界観。
日米の協力で造られた最新鋭の原子力潜水艦が日本人乗員と共に出航する。
が、艦長「海江田四郎」以下、下士官に至るまでが反乱を起こして原子力潜水艦「シーバッド」を乗っ取り、「大和」を名乗って独立宣言を世界に放つ!

一隻の原子力潜水艦が核の傘下の世界情勢さえ左右するようになる。
やがて世界は大国主導から「世界政府」成立へ向けて大きく舵を取ることになるのだ・・・・。

全編を通して、海中での潜水艦「大和」のバトルと、政治部分の駆け引きが互いに影響を与える展開が秀逸だと思います。

そしてその渦中にあるのは名艦長「海江田四郎」。
潜水艦「大和」の性能が世界最高!とは言っても、操縦するのは人間であり、大和の性能を活かすも殺すも彼等乗組員次第なのは言うまでもない。

だからこそ際立つ「海江田艦長の凄み」。
好きなセリフは士官学校時代のライバルの潜水艦「たつなみ」艦長の深町と共に米国艦隊の攻撃を受けたとき、たつなみの巻きぞいでやられると叫ぶ部下に
「大丈夫だ。深町は(敵の攻撃を)かわす。」
と諭したシーン。

ライバルの実力は自分が誰よりも知っている!と断言したわけです。
ライバルの力を知っているからこその信頼です。

2人の関係がこのシーンだけで分ります。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-20 23:34:45] [修正:2010-12-20 23:34:45] [このレビューのURL]

日本史の漫画として「最上作品」と思います。
全30巻にも及んだ「風雲児たち」を途中で投げ出すこともなく、ようやく当初の予定通りの「幕末編」に仕切り直して突入しました。

基本的にこのシリーズは「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのように時代が変わる度に主人公も次々と代替わりするのですが、最終的な中心人物は「坂本龍馬」になると当初から決まっていたようです。

確かに昨今の龍馬ブームを置いても、シリーズの花道を飾るに相応しいと思います。

これほどの作品、もっと売り上げがあっていいと思いますね。
知名度の絶対的な不足・・・・・・・。
コアなファンでないと気付けない作品にこそ「いい作品」があるということなんでしょうか。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-11 18:47:45] [修正:2010-12-11 18:47:45] [このレビューのURL]

10点 徳川家康

横山先生の歴史漫画の中でもなんと最長の全8巻を重ねているのが、徳川260年の世を築き上げた「徳川家康」である。
実は学研などの学習漫画以外で「徳川家康」を主人公に描いている漫画作品は他になく、この作品が一応の決定版といってよい出来であろう。

彼の生涯は常にナンバー2であることとの戦いであった。
幼少時から織田家と今川家との2強国の間に挟まれた小領主・松平広忠の嫡男でありながら、人質として今川家に送られる最中に
家臣の裏切りから敵の織田家に攫われる身となった。その際に後に同盟を結ぶこととなる織田家の嫡男・信長と面識を持つ。
人質交換で駿河の今川家にようやく送り届けられたものの、父・広忠は家臣の裏切りに遭い暗殺された。
母・お大の方とも暮らせず今川家でも屈辱の日々を過ごす。

この幼少期の苦労の日々は西の戦国大名・毛利元就と似通った点が多い。

ようやく今川家の当主・義元が桶狭間で信長に討たれたことで自由の身になり、跡継ぎの氏真が不甲斐ないと見るや、今度はさっさと信長と同盟を結んだことが徳川家の発展の足掛かりとなった。
将軍・足利義昭を奉じて上洛する信長にとって、西の脅威からの防波堤という意味でも家康との同盟は大きな意義があったのだ。
けれど、それは信長と敵対する諸勢力を全て敵に回すことにも繋がった。特に戦国最強と言われた甲斐の武田信玄と領国を接せねばならず、常にその脅威に晒され続け、
信玄上洛の際の三ヶ方原の戦いでは生涯を通じての大敗を喫することになる。
さらに同盟関係といいながらも信長との国力差は次第に歴然とするようになり、駿河・遠江・三河の3ヶ国をようやく支配下に収めるものの
嫡男と正妻を謀反の疑いから切腹・暗殺せねばならなくなる。

一大転機はその信長が「本能寺の変」で天下統一を間近にしながら殺された事。常に信長の前に2番手であらねばならなかった身がようやく
重石を除けて、天下統一への後継者の座を得ることも出来るはずだった。
しかし、時流に乗って天下統一を進める羽柴秀吉に遅れを取り、小牧・長久手の戦いでは互角以上の力を秀吉に見せ付けたものの、巧みな秀吉の外交手段によって徐々に
戦う意義を失っていく。そして、秀吉への臣従。隠忍自重の日々であった。

豊臣政権の重鎮となった家康だが、秀吉は小牧・長久手の戦いで敗北を味あわされて以来、決して家康に心を許してはなかった。
慣れ親しんだ東海の地から後北条氏の旧領である関東八州を恩賞に得て、石高では260万石を超える大大名となったが・・・・、
新領地を治めるのは困難。北には上杉家・伊達家が控え、秀吉の朝鮮出兵も迫っていた。

家康について数多くの書物が「その腹黒さ」を殊更に強調するのは秀吉死後から関が原の戦いを経て大坂の陣へと続く時期についてだろう。
関が原の戦いの勝利から大坂の陣までは実に14年もの年月の隔たりがあり、その間は家康は何をしていたのかは意外と知られていないと思う。
この作品ではその間についても詳細に描いているのだが
・表面上は大坂と江戸で2元政治体制となり、平和の日々のようでありながら諸国には戦で立身出世を願う浪人が溢れていた。
・オランダ・イギリスVSスペイン・ポルトガルという対抗関係が日本の国内でもキリシタンを通して代理戦争の呈を成していた。
・家康側近と将軍・秀忠側近との権力争いによる幕府内部の粛清。
・伊達政宗が家康の六男・松平忠輝を擁し、イスパニアの援助を得て政権を奪取しようと目論んでいた。

・・・・というように内憂外患であったようだ。
特に家康は「大坂城の豊臣秀頼を潰すために数々の無理難題を吹っ掛けた」とされることについても、この作品では大坂方との争いを避けたいと願う
家康の苦肉の策であったとされている。
家康は豊臣家に戦いを起こさせないために、豊臣家の領土を削り、寺の修理を提案して軍資金を枯渇させ、それでも浪人たちが大坂城に希望の灯を見ているとみるや、
秀頼を大坂城から退去させて大和へと国替えさせようとする。
将軍家が武家の棟梁ならば、秀頼は公家の棟梁とすることで両家の存続を思い描いていたらしいのだが・・・・果たして真実はどちらだろう?

性善説に取れば、家康の度々の苦心にも関わらず家康の意思は大坂城の秀頼・淀の方親子には伝わらず、戦いに雪崩れ込み遂には豊臣家は滅亡した。
性悪説に取れば、残り少ない寿命を感じた家康は徳川政権の安泰を願って「国家安康 君臣豊楽」の方広寺の銘に難癖を付けて、豊臣家に戦いを吹っ掛けて
滅亡に追い込んだとも考えられる。
そして、専ら世に広く伝えられているのは後者であろう。

しかし・・・家康は最初にも書いたように「戦国時代の悲惨さ・惨さ」を人一倍味わっていた身でもあったはずだ。
幼い頃から父母と別れ、人質としていつ殺されるかも知れぬ身。同盟者であるはずの信長の圧力の前に嫡男と正妻を殺さねばならなかった日々。
そんな彼が既に徳川幕府に対してさしたる脅威とも言えないほど無力な立場となった秀頼を謀略の末に勝てぬ戦いに引きずり出す必要などあっただろうか?

「徳川家康」=「タヌキ親爺」というイメージは関が原の戦い以後の家康晩年の姿ばかりを強調した実は極端な姿に他ならないと思う。
徳川家康という信長・秀吉に比して地味な戦国最後の勝利者に対する誤解を改めるための一助となるべき書物かもしれない。
ぜひともご一読を。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-07 21:24:13] [修正:2010-12-07 21:24:13] [このレビューのURL]

歴史大河ギャグ漫画とでも呼ぶべきか。

「幕末の英雄たちの活躍を描くために」その原因となった大本を辿っていくことからスタートしたら関ヶ原の戦いからになってしまった(笑)
「関ヶ原の戦い」以降の日本史の登場人物たちを全員ギャグキャラにしてコテコテのお笑いを連発させる手段が冴え渡る。

内容は深謀にして詳細。ハッキリ言って実在の人間の歴史的事実をここまで詳しく描けた書物を他に知らない。
特に他の歴史漫画ではまず扱わないであろう「田沼時代からペリー来航の直前まで」の詳しい描写には舌を巻くばかりだ。
全部のギャグの元ネタが判ったらスゴイが、判らなくても楽しめるのはもっとスゴイ。

日本史好きは必読と断言します。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-04 15:27:53] [修正:2010-12-04 15:27:53] [このレビューのURL]

10点 BANANA FISH

ハリウッドの大作アクション映画にも対抗できるスケールの大きさと臨場感を持つ日本最高の少女漫画(そんなジャンルわけすらも馬鹿げてはいるが)のひとつ。
「バナナ・フィッシュ」という国家機密を追うマフィアとCIA。
ストリート・キッズのリーダー「アッシュ」の天才であるが故の悲劇。日本人少年・英二との究極の友情。
脇を固める魅力的なキャラたち。
シン・ブランカ・ケインの男気。
月龍の歪んだ愛情への渇望。悪役のディノでさえも愛すべきキャラクターだった。

ちなみに自分は大学時代の教育実習で母校の中学で1年生3クラスに国語を教えたのだが、そのとき生徒たちにこの漫画が「面白くて、勉強にもなる」と勧めたら、半年後の運動会で学校に来たときに教えたクラスのほとんどの生徒がこの漫画を読んでいた。みな「面白かった」と口を揃えた。ちょうど内容を理解できるであろう(と思われる)最低限年齢で出会えたことは良かったのではないかと思う。

本編が終了した後の番外編「光の庭」がとても良かったですね。

正に「鎮魂と再生の物語」でした。
本編における激しい戦いの後だからこそ、あの「静けさ」が全ての傷付いた者たちを癒す意味で際立つのです。暁は「YASYA」でシンの嫁になっています。でもまさか中国の初代大統領の妻になるだろうとは思っていなかったことでしょう。シンもアッシュと出会って大きく成長することが出来たという意味で、良い出会いだったのではないかと思います。最初はショーターのことがあって素直に友好関係を結べませんでしたが、元々シンはアッシュのことを「偉大な存在」というか「男としての目標」と捉えていた部分が大きいので、シンの人の良さもあって憎むことは出来ませんでした。

「光の庭」ではアッシュの写真に「夜明け」というタイトルが付けられていました。
全ての人に「夜明け」が来たのです・・・・・良かった・・・・・・・・。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-04 09:15:21] [修正:2010-12-04 09:15:21] [このレビューのURL]

前世から現世と移り変わっても続く7人の男女の愛憎劇・・・。

同じ場面も視点を入れ替えることによって、そして夢を利用して度々「前世」と「現世」とをリンクさせることで話を盛り上げ感動的な展開を演出している。
登場人物を役者とするならば、男優がそして女優が極上の「演技」を見せ、時に叫び、時に罵り、時に泣くことで現実を超えたドラマチックな展開を紡いでいく。

作者自身「全く先のことを考えずに描き始めた」というのに、最終的に何の「破綻」も「矛盾」もなく終わらせた手腕は天才的。
画の美しさも特筆で幻想的な雰囲気が作風と良く合っている。
少女漫画に留まらず、SFファンタジーでは1・2を争うであろう傑作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-21 19:04:52] [修正:2010-11-21 19:04:52] [このレビューのURL]

原作の面白さは言わずもがなですが、大人になった今改めて読み直してみると、秘密道具のネーミングなんてホント「ダジャレのオンパレード」ですよね(笑)。
Y字型のロウソクで「Yロウ(賄賂)」とか(笑)、飲むと冒険が次々と体験できる「アドベン茶(アドベンチャー)」とか(笑)。馬鹿馬鹿しいけど藤子先生のこのセンスが結構好きだったりします。「以前に登場した道具を使えば回避できるピンチがいくつもあるのに・・・」と考えたことは多々あれど(笑)、秘密道具の名称が各話のタイトルになっている以上、各話において「それ以外の道具」を使用するのは基本的に反則となりますので(笑)、見て見ぬふりをする義務が(笑)あります。

映画版の大長編は普段は敵役の「スネ夫」と「ジャイアン」が味方というところが大きなポイントであり大きな謎(笑)。レギュラー陣に「出来杉君」を加えれば大幅な戦力アップが計れたのに、それをやってしまうと他のメンバーの出番がなくなるので(下手したらドラえもんも要らなくなってしまう)できなかった(笑)
それにしても「大長編シリーズ」も最初は陸・海・空(宇宙)と舞台のネタに苦労しなかったのに、「のび太と竜の騎士」で地底世界を舞台にした話を展開したら、その後は舞台に苦労するようになってしまったなという印象が強い。藤子先生が亡くなった後も大長編だけは原作が続いたがハッキリ言って「駄作」。
最期に「のび太とパラレル西遊記」だけ原作漫画がないのは惜しいと思います。
何でないのでしたっけ?。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-07-31 07:38:06] [修正:2010-07-31 07:38:06] [このレビューのURL]

日本最高の少年漫画のひとつ。
バケモノを滅ぼす最強の武器である「獣の槍」と最強の大妖「白面の者」との因縁の物語。
そして太陽の瞳を持つ主人公「うしお」とその傍らにあって太陽の光を浴びて燦然と輝く月・相棒「とら」と全ての人々の関わりを描く物語。
数々の戦いを通して、実は、真の「バケモノ」とは我々人間の心の奥底に潜む嫉妬・欲・怨み・歪んだ欲望などが生み出したものであったことに気付かされた。
無駄なエピソードはひとつもなく、全てのエピソードが最終の局面である白面の者との戦いへの布石となっていることに驚かされる。
名ゼリフは数限りない。
藤田先生は田村由美先生の「BASARA」の大ファンで、田村先生も「うしおととら」の大ファンらしい。確かに両方の作品を読んでみると作品の根底に流れるテーマというかポリシーが非常に似通っていることに気付いた。勿論、どちらも素晴らしいです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-31 07:26:38] [修正:2010-07-31 07:26:38] [このレビューのURL]

後期手塚作品の大傑作。他の長編作品より短いが、メッセージ性の強い作品に仕上がっている。

ドイツの独裁者「アドルフ・ヒトラー」は実はユダヤ人だったという推論を採用し、同じ「アドルフ」の名を持つ2人の少年が辿った運命をさらに「第三者」の視点から語らせる。
ナチスの行った「ホロコースト」は断罪されねばならないと思うが、いかに「善良だった一少年」がそれに加担させられていくのかが分かる。誤った人間の謝った洗脳がいかに多くの悲劇を生み出したのか、いかに多くの犠牲と破壊を生み出したのか、これは虚構の世界の中ながら「現実に歴史として残っている事実」だと思う。

ヒトラーが現実にユダヤ人の血を引いていたという可能性は限りなくゼロに近いそうだが、別にヒトラーは近親相姦による出生だったという説があるそうだ。ヒトラーの兄弟は皆早死にし、戦後まで生き残った妹には障害があった。このことから、ヒトラー自身も近親相姦による影響があったのではないか・・・とする説だ。

ヒトラーはさて置いても、友情を引き裂かれた2人の「アドルフ」の姿が痛ましい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-25 07:46:25] [修正:2010-07-25 07:46:25] [このレビューのURL]

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